第17回ウディコン全作品レビュー - 王国の肖像
25. 王国の肖像
| ジャンル | 作者 |
|---|---|
| 戦略SLG | らんどるふ るどるふ |
| プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
|---|---|---|
| 17時間30分 | 1.25 | ふつうでクリア |
良かった点
- 重厚な世界観とシナリオが楽しめました
- 軽い言い回しにも良い雰囲気が漂っています
- 各キャラクターが魅力的でした
- それぞれの信念や覚悟が窺える物語展開となっています
- 大量の敵を上手く捌いていく面白さがありました
気になった点
- 殊に終盤のステージは敵が多く、長いです
レビュー
王の道
ゲームの世界観というものは、シナリオや説明のみに宿るものではありません。モブのちょっとした一言や、キャラクター同士の細かいやり取り、めいめいの思想や行動原理、そういったものの根源にも宿るものです。
シナリオそのものの完成度が高く素晴らしいものであることは言わずもがな、主要キャラクターそれぞれの価値観や行動、各々が取る選択が織り成す多面的な構造により、世界観、ひいては物語がより深く紡がれていく、王国の肖像はそういった作品となっています。
ゲームとしてのシステムについては、オーソドックスなSRPGの形式を取っています。ただし、運用可能なユニットが少数精鋭であり続ける一方で敵がどんどん大軍になっていく、多勢に無勢な中で戦うという特徴を持っています。
数の不利を覆すには、それぞれのユニットの性能やマップの構造を活かすことが肝心です。敵のターゲットを制御できる盾で相手を引きつけたり、マップ上の狭い通路に誘い込んで各個撃破したりと、工夫を凝らして大量の敵を上手く捌いていきましょう。
また、戦力が少ない分、ユニットごとの成長はより重要な要素となります。満遍なく経験値を与え、全員が最大限活躍できるように場を整えていきましょう。
加えて、各ユニットごとに3つの装備と2つのパッシブスキルを設定でき、3つまでアイテムを持たせることもできます。とりわけ武器は重要であり、ベーシックな近接武器である剣を初めとして、遠距離しか攻撃できない弓、狙われ率を上げられる盾、SPを消費する魔法など、バリエーションに富んだものとなっています。それぞれのユニットの特徴を捉まえて、最適なビルドを目指していきましょう。
なお、一度戦闘が始まれば原則的に武器やアイテムを変更することはできません。多数を相手取る都合上どうしても長期戦となることが多いため、この事前準備の重要性は高いものとなっています。戦闘を始める前に、マップと主要な敵ユニットを注視することをお勧めします。
そうして広大なフィールドで大量の敵を倒していき戦闘に勝利することで、その重厚なシナリオは進行していきます。
序章も含めると8章からなる物語は、それぞれの思惑が交錯し、衝突しつつも激動していく王道的な軍記物です。王位継承を巡る王国を二分する戦いを通し、国家や王という存在を見つめていくシナリオは濃厚なものであり、魅力的な主要キャラクターも相まって読み応えのあるものとなっています。
時には戦場で対峙した際にも描かれていく各々の関係性、異民族間にまで広がっていくスケール、それぞれの信念に基づいた覚悟の結果が厳然と描かれる構成、全てが高い品質でまとまったシナリオを味わい尽くしていきましょう。
少数で多数を相手取る戦略シミュレーションパートと、幕間でたっぷりと描かれる政略と陰謀渦巻くシナリオパートの双方を楽しめる作品となっています。
王位継承にまつわるその覇道を見届けるためには、終盤になるにつれてより広がり、より多数の敵と相対するステージを攻略する必要があります。それぞれのユニットを最大限活用し、立ち塞がる数多の敵を効率良く捌き、勝利を掴みとっていきましょう。
感想
筆者はSRPGを途中で断念して全作品クリアできなかった時がある程度にはSRPGを苦手ジャンルだと思っているのですが、この作品は最後まで通してプレイできました、たっぷり17時間30分をかけて。難易度が割と平易めだったこともあるんですが、それ以上に最後までやり切ろうと思えるシナリオをしていたのが最大の要因だと感じています。そうでなくてはこれほど時間をかけてやらないので。
とりわけ、世界観やシナリオそのものの重厚さもさることながら、それらがきっちり飲み込める程度には咀嚼されているというのが好みでした。軍記ものをどこまで難しく、詳細に、何をテーマに描くかにはグラデーションがあり、それによって銀河英雄伝説から淡海乃海、ウォルテニア戦記、あるいはもっとカジュアルな異世界ものっぽい物語まで、色々なバリエーションがあり得ます。
この作品は世界観や展開はある程度重厚で、それによって物語の芯を強くしておきながら、キャラクターの性格付けや細かなシナリオ面ではある程度カジュアルにも寄せています。その上でカジュアルには寄り過ぎず、特に終盤の展開は覚悟と共に重めの物語展開も描いています。この辺りのバランス感覚が良いので、読み物として楽しみつつも世界観に浴することができるようになっていました。
この辺りのバランスは人名周りにも表れていて、ゴンドワーナ関連の名前をへべれけ、こめかみ、なめろう、のような若干気が抜ける名前とし、実際に最初の内はカジュアルに感じさせるような登場をさせつつも、中盤から終盤にかけては重厚な世界観の中にそれらを違和感なく組み込んでいます。とっかかりは軽く、読み込む時には重く楔を打つようなシナリオのデザインをしていました。
また、ちょっとした会話ややり取りにも軍記ものの雰囲気を漂わせているのも良く、言い回しがずっと好みでした。語彙もそういう空気感を形成するのに上手く役割を果たしています。毀誉褒貶という四字熟語、軍記ものでしか見ない気がします。 捲土重来とか鼎の軽重を問われるあたりに次ぐ。
加えて秀逸なのは、リュカというキャラクターが物語に組み込まれていることにあります。まずもってリュカの登場と展開の関係上、実は根が良いやつということで上手く株を上げる展開があるというのが美味しいです。加えて、実質外様のような立ち位置であることから、主人公やミアを中心としたメンバーとは異なる立場の言葉が紡げます。
リュカを抜きにしてみると、主人公も含めて覇道のために全員覚悟が決まっています。このため、例えばあのタイミングでのシアンの決断に対しても誰も異を唱えることはしません。覚悟が決まっているがゆえに、他人の覚悟に水を差すような真似はしないので。そうした中で声を上げられるリュカというキャラクターがいるからこそ、物語が多面的に引き立つような印象を受けました。単純に、一番プレイヤーの目線に近いキャラクターなのかもしれない。
そして、そういったキャラがいるからこそ、それでも下さねばならない決断や覚悟が光るという面もあります。引き立て役としても優れていますね。
そういう意味でも、終章よりも好みなのはその前の章ではあります。やらねばならないことがあまりにも、あまりにもなので。父親もウージェニーも殺さざるを得ないのに、なめろうを殺すわけにはいかないというのも無常ではあります。覇道に対する合理としては確かにそうなのかもしれない。なめろう撃破時点では敵の手勢がいないので、捕縛で済ますことが十分可能であるという背景もあるかもしれませんが。
この戦いは誰で戦い、誰で倒すかによってもやり取りがあるのも良くて、可能な限りいろんなキャラに殴らせて様子を見ていました。ネームドはこのパターンが多いので、シナリオを諸々補完したい場合はいろんなキャラに殴らせた方が良いです。ロゼッタあたりは、そうしないと何も分からないキャラクター性をしているような気がします。
なお、筆者は個人的には最後のエンド分岐も含めて全部回収したかったんですが、最難関かつ最長の最終ステージを攻略しないと見れないのもあって二の足を踏みました。初見クリア時間とは言え5時間くらいかかったので。詰めても3時間くらいはかかりませんか、これ。
また、SRPGとしてもオーソドックスで完成度の高い仕組みとなっています。個人的には出撃ユニットが少ないことはむしろ好みで、ターンごとに考えるべきことが少なく済む上、成長厳選も最小限で済むので良かったです。
その代わりに、二正面作戦のような器用なことはできず、ステージ構成が基本的にほぼ正面突破や各個撃破になりがちではありましたが。ただし、援軍を出したり、ギミックを出したり、通路以外も作ってルートを分けたりと、可能な範囲で一直線の正面突破になり過ぎない配慮はあったように思います。最終ステージがさすがに一本道過ぎるのはご愛敬。
ステージが進むにつれて敵が増えていき、広くなっていくというのは難易度の表現としては良くて、段々と難しくなっていく印象をきちんと受けていました。とりわけ最終ステージは最初に見た時に笑ってしまうくらいには広く、最終局面であるという実感が湧くレベルのものとなっています。それにしたって広すぎませんか。
広すぎる弊害としては、特定オブジェクトで何が起きるかを調べるまでに時間がかかるというのもあります。例えば、6章の井戸が気になり、時間をかけて見に行ったら後々使うための回復装置だったということが後で分かるという具合です。基本的にルートはある程度自明に与えられているので、あまり脇道に逸れないのが良いのかもしれません。
また広すぎる故に、終盤のステージは平気で3時間くらい戦い続けることになるため、割と現実世界の持久力も求められます。いつでもセーブできるとはいえ、一気にやってしまいたいですからね。
なお、筆者はSRPGにおける厳選の仕組みについては否定的あるいは懐疑的です。SRPGの伝統あるいはFEの伝統なのかもしれませんが、ランダム能力上昇に意味を見出せていません。本当に運が悪いとクリアできなくなるのでロードしましょう、というのは割とゲームとしてどうなんだと思わないではないので。ポイントを与えて割り振らせた方が健全なように思えます。
閑話休題。この作品もその例に漏れず厳選はあるんですが、恐らくそれほど厳選しなくてもクリアはできそうな気配を感じました。筆者はシアンのSPしか上がらないのようなしょっぱい結果はリセットしていましたが、それ以外はそれほど拘らないで進めていても致命的に問題にはなりませんでした。その上で、アイテムをほぼ使わずに終えたので、その辺を駆使すれば何とかなる気はします。上位の難易度だとまた違うのかもしれませんが。
個人的には、隘路に上手く誘い込んでリュカを当てるプレイングを徹底していれば、ある程度の敵までは対処できる印象がありました。3列しか近場に無いなら各個撃破で一気に倒す方が大事ではありますが。
ちなみに、最終的には筆者のユニットではミアが一番育ちました。隙さえあれば回復しているせいです。エルベリーのレベルが69に対し、ミアは脅威のレベル93でした。そのおかげで回避と魔防が非常に高いユニットが出来上がったので、回復役にもかかわらずしばしばタゲを取って部分的に壁の役割を果たすこともありました。さすがに被弾すると痛いので最終手段ではあるものの、エルベリーの命が救われたケースがそこそこあったのも確かです。
個人的に一番運用上使いやすかったのはシアンで、序盤は貴重な遠距離攻撃手段、終盤は特殊行動も含めて諸々要となってくれました。そのおかげで、不在となる6章が一番しんどかったかもしれません。頼り過ぎていたかもしれない。
また、終盤加入とはいえモニカもまた使いやすく、その攻撃力で一気に沈める際に重宝しました。例えばウージェニーはパラメータ上は強かったんですが、モニヤの二連パンチの前では一発で沈む敵でしかありませんでした。
リュカもかなり重宝していて、特に敵の数が増えてくる終盤はリュカが耐えてくれないとどうしようもない場面が多い印象がありました。それもあって、リュカだけは厳選がやや強めに行われていて、運もあって全パラメータが平均値を上回る仕上がりとなっています。
一方で、一番扱いにくいのはジョットでした。消費が重く不確実性が高い上に、壁として出すにはもろいので扱いに困る印象があります。通れば強いとはいえ余り無駄に撃つわけにもいかないので、結局はシアンの下位互換みたいな使い方をしてしまっていた気がします。もう少し上手い使い方があったんだろうか。
SRPGの戦闘面で見ると、先述の通り全体的に長い印象は拭えないものの、面白いものではありました。
各ステージともに広くはあるんですが、各個撃破するパターンとフェーズ的に処理するパターンが上手くまばらに配置されているので、ずっと同じパターンで処理するといったことがありません。おかげで、ある程度変化があって飽きにくくなっています。
個人的にはラインを割ったら一気に押し寄せてくるタイプが難関に感じており、隘路に持ち込んで各個撃破するまで骨が折れます。盾を上手く利用してタゲを取って対処するのが大事。
なお、個人的に一番好きなマップは最終ステージではあるんですが、あまりにも長いので好きではあるけど二度クリアしたいステージではありません。200体くらい敵がいるらしい。
とにかく全体的に遊びやすくまとまった高品質なSRPGであり、かつ良質なシナリオが展開されるという良い作品でした。諸々硬派な作品だなというイメージがあります。