0%

48. 屍の仔と死返しの竜

ジャンル 作者
探索ADV ろぜちは080
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 0-07 全END

良かった点

  • 要所のグラフィックが素晴らしいです

気になった点

  • ブービートラップが殊に序盤において過積載に感じました
  • 無味乾燥な廊下が長く感じました

レビュー

暗い世界を彷徨い歩く

屍の仔と死返しの竜は、ホラー要素のある探索アドベンチャーです。
分岐ありのおおむね一本道のマップを進んでいき、シナリオを進行していくことになります。

ゲーム中にはいくつかの即死トラップを始めとした、様々な仕掛けが潜んでいることもあります。それらを上手くかわし、解決して、少しずつ先へと進んでいきましょう。
また、進行に必要なアイテムをきちんと集めていくには、周囲を注意深く見渡しておくことも肝要となります。詰まった時は、目を凝らして周りを見てみましょう。

そうして注意深くプレイして先に進んでいく中で、主人公たちにまつわるシナリオが進行していきます。
特徴的な筆致で描かれるスチルが印象的なその物語は、プレイヤーの行動次第で二つの終わりへと分岐します。きちんと探索を進め、より良い結末を目指していきましょう。

感想

ジャンプスケアと初見殺しの詰め合わせパックみたいなゲームでした。少なくとも分岐路前にセーブを取ることは推奨です。
そこそこ脈絡なくジャンプスケアが飛んでくるので、ある程度驚きを流せるタイプでないと心臓に悪いかもしれません。

ゲーム性はおおむね探索アドベンチャーのそれを踏襲していて、一部を除くとおおよそ分岐ありの一本道の構成です。分岐ルートのどっちに行けるかはシナリオ進行次第になっていて、直感に任せてどっちかに行けば大体シナリオが進行します。
分岐開放と扉の因果関係はそれほどないので、どちらが正解かは大体ギャンブルになってきます。なんとなくこっちに誘導されてそうだなという方に行きましょう。

マップとしては、ずっと似たような景色が続くのが若干辛く、割と迷路っぽいのもあって頻繁に迷います。マップ構成それ自体はかなり一本道然としているので迷いにくい面もあって、そこと相殺されていなければ永遠に迷い続けていたかもしれません。
その分、力の入ったマップは良くデザインされているので、正直合間合間にあるそこそこ長く何もない永遠の廊下は無くても良いように思えてきます。澱んだ空気の表現として存在しているような気はしますが。

特に序盤に顕著ですが、ブービートラップがあるのも辛いところで、そのリトライ性の悪さも含めてモチベーションを明確に削いできます。
序盤は特にまだシナリオで惹起される面が乏しく、進行するための燃料が少ないところもあるので、そこを的確に削がれるとかなり辛いです。合流以降や別離以降のブービーは慣れたのもあり、かつシナリオ面でも先に進むモチベーションがあるのでなんとかなります。本当に序盤がしんどい。
また、このブービーはほとんど影みたいな見た目をしています。そのため、そもそも視認性が悪く、何が起因か分かりにくいという納得感の無さも着実にダメージを与えてくる印象でした。

探索アドベンチャーとして以外だと、最後に戦闘があるんですが、このグラフィックは凄いの一言に尽きます。イベントスチルも当然綺麗なんですが、一枚絵としての迫力はこちらの方が個人的には好きです。神々しさがあります。

それにしても、シナリオは過去の話だったんですね。それなら確かに、アレは別END扱いになるのも頷けます。正史じゃないので。子々孫々が丸ごと消し飛んだ世界線の話になってしまいます。
もはや余談になりますが、ここが語られるエンディングの文字はかなり高速で消えます。これまでのゲームテンポに慣れていたからなのか分かりませんが、読めるかどうかギリギリのラインになっている気がしました。危なく読解できずに終わるところだった。

49. 暴れんぼアリスちゃん

ジャンル 作者
プラットフォーマー 創造神司&モンブラン
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.0 クリア

良かった点

  • ちょうど良い塩梅でギミックにバリエーションがありました
  • ポップともダークともつかない良い世界観でした

気になった点

  • ジャンプと文字送りボタンが同じなので、直前にジャンプ連打していると誤操作する可能性があります

レビュー

オーソドックスなプラットフォーマー

暴れんぼアリスちゃんは、ジャンプと攻撃を駆使してステージを攻略するオーソドックスなアクションゲームです。
敵を動物に変える攻撃を駆使して、障害を排除しながら各ステージを攻略していくことになります。

それぞれ異なるギミックが待ち構えるステージを安全に攻略していくためには、不意の被弾に耐えるための体力を増やしておくのが重要です。
枯れ木に触れて緑を蘇らせたり、敵を動物に変えたり、スコアアイテムを取得したりしてコツコツと得点を稼ぐと体力を増やすことができるため、上手く活用して進めていきましょう。

立ちはだかる障害を動物に変え、ジャンプで足場を乗り継いでいき、プラットフォーマーを攻略してみませんか。

感想

アーケードみのあるオーソドックスなアクションでした。リトライあるけど。ただ、リトライすると挑戦時より実質の体力が減るので、リトライがあるからと言って簡単になっているわけでないあたりが良い調整です。

枯れ木に花を咲かせ、敵を動物化して得点を稼ぎつつ進んでいく見た目も良くて、ポップかつ見目にも良いのでつい枯れているポイントへ行きたくなります。その上で、そういう不思議な世界観なのかと思っていたら、2話目あたりでまあまあ怖い能力であることが分かるのも良いです。中盤以降は普通に家のものを壊すこともあるので、だいぶ破壊的なイメージに遷移しました。まあ暴れんぼですしね。

アクションステージとしてのギミックも過不足なく揃っており、水中ステージや登りくるマグマステージなど、バリエーションもきちんと整備されています。この規模のアクションゲームとして、最後まで楽しめるようにギミックが配されている印象でした。
ただ、移動床に関してはちょうど良く乗ると引っかかる不具合があり、そのまま落ちもしないせいで火山面で被弾を招き、ギリギリノーコンできなかったのは悔やまれます。あとちょっと早く乗れば多分行けた。

個人的に気になっているのはジャンプと文字送りが同じボタンに割り当てられていたことで、これのせいで魔王戦前のイベントを完全に見逃しました。直前のステージでジャンプ連打していたので。

なお、ボスは割と強いんですが、体力さえあれば結構ごり押しが通じます。むしろ、体力があるなら下手に避けるよりごり押しの方が楽な気もしています。そういう意味でも、道中で出来る限り被弾せずに体力を増やすのはかなり重要で、ここができるとだいぶ楽になります。どんどん寄り道すると楽になるのはありがたい。
ちなみに、リザルトは以下です。それにしてもごり押しに頼り過ぎなんじゃなかろうか。

リザルト

50. POV

ジャンル 作者
RPG Tomgames
プレイ時間 プレイVer クリア状況
8時間30分 1.3 クリア

良かった点

  • 世界観とシナリオが良かったです
    • 各イベントにより先が気になる展開になっています
  • 世界観に合ったグラフィックにより各シーンが印象に残るものとなっていました

気になった点

  • 進行不能が散在し、軽微なバグも数多く存在します
    • メインルート以外に寄り道することがかなり危険な設計となっていました

レビュー

奇跡の視座

POVは、少年少女の冒険譚を綴るRPGです。
システムそのものはオーソドックスなRPGの形式を取っており、雑魚やボスとの戦闘を乗り越えつつ世界を巡り、シナリオを進めていくことになります。

特徴的なのはその世界観とシナリオであり、様々なイベントの連なりで構成されていく物語の中で、それぞれのキャラクターの懸命な生が描かれていくことになります。物語の中で描かれる様々なシーンは印象的なグラフィックとともに心に残るものとなっており、そこから惹起する感情がゲームを前進させる強いモチベーションとなることは疑いありません。
各々のキャラクターがどういった運命を辿るのかを、その目で見届けていきましょう。

ただし、公平のために記しておくと、このゲームには多くのAバグが存在しています。ゲームを進める上では、こまめにスロットを分けてセーブすることを強く推奨します。
プレイヤーは、そういった進行不能さえも障害の一つとしてやる気の薪にくべて、物語のその先へと足を進めていくことになります。メインルートそれ自体にAバグは無いので、エンディングに至る道筋は開かれています。クリアを目指して、数多の障害を乗り越えていきましょう。

不具合ですらそのゲーム体験に組み込まれたような、特殊なプレイフィールを得ることのできる作品となっています。
刺さる人にはめった刺しになる作品とも言えるので、気になった方は是非プレイしてみてください。

感想

このゲームの感想を書くのはまあまあ難しく、言葉の過不足で誤解を与えることが予想されるので、予めこの感想を書いている筆者のスタンスを明示しておこうと思います。
POVというゲーム自体は間違いなく個人的には好きなゲームであり、世界観やシナリオ、グラフィックによる表現が好きな作品でした。一方で、数多の不具合、戦闘バランスのピーキーさ、テキストの不足感といった点は間違いなく存在し、ゲーム体験そのものは決して良いものとは言えません。
筆者はそれらのデメリットを背負ってなお最後までやる価値のあるゲームであったと感じていますが、万人がそう感じるゲームではないだろうとも思っています。そのぐらいのスタンスです。

まず、色々な意味で避けては通れない不具合の話をします。
進行不能にどこで遭遇するか分からず、軽微なバグは後半には気にならなくなるというレベルで散在しています。特にかなりの数存在する進行不能は遭遇するな、というのが不可能なレベルです。
例えば、最初のマップで落ちている棒っ切れを拾うと進行不能になります。この時、武器屋前のおばあさんが消えたり、本来存在しないはずのその先のイベントの一部が動いたところから推察するに、恐らくイベントフラグが書き換わっているのでしょう。状況からの推測ですが、恐らく閉じ込められるイベントの時に拾った木をマップ上にコピペで置いたんじゃないかと思います。

そして、このレベルの進行不能は枚挙に暇がありません。回想で行くべき場所を通り過ぎて孤児院に行けば戻れなくなり、もう一度同じダンジョンに入ると戻れずにシナリオ上は先に位置するマップに入れるようになります。
探索しているだけで意図せず不具合を踏むので、いわんや作中のワープ機能は怖くて使えません。戻る必要があるケースが少ないので、実際料理屋に行くつもりが無いなら不要ではあります。
この進行不能を回避する術は、とにかくセーブを分けるしかありませんでした。プレイ時間5時間30分に対し、セーブは160に及びました。ほとんど2分に1回はセーブしているペースです。

また、進行不能にはならないけど致命的なバグというのもあり、一番厳しいのは料理屋で注文を途中キャンセルすると、以降無限に人数を聞かれるようになるものです。実質的に料理屋が封じられるので、場合によっては進行不能になるよりも辛いです。筆者がこれに遭遇した時は、迷いなくその手前のセーブデータに戻しました。やはりセーブデータをたくさん残すのは大事。
軽微な範囲ではマップチップの通行判定だとか、メダルゲームが遊べないとか、エルの髪が急に長くなるとか、隊列にエルが二人現れるとか、アイがHP0で出てきて倒されるとか、枚挙に暇がありません。終盤は進行不能以外は凪の気持ちで受け入れていました。

ただし、ここまで不具合が山積されていてなお、止めるという選択肢が微塵も脳裏を過らなかったのもまた事実となります。この飽くなきモチベーションを支えていたのは、まずもって世界観の良さであり、シナリオというかその雰囲気あるいは空気感ないしは関係性のセンスとも言うべき物語性によるものでした。これが強い誘引性を持っていたがために、1日がかりで夜更かししてまでクリアしています。
加えて、その強い世界観による牽引力もさることながら、進行不能を含めたバグの解決それ自体が一種のゲーム性まで孕んでしまっていたという点もまた、振り返ってみれば隠れたモチベーションになっていた気もします。

過去のウディコンに「鶏は音を置き去りにした」という作品があったんですが、これは恐らく不具合によってプレイヤーが透明化していて、その状態でイライラ棒をするという妙な斬新さが創出された作品となっていました。
POVもこれに近いところがあり、余りにも存在する進行不能と軽微なバグによって、それに遭遇したら原因を取り除いて解決させる別種の遊びが含有されるようなゲーム性へと変異しているところがあります。いつどこでAバグに遭遇するか分からない緊張感や、どこまでを軽微なバグとして処理するかの判断、そして何より不具合に遭遇した時に想定ルートを逆算していく行為など、もはや不具合無しでは語れないレベルでゲーム体験が構成されています。

ゲームというのは一般に障害を乗り越える構成になっていることが多く、アクションゲームなら難度の高いステージ構成やユニークなボス、RPGなら複雑なダンジョンや強敵との戦闘、パズルゲームなら頭を悩ませるパズルなど、ゲーム性に応じたその障害をプレイヤーの創意工夫で乗り切り、カタルシスを得るようなものとなっています。
翻ってPOVという作品においては、乗り越えるべき障害の一つとして間違いなく進行不能を含むAバグが存在し、それらを乗り切っていかにメインルートに戻していくかという体験が得られます。すなわち、バグを乗り越えるというややメタな障害まで体験に組み込まれた形となっており、それにカタルシスを得られるプレイヤーであればあるほど、のめり込みやすいゲームへと変異しているというものになっています。

ここで強調しておきたいのは、とはいえそれは障害を増やしているに過ぎないということです。障害だけを増やしても、本来はゲーム的に面倒になるだけです。この作品において障害が増えてもなお先に進ませる力として働いていたのは、やはり先の展開を見たくなる世界観の良さ、キャラクターの良さであり、その力なくしては変異したそのゲーム性自体が破綻していたに違いありません。
世界の強度が充分にあったがゆえに、そこに何が乗せられても耐えていた節があります。凄い絶妙なバランスで完成されたゲームと言えます。

ちなみに、この不具合で構成されたようなゲーム性については、意図的にやっているのかという疑いも若干抱いてはいたんですが、クリアした現在は多分そうではないんだろうなと結論付けています。
根拠の一つとしては、前述した棒っ切れの不具合のように、ミスのやり方がある程度は想像のつくものが多いところです。どういう設計でそうなったのかがなんとなく理解できます。
もう一つは、これは邪推になるので話半分にはなりますが、絵のタッチからなんとなくwisdom of historyの方じゃないかと思っているためです。 ゲームに存在している進行不能の性質も近いところがあります。ちょっと寄り道すると進行不能があるものの、ちゃんとメインルートをまっすぐ進む分にはAバグには遭遇しない感じがまさにそんな印象です。そうだとすると、この作品の不具合の性質もまたなんとなくそういうものなんだなと思うことができます。

閑話休題。続いては、その世界についての話、あるいはシナリオについての話もしておきます。
大前提として、不具合調査中に得られた情報から推察するに、恐らくマルチエンドっぽいし、いくつか分岐がありそうな気配は感じており、その中で筆者が選んだ選択はいくつかあるであろうエンディングの一つに過ぎないということは付記しておきます。

このゲームにおける世界の良さは、世界観そのものというよりも、局所的なイベントのセンスの良さに集約されるものであると個人的には思っています。
それはボスとして選ぶ対象の良さであったり、対立する対象の描き方の対比の上手さであったり、開示する情報から生まれる余白であったり、様々なところに現れています。余白が余りに広大なので、そこそこ多くのシーンでテキストの不足として表出してしまうことはありますが、それを補って余りあるほどに各キャラクターの心情への解釈の幅として機能していました。
大筋として読んだ時のシナリオの良さはあるとは思いますが、それ以上に部分部分におけるやりたいことの詰め込み方と、そこで惹起される感情の高まりに重きが置かれているような印象であり、それ故に常に先が気になる展開を作り上げられています。これが先述したゲーム性との相性が良いという点もまた面白いところです。

その分、特に学校編に顕著なんですが、唐突にメインシナリオからだいぶ外れたところに物語が動くことも多々あります。しかも結構尺を取る。リアル魔王復活物語をやることになるとは思いませんでした。
シナリオの都合以上に、そこでやりたいことを表現し、そこでやりたいことを全力でやるスタイルではあるので、整合性を何よりも重視するタイプのプレイヤーは恐らく相性は悪いと思います。ただ、整合性以上に場面のパワーを重視するタイプだと相性は良いと思います。筆者は前者と後者のハイブリッドなので、微妙な面持ちのまま、とはいえ面白いから結論としてはアリだなあと思いながらプレイしていました。

なお、シナリオ面で明確に厳しいところを上げると、前述した不具合の多さがゆえに、特殊な演出と不具合の区別がつきにくいところがあります。
例えば、筆者の好きな演出の一つとして、勇者と戦っていると途中でお面小僧に切り替わる演出があるんですが、これは最初不具合なんじゃないかと疑っていました。現在は、色々解釈した上で、意図的な演出だろうと結論付けています。
ほかにも、唐突にアイが合流したかと思ったら変装だった、あたりも顔グラフィックの不具合を見慣れていたせいでスルーしかけました。この辺は、シナリオを楽しむ上で明確にノイズになっていて、惜しいところではあります。

とはいえ、その辺の様々な点を差し引いてなお、要所における演出の良さ、内容の良さ、キャラクターの良さは間違いなく良いものであり、トータルではとても美しいものとなっているように感じています。
前述の通り解釈の幅はとても広いので、それぞれに込められた意味だとか、それぞれのキャラクターが持っていた感情や思考はある程度状況を咀嚼して自分なりに解釈を進めていかないといけない部分はありますが、それをやればちゃんと味が出るような設計になっています。

また、そのシナリオをより美しく際立たせているのは、要所における絵本のような優しさと温かみのあるグラフィックにあります。
先述した通り、イベントの構成や登場人物、その時の状況や心情が極めて優れている中、それをより高みへと彩る一枚絵の力によってさらに良いものへと昇華させていました。場面によっては宗教画みたいな美しさがあります。
表現が難しいので陳腐な表現を用いると、とにかくエモいです。何故そうなったのか、それがどういう意味を持つか、ということをいったん思考の蚊帳の外に置かせしめ、ただ感情によってその場面の良さを理解させる力に溢れています。そこら辺の考察は、そのイベントを終えた後にゆっくりやれば良いですからね。

グラフィックについては合成や料理についても雰囲気が出ていて良く、後者は今ウディコンの飯テロ作品の一つとなっている部分ではあるんですが、どちらも人によってはシステム面では余り使わないかもしれないのは勿体ないところです。
前者は仕様の不透明さとレシピなどのシステムの分かりにくさ、後者は前述した不具合もあるためです。後者に関しては、不具合にさえ遭遇しなければ貴重な回復手段なので、人によっては多用することになると思います。

続いて、RPGとして戦闘面にも触れておきます。
まずは前述した通り、ボスとして選択する対象のチョイスが凄く良いため、各節目での戦いは極めて良いコンディションで挑むことができます。RPGにおけるボス戦が総合芸術として要の存在だとするならば、POVにおけるボス戦はその中でも高い位置エネルギーを持った存在として機能していると言えます。
一方で、戦闘バランスそれ自体はかなりピーキーなものとなっており、戦闘を楽しむものと考えるとやや難しいところはあります。

基本的にはやけどにして防御と回復に専念するゲームだと気付くと、やや攻略しやすくなります。その一方で、相手の行動如何や状態異常によっては壊滅的被害を被ることになるパターンも数多くあるため、ある程度までは運ゲーの様相もあります。
雑魚との戦いについてもそういった面は否めず、一部の雑魚に至ってはめちゃくちゃ強力な全体攻撃を連発してくるタイプすらいます。バランスはだいぶ尖っていると言って良いでしょう。

ただし、だからと言って運に全てを任せるかというとそうでもなく、ある程度は頑張った上で天命に任せるような戦闘スタイルが要求されていて、麻雀とかポーカーをやっているプレイ感に近いものがありました。人事尽くしたら天命を待つのみです。
ラスボスについても例外ではなく、雷撃が連続で飛んできた時はどうしようもありません。そうなる前に可能なことを全てやっておいて、決着を早期に付けるしかありませんでした。

最後に、細かいところを拾って感想を終わろうと思います。
文章に組み込むのも難しいものを集めてしまおうとしているので、文脈はありませんがご容赦ください。

まず、移動可能範囲について。
移動可能な範囲がそれほど区切られていないというのが、このゲームにおける進行不能を生み出している要因の一つであることはほぼ間違いありません。その時点で本来行けない場所に対して特にブロックがされていないので、入ってしまうと進行不能、というパターンが非常に多いです。たまにブロックされている場合もありますが、多くの場合は素通り可能なので、メインルートを察する力が求められてしまいます。
ただ、これのおかげで、自分の部屋に帰って寝ようかなとしている時に、姉の部屋に入って物色する主人公だとか、窓から脱出したイベントの後に正面玄関から再入城する主人公だとか、妙な行動が取れる面白みも同時にあります。
中盤以降はこういう遊び方をしていると危険なことが分かっていたのでたまにしかやりませんでしたが、色々できることそれ自体は面白いので難しいところだなと思っていました。

調合について。
色々と拾ったものを有効活用できるシステム自体は面白く、戦闘においてもそこそこ使えるものを量産できました。一方で、レシピを使うと何をどれくらい消費したのかがブラックボックスになって分からないこと、中盤以降くらいでないとアイテムそのものの優位性も余りないこと、拾うために彷徨っている間に進行不能を引く恐怖と戦わないといけないこと、あたりの理由で、十全には活用できませんでした。
寄り道に対してメリットを与えるものとしては結構面白い仕組みで、実際に序盤はやたら拾いまくっていたので、ひしの実は700個以上抱えていました。せめてレシピがもう少し透明に使えたら、積極的に使えていたかもしれません。

学校パートについて。
前段でも若干触れているんですが、かなり異質なパートです。そして、このゲームで恐らく一番メインルートを探るのが難しいパートでもあります。
目標が特別どこにも記録されず、しばらく彷徨っていると何をするべきだったかを忘れがちなので、とりあえず目標っぽいものが示されたらメモっておくのが重要なパートでもありました。
ここをスムーズに突破できないとモチベーションが下がるのは良く分かるので、ある意味このゲームでの一番の関門でもあります。ここだけは攻略チャートをネタバレしてあげた方が親切かもしれません。

カルネーについて。
提示された情報のどこまでを信じ、どこまでを疑うかによって立ち位置の変わるキャラクターです。POVの解釈の話をする場合に、最も濃い味がする部分だと個人的には思っています。
アイの記憶のトラウマを巡るあたりまで信じるとかなり意味が変わってくる一方で、ほぼ全ての前提を疑うこともできるので、個々人によってパーソナリティからその存在まで多様に揺れ動きうる存在でした。
個人的にはエンディングの行く末も考慮した上で、おおむね中間択くらいの解釈にとどめています。ただ、エンディングがマルチっぽいところも加味すると、もしかしたらそこの印象でも変わりうるのかもしれません。キャラクターとして登場するシーンは数えるほどしかない割に、解釈の上では結構重要な立ち位置にいて面白いです。

終盤におけるエルの選択肢について。
同コンテスト中のInfisに近いですが、より悪質な選択肢の表示方法をしてきます。そして、それを惹起するようなシーンすらあります。
個人的に一番良い意味で性格が悪いなと思ったのは後を追わせる選択肢であり、エルというキャラクター性も同時に見せている良い設計だなと感じていました。筆者はノータイムでこの選択肢が出たおかげで、間違えて押してしまってリセットしています。そんなつもりじゃなかった。
感覚的には夜廻の最初のチュートリアルの指示に従った結果に近いものがあって、プレイヤーの意思のように見せかけたゲーム上の悪意という感じがして良いです。

ボスという存在について。
このゲームでは、ほとんどあらゆる味方がある場面においては敵としてボスの位置に収まっています。終盤にプレイアブルが交代する面も含め、これは意図的なものなんだろうなと考えていました。
この設計は全体的な関係性を複雑にし、ともすれば物語の解釈というかキャラクターの状況を分かりにくくする要因にさえ繋がっているところはありますが、それを差し引いても物語全体に深みをもたらしています。
敵対するということをもってそれぞれのキャラクターの関係性を整理し、それぞれの目的や決意を暗示させ、解釈の余白を広げていくことに成功しているように感じていました。
後は、単に作者さんの癖なのかもしれません。筆者としても、やっぱりかつての味方が何らかの理由により敵対して立ち向かわねばならない状況というのは好きなので、それでも充分に首肯できます。

まとめのような、総合的な話もしておきます。
前述した通り、この作品は全体を通して良いゲームだと感じており、あらゆる障害をクリアしてでも完遂まで進めさせる力のあるゲームであると思っています。その上で、それを万人がモチベーションを持って取り組めるかと言えば、これは難しいところであろうとも感じる作品です。
すなわち、シナリオや世界観が美しく、グラフィックも素晴らしい中で、システム全てが圧倒的なまでのピーキーさをもって構成された作品です。ここまでアンバランスな作品は初めてプレイしたかもしれません。
シナリオについても、余白を埋めよう、解釈しようというモチベーションがない限りは十全に楽しめるかは微妙なラインであり、何らかの要因でこのゲームを先行的に好きになっていない限りはそう感じるのも難しいかもしれません。
そういう意味でも、ウディコンという場でもなければ出会うことも遊ぶこともなかったであろう作品であることは疑いないので、この場で遊べて良かったなと感じています。果たして、ほかの場で出会って手に取って遊び切れたかというとはなはだ疑わしくはあります。

そして、プレイ時間について。
3時間で最速エンドに行けるかも結構怪しいとは思っています。筆者のプレイ時間的には、最初のエンディングまでにプレイ時間換算で4時間30分かかっています。
そして、実時間では6時間30分かかっていました。2時間はほぼデバッグしていました。寄り道無しでメインルートを突っ切ればギリギリ行けそうな気もしますが、ほぼ最速タイムなんじゃないでしょうか。特に学校パートが鬼門になると思います。
最終的には、実時間8時間30分、プレイ時間5時間30分で、全体の1/3近くは進行不能の回避やデバッグに費やしています。3時間から4時間で終わると思っていたら長引いてしまったので、だいぶ夜更かししました。お気を付けください。

余談としてレビューについても雑に記します。序論をいくつか書いて没にしたので、上記のレビューは素直なものになっています。せっかく書いたので、没にした文章をここに供養しておこうと思います。
偶然は遭遇もしくは邂逅であろうというのは九鬼の言であり、企図しないものの交わりの中にある虚ろな存在をこそ偶然と呼び得るのかもしれません。そうであるならば、POVが持つ様々な要素の交叉はその交わりをもって確かに強い意味と意志を生み出しており、そこから創出される偶然性を伴った体験は得難いものであると言えるでしょう。
ここに在る良さというものは、作品そのものが持つ良さの交叉によって発生したある種の偶然性の中で存在しているものでもあって、それは虚ろなものだから目的化して得られるようなものでない、あたりを言いたいんですが、何を言いたいのか良く分からなくなったので没になりました。言語化は難しい。

最後に繰り返す形になりますが、この感想はだいぶ書くのが難しいなと思いつつ、なんとか言語化したものになります。筆者自身、このゲームをどう批評して良いか分からないところがあるので、まとまりのない文章になってしまっていることは否めません。
ですが、POVという作品を遊ぶことでしか得られない栄養素は確かにあり、POVという世界からしか得られない旨味は間違いなく存在しているということ、この点だけは確証をもって断言できます。
つまり、トータルすればこのゲームを遊べて非常に良かったなという感想に落ち着くという点はご理解いただければと思います。ウディコンという場と出展頂いた作者さんに感謝。

51. 迷宮郷まよろば

ジャンル 作者
探索 そぞろ豆腐
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.0.2 100%/100%

良かった点

  • 素晴らしい世界を尋常でない表現力と演出力で彩っていました
    • 細部に至るまでの演出や設計が世界の輪郭を確かなものにしています
  • モチーフのバリエーションが豊かで、常に新鮮味があります
  • 素晴らしいグラフィックもさることながら、シチュエーションごとのサウンドもまた秀逸です

気になった点

  • アクションパートがやや処理落ちのような印象を受けます
    • そういった演出かもしれません

レビュー

見えるようにする芸術

探索における分岐した道に対するリワードの設定は、ゲームデザインにおける関心事の一つです。多くのケースでは、そこに宝箱のような分かりやすいメリットを配するか、エンカウントのようなリスクを付けることでバランスが取られています。
しかし、探索それ自体を主眼とするゲームにおいては例外もあり得ます。探索して得られたその景色、あるいはその体験そのものが価値を提供し得るのであれば、そこに何も配置せずとも意味が創出されるでしょう。
迷宮郷まよろば は、その圧倒的な表現力と演出力によって、あらゆる探索に価値を生み出し、遍く場所を巡る楽しさを作り出している作品と言えます。

この作品の基本的なゲームシステムは探索に強く依拠しており、世界各地を巡りつつ、おたからを拾い集めてゴールに辿り着くことができればクリアとなるものです。
おたからは各地に散在しているため、色々な場所を巡り、マップを探索していくことになるでしょう。その過程でちょっとした謎解きやアクション、あるいはギミックを使うこともあります。しかし、このゲームにおいてのそれらは様々な体験を演出せしめるフレーバーとしての性質が色濃く出ています。

何故ならば、このゲームの真髄は探索であり、それを強く誘引せしめる世界観の表現と演出であるからです。
その圧倒的な表現力により、プレイヤーはめくるめく世界を自由に回りつつ、おたからを探すために様々な場所を訪れてはその趣を楽しむことができるようになっています。時には、物質的には何も得ることのないエリアさえありますが、精神的な充足性によって充分に代替されています。
心の赴くままに色々な場所を巡り、まよろばの旅を楽しみましょう。

一度世界を旅して回ったとしても、全てを知り尽くせるわけではありません。
ちょっとした隠し要素があったり、細かい演出が隠れていたりします。世界を自由に彷徨い歩き、その表現に浴してはみませんか。

感想

表現力と演出力が突出して高いので、仮にただそれだけであったとしても遊ばせる力のある作品でした。もちろん、それだけではないので、より遊ばせるような作品でもあります。
ここまでの表現性能があれば、MandagonやEL NE RUEのような、ただ歩くだけのゲームに落とし込んでも充分に過ぎるレベルではあるんですが、ここに色んな体験も配してあるのが個人的には好きです。

最初に見た印象としては、ドット絵に圧倒的な情熱が傾けられたタイプのEastwardやらOwlboy系の作品かと思っていました。実際、一部マップにおけるドット絵の表現力は飛び抜けて高く、ただそれだけで体験になるレベルまで磨き込まれています。
しかし、実態はそれに限ったものではないというのも面白いポイントです。影の印影まで変わるような、印象の変化が各世界において発生していきます。あえてファンタジーな世界観ゆえに緩くまとめられた世界、ドット絵という方向ではなく美しく描かれた世界、赤いライティングを始めとした表現で彩る世界、多種多様な表現であらゆる方向から攻めてきます。引き出しが多い。

個人的に好きなポイントを話すとキリがないので詳しくは後述しますが、とりあえず海中パートのアクションが抜群に水中っぽさが出るのは良いポイントです。ちょくちょくおなかがすくマップもあります。なんで絵が上手い人は飯テロしてくるんだ。
アクションパートもそういった印象を変える一助を担っていて、ワープを活用すればあんまり頻繁に訪れるところでないのも含めて良い感じでした。ただ、処理落ちしているわけでは無さそうなのに、なんとなく処理落ちしているような動きをすることだけは気になっています。この感覚がどこから生まれたものなのかは、筆者にも分かりません。スクロールに違和感があるのかな。

また、個人的に最初に地図が手に入らない設計なのも好きではあります。ここは好みが分かれそうですが。
地図、もといガイドマップが手に入ると、一気におたから集めという目的のための探索になってしまいます。あそこにお宝があるから、ここの道をこう通って回収しに行こう、ここは何もないから適当に通り過ぎよう、みたいな感覚がどうしても付きまといがちです。
なので、特に序盤のうちはガイドマップなどは持たずに、周りを好きに見て回っては探索し、世界を存分に楽しめる方が好みでした。もっとも、それがある程度許されうるのは、このゲームが異常なまでにマップ全体に表現を行き渡らせており、どこに行っても、そしてそこにお宝が無かったとしても満足できる設計になっているためとも言えます。表現のパワーは偉大。

そして、この表現の密度というのはまよろばという作品の特徴の一つであって、この作品の満足感が総じて高い所以でもあると思っています。
探索ゲーム、かつ何かを集めるようにする場合、どうしても外れの道、あるいは意味のない道というのが生まれることになりがちです。ここは探索アドベンチャーの宿痾みたいなものです。
そこをこの作品は、何かユニークなオブジェクトを置いたり、圧倒的な表現を持つ作品を屹立させたりと、とにかくその演出と表現のパワーで補っています。おたからが無かったとしても、そのルートそのものが無駄になることはありません。何故なら、そこでしか見れないものがあるからです。

加えて、モチーフがどんどん様変わりしていくために、それぞれの表現に飽きが来ることもありません。常に歩き回っているだけで楽しい作品となっています。
また、表現の密度が高いおかげで、マップを広く錯覚するというのも面白いなと感じているところです。実際に探索のために歩き回ると分かるんですが、マップ全体は決して広すぎるというほどではなく、おたから探しに適度に歩ける程度に収まっています。しかし、画面の外にある無数のオブジェクトのせいなのか、バリエーションに富んだ表現の広がりのせいなのか、感覚的には世界はかなり広く感じることができます。
これもまた、余りにも詰め込まれた密度が高いことが成せる業の一つなのかもしれません。

それではせっかくなので、マップごとに好きなところでも話そうと思います。
まずは最初、このゲームの自己紹介とでも言うべき場所であり、一発でどういうゲームか分からされる場でもあります。蝉の声、風情ある街並み、そして神社と、全ての雰囲気が締まっています。個人的に好きなのは、この時点で隠し道があるところで、色々と探索をするようなプレイヤーはこの時点で、そういうゲームであるということも理解できるようになっています。
加えて、この探索要素にあえて何も与えないことにより、このゲームの方針もまた一目で了解できるものともなっています。このゲームにおける隠し要素とは、そういうものである、と分かります。

続いて、ちょっと抜けておもちゃ街道。ここでいきなり分岐があり得ます。探索を諸々していると、唐突に分岐が現れ、完全に未知の世界に放り出されるのが良いです。
一方で、探索をしなければ一本ルートのままである、というあたりも絶妙で、それほど探索をしないプレイヤーは特別迷うことなく進められるようにもなっています。
神社で見せたドット絵とその表現力から、こういった異世界的というかともすれば乱雑な世界へと遷移していくというのも良く、ここもまた一つの自己紹介となっています。このゲームは多様な世界を旅する作品である。

額縁回廊から地下水路。厳密にはここで筆者はワープを選択したので額縁回廊はスキップしたのですが、とりあえずマップの流れで話します。
途中にアクションパートが挟まることもあって、ここもまた印象がだいぶ変化していくところです。いきなり静かな空間と厳かで絵画のほかに何もない空間が出てきたと思ったら、すぐに曲調の良い地下水路に飛び出します。
この脈絡の無さが好きです。ここまで来れば、もうどの世界とどの世界が繋がっていようが、何の疑問にも思わなくなってきます。
また、アクション、扉選択、視界不良、と微妙にそのモチーフごとのオリジナリティが配合されているのも良く、それぞれが短いがゆえにある程度デメリットを負うようなものでも好意的に捉えることもできています。こういうステージが長いと厳しいけど、さっと終わってくれるので良い。

地下水路を抜けて、シャボンランドあるいは温泉郷まで。
ここで出てくるような縦に登っていくステージに代表されるように、頻繁に視点が変わっていくというのも面白く、また世界が多様であることをより強く感じる要因になっています。見下ろしのみならず、時にはカメラを引いたり、横スクロールアクションにしてみたり、あるいはノンフィールドにしてみたりと、その印象の変化をもってして探索に広がりを与えていました。
そして、この辺でワープを体験していなければ初めて分岐が発生します。ちょうど良いタイミングですね。

温泉郷もシャボンランドも地下水路との差別化が良く、それぞれ別方向で全く異なる印象を提供しています。
シャボンランドは後続のスイーツも含めたメルヘンな世界の方向性、温泉郷は序盤にあったような風情の構築と、それぞれ全く異なる世界が隣接していくことで、目くるめく世界の構成を見事に実現しています。
温泉郷で特に好きなのは光の表現です。フロートちゃんにかかる光も良いんですが、それ以外の装飾におけるライティングが綺麗で好きでした。後は入り口で待っていると手前を列車のようなものが通り過ぎていくような、細やかな演出も好きです。

シャボンランドからスイートストリート、そしてシャーベットタウンに至るルートは、これまでとは反対に、ある程度印象の統一されたルートともなっています。いずれも印象は微妙に変えているので、全く一緒というわけではありませんが、このゲームにおけるファンタジーというか不可思議なタイプの世界が連続して表現されています。
ここに限らず、序盤はある程度目くるめく変化を見せつつ、中盤以降はある程度エリアごとに特色を固めていくのも上手い設計です。
個人的にはスイートストリートが好きです。バームクーヘンでループする道なんかは、全くの無意味だけれど見目として面白いという、前述したような面白みが詰まっています。
また、奇妙な世界繋がりでは、ファミレスもあって、ここも好きです。筆者はスイーツよりこっちの方が飯テロでした。美味そうに過ぎませんか。

そして、ファミレスから続くきのこ、そしてそこから繋がるひまわりヶ丘は接続として好きなポイントです。
このメルヘン地帯を抜けると、一気に青空を幻視するような世界へと開けます。このギャップが余りにも良い。一見青い空が見えないはずなのに、ここまで抜けるような青空を感じさせる表現には脱帽です。水たまりに映る青空で、この青空が幻でないことを知るのも良い演出です。
そして、自然豊かな滝や夏の青空です。晴れやかさが凄い。ここにはおたからが全くないことは知ってたんですが、それでも来てみたし、来た方が良い場所です。道中のビデオ表現も良い味を出していて、適度に緩急がついています。

そして、ここから地獄に繋がります。一番爽やかに見えるところから、一番おどろおどろしいところに繋がっています。
そりゃこの表現力でそういう方に振れば恐ろしいよね、というものであり、根源的な恐怖の一端に触れられます。
地獄で個人的に好きなのは、そのBGMであり、かつその使い方です。このBGMのおかげで、恐怖というか背中がぞわぞわするような不快感が際立っていました。後は、一度入ったからには戻れない世界であるあたりも良いですね。

翻って、キノコと反対側には火山があります。
ここで一番感動したのは、何と言っても近付くごとに赤く照らされるフロートちゃんです。ウディタにライティングなんてないのに、何故かライティングをやっています。キャラチップをいちいち差し替えているってことですか。
また、ここで手前に木が見える縦方向マップ、提灯と瓦造り、というようなどこかで見た、あるいは見ることになる風景が織り交ぜられているのも印象的です。このあたりの、各モチーフの印象を変えつつ、どこかでリフレインするようなマップ構造が素晴らしいところになります。

少し戻して、スイートストリートの反対側は夜桜公園です。この間に、いずれとも異なるタッチのマップが差し挟まっているというのも面白いポイントです。ここからシームレスに繋がっても良いところを、あえて一気に断絶した世界を挟むことで、両者の境界がより際立って見えます。
話を夜桜公園に戻すと、夜桜と満月です。魔性のコラボレーションですね。再三言ってきた、その演出力というか表現力の高さも相まって、ここの情緒はもうえらいことになっています。
ここの好きなところは当然そのエモさとしか言いようがない空気感ではあるんですが、細かいところに言及するなら反射率の違いです。木目と水面の細かな反映の差が好き。こういう細かいところの徹底が、そういった空気感を生んでいるというところがあります。

そして、菜ノ花小路を抜けて、西日の園です。
ここに関しては、時間の経過が示されているという面が好きです。夜桜から夕方、そして西日です。この時間感覚の違いが、この世界の不可思議さを十全に表現しています。夕方と西日にそれほど違いは無いので、どこまで意図したものなのかは分かりませんが。
夜桜から来た場合は時間を逆行する摂理に反した不可思議さも味わえるので、筆者個人としてはこちらをお勧めしたいです。もっとも、西日の園側から侵入するケースであっても、時間経過そのものを感じるという体験を得ることが可能ではあります。

ここから、迷いの森とゴーストマンションがあります。
こちらは地獄とはまた異なる雰囲気の方のホラーとなっています。ホラーという表現の引き出しも複数あるわけですね。
火山や地獄と並ぶ行き止まりの設計となっており、三者三様にその空気感が異なるのが面白いところです。どこも共通して、それほど明るい印象じゃないというのがあるんでしょうか。
なお、後述する竜宮城も性質は近いんですが、微妙に分岐点でもあるので個人的にはこの分類には含めていません。

またちょっと戻して、シャーベットタウンから星の湖へと繋がり、龍ノ宮へと繋がります。また、雪の迷路を経ることでも到達できます。前者だとほとんど通過点ですが。
星の湖は夜桜公園のリフレインとして良いです。先述で反射の演出が好きと言ったのは、ここでの違いも楽しめるからというのも理由になっています。
また、雪の迷路はここまでの探索形式から全く異なるものに変化するのが面白く、中間点での奇のてらい方として完璧でした。

そして、龍ノ宮ですが、先述した通り海中パートの水中っぽさが良いです。ちょっとだけ動けること、モーションが異なること、そのままいると沈んでいくこと、とにかく細かいことの積み重ねで水中っぽさを上手く表現しています。そして、この水中パート、登場機会が限定されています。これだけちゃんと作っているのに、惜しげもなく限定的に投入してくるというのが凄い。思いついたアイデアの宝石箱という感じがします。
圧倒的なドット絵のパワーや、ライティングを含めた絵作りの上手さのみならず、このような細かいところの配慮こそがまよろばという世界を美しく描き出している側面があるので、この辺の工夫は好きです。
そして最後にある竜宮城の行き止まりは、この作品だからできることの煮凝りとなっています。おたからも無く、ただただ梯子を上っていくだけでありながら、その表現の力だけで推進されてしまいます。

話を戻して、龍ノ宮からは最後へと至るプラネタリウムに接続します。
ここについても、宇宙という新たなモチーフでありつつ、キノコや水晶のような既視感のあるデザインも配し、世界に融和させています。重ね重ね、このあたりの構造が上手いです。
そしてゴールから、最初の街へとループ構造となって完了です。筆者は最初の探索時にこのルートを見つけており、最後に綺麗に接続してとてもすっきりしたことを記憶しています。

このように、ある程度分岐はシンプルで、各マップについてもそれほど広くないので、おたからを集めるのはそれほど難しくはありません。地図と見比べていけば、それほど苦労せずに集められます。
ただ、分かりやすいチェックリストが用意されているわけではないので、収集箇所を朧気に覚えておいた方が、ヒントと突き合わせて特定しやすい面はあります。できるだけ一日の記憶が鮮明なうちに終わらせるのが得策だろうとは思います。

筆者はクリア時に子供部屋が残ったくらいで、ショートカットは全て開通し、それ以外もおおむね完了していました。探索好きなら大体そうなりそうです。
子供部屋についても、ある場所は大体予測がつく上、地図からもそれっぽいものを感じ取れるので、チェックリストコンプリートについてもさほど難しいものではないと思います。
もっとも、あんまり気負わずに、色々見て回るのが一番楽しいですが。

とにかく全体を通してずっと表現力の暴力に晒される作品だったと言えます。しかもバリエーションの引き出しまで凄まじいので、常に驚きをもって世界を巡っていくこともできるようになっています。
もし、このゲームに唯一の欠点があるとすれば、サムネイルを親指の爪というファイル名で同梱しているくらいだと思います。ホラーゲームかと思った。

52. 記憶のあらいかた

ジャンル 作者
メタパズルADV みやの
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.0相当 クリア

良かった点

  • ボイスが極めて有効に活用されていました
  • キャラクターの個性が際立っています
  • インパクトのある作品でした

気になった点

  • 特にありません

レビュー

天下無双のインパクト

何も説明を受けずに始めた方が良いゲームというのは確実に存在し、この作品はそれに属するものとなっています。
もしも体験を損なうことなく、ゲームを十全に楽しみたいのであれば、以下の文章は読まずにそのままプレイすることを強くお勧めします。

記憶のあらいかたは、フォルダを活用した謎解きを行うノベルゲームです。
また、その謎解きの設計はパズルにも近く、シナリオの構成はアドベンチャーゲーム的でもあります。

プレイヤーはそれぞれのフォルダを上手く操作していくことで、個性的なキャラクターとの交流を図ることになります。
一癖も二癖もある特徴的なキャラクターに対し、適切な操作を行ってシナリオを進めていきましょう。時には記憶を消したり、入れ替えたりといった行為を通して、上手くコミュニケーションを取っていく必要が出てくるでしょう。

そうしたゲームの設計はパズルのような面白さを有しています。しかし、やはりこの作品の圧巻は「作者がヒロインです(天下無双)」と注意書きされるほどのインパクトです。
そのボイスでより強調され、よりメタに飛び出してくるキャラクター性の強さにより、短いプレイ時間の中でさえ絶大な印象を残すこと疑いありません。
ぜひともプレイして、その衝撃を味わってみてください。

感想

この作品は完全に好みなので、割と得点を意識的に抑えるか悩んだんですが、好みでもまあ面白いだろうということでそんなに遠慮はしていません。所詮主観ですからね。
個人的には短編の中では水底の記憶と並んで1位です。印象に残る度合いなら、全作品を通してもトップクラスかもしれません。

なお、以下の感想はかなり大きくネタバレするので、まだプレイしていない方はそもそも読んでいないとは思いますが、読まないことを推奨します。面白いので、まずは遊んでみてください。

とりあえずボイスの話をしないとこの作品の良さを十全に語れないので、まずボイスの話をします。
ボイスが良いです。やれば分かります。声質というか表現というか、ちゃんとキャラクターごとにその色を分けていて、どうやっているんだろうなあと思っていたら作者ボイスと書いてあって驚きました。上手すぎないですか。
作者がボイス担当、作者がヒロインです(天下無双)の言葉通り、真に天下無双の設計をしています。すごい。

ゲーム内の謎解きについてはそれほど難しくはなく、メタ的な面白さが担保されているタイプです。
その謎解きの設計もちょうど良く、みーちゃまが何が起きるのかを示し、ゴールの提示役として機能した上で、みーさまが別ルートにヒントを残し、みーさんは全探査してないことを確認した上で思考を巡らせる必要があります。三者が三様の役割を当てられたパズルとして設計されています。パズルとして綺麗ですね。
個人的には、みーさんの謎解きが好きです。

シナリオは個人的には若干解釈に惑うところがあれど、おおむね楽しむ分には問題ないようになっています。
はじめ、あるいは割と終盤まで、そもそも受け入れられないなどの話があったので、ゲーム内存在から第四の壁を示した話なのかと思っていて、外注の一枚絵あたりの言い方がその示唆なのかなと感じていました。ただ、最後のやり取りを鑑みるとその辺も少し怪しく、好きに解釈して良さそうな気配を感じています。

また、各キャラクターの個性が立っているのも好きなところです。これは、半分くらいはセンテンスのセンスで構成されていますが、もう半分くらいはボイスの力じゃないかなと感じています。声が持つ力の偉大さを実感しました。
その強烈な印象は他の追随を一切許さないレベルであり、このコンテストにキャラクター部門があれば一等賞に燦然と輝く域にいます。誰が一等賞かは議論の余地があるかもしれません。何なら作者さんなのかもしれない。

また、個人的に面白いと思った表現として、ボイスを付けることで漢字の読み方に突っ込みを入れるメタ表現があります。台本すら自由なんですね、このゲーム。
提示される文字それ自体を否定することで、このゲームのそういう自由奔放さや、メタっぽさがかなり強く印象付けられるので、システム面でも割と好きな表現です。一発でそういうゲームであるということが分からされる感じがあります。

なお、上記で示したジャンルは色々悩んだ結果、割とえいやの気持ちで決めたものです。メタっぽいけどメタではない気もしていますし、パズルって程パズルでもない気もしますし、かといってヴィジュアルノベルは完全に違います。何と言えば過不足なく印象が伝わるのか分かりません。語彙力が無い。

全体を通し、やった時間こそ短いながら、強く印象に残る作品でした。フルボイス、ファイル操作を伴うメタゲーム、変に個性的なキャラクターと間違いなくおなべのこげになるゲームです。
20分程度のゲームプレイ時間だったとは思えないほどに密度の濃い体験ができるのでお勧めしたいんですが、説明するとネタバレに抵触するので難しいです。魔王復活物語といい、面白いのに説明できないゲームはだいぶもどかしい。

53. 通り雨

ジャンル 作者
探索ADV いのせんとわーるど
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.0相当 true/normal

良かった点

  • マップチップの使い方が斬新でした

気になった点

  • 不具合のためか終始無音で進みます
  • 安定しないイベント挙動が散見されます
  • 隠し場所のヒントが薄く、ほぼ全探索を強要するゲーム性となっていました

レビュー

洋館もの

通り雨は、洋館を舞台とした探索アドベンチャーです。
洋館の中をくまなく探索し、その脱出を目指すものとなります。

洋館の中にはいくつかの謎解きとアイテムが散りばめられており、上手くそれらを解き明かし、見つけていき探索範囲を広げていくことになります。
そうして洋館を彷徨いながら謎を解き、様々な部屋に入れるようになるにつれ、物語は終わりへと近付きます。
結末は2種類あり、それまでの行動如何によって分岐します。どういった結末を迎えるか見届けましょう。

感想

洋館ものです。洋館はそこまで広くないので、短編のラインに収まっていますが。
全体的に謎解きと探索メインで、探索要素は割とノーヒントです。謎解き要素はちょっとミスリードっぽい台詞回しというかイベントフラグの立て方があるんですが、それを除けばある程度解きやすくなっていました。

個人的にはマップチップの使い方が面白いなと感じていて、テーブルクロスに水を張ってお風呂に見立てたり、垂れ幕を垂らして椅子の後ろ側っぽく見せたりしています。その発想はなかった。慧眼ですね。

なお、作者さんの制作環境の都合上、不具合が解消できないためか、そこそこ不具合や不親切な仕様が埋まっています。
クリアには支障がそんなにないんですが、ちょくちょく引っかかったり緑帯に遭遇することにはなります。
また、ヒント会話周りのフラグ管理も特になされていないので、謎解きの片割れを見ていなくても会話が起動します。分からない謎解きが出てきた場合は飛ばすのがお勧めです。

シナリオについては、エンディング分岐はなんとなく分かってはいますが、カセットテープ無しでもtrueに行けるのは意外でした。割と緩い。
一応、おおむね主人公を中心に物語が展開していくので、友人が割と空気になっているのは気になりました。語る相手として用意されたような印象を受けます。館もののホラーならもう少しひどい目に遭うかと思っていましたが、よく考えたらこのゲームはホラーじゃありませんでした。さもありなん。

54. 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~

ジャンル 作者
闘技場育成シミュレーション カザ&ソロー
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.08 腕っぷしEND

良かった点

  • 成長のシステムの塩梅が良いです
    • 自由度、制約、イベント性のどれもがバランス良く組み立てられています
  • 主人公のキャラが良かったです

気になった点

  • 特にありません

レビュー

自由気ままに鍛錬を積もう

放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~ は、自由に育成し戦闘に勝利していくシミュレーション的なゲームです。
訓練やイベントを通じて能力値などを強化していき、徐々に強くなる敵に勝利を収めていくことを目的としています。

プレイヤーが主にやることは試合までの間に訓練を選択し、ステータスを育成していくことです。
筋トレをすれば攻撃力が上がり、ダッシュの訓練なら敏捷が上がり、イメトレをすれば防御力などが上がっていきます。自分の伸ばしたい方向にステータスを育成していきましょう。もちろん、満遍なく上げていくという手もあり得ます。
また、日数の経過や会話に応じて起こるイベントを通じて、ステータス上昇などの恩恵を得ることもあります。イベントは積極的に起こしていきましょう。

そうして一定日数が経過したら、育成したステータスを武器として戦闘に挑むことになります。
戦闘は攻撃と防御から成るシンプルなシステムとなっており、防御はHPの回復を兼ねています。高い攻撃力を活かして速攻で決めたり、防御を厚めにして持久戦に持ち込んだりと、育成に応じて戦略は多様に広がります。育成の方向と、敵の性質に応じて柔軟にバランスを変えていきましょう。

様々な育成方針で戦いを楽しめる、良質なバランスを享受することのできる作品となっています。
天然なようでいて頼りになる主人公と周りのキャラクターの掛け合いを楽しみつつ、自分なりの育成方針を武器に次々と立ち塞がる敵をなぎ倒していきましょう。

感想

きちんとデザインされた短編という印象を受ける作品です。勢いのままに作られる短編も良いんですが、バランスや設計がシステムとして完成されている短編もまた良いので、この作品も良い作品です。
中でも、割とカスタマイズ要素が強めで、その枠組みの中で筆者はピーキーに調整したつもりなんですが、かなり良い勝負になり続けるあたりが特に凄いなと思っています。作者さんの掌の上にいる。

まずは、クリア時の進め方というかビルドに触れておきます。
筆者は攻撃回数を重点的に上げて、蹴り倒すビルドにしていました。命中率はある程度ブートの薬で担保しつつ、とにかく蹴りを進化させることで圧倒的な攻撃力をもって戦える方針です。
序盤こそ命中率と攻撃回数の運ゲーっぽくなりますが、割とビルドが安定してくる中盤はやや危ない場面がありつつも上手く切り抜けられる程度には強くなります。最後の二戦に至っては、防御コマンドを押すことなく突破できています。火力は正義。

ほかのパラメータもある程度は振っており、状態耐性や回復力も後のために上げていたところはあったんですが、状態異常系統の敵の初撃を食らってしまったので、あんまり意味は無かったかもしれません。
ただ、HPと回復力をセットで上げようとすると勝手に状態耐性も上がっていくので、気休めというかおまけくらいに思うことはできます。これで状態耐性だけ重点的にポイントを割り振る仕組みなら無駄になったなと思うところですが、そもそも総合的に上げているので、あんまり意味無かったなと思う程度で済んでいます。システム設計の妙です。

そうして得られたリザルトは以下になります。
上述の通り、防御力の4倍近い攻撃力、パンチの5倍のキック数、明らかに少ない防御回数あたりが特徴的です。序盤のうちは手探りだったのでパンチを使うなどしていたこともありました。
なお、このやり方はHPで攻撃を受ける想定のビルドなので、HPがある程度高くないと破綻します。そういう意味で、看守と会話し続けて差し入れてもらわなければ危なかったかもしれません。看守がMVPかもしれない。

リザルト

閑話休題。このあたり、シミュレーション内容に応じてプレイヤーの好きなプレイングを選べるのが良く、自分の得意あるいはやりたい構築で戦うことのできるデザインとなっていました。ゲーム全体が短いので、ほかのビルドを試したい場合も割と気軽にできそうです。
また、単なる強化以外の面でも選択肢があったり、イベントがあったりして、成長に波を与えるようになっているのも面白いところです。このおかげで、パラメータをただ上げていくような単調さが無くなり、ゲーム全体にメリハリがついています。

特に好きなのは、パンチを使っていればパンチの強化がもらえ、キックを使っていればキックの強化がもらえる設計です。プレイヤーのやっていることに沿って順当に強化する恩恵が得られるというように、プレイヤーの意図にぴったりと沿ったメリットを享受できます。
このシステムはプレイヤーが思考することなく、プレイヤーのやりたいことに合わせた補助が入る仕組みなのかなと思っています。こういう設計ばかりだと遊ばされている感があるかもしれませんが、このゲームはアクセント的にしか使っていないので良いです。ここでもメリハリがついています。

シナリオ面にも軽く触れると、短編でありながらも主人公のキャラクター性で強く引っ張っていく良いものとなっています。
悪役の三枚目っぽさも絶妙なラインで、まあまあの悪事をしているし、そこそこに報いは受けているものの、シナリオ全体が暗くなりすぎないようにコントロールされている印象を受けました。

余談ですが、最初は徹底的にモブに名前を付けない方針の作品なのかと思っていましたが、状況に即した名前が適宜つくタイプの作品でした。コメディー調っぽくて良い。
さらにどうでも良い余談ですが、説明文で触れられているほどランディスが宿敵っぽくないのは気になりました。通りがかりでついでに倒したくらいの空気感っぽいんですが。ブートにとっての宿敵という扱いなのかな。

55. デス ウエスト トレイル

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG 雪見大介
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.23 二本角1位クリア

良かった点

  • 装備を入れ替え自機をカスタムしていく楽しさがあります
  • リソース管理要素が程良いものでした
  • サクサクと戦闘が進む攻めのバランス調整です

気になった点

  • レース順位がやや奥まったところでしか確認できませんでした
    • レース中は常時表示するくらいだと分かりやすいのかなと感じました
  • 宝の地図の攻略と本編の進行順によっては主人公の会話が不自然でした

レビュー

装備をカスタマイズしてレースを制そう

デス ウエスト トレイルは、機体をカスタマイズしながら戦闘を繰り返し、誰よりも先にゴールを目指すRPGです。
大陸を横断する大規模なサバイバルレースを勝ち抜くために、素早くしかし確実に歩を進めていくことになります。

挑むレースは戦闘も妨害も何でもアリとなっているため、その道中は戦いにまみれています。
サイドビュー形式のこの戦闘に勝利し、消耗を抑えて道中を安全に進むためには、自身の機体のスペックを上げることが何よりも重要です。機体そのもののスペックを上げる、装備によりスキルを強くして殲滅力を上げる、微弱ながら騎乗者のレベルを上げるなど、様々な方向から強化を進めていきましょう。

とりわけ重要となる装備については、どのような方向にカスタマイズするかはプレイヤーの自由となっています。
範囲殲滅に向いた全体攻撃を重視するも良し、単独攻撃に特化して敵の頭数を減らすも良し、攻撃に特化して雑魚の消耗を抑えるでも、防御に特化して持久に備えるでも、好きなスタイルで攻略が可能です。思い思いの装備を携え、レースに挑んでいきましょう。

また、道中では遺跡や廃墟に寄り道することもでき、時間を犠牲にするものの、有用なアイテムを取得することが可能です。
強力な装備を得ることができれば、後半の攻略において優位に立つことができます。時間や消耗の状態を鑑みつつ、積極的にチャレンジしてみましょう。

レースを繰り広げながらカスタムを続け、時に寄り道をして強化しつつ、レースの一着を目指して駆け抜けていきましょう。

感想

カスタムした機体で敵機をなぎ倒していくゲームです。大陸横断レースを勝ち抜いていくことを目標とします。
SBRならぬDWTといった感じで、遺体は争奪しませんが、何やらきな臭い背景はあるようでした。

戦闘バランスが面白く、敵の攻撃がそこそこ痛いのでさっさと倒すことを目標としたい攻めのバランスになっています。
ノンフィールドRPG特有のリソース管理も絡んでくるので、上手くリソースを回しながらいかに効率よく敵を殲滅するかを考えて機体をカスタムする楽しみがあります。
個人的にはさっさと仲間を増やしておくべきだったなと感じています。砲術を雇ったタイミングでようやく安定するようになりました。

また、敵と長期に戦うとターンが経過し、これによりレースに遅れるという要素もあるため、1位を目指すならより攻めていく必要がありそうでした。
ただ、二本角でプレイする分にはそんなにレース順位を気にする必要もなく、たまに見て1位なことを確認する程度で事足ります。レース順位自体もレース中であっても常時表示はされておらず、そこそこ奥まったところに見に行く必要があり、余り頻繁に見るのも手間なので。
結局妨害無しで探索をそこそこしても1位を取れたあたり、難易度を上げない限りは気にする要素にはなっていなさそうでした。

なお、全体的にはノンフィールドRPGっぽい様相を呈していますが、所々宝の地図を使った探索ステージという寄り道もあります。
おおむねメリットが大きいことと、シナリオや背景がちょっと深掘りされることもあるので、見かけたら行くのをお勧めします。本編に絡む時もありますが、少なくとも二本角の場合は本編シナリオ自体には影響を与えていなかったようでした。おまけのサブシナリオみたいな感触です。

後は、自機のカスタム要素は割と楽しいです。特に装備の入れ替えが良く、後ろの方ほど強い武装が手に入ることもあって、適度に入れ替えが発生していました。
明確に威力の設定がなされ、即座に実践投入して数字でその強さが分かるので、適度に入れ替えてはお気に入りの武装を探すことができます。
レベルによる強化はあれど、装備による強化の方が体感優秀だったので、ちゃんと吟味するメリットがあって楽しかったです。

その一方で、機体性能には結局ノータッチでした。拠点でしか変更できない一方、実戦に入ると後戻りしない限り再変更できないので、気軽に変えにくい要素でした。そもそも、二本角自体が完成されたパーティーということもあり、お世話になる必要が無かったという面も多分あります。
難易度を上げたらちゃんと活用する必要があるんでしょうか。

個人的には、砲術の速度を積んで全体攻撃させて殲滅するのが好きでした。やはり攻撃は最大の防御です。

56. リーフの1人花屋営業

ジャンル 作者
花屋 あまてん海老
プレイ時間 プレイVer クリア状況
15分 1.0相当 HARD/一流

良かった点

  • ミニゲーム然とした設計でした
  • 運要素もある中で、かなり緩めの難易度設計となっています

気になった点

  • 同じシンボルでも強さに乖離があることが一見して分かりにくいです

レビュー

ゆるい世界のミニゲーム

リーフの1人花屋営業は、花屋を営業しつつダンジョンに挑戦するちょっとしたゲームです。
パーティーを強くしつつも、お金を稼いでいくことが主な目的となっています。

お金を稼ぐには、ひとまず花屋を上手く経営するのが先決です。
主人公はお客さんの心をある程度読む読心術の心得があるので、それに基づいて条件に合う花を渡せるとお金を獲得できます。

そうして稼いだお金をもとに、パーティーの強さや行動できる回数を増やし、ダンジョンに挑むことになります。
敵と戦ったり、宝箱を開けたりすることができるのは、そうして獲得した行動回数ぶんだけとなります。とりわけ重要な宝箱に辿り着くには、弱い敵を大量に倒すルートや、強い敵と戦うことになるルートがあります。限られた手数の中で、パーティーのレベルに合わせて適切な行動を選択していきましょう。
宝箱まで辿り着けば、お金やレベルの上昇のほかに、読心術のレベルを上げることもできます。これにより、花屋でより多くのお金を獲得しやすくなるため、積極的に狙っていくのがお勧めです。

花屋とダンジョンを行き来して、お金を稼いでパーティーを強くしていき、そしてさらにお金を稼いでいきましょう。

感想

ミニゲームでした。難易度がそこそこ緩めだったり、デザインも緩かったり、何よりグラフィックが良い感じに緩いです。
ミニゲームはミニゲームであることそれ自体に価値があるので、ミニゲームの枠を飛び出ない範囲でさっと遊べるようになっているのが良かったです。

ひとまず花当てゲームの話をするんですが、最序盤が運要素で、そこから少しずつ作業要素になっていく感じです。序盤はそもそも指標が無いですし、中盤以降は特に制約のない中で決めていくので、そういうゲーム性なんだとは思います。
時間制限などでも導入されていれば、もう少しゲームゲームした出来になるのかなとは思うんですが、作中でも説明がある通り、それそのものに自覚的な設計ともなっています。ゲーム性というよりはフレーバーに寄った印象を受けました。

RPGパートというか戦闘については、そこそこミスをしても特別問題なく進められるタイプです。何なら、ゲームオーバー的なものがあるわけでもないので、気楽に臨めます。筆者は二回くらい強敵にぶち当たることで行動を無駄にしていますが、それでも最後の方は全部の宝箱を開けられるくらいにはなりました。
ある意味ではこっちもフレーバーっぽい立ち位置ではあるんですが、どのルートを通って敵を倒していき、上手く宝箱に辿り着くかのゲーム性は担保されています。こちらは割とゲームっぽい。

一方で、同じシンボルでもその中でさらにランクというか強さが分かれており、これを見た目で判別するのが不可能なため、なんとなくで挑んで負けるパターンはどうしても発生しがちです。さっきこのシンボルに勝てたのだから、その経験を活かしてこういう計算で行こう、みたいな戦略を許さないタイプです。
純粋に奥に行くほど、シンボルに対しての強さも上昇していく傾向にあることを掴めればある程度立ち回れますが、それに気づくのにそもそも時間がかかるという面もあります。そもそも作中は5日しかないので、それに気づいたころにはほぼ全勝できる状況にあることが多いとは思います。
ただし、そういったトラップに引っかかったとしても、最終的にはレベル上限に易々と行けたあたり、バランスとしてそういう塩梅にしていそうではありました。この辺は緩めに作られています。

なお、一番の強敵はかなり強く、レベルを上げていても一発で破壊してくる強敵でした。全体攻撃がないのでレイズループにはめて倒したんですが、これが正解なんでしょうか。一応、単体攻撃しかしてこないのであれば、一ターンに一人蘇らせれば帳尻が合うようになっています。

また、最後にゲームはスコアでまとめられているんですが、これもまたフレーバーな気もしています。作中でも言及がある通り、そこそこの運要素が強いシステムの中でのスコアアタックではあるので、あんまり血道を上げるようなものではありません。
とはいえ、一プレイは短いので、さっきはできなかったちょっと良いプレイングを目指そう、くらいのモチベーションであれば自然に湧きます。そこを評価するシステムであると考えると、結構割に合った設計なんだろうなと感じていました。片道勇者の最終スコアくらいの立ち位置。

余談になりますが、筆者はノーマルがあれば必ずそれを選ぶようにしているのですが、イージーは絶対に選ばない歪んだ主義もまた同時に抱えているので、こういう難易度選択になるとハードを選択することになります。ハードでもそれなりに難しくない難易度で助かりました。

57. 真の自由はわが手にあり

ジャンル 作者
超短編 ミツザネェェェ!!!
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3分 1.0相当 クリア

良かった点

  • 勢いで最後まで遊べる作品でした
    • 細かいところは真面目に作られてもいます
  • 小ネタもあります

気になった点

  • 特にありません

レビュー

強いぜ

真の自由はわが手にあり は、数分で終わる超短編の作品です。
勇者になり、魔王を倒すことになります。魔王にはすぐ会えるでしょう。

疾風怒涛の勢いで始まり、その勢いのまま駆け抜けていくような作品であるため、多く語ることはありません。
ちょっとしたネタに気を配っても数分で終わるような短い時間の中で、勢いを感じるエキサイティングな体験をしましょう。

感想

全編通して勢いだけで作っていそうに見える作品なんですが、所々細かいところのケアや手の入れ方が丁寧な作品でもあります。
駆け抜けるだけの時間しかかからないようなゲームであっても、勢いに任せるところは任せつつ、勢いだけに委ねられていない良い塩梅で構成されています。

細かいところで言うと、デフォルトゲームあるあるの残ったままの相談にちゃんと手が入っていたり、何か分からんけど花に理不尽に嬲られるブービートラップが仕込まれていたり、逃げることができるのが最後だけになっていたりします。
別にゲーム全体の導線のシンプルさや、シナリオというか空気感の勢いを鑑みれば、そこが無くても充分にクリアには困らないものではあると思います。それでも細かいネタとケアする要素を投げ込んでおくことで、より一層に主軸の勢いが輝いて見えます。なおざりでない設計が、むしろ本筋を際立たせていました。

紹介文通りに短いので、感想としてそれほど書き連ねる部分は無いんですが、短い中にネタを詰めていて個人的には好きな作品でした。強いぜ、が本当に強いのが良い。こういう勢いが好き。デフォと勢いだけで最後まで突っ走れます。