第17回ウディコン全作品レビュー - Stellight

01. Stellight

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG 冒険者@シロヰ a.k.a 阿部狐
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.00 クリア

良かった点

  • 良いシナリオでした
    • 情景描写の美しさなど文学的な良さがあります
  • 親切かつスピーディーな戦闘設計により、物語への没入感を保ったままゲーム性を担保していました

気になった点

  • 特にありません

レビュー

抒情の力

Stellight は、シナリオが主体となったノンフィールドRPGです。
ジュブナイルファンタジーと銘打たれた通り、ある少年のひと夏の物語が洗練された筆致で描かれた作品となっています。

女の子のようなチトセという自分の名前、あるいはそのアイデンティティそのものに苦悩する少年が不思議な世界に迷い込み、星あかりのヒーローを名乗る少女に出会うところから物語は始まります。二人はそれぞれの望みを成就するべく、願いが叶うという千年階段を目指して共に歩みを進めていくことになります。
目的地へと向かう道中で展開される、豊かな抒情性をもって主人公が抱える苦悩やその内面の世界をテキストで表現したシナリオは美しく、読む者の心を揺さぶる力を持っています。ゲームという総合芸術の媒体ながら、あえて文章それそのものが持つ表現能力を極限まで引き出した構成であると言えるかもしれません。

ただし、このゲームはノベルゲームではなく、ノンフィールドRPGです。彼らに立ちふさがる障害は、RPGにおける戦闘として表現されています。物語を装備してスキルをビルドしていくその設計もまたシンプルながら完成度が高く、シナリオを楽しむ良いアクセントとなってくれることでしょう。
なお、戦闘はスピーディーな設計をしており、ゲームオーバーという概念もありません。シナリオへの没入を妨げるものではなく、あくまでフレーバーとして楽しめるものとなっています。

情緒溢れる高品質なシナリオを、シンプルで遊びやすいゲーム性で包んだような作品となっています。
千年階段に辿り着いた時、彼らは何を思い、何を願うのか。その結末を知るためにも、歩みを進めていきましょう。

感想

情景描写の稠密さとか、良い意味での言い回しの回りくどさとか、そのあたりがゲームっぽくない作品です。文学畑っぽい文章ですし、何なら純文学の畑から取れそうな文章に見えます。最近の純文作家を読んだ経験はあんまりないですが。
ゲームという媒体においては、情景は一般にグラフィックで表現しがちなところがあります。それ自体はゲームが総合芸術であることから一般的な話とも言えるんですが、Stellightは文章の力で世界を構成していこうという強い意志を感じさせます。言葉の持つ情感の力を信用している。
そうした性質上、やはり真骨頂とも言うべきは心情描写になるんですが、割かし直截的な感情の吐露を情景に乗せて表現しており、この辺も文学的な素地を強く感じる内容となっています。その中でもドロシーの台詞はやや特殊気味に仕上がっていて、時に意味が通らない言葉であっても連打して、とにかくリズムを重視するような言い回しになっています。都都逸とか、そういう類の独特な面白みがありました。

その一方で、文章に偏重してゲーム性が疎かになっているかと言えば、そういうこともありません。ノンフィールドRPGとして堅実に完成されてもいます。
ある程度のランダム性と計画性をもって増えていくスキルと武器、スピーディーに進行する雑魚戦としっかりと歯応えのあるボス戦といったバランス面を基に、ゲームオーバーなしで戦闘前に戻れる親切設計が組み入れられており、物語への没入感を削がない範囲でゲーム性を上手く作っています。
個人的には、二週目でちゃんと変化を付けていたところが良いなと感じています。技の追加を最小限にしつつ、キャラの追加と進行の高速化でもって上手く差別化を図っていました。あそこでもう一回100m刻みだったら飽きていそうなところです。

なお、物語の装備周りについては、個人的に若干手間だと感じるところがあります。スペックの確認のために装備画面へ行くとキャラ選択を挟むため二手かかるので。物語一覧を見れば解決できる部分はあるものの、そこから装備させたい場合は結局装備に行くため、大体装備のUIで確認しがちなところがありました。装備の確認は原則として装備の種類数だけ行われる操作なので、この辺りが地味に積み重なって手間な印象がありました。時間にしたら大したものではないんですが。
ただ、装備までの手数が減るとステータスの簡易確認用の画面やら、顔グラフィックなどを見せる画面やらが減りそうなので、こう書いておいてなんですが、設計としてはベターなものなのかなと感じています。
ともあれ、そういった細かい点以外には特別不便を感じることもなく、全体的な設計そのものには安定感を覚える作品に仕上がっていました。これがウディコン常連の力。

物語についてもう少し触れておくと、ボトルネックかと思ったらボトルネックではなくて、ちょっとボトルネックな話でした。結論としては、生まれてくることそのものを無条件に肯定しているので、最終的にはボトルネックではないように思います。
夏にこのテーマでやっていることもあり、こういった清々しい終わり方をしてくれるのは個人的に嬉しいです。もしエントリー番号1番でボトルネックをやられていたら、ちょっと厳しい気持ちになっていたかもしれない。
また、軽い伏線の張り方や、そもそものリフレインの使い方も丁寧で、短い中でも構成力の高さがうかがえる物語となっていました。

なお、個人的に気になるというか十分に解釈できていない点が二つほどあります。
一つは、ドラゴンから道を戻るように逃げるシーンで、背景が逆側に流れていく箇所です。何らかの意味を取って解釈をするのであれば、逃げているシーンではあるものの心は前向きであるということを暗示しているとも取れなくもない気はします。単にそういう挙動に見えただけなのかもしれませんが。
もう一つは、チトセが真正面を向いている中で、ずっとアカリが横を向いていることの意図です。最後の展開のための区別かとも思えなくもないんですが、そうなると最終戦の演出で前を向いていたことが説明できなくなります。最終戦の演出のためなのかなと個人的には解釈しています。

また、解釈できていないとはまた違いますが、母親についても少し触れておきます。
母親がはぐれてしかる場面で特にケアすることなくはぐれる展開から始まるんですが、エンディングの流れを見るに意図的な描写っぽい雰囲気があります。あの場面では特に悪意がないことは描写しても、子供目線でどこまで気遣っているかは不透明くらいの描写度合いになっているような印象を覚えました。最後にちゃんとフォローが入ったので、そのあたりは後味が悪くなくて良かったです。

何にせよ、物語を読ませるノンフィールドRPGとしての完成度が高い作品でした。これがエントリー1番であることに感謝。