第17回ウディコン全作品レビュー - Return to the Wildlife

24. Return to the Wildlife

ジャンル 作者
RPG ロンバート
プレイ時間 プレイVer クリア状況
6時間 1.1.0 クリア

良かった点

  • 様々なシステムが上手く融和されて組み込まれています
    • デッキ構築、多対多、アビリティシステムなどが上手く同居していました
  • ランダム要素多めのシステムに対し、多対多のわちゃわちゃ感の親和性が高かったです
    • 個別具体の運要素に対する不満が発生しにくくなっています
  • 唐突な自然への回帰を軸とした良いシナリオが描かれています

気になった点

  • メンバーの離脱に伴い、アビリティが一時離脱するのが厳しかったです
  • スキル未設定でも戦闘できるため、誤爆して行動無しになる事がありました
  • テキストの口調の雰囲気が微妙に安定していませんでした

レビュー

所詮この世は弱肉強食

Return to the Wildlifeは、デッキ構築大乱闘RPGです。
事前に組んだデッキのカードで行動を決定し、多対多の戦闘を行うRPGという様々な要素がてんこ盛りのゲームとなっています。

行動方針の核となるデッキは各キャラクターごとに割り当てることが可能であり、それによって戦闘中に取れる行動が変化していきます。攻撃カードを大量に持たせるキャラを作るも良し、それぞれのキャラクターが万能に動けるようにしておくも良し、好きなスタイルでデッキを構築していきましょう。
戦闘では、そうして構成したデッキから行動コストを支払ってカードを選択することで各ターンの行動を決定付けていくことになります。カードの性質は攻撃、防御、支援、カウンターが主たるものとなっており、上手く使えば敵の行動を封じつつ一方的に攻撃することも可能です。残りの行動コストや敵味方の状態、他の味方が選んだ行動との相性などを勘案し、毎ターン適切なカードを選択していきましょう。
そうして敵を倒すことで新たなカードが入手でき、より強いデッキを構築していくこともできます。強くなるには、積極的に敵を倒しカードを集めていくのがお勧めです。

また、デッキ構築に加えてアビリティもまた戦闘に欠かせない要素です。各キャラクターに装備できるアビリティはパッシブスキルや能力値の強化をもたらしてくれます。アビリティ同士を錬成することでより強力なアビリティに進化させることもできるため、あればあるほど嬉しいものとなっています。積極的に集めていきましょう。
こうして作り上げ、割り当てたデッキとアビリティによって、それぞれのキャラクターの戦闘上での役割は様変わりしていきます。自分なりのビルドを目指して、色々な組み合わせを試していきましょう。

そうしてカードやアビリティを集めて強化を重ねることで、強力なボスに対して勝利を掴むことができ、それによってシナリオもまた展開していくことでしょう。突如として人間が消え、野生への回帰を強制されたペットたちを巡る物語は、厳然たる野生という世界観を描きつつシリアスに進行していきます。
そのゆるいグラフィックからは想像もつかない厳しい世界の中で、それでも前を向いて進む主人公の姿は王道のシナリオ展開として心に響くものがあるでしょう。

野生の中に放り出され様々な脅威に晒されたとしても、デッキを構築し、アビリティを磨き上げ、それらの脅威を打ち倒していきましょう。

感想

デッキ構築型わちゃわちゃ戦闘RPGという、色々な要素を上手く取り込んでユニークなシステムに落とし込んでいる作品です。これだけ混ぜると要素の食い合わせが悪いところが出てきそうなものですが、その辺が上手くまとまっているあたり、仕様の調整力の高さが窺えます。

ひとまずデッキ構築についてですが、カードプールがそこそこ広いおかげで、取るべき戦略が少しずつ広がっていく面白さがあります。多対多という性質も相まって、それぞれに割り当てるカードの種別によってシナジーが生まれていく構成により、掛け算で戦略性が生まれているのも面白いところです。
基本的には攻撃役とアシスト役を分離していくのが望ましいのですが、ストーリーによって割とメンバーが増減するので、その度に割合に苦心することになります。都度調整が必要。
さらに、ここにアビリティも加わることでより複雑なビルドが生まれています。本当にいろんなシステムが詰め込まれている。

アビリティについては、個人的には背水と火事場がツートップで、アビリティ内で明確にシナジーが取れるため強力な印象がありました。ここに蛮勇をつけ足して高コストで殴れば、大体の敵を封殺できます。残りは応援すれば、被弾も割と抑えめにできるのが良い。多少漏れたとしても、蘇生である程度ならリカバー可能なので、攻撃特化ビルドが割とお勧めです。
その辺のアビリティさえ用意できていれば、堅牢やらなんやらはLv2Max程度でも十分戦力になります。むしろ、これ以上上げようとするとコストパフォーマンスが微妙に悪い気もしています。最終的に10キャラに諸々割り当てる都合上、それなりのアビリティの数が必要なので。
一方で、攻撃に関しては先述のアビリティで枠が埋まる点、そもそも攻撃役が絞られる点から、ある程度厳選していくとより良い印象があります。とはいえ、剛力よりは制圧や会心を作る方が楽かもしれませんが。
限界まで戦力を詰めるならLvMaxしかあり得ないのですが、裏ボスのような存在もいないので、そこまで詰める必要もありませんでした。

これらを運用する上で何度も触ることになるUIについては、基本的には割と使いやすく作られています。特に良く触るデッキ構築周りが使いやすいのが助かります。個人的には、メニュー下のキャラをクリックしたらデッキ構築に移行して欲しい気持ちはありましたが、この辺りは好みな気がします。アビリティの可能性もあるので。
一方で、アビリティ強化と装備がシームレスにつながっていないのはやや装備の手間があって気になる所ではありました。そんなに頻繁にやらないんですが。また、右クリックがキャンセルで割と統一されているので、その直感でアビリティを外そうとして右クリックをしてしまうといったこともありました。これは慣れるとどうにかなる。

個人的に一番装備周りで気になる点としては、メンバー離脱に伴う装備やアビリティの一時離脱です。一昔前のRPGでよく見たやつ。
構造上、アビリティは圧縮したほうが強いので余剰があることの方が少なく、一気に奪われるとかなり窮屈になってしまいます。特に、洞窟に落とされるフェーズでは主人公以外が持っているアビリティが軒並み消えてしまい、かなり苦戦しました。
残る彼らも生き抜くために必要なのかもしれませんが、システム的には外してあると助かったように思います。

続いて戦闘パートについては、わちゃわちゃしている戦闘システムがカードのランダム性と存外相性が良いように感じました。
ログを見れば観察可能であるとはいえ、それぞれの攻撃がどの程度リターンを得ることに成功したのかを確認する際は、基本的には敵のHPの減りや味方の状態を見ることになります。このマクロ視点での状況把握のおかげで、ダイスルールによる運頼みのダメージ計算がかなり覆い隠されているように見えます。一つ一つ見せられるのではなく、わちゃわちゃとした結果として表されるおかげで、多少運が悪くてもそれほど気にはなりません。大局で見ることができるメリットがこういう風に現れるとは思ってもみませんでした。

プレイヤーが介入すべき要素としてエレメントが設定されているのも秀逸で、多対多の選択はカード選択というシンプルなものに統一したうえで、付加的にやるべきことを追加することに成功しています。あくまで外付けの装置として表現しているおかげで、必要以上にゲーム性が複雑になりません。
さすがに終盤になってくるとキャラクターごとの行動決定量が増えてきて手間が増えていくところはあるんですが、外付け要素があくまで外付け要素で留まってくれていたおかげで致命的なまでに億劫にはなりませんでした。雑魚戦相手にはランダムで行動決定してくれる仕組みも、そういう意味では嬉しいシステムです。

個人的には戦闘開始時に余計なラグなくすぐにボタンが押せるのも好きなポイントで、筆者のようなせっかちにとってはありがたい機能です。すぐにいろいろなことをやりたいので。これに限らず、タイトルの演出や戦闘開始演出など、演出として必要なものはきっちり取り入れつつも、プレイヤーにストレスを与えないように上手く配慮して導入されている印象を受けました。総じてテンポが良い。
なお、個人的には戦闘時にスキル未設定でも決定が押せるのはやや気になる所ではありました。事実上のパスのためではあるんですが、誤って押すケースも割とあるので、行動未設定の対象がいたら警告くらいはあると助かる場面があったかもしれません。

最後にシナリオパートについて。主人公の行動指針が一貫していることもあり、読みやすく心にも届きやすい物語となっていました。読み味は王道少年漫画のそれっぽくなっています。背景を考えると青年漫画かもしれませんが。
ある意味では、物語のラストについては救いの一つが無い結末ではあります。しかし、それでも大団円的に終われたのは、この主人公のぶれない行動と個性豊かな仲間たちとの交流によるものであるように思います。
一方で、テキストは口語っぽくなったり、絵本みたいな語り口になったり、と思えば堅い言葉遣いになったりと微妙に安定しないところが個人的には気になりました。シナリオそれ自体は良いのもあり、微妙なノイズになっている印象はあります。些末ではありますが。

ともあれ、様々なシステムをどん欲に取り込みつつ、一つのゲームとして仕上げている良い作品でした。