第17回ウディコン全作品レビュー - 深蒼の航路
59_深蒼の航路
| ジャンル | 作者 |
|---|---|
| 探索ADV | 3のっと/s |
| プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
|---|---|---|
| 1時間30分 + 1時間 | 1.0.3 | 全END |
良かった点
- 不穏な雰囲気が上手く作られていました
- スチルを含めた演出によって、より強く印象付けるものとなっています
- モチーフに対する換骨奪胎が上手く機能しています
気になった点
- お使いの要素に偏重している印象がありました
レビュー
The 探索アドベンチャー
深蒼の航路は、オーソドックスな探索アドベンチャーです。
神の奇跡と呼ばれるものを求めて海を渡った4人の主人公を中心に、物語が展開していく作品となっています。
ゲーム内容としては極めてベーシックな探索アドベンチャーであり、基本的には訪れた町の人々に協力をしていくことで物語が進行していきます。
聞き込みをしたり、手伝ったり、時には探し物をしたりと、町の人々に積極的に話しかけていきましょう。
そういったイベントを進めていくことで展開を深めていく物語と、そのバックボーンたる世界観の雰囲気こそが、この作品の醍醐味となります。
天正遣欧少年使節をベースとしつつも、あくまで架空の世界観の中で描かれる宗教と献身の物語は、やがて大きなうねりをもってエンディングへと流れ着きます。異国の雰囲気漂う街の風景、時折挟まれるスチル、表情豊かな立ち絵を背景に、その不穏な物語を存分に浴びていきましょう。
そうして、それぞれの思惑と未来は4つのエンディングへと分岐していくことになります。是非とも全ての終わりへと到達し、彼らの旅路を見届けてみてください。
感想
明示されてないとはいえ名前からして明白に、某十字教を題材としていそうな作品です。天正遣欧少年使節ベースなので。もっとも史実とは明確に異なって描かれてはいるので、あくまでもモチーフでしかないものではあります。
明らかに不穏であり、その予測というか不安というか期待というか、そうあるべきな方向にきちんと動いてくれる探索アドベンチャーとして完成されていました。チャーハンを頼んだらチャーハンが出てくる、そういう探索アドベンチャー。
一方で、ゲーム性としてもまたチャーハンのため、かなりお使い要素の強いものとなっている印象があります。特にシナリオ上の要請をあまり感じない途中の町あたりが顕著で、振り返っても特に関与が見受けられないことが、よりその印象を強くさせていました。
一方で、物語的な関与の強いイベントがある最終章や、紹介の意味もある最初の町などは同様のゲーム性に近くても特別問題に感じなかったため、やはり物語との連関性の薄さが気になっていたのかもしれません。ワインを協会に与えることで神の奇跡に貢献しているとか、そういう情報があると嬉しいかもしれない。あるいは絵画のように、自主的に掘ることを想定しているんでしょうか。ヒントが少ないので分からない。
一応、お使いという行為を通してその献身性のようなもの、あるいは自己犠牲的な精神に対する衆生の感謝を示していると解釈することもできるかもしれませんが、それにしても数が多いので。
一方でシナリオや雰囲気は抜群であり、宗教という厄いテーマを使って不穏さを上手く演出しています。要所に入るスチルも物語の雰囲気の醸成に貢献していました。
十字教というモチーフはあくまでモチーフとは言え、当時の十字軍のような蛮行を考えると物語に対する説得力のようなものも生んでいます。一方で、世俗的な欲ではなく、あくまでも神話の再来のみを探求していた教皇のような狂気は、創作的に磨かれている要素として機能していました。このあたりの塩梅が良いため、全体的な不穏さが上手く表現されている印象があります。
教皇、それ自身は神の奇跡を誰に与えるかも関心が無さそうで、下の腐った連中に任せて放任していそうな嫌な狂信者のリアリティがあります。多分そこに興味が無い。
エンディングに関しては個人的には全部BADな気がしています。相手の本拠地に入ってしまった段階で、もう助からないのはさもありなん。ジュリアンはもはやどうしようもなさすぎます。この下手にグッドっぽいものが無く、バッドかトゥルーしかないような潔さは個人的には好みで、プレイ後の余韻の粒が揃っているような、クリアなプレイ感を与えてくれました。
BAD1の解釈は個人的に微妙に読めておらず、最終的に磔にされる未来があることをもって、逃れられない運命のようなものを暗示しているのかなと解釈していました。
なお、全体のシナリオについては、前述した途中のパートにあんまり本筋が絡まないのが気になる所ではありますが、各パートはあくまで要所以外をオマケとしつつ、ミゲルパートをメインとして構成されているような印象がありました。
シナリオ上の役割自体は4人に割り振られていて、表主人公のマンショ、裏主人公のミゲル、犠牲者のジュリアン、語り部のマルチノとしてそれぞれ必要なんですが、各キャラクターに対する掘り下げはやや少なめな気がしています。ミゲルは充分ありますが。このあたりが途中のパートでより補完されていると個人的には嬉しかったです。立ち絵とかキャラクター性は魅力的なので。
ともかく、探索アドベンチャーとして想像するオーソドックスなものをそのまま遊べるゲームでした。期待通りの体験が得られる作品と言えるでしょう。