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54. ショートファンタジー 刻と天賦の綺譚

ジャンル 作者
RPGめいた探索ADV テトゥルウイスキー蒸溜所
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.11 END1クリア

良かった点

  • とにかく要素が詰め込まれながらも、破綻なく完成されていました
  • フレーバーとしてRPGが機能していました
  • カンノーリが良いキャラクターをしていました
  • 全体的に演出が良いです

気になった点

  • 拠点マップがやや歩きにくく感じます
    • がれきに引っかかったり、導線がシンプルでなかったり、といったところが気になりました

レビュー

闇鍋ファンタジー

ショートファンタジー 刻と天賦の綺譚は、カイジ風のRPGめいた探索アドベンチャーのようなゲームです。
このように一口で説明すると纏まっていないように見えるほど、ミニゲームからダンジョンのRPG、アドベンチャーのようなパートまで、様々な要素が詰め込まれている作品となっています。
それと同時に、そうした要素のごった煮もさることながら、それらが一つのゲームとしてまとめ上げられた作品でもあります。

このゲームでは、命をかけた賭博場に足を踏み入れてしまった主人公、カンノーリを操作して、生き残るためにサブゲームに挑んでいくことになります。
挑戦したサブゲームの成否は、フォースと呼ばれる対価に影響します。フォースは生存に不可欠となるため、可能な限りサブゲームに挑んで入手しておきましょう。

また、一日に一度、ダンジョンに潜ってRPGを楽しむこともできます。
ここで戦って得た経験は後の力となるため、戦いを経験して対策しておくことも生き残るためには重要となってくることでしょう。

さらに、生存のためには仲間との団結も必要となります。時には入手したフォースを使いながら、ストーリー進行の過程で人々と交流を深めていきましょう。
そうして、サブゲームを攻略しつつ、仲間と協力し合って生き残っていくことで、やがて迫りくる脅威に立ち向かうことになります。

こういった様々な要素をまとめ上げているのが、ギャグパートでも心を動かすシーンにおいてもいかんなく発揮されている、高い演出力になります。
その道程で色々なイベントやシステムを体験していきつつも、終局へと収束していく中でストーリーを高める演出を通ることで、終わってみれば正統派のファンタジーを遊んだような爽やかな気分を味わえるでしょう。

様々な苦難を乗り越えて、強大な敵に挑んでいきませんか。

感想

作者さんがすっぽんクエストの方とショートファンタジーの方なので、闇鍋と王道ファンタジーっぽいものが良い意味で悪魔合体した作品です。
終わってみれば正統派のファンタジー作品をやった気分になれるのに、プレイしている最中の感覚はまごうことなきごった煮の嵐です。面白い感覚が味わえますね。

このゲームを闇鍋だと思っているのでどこから話すべきか迷っているんですが、とりあえずカイジから話しておきます。
作中には色々なミニゲームやらパズルが出てきて、良いアクセントになっています。筆者はスロットやブロック崩しをやった結果ぬめぬめレースに落ち着いたんですが、赤スロットって攻略できるんですか。
ブロック崩しをしなかった理由としては、反射角が確定しているタイプっぽいのであんまり面白みがなかったからです。あくまでミニゲームという感じがする。

それはそれとして、序盤の進行はカイジADV、RPGを添えてという感じです。それぞれの人々の現在の状態が表示されつつ、少しずつ何かが進行していく様を感じられます。
選択を誤ったり、ミニゲームに失敗したりすると何か良からぬことが起きそうな気配を感じつつ、ストーリーを進めていくことになります。
そんなADVパートで急に緩い下ネタが突っ込まれる当たりもすっぽんの方っぽいなという印象です。ひどい偏見ですね。

RPG部分については基本的にはダンジョンに潜るところになります。
ダンジョンパートは限定リソースで戦闘をこなすタイプで、上手く戦えばそれほど苦戦せずに攻略可能です。実際、ダンジョンの位置に気づかずに一日スルーしましたが、無事クリアまでたどり着けました。
最終盤の難易度だけ高めではありますが、そのころになるとこちらも強いので割と何とかなります。このあたりの戦闘バランスはざっくり目な印象でした。

そうしてカイジADVパートを抜けると、本編のRPGパートっぽいものが進行するようになるんですが、それでも依然としてカイジADVパートも継続して行われていきます。
このあたりのごちゃまぜ感が闇鍋らしさをより強くしている印象です。

ADVパートの大演目みたいなところのある人間カーリングの完成度はかなり高くて、これだけでもうまく作ればウディコンに出せそうなレベルです。
その上で全員生存を目指すならこうしなくてはならない、という制約もあって、メタ的な思考でも楽しめるゲームとなっています。生かそうとした時の立ち回りはやや難しいですが、相手がそれほど強くないので理不尽ではないレベルです。上手く守りましょう。

一方で本編RPGパートの戦闘バランスもざっくり目な印象で、ダンジョンでもそうなんですが、連続攻撃技をぶんぶん振るタイプの戦いになります。
こちらの取れるスキル構成があまり豊かではないので、回復するか殴るくらいしかなく、相性を突くとか状態異常を活用するとか、そういった戦略性はあまりありません。語弊を恐れずに平たく言えば、物語のフレーバー的な要素という印象です。

ただ、このRPGの戦闘があったからこそ活きる物語もあったので、フレーバーとしてはうまく活用されていた印象です。機械人形の下りとかラストダンジョンの表現としては、これ以上なかったように思います。
戦闘を楽しむためのRPGではなくて、物語を演出し、体験するためのRPGという印象でした。

その物語の話をすると、この作品は今ウディコンの熱いですわ担当だと思っています。コメディ担当でもあるかもしれないけれど。関西弁のほうはいったんおいてください。
やはりカンノーリが良いキャラをしていて、このキャラクターが主人公であるが故に面白い物語であるという風に感じました。

また、カンノーリがああいった明るいキャラクターだからこそ、エクレールのことを少しだけ好意的に見れるという側面があると思います。控えめに言ってもエクレール、自己中心的なクズみたいなところがあるので。この辺もすっぽんの方という感じがしますね。シュンリほどではないと思いますが。

全体的に演出能力が高いのも効いていて、見せの場面で魅せてくる能力の高さが光っています。
そしてそれと同じくらいに、ギャグパートでもその演出能力をいかんなく発揮しています。それをやりだしたらもうカイジなんですよ。

そういった展開を随所に挟みつつも、終盤の展開はまごうことなき王道ファンタジー然としたもので、主人公の精神的な強さも描かれるものとなっています。
誰一人失わせしめなかったという自信がカンノーリに力を与えたんでしょうか。やはり熱いですわだと感じています。

なお筆者は初手でTrueまで行ったので、残りのENDを回収できていないのですが、Normal回収はストンダを見捨てるのが一番楽そうで、Badはちょっとだけ面倒だなあと感じています。そもそも見捨てるのが忍びない。筆者はUndertaleも結局Gルートをやってないメンタルをしているので。

ちなみにどうでもいいんですが、ストンダについて、ドット絵の関係なのかずっと肌色の悪いおばあちゃんに見えていました。何となくそう見えませんか。

書きそびれていた話として、拠点マップがやや歩きにくいことだけ若干気になっていました。
全体を歩き回ろうとすると円形闘技場が直進を邪魔するところとか、がれきが落ちていて引っかかるところとか、そういう細かいところです。
なんとなく闘技場以南のイベントは限られているから毎回行く必要が無いんじゃないかなと思いつつ、律儀にも念のため足を運んでいたせいではあるんですが。
RiME なんかもそうだったんですが、リアリティというか雰囲気のあるマップ作りと移動の平易さは割にトレードオフになりがちな気がしています。

55. 悪魔の本を捲りて

ジャンル 作者
RPG ケイ素
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間30分 1.4 クリア+

良かった点

  • 完全情報戦闘バトルの趣がありました
  • きちんとメタれば戦闘バランスは良かったです
  • 短編として良く落とし込まれている物語でした

気になった点

  • 素材値で一括管理されたため、構成の自由度が下がった印象があります
    • 半ば必須の耐性などに振るとスキルがあまり自由に使えません

レビュー

ひたすら戦い抜け

悪魔の本を捲りては、戦闘をメインとしたRPGです。
悪魔の本を巡るストーリーが展開されながら、基本的には戦闘を繰り広げていくことになります。

このゲームでは、戦いに挑む前に敵の性質や弱点があらかじめ予告されます。
そのため、その情報を活用して、その敵に特化したメタ的な戦略を立てて戦っていくことが重要になります。使用してくる状態異常への対策、弱点を突けるような技構成など、事前の準備をしていくことになるでしょう。

このメタ戦略的なシステムを支えているのは、シンプルかつ何度でも振り直せる素材値をベースとした成長システムです。
敵を倒すと得られる素材値を用いることで、スキルの習得、耐性の獲得、持ち込むアイテムの入手、パラメータの強化など、様々な方面での強化を行うことができます。
敵の情報をもとに、適切に素材値を割り振っていくことで、戦闘を有利に進めていきましょう。

各ストーリーの終わりに待ち構えているボスともなると、事前の情報があっても強力な性能を持っています。
情報をもとにした対策と共に、大技に対する立ち回りといった戦術面でも気を付けて戦って、脅威を打ち払っていきましょう。

感想

戦略ゲーというか、最初に与えられた条件をもとにメタって勝つゲームです。
最終盤くらいはそれだけだと勝ちにくいんですが、少なくとも中盤くらいはメタっていれば負けることは無さそうです。

その結果、あまりにも快勝しすぎていて、セーブを忘れて二度進行を消し飛ばしています。
一度目はシンプルにミスって、二度目はなぜかセーブできずに消し飛ばしました。後のバージョンで修正されたんですが、恐らくタイトルでロードを一度でも選んでからゲームを開始するとセーブできなくなる不具合だったようです。レアなバグを踏んだ。

話を戻して戦闘バランスについてですが、メタれば勝てるし、そうでなければ泥仕合か敗北する良いバランスです。
きちんと対策を踏んでさえいれば、クリティカルなどの運要素が多少絡んでもリカバリーが効く範囲の被害で収まります。逆に、対策をしていないと少しのミスで総崩れになります。
殊に状態異常は半ば対策必須で、異常をそのままにしておくと高確率で戦線が維持できなくなります。一応かばうや、全体状態無効でも対策可能な雰囲気を感じますが、パッシブに突っ込むのが安定だと感じていました。

全体のバランスとしては、おまけボスというか強敵に類する敵とラスボスを除けばそれほど強いわけでもなく、ボスがやや強い程度のバランスなので、詰まらずに進めることができました。
強敵はちゃんと強く、対策を踏んで戦い方を工夫すれば対処可能なレベルです。ラスボスもそれくらい。
ラスボスが抜けて強いのは恒例ですが、今作は準備できていれば対応可能なレベルの強さだと感じています。個人的にはちょうどいい。

なお裏ボスは結構強くて、最初に挑んだ時は大技一発で沈みました。必中+防御無視+クリティカルを耐えるのは無謀だったようです。エンジェルグレイスに頼りすぎた。
ただ、それ以外ではエンジェルグレイスはめちゃくちゃ優秀で、ラスボスから裏ボスまで頼りになる最強の回復手段でした。多段攻撃相手だと相性が良いです。

そもそも、それ以外のスキルを活用しようとすると素材値の壁に阻まれるというのがあります。
素材値自体は能力上昇や属性、異常耐性に割り振っていたのであんまりスキルは活用できませんでした。
一つのリソースに集約されているシンプルさはありますが、組み合わせを色々試す上での障害にもなっていた印象です。そもそも耐性系がほぼ必須のように感じていたのが問題かもしれません。

個人的なケースですが、まず異常耐性をつけて、次に属性耐性に割り振って、とすると残るのはわずかで、それを能力上昇に割り振るとあんまり残りません。アイテムとの食い合いですが、スキル自体相手の弱点を攻撃できるものが一つあれば事足りる場合が多く、アイテムにリソースを優先するケースも間々ありました。
もしかしたら有用なスキルもあったかもしれませんが、どうしても耐性と能力値という分かりやすい方にリソースを振ってしまいがちな印象を受けます。

物語については毎回うまく短編に落とし込まれている方なので、今回も綺麗に短編としてオチがついていました。掌編の連なりみたいな構成もしているので、個人的には好みです。
ちゃんと最後までやったほうが楽しいので、割と強力な裏ボスは倒すのがお勧めです。

しかし、ラペオーが活発化したのはプレイヤーのせいと見て良いんでしょうか。我々がこの物語を始めたばっかりに。ただ、観測する前から悪魔の本が悪さをしていたっぽい描写もあるので、この辺は何とも言えません。

56. wisdom of history

ジャンル 作者
RPG 町野悠人
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.0相当 クリア

良かった点

  • 勉強にもなるRPGというコンセプトが良かったです
  • グラフィックの雰囲気が良いです

気になった点

  • いくつか嘘や謎解きの不具合らしきものが散見されます
    • それ以外にも不具合がいくつかあります
  • 中盤以降はNPCもいないダンジョンを淡々と進むだけになってしまいます

レビュー

ちょっと学べるRPG

wisdom of historyは、学習要素があるRPGです。

序盤の内は、RPGを遊びつつ、学びの要素がある選択肢のもと洞窟を抜けていくことになります。
ここの選択肢で正解するためには、道中の町で見かけた本の知識が重要となります。本には選択肢の答えとなる学習要素があるためです。主に暗記系統になりますが、覚えておきましょう。

中盤以降は、ダークファンタジーめいたRPGを遊んでいくことになります。
NPCになかなか遭遇できず、回復ができなくなり、割とシビアな戦いになるかもしれません。

ややお勉強をしつつRPGを遊んではみませんか。

感想

お勉強RPGというコンセプトは良くて、実際にそこそこ勉強ができます。性質上、計算よりは暗記偏重にはなりますが。
ただ、中盤くらいからはお勉強は鳴りをひそめて、シンプルなRPGが続きます。

勉強面で言うと、古文攻撃はあんまり意味をなしていなくて、殴って毒を与えるゲームになっています。
割と早いうちからボス以外からはダメージをもらわなくなるので、こちらとしては毒だけが怖くなります。ボスについては毒を通せば楽になります。
そもそも、魔法の消費MPが高いので、いかな弱点とはいってもあんまり打つものではなく、ボスに至っては弱点不明なので毒を通すのが丸くなります。
このコンセプトなら、パズルみたいにその攻撃しか通らない+消費MP無しみたいなバランスでもいいような気もします。ボス戦のギミックが難しそうですが。

また、謎解きは実質本を覚えておく暗記です。加えて、本には嘘が書かれています。
ここは学習ゲームとしては本当に致命的だと感じていて、他のどこでバグっても良いからここだけはちゃんとしていてほしかったです。間違った知識を与えてしまうことになるので。
とりあえず江戸幕府が開かれたのは1603年です。関ヶ原の三年後なので覚えやすいですね。
それ以外にも、謎解きパートでも日中戦争周りの引き算とか、日米修好通商条約まわりの計算とか、明らかに変なものもあります。100銭払っている理由、分からないからじゃなくて答えが正解と違うからなんですよね。

ストーリーについては、反抗期を急に迎えた娘みたいな印象です。いきなり姉を臆病者呼ばわりしだすとは思わなかった。
また、世界観の関係上、中盤以降人がいなくなるのは寂しく、ろくなNPCがいない無機質なダンジョンを抜けることになります。さらに終盤は宿屋が無いのでジリ貧の戦いにもなります。結構辛い。
また、途中の洞窟でのイベントのように、急に繋がりの良く分からないイベントが発生することもあります。最後もぽっと出のボスに蹂躙されるので、始終謎の物語が展開されていた印象です。ペプシマンかな。
軸となっている疑似的な姉妹の物語は良かったと感じている一方で、周辺要素が不明瞭すぎてぼやけているのが若干気になりました。

そもそもファンタジーっぽい世界観と古文というミスマッチ感が最後までぬぐえなかったところもあります。通貨単位が銭なのは地味に引っかかってしまいました。

その他、マップチップの上下関係が怪しかったり、左の家に入って右から出てきたり、城の二階から戻ると石の中にいる状態で詰んだりと、あんまりテストプレイしていなさそうな気配を感じています。

そういったゲーム性が詰め切れていなかったり、バグが取り切れていない所はありますが、グラフィックの雰囲気とかコンセプトは良かったと思います。

57. 突撃そのへんの遺跡

ジャンル 作者
戦闘 rute.
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.00 クリア

良かった点

  • 短くギミックバトルが遊べる作品でした
    • MPという概念が切り捨てられているおかげで、純粋に戦略性を楽しめます

気になった点

  • 特にありません

レビュー

お手軽ギミックバトル

突撃そのへんの遺跡は、サクッと遊べるギミックバトル中心のゲームです。
それぞれ特徴を持った中ボス4体、大ボス1体との戦闘が楽しめることでしょう。

各ボスが持っている特徴は独特で、強みでもあり弱点ともなり得ます。
攻略の際は、それぞれのギミック的な特徴を捉まえて、上手く対処していく必要があります。

一方で、このゲームにはレベルやMPといった概念はありません。そのため、各ボスを倒せるかどうかについては、純粋に戦略性が試されることになります。
相手のギミックを理解し、こちらのスキルを含めた手札を確認し、有効な戦略を練ってぶつけていきましょう。

敵をつぶさに観察し、ギミックを読み取り上手くさばいて勝利を目指してみませんか。

感想

お手軽にギミックバトルが楽しめる作品です。
今回のウディコン、ギミックバトルが多くて結構楽しかったですね。

ギミック自体は戦っていれば理解できる範囲なので、ちゃんと考えれば初見でも突破は可能です。ボスのHPも極端に高かったりはしないので、サクッと戦闘を楽しもうという程度で終わります。
かなり高度な戦略性とかスキルのシナジーとかはあんまりないので、本当に手軽に遊ぶ作品という印象でした。
敵のギミックを理解し、こちらの手立てで突き崩す、あるいは対処する手段を考えて、上手くはめられたら気持ちよく勝てるようになっています。

スキルにMP消費が無いのもかなり思い切った取捨選択だと思うんですが、それが良く働いていてシンプルに戦闘パズルを楽しめます。リソース管理をここに持ち込まないのが良い。
極論ずっとヒーリングしていても良いんですが、それだけでは上手く勝てないようにしっかりとバランスされています。

ラスボスだけはギミック以外でも普通に強くはありますが、それでも大ギミックをどうにかすると楽になるように設計されています。
そういう意味でも、徹頭徹尾考えて倒す作品です。RPGにおいての用意とか、そこに至るまでのリソース管理とか、その辺を引っこ抜いて、考えて倒すべき敵を抽出したみたいなゲーム。

よくあるJRPGだと、強敵が目の前にある場合、それを倒すためにはいくつかの手段がありえます。
レベルを上げて基礎力で倒す、仲間の入れ替えやスキルの習得で有効なものを覚えて倒す、など何らかの準備を行って手札を増やして挑むことが必要なパターンが間々あります。
このゲームは手札が固定化されているので、そういった時間のかかる行為が全く思考の埒外におかれて、純粋に今の戦闘についてのみ考えて戦えば良くなり、サクサクと楽しむことが可能でした。

物語もあってないような緩いものなので、本当に戦闘だけサクッと楽しむのに向いています。

58. Moonet

ジャンル 作者
RPG きもちへんな感じ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.03 クリア

良かった点

  • 世界観が良かったです
    • グラフィックも雰囲気にマッチしています
  • ねねねというキャラクターが良い立ち回りをしていました
  • 戦闘は良い具合に歯ごたえがあります

気になった点

  • たぬきから最高のアイテムを取得できるのかが気になっています

レビュー

不思議な世界の不思議なお話

Moonetは、不思議な世界観の中で紡がれるRPGです。

このゲームの魅力的な点は、可愛らしいグラフィックで彩られたふわふわした世界観になります。
そうした世界の中でRPGを遊びながら、個性豊かなキャラクターが織りなす物語を進めていくことになります。
一方で、進行するにつれて、それに留まらない魅力も感じることができるでしょう。

また、RPGとしても堅実な設計をしています。戦闘面ではそこそこ歯応えがある難易度となっており、ボス戦ともなれば苦戦するかもしれません。
レベルを上げて、アイテムを惜しまずに戦っていきましょう。

ストーリーを進めていき、この不思議な世界の秘密に迫っていきませんか。

感想

世界観のふわふわさに良い意味で似つかわしくない展開の連続で良かったです。
この世界観でやるから、こういうえぐさが際立つというところがあります。

グラフィックは可愛らしめで、キャラクターもそういう雰囲気ですし、中盤くらいまではそれっぽい展開に見えるんですが、中盤から終盤は怒涛の展開が待ち受けています。あるぱぅ、やってることが鬼畜の所業でしかない。
ロボ化の流れは単なるシリアスムードでお出しされるのとは、また違う嫌な感じがあります。一見ほのぼのした空気感の中で提出されるシリアスは、矛盾を脳が拒否するような、ある意味での嫌悪感を伴うような感覚を呼び起こします。良い嫌な感じですね。

ストーリー展開それ自体は結構特殊かつ飛び飛びの印象を受けるのでつかみにくくはあるんですが、芯は外していないのと、もともと不思議な世界観のおかげで受け入れながら進められます。
個人的には最後に集約する形式が好きなので、最後の方でああいった展開に持っていくのは良いですねという気持ちがあります。

また、戦闘もそこそこ歯応えがあって、特にボス戦が意外と難しいです。ちゃんとレベル上げをしていても、アイテムをケチると負けます。
ただ、後半くらいは基本的にイベント戦闘なのであんまり関係はありません。そういう意味では、たぬきからもらった化けの皮はそこまで使えなかった。
ラスボスもそこそこ強いんですが、マニュアリストでTP回復してアタックアップを積めるのが強くて、それで押し切ることができます。アタックアップは表記上2段しか積めないんですが、1段と2段が別異常扱いなので実質3段積めていそうです。

また、その戦闘前にある生きた化石の存在は結構便利です。ここからボスという標識でもあるし、推奨レベルを話すのでとりあえず話しかけておくと良いです。
ボスの前にちゃんとランドマークがあるというのは、一つの区切りを感じさせるという意味でも割と有用な手法なのかなと感じています。

なお、ニケかダヨ、リセットしてみた感じ、外れるかどうかが一意に決まってるのかなと感じました。
たぬきから巻き上げるために稼ごうかとも思いましたが、さすがに桁が違いすぎたのでやめています。あれを取得できた人はいるんだろうか。

細かいところで言うと、ちゃんとはしごを車いすで通れない表現をするなどの細かすぎるポイントが好きです。それはそうなんですが、ちゃんとマップで表現されているというのが良かった。

しかし、イッツアトゥルーワールドのネタ、ウディコンで二度も被るとは思いませんでしたね。

ちなみに、恐らく第11回の filled with love の作者さんであり、スターシステムが使われているので一部キャラに見覚えがあったりします。ねねね博士は前作でも好きなキャラであって、今作でも好きなキャラです。ああいうテンションが好きというきらいがあります。

59. エムロード

ジャンル 作者
RPG Chike Chicken
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 7/22 クリア

良かった点

  • まっとうにRPGとして完成されています
  • パズルをするような場所でエンカウントしませんでした

気になった点

  • ただ歩いて戻るような箇所があって辛めでした
  • 細かく気になるところがあります
    • ワールドマップの水辺があまり凝られていないなどの致命でないレベルです

レビュー

王道RPG

エムロードは、ウディタデフォルトの仕組みで作られた真っ当なRPGです。
王道展開の物語の中、RPGをストレートに遊ぶことができる作品となっています。

ゲーム性はシンプルで、ダンジョンを攻略して進めることで、物語もまた進んでいく形式です。
時にはパズルもこなして、時には雑魚との戦いの消耗を気にして、時には強力なボスに挑んで、オーソドックスで明快なRPGを進めていきましょう。

奇をてらったところのないRPGを遊んではみませんか。

感想

ウディタデフォルトシステムでちゃんと作られたRPGという感じです。
若干戦闘バランスに思うところはあれど、おおむね堅実に作られています。

戦闘面で気になったところと言えば主人公のデフォ速度がコウモリに負けていて、0ダメージなのに麻痺付きの攻撃をかましてきて遅延行動をするくらいです。
それ以外では特別大きな不満もなく、堅実な進行をしていきます。

個人的に良かったのはパズル部屋でエンカウントしない設計で、パズル中はパズルに集中させてくれます。パズルやっているのに戦闘すると何をやっているのか忘れてしまうので助かります。

また、細かい話になるんですが、ボタンのかけらが初見では小さすぎて見逃しかけたんですが、最初に遭遇した部屋が暗号部屋だったので何かあるはずだという気持ちで発見できました。
最初にそれが見つけられる部屋が暗号部屋でなければ、恐らく見逃していました。良い配置ですね。

あとは、何も理由が無いのに歩いて戻らせるな教の信者なので、そういう場面が散見されたのは若干辛めでした。あの剣についても、わざわざ取りに戻るには大分遠いなあという気持ちになっています。
もしかしたらほかに戻る方法があったのかもしれませんが。

ワールドマップの水辺があまり凝られていないとか、後半の重要アイテムをくれる人がなぜかカメレオンの格好をしているとか、城の壁が分かりにくい時があるとか、微妙に気になるところはありますが、どれも致命的というほどではないので最後まで遊べます。
この最後まで遊べるというのはかなり大事な部分だなあと感じています。最後まで遊んでちゃんとクリアできるRPGを完成させるのはかなり難しいことだと思っているので。

ちなみに筆者は名前入力があると必ず空白を入力する人なんですが、この作品ではそのまま空白になりました。特にコテハンを持たない身としてはデフォルト名があるタイプが好きなんですが、空白チェックだけのパターンもあったりします。この辺はゲームによりますね。

60. うさぎパンチ

ジャンル 作者
連打 ごーぐる@ウディタ部の先輩
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 1.0.0 全ボス撃破

良かった点

  • 全てがミニゲーム然としていて良かったです
    • UI一つとっても遊び心がありました
  • 隠し要素の隠し方の塩梅がちょうど良いです

気になった点

  • レベル制があまり必要に思えませんでした
    • ステージごとのレベルカーブを作るためだとは思います

レビュー

キーボードと指を犠牲にハイスコアを目指そう

うさぎパンチは、キーボードを連打していくミニゲームです。
主人公であるうさぎが、遭遇する様々な相手を殴って打ち倒すために、とにかく連打していくゲームとなっています。

相手の体力を削り切るには、とにかくキーを連打してパンチを打ち込んでいく必要があります。キーボードを壊す勢いで打ち込んでいきましょう。
ただし、連打するだけで勝利とはいきません。相手もまた攻撃をしてくるため、これにはきちんとガードで対処する必要があるからです。相手の攻撃にも十分注意して連打していくことが重要です。
さらに、この攻撃に対してカウンターを合わせるということも可能になっています。タイミングよくカウンターを合わせるとより効率よく戦えるため、積極的に狙っていきたいところです。

また、戦う前の連打イベントをこなしていくと、コインが集まっていきます。
こうして集めたコインを使えば、自身を強化したり、要素を解放したり、ガチャを回したりといったことができます。コインを適宜使って、より強くなってきましょう。

相手との戦いで得た経験、そしてコインを稼いで得た強化があれば、並みいる強敵も連打で倒していくことができます。
時には強敵を探し当てつつも、様々な相手に挑戦して、連打を極めてはみませんか。

感想

指がぶっ壊れそうなレベルで連打するゲームです。キーボードも危ないかもしれない。

個人的にはUIが好きで、ミニゲーム然としていながらも、ゲームゲームしている遊び心のあるUIという感じで良かったです。
パンチベースの選択肢だったり、データ壊すにもパンチが必要だったり、ステージ選択の隠し要素だったり、色々なところにゲーム的に仕込まれていて楽しいUIでした。
UIが楽しいと見目が楽しくなるし、インゲームから離れても世界観が崩れていかないので結構重要な要素に感じています。

隠し要素についても功績に明示されているので探そうと思えば探すことができて良い印象でした。なお、筆者が最後に見つけたのは練習場でした。練習いらないなと感じていたので。
それ以外の要素も色々試していれば見つけられる程度なので、自分で見つけたという達成感との良いバランスを作っていたように思います。

ゲーム性としては単純に連打が楽しめるので、連打ゲーとして良かったです。シャドーを手に入れてからの別次元の火力によるテコ入れもあって、ただの連打ながら最後まで遊べました。
カウンターが入っているのが秀逸で、連打だけではなくて適度に頭というか反射神経を使う必要があります。漫然と連打しているだけでは上手くいかないので、その辺のバランス感覚が上手いです。

全体的にサクッと遊べるミニゲーム枠として高い完成度だなあと感じました。
ミニゲームをちゃんと遊びやすく、楽しく、一プレイを短く作られています。

なお、レベルの概念があるので、最初にあんまり時間を極める必要はありません。
レベルを上げてからでないと最速は出せないですし、何ならシャドー無しでは最速は出ません。シャドーはともかく、レベル制はあんまり必要ない気もしています。終盤の敵のHPバーを長くしたい気持ちはありそう。
また、レベル制と並んであんまり必要に思えなかったのは最初の謎の連打フェーズですが、あれはウォーミングアップになるんでしょうか。

ストーリーについては、何も語らずに拳でひたすらぶっ飛ばしていくうさぎのキャラが良かったです。ゲーム性に対してぴったりのキャラでした。プレイヤーは殴るしかないので、そのやることとマッチした主人公です。
やはり暴力は全てを解決しますね。

61. アビスエクスプローラ

ジャンル 作者
ノンフィールドリソース管理RPG 鏡読み
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 1.01 クリア

良かった点

  • カジュアルにノンフィールドRPGを楽しめます
  • 難易度のバランスがちょうど良いです
  • パッシブスキルの変化で遊び味を変えて楽しめました

気になった点

  • アイテムを良く拾うので、取捨選択の判断をするイベントが多めに感じました
    • アイテム欄を埋めると発生しなくなるので、制御可能ではあります

レビュー

歩んで戦うノンフィールドRPG

アビスエクスプローラは、拾ったアイテムを活用するノンフィールドRPGです。

プレイヤーはノンフィールドのステージを一歩一歩進んでいき、いくつか進むごとに敵と遭遇して戦うことになります。会敵した相手を倒すためには、その道中で拾ったアイテムが重要となります。

進む過程の時々で拾うことになるアイテムは、攻撃手段、防御手段、回復手段と様々です。加えて、それぞれの性能差や特徴も様々となっています。
そういったアイテムの中からどれを残してどれを捨てるか、あるいは敵に対して強いアイテムを切るか、弱いアイテムで騙し騙し戦うか、といった取捨選択が迫られることになります。

接近される前に倒すためにリーチの長い武器を集める、接近されても継戦するために回復薬を集めた上で威力の高い近接武器を集める、敵を見て柔軟に対応を変えるためにバリエーションを確保する、など自分に合った戦い方を模索していきましょう。

また、敵を倒すことで得られる魂性を一定数集めることでレベルアップも可能です。敵を倒した後に、必要であれば忘れず行っておきましょう。
一方で、魂性を消費して大きく回復することも可能です。強力な回復手段に乏しいこのゲームにおいては、状況に応じて使い分けていくことも重要になってきます。

残すアイテムをどれにするか、敵に消費するアイテムはどうするか、被弾を受け入れてでも消費をケチるべきか、魂性を使ってでも回復するべきか、このゲームにおいては様々な局面で取捨選択の意思判断が求められます。
それぞれ適切な選択を行い、アイテムや魂性を上手く活用して、歩みを止めずに最後まで辿り着いていきましょう。

感想

物凄くシンプルにノンフィールドRPGが楽しめる作品です。
ウディコンのシンプルノンフィールドRPGだと、第6回のロードライト・フェイスとかも好きなんですが、それよりはリソース管理がゆるく、よりカジュアルに楽しめるタイプです。

消費性のアイテムを拾いつつ、それらを上手く活用して敵を打ち倒しつつ進むゲームです。
武器によるリーチ差などを考慮したアイテムの取捨選択や、そもそも回復アイテムと武器をどの程度の配分で持つかなど、緩いリソース管理が楽しめます。
割とアイテムは拾える印象があるので、あまり詰め過ぎなくても何とかなると感じています。

逆に、道中良くアイテムを拾うので、500歩目指す時はやや面倒になってきます。
一枠空けておくとアイテムの取得が可能なんですが、その自由を捨ててもアイテム欄を埋めて、必要なタイミングで必要なものを補充していくスタイルのほうが、最終的には楽な気がしています。
この割り切りをした2周目はプレイ時間が半分くらいになったので。ただ、パッシブが強かったきらいもありそう。

筆者のプレイ履歴としては、コロリーヌで負けて、転生して矢と脳筋を引いた結果、矢の高火力と脳筋の武器無しでごり押しました。天は筆者が脳筋ごり押しが好きだということを知っているらしい。
このプレイングは剣のリソース管理を緩くすら考える必要が無いので楽です。

その後、コロリーヌで再度プレイして、今度はちゃんとリソースを余らせてクリアさせました。
初回挑戦時は回復手段を忘れていて単純に押し負けたので、魂性をきっちり維持しておくことも重要です。闇雲にレベルアップしないということもまた大事でした。

全体的には、アイテムをそこそこ多めに拾えることもあって、バランス的には平易めでありつつ、道中のボスをどう処理するかの難易度が残っている良い塩梅だなあと感じました。ラスボスは抜けて火力と体力があるのも厳しくて良いです。

UIについて言及すると、たまに意図しないアイテムを捨てることもありましたが、おおよそ操作ミスに類する行為でした。ここでいちいち確認をはさむと面倒になること疑いないので、この設計が正しそうに思います。
枠自体はちゃんと出ているので、普段なら対処できるんですが、適当に下のアイテムを捨てながら進めていると起きやすい印象でした。

また、何度もプレイするとパッシブスキルも変化して、それによって遊び味が色々変わるんだろうなあとも思っています。実際、最初のプレイ時と脳筋時ではかなり異なったプレイングが楽しめました。

とにかくゲームとして、ふっとやれるちょうどいいサイズのゲームという感じがします。これを書いている間にも確認がてら一週クリアしました。
敗北したのでパッシブ変更でもう一周ね、と言われても、じゃあやりましょうとなるレベルなので、かなりふらっと遊びやすいゲームなんだと思います。

62. Reversible Island

ジャンル 作者
リバーシパズル semicolon
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.0.0 救助

良かった点

  • 良い雰囲気のグラフィックとBGMでした
    • 長時間考えながら落ち着いてプレイできるゲームです
  • リバーシを援用したパズルというアイデアが面白いです
    • ゲームルールもシンプルにまとまっています

気になった点

  • ギミックの広がりがあまり無いので、15ステージ目くらいから飽きやすく思います
    • 性質上、妨害されるほど択が絞られて作業的になってしまいました
  • 一手戻しが欲しかったです
    • ゲーム性上かなり難しいとは思っています

レビュー

リバーシ・パズル

Reversible Islandは、リバーシをモチーフとしたパズルゲームです。ただし、ややアクション的な要素も入っています。
端的にゲームシステムを説明すると、道を作ってプレイヤーキャラクターをゴールに導くことを目標とするゲームとなっています。

このゲームの道を作っていく仕組みはリバーシの上に成り立っています。
プレイヤーは陸地と浅瀬を海の上に交互に置くことができます。それぞれはリバーシのように、挟むことで互い違いのものへと変質していきます。
プレイヤーキャラクターは陸地の上しか歩けないため、うまくリバーシを続けて陸地をつなげて道を作っていくことが肝要です。

とはいえ、陸地だけを作っていれば安全ではありません。あくまでもリバーシであり、交互に打つ必要がある以上、浅瀬が無くなってしまうと詰みになってしまいます。
適宜浅瀬を残しつつも、陸地を上手くつなげていくために頭を悩ませることでしょう。

さらに、ステージが進むにつれて、その難易度はますます上がっていきます。
進行も配置もできない岩山の存在や、アクション的に回避する必要のある周回する鳥、最初に置かれた陸地と浅瀬の状態など、様々な面で考えさせる配置となっています。
地形やアイテムの位置を総合的に判断しつつ、リバーシを継続してプレイヤーの導線を作っていきましょう。

このように頭を使い、画面とにらめっこするゲームではありますが、プレイ中は淡いグラフィックと優しいBGMにより落ち着いた雰囲気が醸成されています。
パズルをするにはうってつけの雰囲気の中、よく考えてステージを攻略していき、進むにつれて複雑化していく地形を乗り越えてゴールを目指していきましょう。

感想

最初のタイトルというかゲームシーンからして雰囲気が良いので良いゲームです。最初の画面の印象値という意味では、今回のウディコンでも一番良いかもしれない。

パズルという性質上、画面をずっと見続けるし同じステージをかなり長い時間プレイすることになります。
その中で、このゲームの画面の色調の落ち着き方とか、ずっと聞いていられるBGMとか、そういうところが非常に心地よく感じます。Baba Is You が無限にやれるのと同じ理由です。
パズルゲームとして十分以上の落ち着いた雰囲気を醸成しています。

ゲーム性も面白くて、陸地をある程度作らないといけないし、地続きである必要がある、しかし浅瀬を減らしすぎるとオセロの都合上詰みが発生するという良い仕組みでした。
浅瀬というデメリットを拡張のためにある程度受け入れつつ、最終的な盤面を考えていくのは楽しいです。さすがに脳内では10手先くらいまで考えるのが関の山なので、形状によるパターンの構成とか、伏線というか置きとして残しておいた浅瀬と陸地の端のセットなんかに救われたりします。

一方で、オセロとしての盤面形成以外に大きなギミックがあんまりないので、5ステージから10ステージやる分には良いパズルなんですが、20ステージもやると大分食傷気味になってきます。
鳥はアクション性が付与されたのであってパズル性にはあんまり寄与していないのもあって、15ステージ目くらいから大分飽きがきはじめました。

地形の封鎖である程度パズル的な違いは出していて、16ステージの逆引きみたいな面白いパズルもあるんですが、妨害されればされるほど択が絞られる都合上、どうしても作業感が強くなってしまいます。
後半の折り返しパズルはその傾向がだいぶ強い印象でした。

ゲームルールがシンプルにまとまっているのはそれはそれで良いことだと思うので、このあたりは難しいところだと感じています。複雑な効果のあるマスを追加したら今度は分かりにくくなりそうなので。

なお、プレイ時間的には1時間で18ステージ、2時間で20ステージをクリアしているので、露骨に後半で時間を取られています。
とはいえ、何度も詰みに陥っては、その時に撮っていた動画を見返して検証していくのは、なんやかんや楽しかったです。動画を撮っておけば、あるタイミングまでの戻し作業がやりやすいのでお勧めです。

あとは、一手戻しがあれば助かった場面はあるので欲しい気持ちもあります。主にミスのリカバリーですが。
プレイヤーが動けてしまう以上、単純な一手戻しが設計できないので難しいとは思うんですが、回数制限付きならテクニックとして許容できる範囲に収まらないかなと感じています。

63. MoonCaliz -ムーンカリス-

ジャンル 作者
ADV/シューター 氷瀬るん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間+2時間 1.03 全END(Another以外)

良かった点

  • グラフィックが美しかったです
    • 加えて、美麗なグラフィックをいかんなく活用した演出でした
  • 感情の描写密度の濃い物語でした

気になった点

  • シューターパートで処理落ちが目立ちました
    • 特にトリガー時に顕著です

レビュー

美しき青の世界で

MoonCaliz -ムーンカリス-は、シューターが楽しめるアドベンチャーゲームです。
謎の世界に迷い込んだ二人の少年が、過去のトラウマを模したようなエリアを進んでいくことになります。

この世界はいくつかの扉で隔たれたエリアに分かれており、それぞれのエリアをクリアしていくことで次の扉に入ることができるようになっています。
扉の中に入り、主人公の記憶に紐づいた小景の中、何者かと戦っていきましょう。

戦闘においては、シューターアクションをこなすことになります。
ひらひら舞い落ちてくる花びらを、マウスの場合は照準を合わせてトリガーし、キーボードの場合はタイミングよくキーを入力することで撃っていきましょう。そうして何回か撃つと弾切れになるため、適宜Cキーでリロードする必要もあります。
キーボードのが簡単に思えますが、マウスの場合はリロードと意識を分離できるという利点もあります。使いやすい方で挑戦していきましょう。

そうした戦いを乗り越えた先で、この世界における二人の物語は結末を迎えることになります。
その結末がどう分岐するかは、道中の行動がカギとなっています。探索をしたり、積極的にパートナーとかかわっていくことが彼らの運命を左右することでしょう。

そして、この耽美な物語を彩るのは圧倒的に美麗できめ細やかなグラフィックです。物語の中で顔をもたげる危うさが、繊細さを感じられるイラストにより存分に表現されています。
全体としては青を基調とした世界の中で、様々な演出も含めた圧倒的な表現能力をもって物語が彩られていきます。

この世界に閉じ込められた二人の物語を読んでいきましょう。

感想

画力が高いのはもはや言うまでもないことなんですが、演出というか表現能力も高いです。
個人的には最初のOPは何よりも良いと感じているかもしれません。演出面でも画力の面でも突き抜けて良かったです。

物語の話をすると、まずはステージ構成の話になるんですが、ROOM4だけやたら強いというか難しいのは、精神世界的な強度というかトラウマとしての力を表しているんでしょうか。レベルカーブ的には厳しいんですが、表現としては良いように感じました。

また、前作に比べて登場人物が少なく、かつ両方とも喋るおかげで、感情がより直截的に描写されるようになったと感じています。有体に言えば大きい感情の描写密度が上がっていました。
ただし、BADだけだと、感情の重々しさとかベクトルへの理解が不十分なまま終わってしまいます。
そのため、Normal か True を見ないと色々と物語に対して正しくない理解をしそうなんですが、これを見るにはそこそこ厳しい条件を満たす必要があるので若干ハードです。

ちなみに、筆者はプレイ時間2時間でBAD回収をして、残り2時間でNormal系のENDを回収しました。
全部見た印象としては、Trueまで見ないとクリアっぽくない感覚を覚えるので、ちゃんと物語を見たい人はTrueまで見ましょう。Anotherはウディコン版ではロックされているらしいので見えないですが。

なお、内容は軽度というか中度くらいのボーイズラブ要素を含んでいるので、その辺は理解して臨んだ方が良いかもしれません。
筆者は特にどこも気になりませんでしたが、そもそも全年齢向けくらいの緩さなら何でも抵抗なく読めるので、あんまり参考になりません。

ゲーム性としては、シューターあるいはリズムゲームです。感覚的にはリズムゲームが近いんですが、音ハメしているわけではないので、説明するならシューターが適切そうです。
花弁というノーツがひらひら落ちてきて、そのためにタイミングを取るのが難しいという面白いゲーム性をしているんですが、成功演出のせいなのかちょくちょく処理が重めになります。
こうなると、長押し判定が怪しくなったり、そのほかの判定も不安定になったりするので、やや厳しくはなります。ただし、それを入れてもクリアしやすいレベルのバランスはしているので、何ともならないということはありません。

なお、キーボードとマウスどちらでもできるんですが、キーボードでやるとよりリズムゲームっぽさが増して、マウスでやるとシューターっぽさが増します。
感覚的には2周目でやったマウス操作のほうが楽だったような気がしますが、慣れていたせいもありそうです。ただ、リロードを完全に別の感覚に逃がせるという点では強みがあると思っています。

グラフィックについてはどこを切り取っても美しくなっています。
特に基本は青く統一されたデザインだからこそ、途中のステージの異質な色合いが強く印象に残るようになっています。
また、ゲームパート中の背景ですら結構凝っています。惜しむらくは、ゲームパートは忙しくて満足に背景を見ている暇はないということです。何となくの印象しかありません。

また、主人公たちのグラフィックも綺麗に描かれていて、特に一枚絵はかなり綺麗です。
線が細いというか、微に入り細を穿ったというか、とにかくきめ細やかな印象を受けます。ホロロンの精緻さとはまた違う精緻さがあって、こちらはこちらで美しいものです。
会話中の口パクアニメーションのコマ割りが2つじゃないおかげで、ちゃんと喋っているように見えるみたいな細かさもあります。

そして演出的なイベントにおける画の表現能力はさらに突き放された感覚を覚えます。その情景や持つ意味が美しいと呼べるかはさておいても、印象としては綺麗を振り切れて美しいとすら感じた作品でした。