第16回ウディコン全作品レビュー
前書き
注意
- このレビューは、筆者個人の独断と偏見によって書かれています。筆者の好みが多分に影響していますことをご了承ください。
- 出来る限り気を付けていますが、一部ネタバレを含む可能性もあります。問題がある場合は、プルリクやTwitterなどにてご指摘いただけると助かります。
- レビュー内容は主にプレイ当時のバージョンに基づいています。最新バージョンと動作などが異なる場合がありますが、ご了承ください。
初めに
WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)は、ウディタ製のゲームを競う、年に一回開催されるコンテストです。
今年で第16回を迎える中、71作品ものゲームがエントリーされました。ウディタというツールの発展性がゆえに、今年もまたそれぞれジャンルも異なればテイストも異なる様々な作品が出展されており、多くのゲームを楽しむことができる場となっています。
今年は全作品を遊びつつ、クリアできる範囲では全ての作品をクリアすることができました。心動かされる作品、仕組みの秀逸さに感心する作品、時間を忘れて執心する作品、様々な作品を遊び尽くし、大変楽しむことができました。このささやかな返礼として、プレイ作品のレビューをしていこうと思います。
なお、筆者は漫画で言えばARIAが好きで、最近の推しなら運命の巻戻士で、小説で言えば米澤穂信さんが好きで、好きなゲームはFF10で、最近やったゲームではHades II、アフターイメージ、A Monster’s Expedition、ベオグラードメトロの子供たちあたりが好みです。プレイ時間で言えば、未だにスマブラをやりすぎています。前回のウディコンで一番好きだったのはビャッコーギャモンです。
加えて、筆者自身はゲームプログラマーを生業としています。そのあたりを評価から差っ引いて考えると、より公平に感じるかもしれません。
ネガティブな感想を見るのが不快という方は、こちらのボタンを切り替えてください。ネガティブな感想を含む項目が隠れます。
補記。投げ銭もあるので開催者の方に遠慮なく還元していきましょう。
凡例
良かった点
- 筆者が良かったと思う点を書き連ねています
気になった点
- プレイ中に気になった点を書き連ねています
- 必要ない方は上記のボタンを押して消してください
レビュー
- レビューの文章を書いています
感想
- ネガティブ/ポジティブにかかわらず感情側に寄った感想を書きます
- より直截的な表現およびネタバレが多いので、基本は非表示にしてあります。読みたい方だけ都度ボタンを押して読んでください
- ここの文章の推敲は甘めです、不適切な表現があるかもしれませんがご了承ください
レビュー
01. 勇者不適伝
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | すたーあいす* |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
4時間 | 1.11 | 全END |
良かった点
- 物語や世界観と上手く調和の取れたシステムでした
- 様々な点で早めに対処することを誘引する戦闘システムとなっています
- このため、序盤から意識的にテンポ良く戦えます
- 良く構成され描かれたシナリオでした
気になった点
- シナリオ中に使われる単語に違和感を覚える部分がありました
レビュー
和解の旅路
現実的な作品であるという言葉は、シニカルにあるいは斜に構えたように受け取られることもあります。一方で、勇者不適伝もまたある種の現実的な面を描いた物語ではありますが、それは自身の正しさを常に見つめ、降りかかる艱難辛苦を乗り越えていく現実を見せつけてくれるものです。
シニカルとは対照的なその作品性の中で、現実と戦っていく現実的な物語を味わうことができるRPGであると言えるでしょう。
勇者不適伝はゲームとしてはシンプルな設計であり、ノンフィールドのダンジョンを攻略しつつ町を巡り、目的に向かって進んでいくオーソドックスなRPGの形式を取っています。
しかし、和解を目指す彼らの戦闘は一風変わったものです。和解を目指す以上、彼らにHPを削り切って倒すことは許されません。それぞれのスキルを上手く使い、HPではなくIFと呼ばれるパラメータを削って、相手の戦意を削いでいくことが肝要になります。
ただし、HPを半分以上削ることで相手の攻撃力を落とすこともできるので、時にはダメージを与えることも戦略の一手となり得ます。相手の行動パターンやスペックを鑑みて、適切に対処していきましょう。
そうして戦いをこなしていくことで和解を進めつつ、ダンジョンの最後に待ち受けるボスとも戦うことになります。ボスは強力な性能を秘めているため、相応のステータスとスキルを持たなければ太刀打ちできないでしょう。
ステータスの上昇およびスキルを習得していくためには、道中に遭遇する魔族と和解を続け、レベルを上げていく必要があります。積極的に和解を目指していきましょう。
また、ボスと戦う場合は、取り巻きの魔族と早めに和解するのも重要です。IFを削り切った魔族はこちらを回復してくれるようになるため、相手の手数が減る上でこちらを利する形ともなるためです。積極的に和解を仕掛けていきましょう。
そして、様々なダンジョンを攻略しながら和解を進めていく旅の中で、主人公とその仲間たちのシナリオが紡がれていきます。
敵対する魔族との和解という道を選択した主人公の前には、様々な困難と試練が立ち塞がっていきます。綺麗事だけでは済まない世界の中で、苦しみながらも懸命に初志を貫徹していく姿が克明に描かれています。
そうした困難の果てに宿命の敵とも言うべき魔王と相対し、主人公が何を思いどう行動するかを見届けるためにも、物語を進めていきましょう。
感想
色々と特殊なRPGでした。一番特殊なのはほとんどいつでも主人公が上裸になることができて、その会話差分が無数に用意されていることなんですが。個人的には楽しかったので話しかけまくったんですが、どこからこのよく分からない執念が出てくるのかは分かりません。
それをおいても会話差分はそこそこあって、ちゃんとストーリー進行とともに会話の変わるキャラクターがいます。たまに戻って話しかけるなどしていました。
RPG、ことに戦闘面で見ると、HPがIFになって、本来のHPが特殊パラメータに挿げ替えられることで面白い仕組みになっています。
ある意味ではパラメータ名のラベリングを変えただけではあるんですが、これによってパラメータに対しての説得力が生まれています。HPを減らすと攻撃力が減る、でもやりすぎるとダメというのが分かりやすくなっています。
また、シナリオとの連関性も同時に担保されていて、ストーリーにシステムを融和させる役割も果たしていました。
加えて個人的に面白かったのはIFを削り切ると仲間になるあたりで、これは戦略的にも幅を持たせています。敵をスピーディーに処理することのメリットは当然手数を減らせるところなんですが、このシステムにより、それに加えて少量の回復が得られるというインセンティブも生まれているためです。
3体からの同時攻撃は特に終盤は致命傷に繋がりかねないので、いかに素早く敵を説得するかというスピード戦と、どこまで味方の被害を回復させるかという駆け引きが生まれています。いくら敵を早期に説得できても、味方に戦闘不能が出るとそれはそれで苦しいので、適度なバランスが保たれている印象でした。
なお、HPを下げると攻撃力が下がる仕様もあるので、HPをひとまず削って耐えやすくする、みたいな戦略も取れそうではあったんですが、筆者は結局それをしていませんでした。大体のケースは素早くIFを削った方がトータルの被害が抑えられそうな印象を受けたためです。思ったよりもHPが多い。
また、プレイヤーサイドにHPへ大きく干渉できるキャラが中盤まで現れないので、この恩恵を受け取りに行くハードルが高いのも一因としてありそうです。よほど強く挫折するか、強力な誘導がない限り、序盤にやらなかったことを終盤でやり始めることはないので。
後は、細かい個人的に好きなところとして、最後にSP最大技を大盤振る舞いさせてくれるところがあります。
ゲームのシステムの都合上、最大技は特定キャラクターを除けば余り使える機会がなく、実際に最終戦に至るまで使わずじまいで進めていました。そして、そこでちゃんと日の目を見る舞台が用意されていることに感心しました。心残りなくラストバトルを終えられます
シナリオは個人的にはだいぶ好きで、予定調和や綺麗事を描かないで、なるたけ主人公の心を折ってやろうという気概を感じます。幾人かの周りのキャラクターの助けがなければ、実際にへし折れてそうな勢いはありましたね。
なんとかなりそうなところに、どうにもならないものをねじ込んでいく話と、それでも抗う人々に人間讃歌を見るタイプには刺さる作品です。平たく言えば筆者に刺さるタイプ。
ただ、序盤から中盤にかけてはワードの選択で妙に引っかかることもあり、若干没入感が削がれるきらいもありました。是が非でもとか催促の使い方とか、重視的、需要性あたりの言い回しとか、統治権の主体が島であるという規定の仕方とか、細かいところで意味は伝わるけれど、表現的にモヤっとするポイントがそこそこある印象です。権利主体が島、ある種のアミニズムっぽい。
ただ、終盤にかけての盛り上がりの展開ではその辺が無かったのか、単にシナリオが良いから気にならなくなったのか、言葉に引っ掛かることはなくなりました。体験としてのピークではこれらの引っ掛かりがなく、最後まで没入して楽しめたのは良かったです。
終盤のひっくり返し方も個人的には満足していて、さすがにあからさますぎるから素直にリュウセイを持ってこないだろうとは思っていましたが、ちゃんと理由を付けた上で綺麗に裏切ってきたので良かったです。
最終盤の展開自体も良く、その選択に対して少なくない被害が発生することが双方のエンディングを見ると分かります。魔王が消えないルートでは1割が2割に増加し、それぞれの生死や容態に変化が生じるので、何が正解かを定めるのが難しいところとなっていました。そうした中で、選択はあくまで神に委ねられるという形を取っています。そして、その神というのがほぼ即ちプレイヤーではあるんだろうなとは思っていました。すなわち、プレイヤーが魔王を許すかどうかに帰結します。
最後に決断する主体がプレイヤーであって主人公たちでないあたり、主人公たちの思想そのものは決してプレイヤーのそれとは混じらないことが強く感じられて良かったです。
キャラクター造形としては兄を失わせしめる直接的原因であろう魔族などの対象に対して、何の恨みも抱いていないかのような振る舞いをする主人公がさすがに聖人にすぎやしないかという気持ちはあります。特殊なバックグラウンドがあるわけではないので、根の根から善人というかそういう性格なんだと思います。そして上裸になるのは抵抗がない。解釈にノイズが混じりましたが、この造形故にプレイヤーが感情移入するタイプの主人公というよりは、物語を導く主人公という印象を受けました。ドラクエよりFFっぽい。
そして、そういう造形であることからも、前述のプレイヤーの決断に委ねるという切り離し方が良い設計に思えます。さすがにプレイヤーがその決断を決めるには、余りにも同一視しにくい主人公ではあるので。
後は、シナリオとは直接関係ない細かい好きなところとして、いじめっ子が改心すると接頭辞が元いじめっ子になっているあたりの細かさです。こういう細かいところのフレーバーがそこかしこにあるので、活字中毒の身としても色々調べて楽しんでいました。
なお、その過程で出てきた魔物と魔族の表記違いがあるのは若干気になっているんですが、意図的なのか表記ゆれなのかは微妙なところに感じます。あんまり使い分けている印象はありません。なお、このレビューおよび感想では魔族に統一していますが、特に意味はありません。雰囲気です。
理想を描いて達成しつつある青少年期の万能感と、それが粉々に砕け散るところからの再生という物語を、半ば米澤穂信さんのせいで好んでいるので、シナリオとして個人的に好きな部類に入る作品でした。
かといって単に露悪的なわけでも、過度に絶望に叩き込むでもなく、あくまでもベースを調和の物語として描いているので、読後感は爽やかなものとなっています。いくらかの犠牲は発生していますし、それがしこりにならないかと言えば微妙なラインですが、いなくなってしまった人たちのことを時々で良いから思い出すことになる世界へと進んでいくんだろうなという感じがしました。
02. LIGHT OF MANA
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノンフィールドRPG | LAKO |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 1.8 | クリア |
良かった点
- グラフィックは素晴らしいの一言に尽きます
- 演出もまた良く、高品質なグラフィックが最大限活用されていました
- 麻雀をベースとした斬新な戦闘システムが楽しめます
- ある程度の運に翻弄されつつ、準備と状況判断で打ち勝っていく楽しさがあります
- ゲーム設計、シナリオ、UIから演出と全ての面で高い完成度のゲームでした
気になった点
- 選択について、前半が選択後キャンセル不能、後半が選択後キャンセル可能なので、ごくたまに前半をミスってキャンセルできないことがありました
- こちらの手牌に干渉する敵が多いため、大技に余り価値が無いように感じました
レビュー
役を揃えて一発逆転
LIGHT OF MANA は、麻雀ライクな戦闘システムで戦うノンフィールドRPGです。
雑魚戦とイベントがミックスされたステージを攻略し、最奥のボスを撃破する流れで進行していくことになります。
このゲーム最大の特徴である麻雀をベースとした戦闘システムは極めて独特なものとなっており、運に左右されつつも戦略を練っていく面白さを包含しています。
戦闘画面 |
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まず、色と数字が描かれた牌がターン開始時に配られます。続いて、これを単独で使う前半フェーズと、いくつかの組み合わせで使う後半フェーズの二つを行うことになります。
単独で使う場合、威力は抑えめになりやすいものの、色に応じて攻撃や回復、ドローなどの行動をその牌に書かれた数字ぶんの強さで行うことができます。組み合わせを作る必要がないため、ここでは柔軟な行動が選択しやすくなっています。例えば、上記の赤9を選択した場合、高い攻撃力で通常攻撃を仕掛けられます。
一方で組み合わせにおいては、連番や同色など、一定の法則で牌を揃えることで単独よりも強力な効果を発動することができます。その分、揃える難易度は高く、消費する牌も多いため、ここぞというところで使いましょう。
この時に使える組み合わせのパターンは、攻略の過程で手に入るスペルと呼ばれる役を装備すると増やすことができます。例えば上記の例では、同色3つを揃えるだけで威力3の攻撃が発生し、それが赤3つなら威力5の攻撃が追加で発動します。
一ターンに複数の牌を消費して多数のスキルを発動することはできますが、ターンの開始で引ける牌や、ドローできる牌は限られます。加えて、雑魚との戦闘の場合、牌の状況は引き継がれてしまうため、余り使いすぎると後の勝負に尾を引く可能性もあります。
敵の体力などを見ながら、どの牌を単独で使い、どの牌までを組合わせで使っていくか、それぞれの牌の切り所を考えることが重要となるでしょう。
また、こうした独自なシステムを採用しているにもかかわらず、操作は驚くほど直感的に行うことができます。これは洗練されたUIの巧みさによるものであり、この作品が持つ高品質なグラフィックがなせる業の一つと言えるものでしょう。
オリジナルの様々なグラフィックで彩られた画面全体は常に華やかさに満ちており、短編ながらも完成されたシナリオを引き立てるイベントの数々も、素晴らしいスチルで構成されています。
このハイレベルなグラフィックもまた見どころの一つと言えるでしょう。
斬新な戦闘システムを圧倒的な完成度で仕上げつつ、高いレベルのグラフィックにより遍く要素のクオリティをも引き上げている、全体を通して高い完成度を持つ作品となっています。
特殊なゲームが遊びたい人にも、堅実に良くできたゲームが遊びたい人にも、どの需要にも応えること請け合いのゲームと言えるでしょう。
感想
グラフィックと良い演出といい、ゲームUIの洗練され具合といい、異常なまでに高い完成度を誇っている作品です。Steamのディスカバリーキューに流れてきたら目を止めるレベル。フリーゲームにこれを言って賞賛になるかは分からないんですが、良い意味で商品レベルのクオリティというものに達している作品であると言えます。
殊にグラフィック面は終始高いクオリティのまま最後までずっと画面を豪華に彩っており、ゲーム全体に華やかさをもたらしています。
単純な画力の高さ、アセットの圧倒的なクオリティもさることながら、それらを効果的に運用する演出や、煩くならないように配置するセンス、動と静のバランスなど、使いこなす腕前もまた一流のそれとなっています。
個人的にはステージ入りの演出が好きです。
その上で、戦闘システムはかなり斬新であり、かつ楽しいものにもなっています。
麻雀ベースではありますが、上手く揃えて攻撃を通していく、どこまでをキープに回して先を見通すかを考える、といったあたりの戦略性も高く、単なる運否天賦にとどまらない奥行きがあります。
その上で特殊役をスキルとして用意することで、大枠の戦略の方向性を自分のやりたいように組み立てられるようにもしています。
とはいえ、個人的な所感としては、大きめのスキルは発動条件が難しいので厳しいところはあります。さすがに手元の牌の数は心もとなく、ちまちま集めていくよりは、少しでも殴った方がトータルの効率は良くなりがちです。
特に、早めに決着をつけつつ消耗も抑えたい雑魚戦も戦い抜く上では、大技を振る機会はほぼありませんでした。
加えて、中盤くらいから敵の行動にこちらの牌への干渉を含むものが出てくるため、なおのこと状況をキープし続けることが難しくなっていきます。このあたりの理由もあり、長期的な戦略の目線に比べて、短期的な目標の立て方の方が重要になってくる印象があります。
ただ、それでも消耗戦になりがちな雑魚戦を勝ち抜いていくためには、牌のバランスを考えたスキルの戦略は必要であり、ここに関しては長期的な視点も必要になることが大いにあります。
あんまり単独で使わない1の役目として、1から成立するスキルを用意して上手く消費していく、色を固めることで強力なスキルを出せるようにしておき、消耗戦に備えたり、ボスへの初撃として温存しておいたりする、といったようにスキルを軸にある程度のプランは立てられます。
個人的には回復が強いなと感じていて、最終的にはほとんど回復ビルドのような構成になりました。なんでも緑6つ、緑3つ組による回復力で継戦能力を高めていくことで、ラスボス以外には回復薬を消費しないレベルの運用が可能になります。
一方で、相手の回復がある場合はジリ貧にもなりがちなんですが、そこは1の刻子などの火力となる手段を用意しておき、その分の上乗せで押し込むことを目論んでいました。
なお、装備はマナの腕輪が最強です。ほかを大して使ったわけではないんですが、ノーコストで1ターン3枚引きできるのが弱いわけがない。かつてはサイバー・ブレインが殿堂でしたからね。
牌が攻撃にも回復にも使える以上、その手数が単純に増えるという効果は絶大であり、これを使うだけでぐっと戦闘が楽になってきます。
このマナの腕輪のおかげでスキルや回復も安定するようになり、回復ビルドはだいぶ動きやすくなりました。
こうして、最終構成は以下の通りになりました。
順子と刻子はさすがに汎用性が高いので入れていて、1が3つは前述の通り余らせがちな1を上手く運用するのに取り回しが良かったので入れていました。そして、単純に回復能力の高いスキルを二つ入れることで、緑さえ安定して供給できていればほぼゾンビみたいな立ち回りができます。
単独で使う場合は、高火力の赤がない限りはドロー安定で、そこから順子や刻子で殴る形がメインでした。
最終構成 |
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また、戦闘システムのみならず、道中にある薄っすらローグライトっぽいダンジョンも楽しさに寄与しています。
ノンフィールドとして戦闘をメインに楽しみつつも、ミニゲームとしてきっちりミニなサイズのゲーム性を持つ遊びが加わることで、適度に空気を変えてくれました。ダンジョン限りの効果についても、個々人の戦略性に基づいた決定ができて良い。
オマケとしてローグライクも用意されており、戦闘システムとの噛み合いが良い設計だなと感じていました。
加えて、これらの様々なシステムを補助するUIの素晴らしさも良いところで、かなり独特なゲーム性をしていつつも、すんなりと操作を飲み込めるデザインとなっています。
恐らくもっとUIが洗練されていないようなデザインであれば、これほどすんなり楽しむことはできなかったであろうなと感じさせるものに仕上がっていました。情報の配置が上手い。
たまにどっちのターンか分からずに3つ使うつもりの牌を普通に攻撃で使ってしまうことはありましたが、これはだいたい筆者の凡ミスと言えるものです。個人的には、片側がキャンセル可能なのにもう片方がキャンセル不能な非対称性は若干気になりもしますが、設計上避け得ない部分なんだろうなとも思います。
シナリオ面についても軽く触れておくと、短編として起承転結の定まった良いものとなっています。伏線っぽいのもある。そしてどうしても入れたいのであろう、ケモノとスケベもある。そういうもの。
この容姿でドワーフとエルフの種族に分類されるパターンは初めて見たと思いますが、よく考えたらドワーフやエルフをああいうものと捉えているのも現代的な作品に慣れすぎたせいかもしれません。トールキン的にどうかは知りませんが。
閑話休題。物語展開自体は比較的王道であり、道中の様々な交流もあってゲームを進行させるための動力として機能しているように感じていました。
しかし、最終的にやろうとしていたことを鑑みると、坑道を塞いだのは彼の仕業ではないということで良いんでしょうか。焦って報告をしていたようですし。姉がそこにいた理由がそっちという可能性もあるかもしれませんね。
後はどうでも良い話なんですが、この世界、どこでもドアがある世界なんですね。この世界で放映されているドラえもんはどんな姿なんだろう。独眼竜みたいな野暮な話ではあるんですが。
03. Revive
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | ケモプレデーションゲームス+MON&Mr.H(共同制作) |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 1.w2 | クリア |
良かった点
- シビアな世界観の中で、ドロドロのシナリオが描かれています
- 敵を赦すかどうかで役割が変わるシステムはユニークでした
気になった点
- システム面がゲーム仕様に最適化されていない印象を受けました
- 主にゲームに不要なパーツが多い印象です
- シナリオの状況描写が弱く感じました
- ラスボスのイベント戦はトラップになりうると感じました
レビュー
各々の感情が入り乱れる群像劇
Reviveは、3Dのダンジョンを進み、敵と戦闘しつつシナリオを進めるRPGです。
その戦闘を有利に進めるためには、敵に有効打を与えるように弱点を突く必要があります。ただし、弱点をいちいち調べる必要はありません。オートAIによる攻撃に委ねることで、自動で判別して最適な行動をとってくれるためです。回復アイテムのタイミングだけ見計らっておきましょう。
そうして攻撃を重ねて敵を倒すと、対象を赦すかどうかを選ぶことができます。赦した場合は何度でも戦えるほか、その敵シンボルに話しかければアイテムを購入できます。その一方で、赦さない場合は敵シンボルが消滅して体力が回復します。シチュエーションに応じて選択していきましょう。
そうした戦闘を繰り返し、乗り越えていくことで進行するシナリオがこのゲームの主眼となります。
様々な登場人物が織り成す物語は、キャラクターが増えていくほどに混沌を極めていきます。各々の思惑、感情、それぞれの想いが交錯していくシナリオは、やがてそれぞれの決断を描き出します。
障害となるボスを戦闘で撃破していき、それぞれの登場人物がこの世界で何を思い、どう決断したのかを見届けていきましょう。
感想
相変わらずだいぶシビアな世界観の作品です。それぞれのキャラクターの関係性の混線具合もさることながら、各々の置かれた環境だとか、そもそもの弱肉強食の話だとか、そこで行われる決断だとか、諸々がしっかり重いです。
その分登場人物もプレイアブルのキャラクターも多く、予定外の登板と降板があるのはゲーム的には辛いところで、それの影響で難易度が上がっているきらいはあります。
そのシビアなシナリオ自体は良くて、それぞれの抱える思いとか矛盾する気持ちとか、それでも進まざるを得ない背水の行動とか、諸々が良い味を出しています。いわばダブル主人公みたいな状態なので、そこもまた良い。
個人的には悪役がもう少し芯の通った悪役だとより好きではあったんですが、全ての存在が弱さを抱えているとみなしているストーリーラインとの整合性を考えると、こっちの方が良い気はします。
ただ、イベント、特に連続で思っていることを語るシーンが入るとテンポが悪く、フェードアウトとフェードインが余計に繰り返される羽目になるのはシナリオの阻害要因となっている印象でした。無法地帯あたりで特に顕著です。
また、心情描写が主体となっている都合上、状況描写に割かれた文量が少なく、状況描写なしで場面転換が行われていき、頻繁に回想が入り乱れるので、かなり読みにくいものとなっています。ノベルゲームのような立ち絵や背景も余り無いので、今どこにいて、誰がそこにいて、どういう話を行なっているか、が事前に提示されないケースが多い印象でした。
ゲームシステムについて触れておくと、端的に言うとゲーム全体に対して不要なシステムの占める割合が多いなという印象を持ちました。
メニュー一つとってみると、移動中にスキルを使わないのだから一覧にまとめれば良いですし、ジョブチェンジやJPといったよく分からない仕組みはそもそも不要です。
ゲームの大枠の流れで見ても、一瞬しか仲間にならない対象も多い上に、ボスが原則イベント戦でメンバーが固定化されるのもあって、基本的に大多数の味方の存在が意味をなしていません。事実上、編成がほぼ不要な機能になっています。
せっかくメニューシステムを大胆に改装し、戦闘システムもデフォルトから一新しているのに、ゲーム仕様に合わせたものになっていないので、デフォルトの方がまだ慣れていて使いやすかったなという印象に陥りそうな感覚を受けました。
またゲーム中にも記載があるんですが、3Dにおけるレスポンスもそれほど良くはなく、たとえDキー押しっぱなしで移動していたとしても、回転操作への反応が遅れているという印象自体はどうしても拭えません。
おそらく誤動作防止の機能なんだろうなとは思うんですが、誤動作以上に体感が阻害されているような気もします。これがない場合の誤動作を体験していないのでなんとも言えませんが。
戦闘面については、おおむね強いキャラが頑張って殴るゲームです。攻撃力が足りないとジリ貧になるので、それなりのレベルにしておくのが無難にはなります。
雑魚敵を倒した時に許してアイテムを買うか、許さずに回復するかを選べるのはユニークで、必要な時に回復を選びつつ、アイテム購入対象を兼用することができています。あれだけやられても向かってくるその意志は凄い。
ただし、イベント戦たるラスボスはまあまあ初見殺しなので、悪いことは言わないから魔法薬と毒消しを買うのをお勧めします。
そのままだと、サシで魔法弱点の相手に魔法を封じられる泥仕合が始まります。相手の攻撃力は1ダメージ程度なので、負けるのも難しいです。
封印に毒消しが通ることは筆者の見た限りではゲーム中に記載がなく、掲示板でミスリードの一環として触れられていた程度でした。ここは明確に厳しい点で、攻略における重要情報がゲーム中に存在せず、揮発的な掲示板で語られている、というのはまあまあしんどいです。
そもそもリードをミスする対象もないのでミスリードでもありません。ミスリードついでに話すと、紹介文でミスリードに次ぐミスリードとあるんですが、あんまりミスリードが良い意味であるイメージがないので違和感を覚えました。誤解させる、誤らせるぐらいのニュアンスという気がします。
ただ、戦闘周りはフレーバーで、シナリオが主体みたいなゲーム性ではあるので、昼ドラもかくやという感情の混線を見るなら良い作品です。各々が色々と抱えつつも、各々にとっての決断を行なっていきます。
それらの決断が正しいものであったのかと客観的に判断を下すべきかという問いすら生まれうる、良い意味でぐちゃぐちゃとした感情の中で描かれた作品でした。
04. るぐれて
ジャンル | 作者 |
---|---|
探索ADV | ディッシェ大関 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 2.0.4 | 全END |
良かった点
- 細やかな演出で雰囲気を作っています
- 身近なものを想起させる良いシナリオでした
気になった点
- 森の探索面の因果関係がやや分かりにくく感じました
レビュー
るぐれての話
るぐれては、遊びに行ったおばあちゃんの家の周囲を舞台とした探索アドベンチャーです。
毎年恒例のはずだけれど、やや様相の異なる世界を探索し、物語を進めていくことになります。
この作品が描いている世界はまさに夏という季節を余すことなく描写しており、色々な演出やイベントも相まってその空気感を存分に感じ取ることができるようになっています。
描かれる物語も併せて、夏という季節と帰省というイベントをプレイヤーに強く想起させることでしょう。
また、全体を通して短編に相応なボリューム感であるため、探索すべきマップはそれほど広くなく、気軽に遊ぶことができます。
アイテムを見つけたり、イベントを起こしたりして、どこかがおかしい場所で目標を目指して歩き回りましょう。
感想
ウディコンは夏に開催されるのもあって、夏を感じさせる作品が良く出展されるんですが、この作品もそのタイプに属しています。ほかにもいくつかあるんですが、帰省という行為の卑近さもあって、個人的には一番夏を感じさせるものでした。
全体を通してみると、細かいところも含めて、諸々の演出面が凝ってるのが良いところです。
タイトルからシームレスに開始する演出から始まり、季節を感じさせるゴッドレイや、雰囲気を感じさせる森といったその場の空気感の演出がしっかりと行われていました。ゴッドレイは暗転時に残るので、うっすら気になりながらプレイしてはいましたが。
個人的に好きな演出というか手法は、散歩のタイミングで犬の操作に切り替わるところです。散歩は犬に連れられるものでしかなく、人間主体のものではないということが強く表現されていました。そもそも小さい子が主人公なので制御するのも難しいんでしょうね。
また、マップ自体は決して広くないんですが、狭い所では寄った画面にすることで上手くカバーしているのも面白いです。画面に映る対象が減るだけでも、結構世界が広く感じました。
マップが狭いおかげで探索面もそれほど探し回る必要がなく、短編としてちょうど良いサイズ感の探索要素に収まっているというメリットもあります。
シナリオ面は作中でも言及されていた通りに、バッドルートを基軸にした世界が中心になっているように感じました。これは悪い意味ではなく、グッドエンドルートがかなりとってつけたような幸福で良かったです。ベオグラードメトロの子供たちの終わりとか、シンフォニック=レインのグランドエンドとか、あのあたりにおける、でもそうはならなかったんだよという感じのエンディングが個人的に好きなので。
そもそもオマケを経由させている以上、そこからどういうエンディングを迎えても良いところなので、諸々を振り切って最大限のグッドエンドに到達するのは良いことな気がします。筆者はバッドだけでも満足しますが、グッドがある方が多分読後感は良いでしょうしね。
そして、全体パート的に、おばあちゃんが会いに来てくれたのに見ず知らずの子供たちとかくれんぼしてる時間の方が長くなってるのは、ある意味では不幸な話なのか、おばあちゃん的には遊んでいる姿が見れて嬉しいのかどちらなんでしょう。後者だと良いですね。
後は振り返ってみると、あれは未来の自分の墓参りまで幻視したという解釈になるんでしょうか。ここまでくると、過去も現在も未来も他人も肉親もごっちゃになった結構カオスな世界だったのかもしれません。
05. ラピッドスティール3
ジャンル | 作者 |
---|---|
シューティング | またび |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間20分 | 3.2.0 | 全ステージクリア |
良かった点
- テンポ良く楽しめる堅実なシューティングでした
- 多様な武器をとっかえひっかえ使っていく楽しさがあります
- 背景やボスなどのグラフィックと演出は細部まで凝られています
気になった点
- 武器と弾幕をたまに見誤るケースがありました
- アイテムと弾幕についてはその限りではありません
レビュー
細部までこだわりの込められたシューティング
ラピッドスティール3は、装備を使い分けて敵機を撃墜していくシューティングゲームです。
システムは一般的な横スクロールのシューティングを踏襲しており、要所のボスを倒していきステージを攻略することになります。
横スクロールから迫りくる敵機を上手く捌くには、3種の攻撃を使い分けるのが重要です。
連射していくメインウェポン、ここぞという場面で使う消耗の激しいサブウェポン、チャージが必要ながら反射も可能な特殊装備のそれぞれを、適切なタイミングで活用していきましょう。
それぞれの武器は出撃時に性能の異なるものへと変更もできるので、色々な武器に手を出してみるのも良いかもしれません。
また、一部の敵機を倒した際にドロップする武器を拾うことで、メインショットに追加の攻撃を一定回数加えることもできます。追加攻撃は武器によって様々ですが、どれも大きな消耗なく強化が可能なので、見つけたら積極的に拾って試していきましょう。
かなり頻繁に様々な武器がドロップするので、色々な武器をお試しで使っていく楽しさを味わえます。
そして、これらの攻撃手段を駆使してステージを進み、最後にはボスに挑むことになります。
ボスは多種のパーツが複雑に動き、各々が弾幕を張ってきます。上手く部位破壊することで戦闘を有利に進めるも良し、一気にコアの破壊を目指すも良し、自機の攻撃性能とプレイヤーの回避能力と相談し、適切な行動をとっていきましょう。
また、そのボスの複雑なパーツ挙動も含めた、グラフィック面の様々なこだわりもこのゲームの魅力の一つです。
シームレスに遷移していく背景の演出といったダイナミックなものから、細かいカーソルの物理挙動まで、様々な面でこだわりの見える表現が散りばめられています。
シューティングに集中していると気を配るのは難しいですが、余裕がある時に観察してみるのも乙なものでしょう。
難易度は決して低すぎることはないものの、リトライ制限がないため、カジュアルに楽しむこともできるシューティングです。
良くこだわられた演出と手触りを感じつつ、様々な武器を使い分けていくシューティングに興じていきましょう。
感想
数字を追うごとに完成度が増していくシューティング、その3でした。特に今作はかなりシューティング然としています。
特殊攻撃による反射はだいぶ抑えられたように感じる一方で、特殊武器とメインショットはだいぶ豊富になり、これを上手く活用していくシューティングとして堅実な設計になっています。
反射メインでもやれなくもないんですが、そのためにオーバーライドウェポンを棄てるのを若干ためらいがちだったので、筆者はあんまり使ってはいませんでした。
基本的に弾幕がまあまあ早いのも特徴的で、おかけでかなりテンポよく動き回りながらスピーディーな殲滅ができるようになっています。敵も矢継ぎ早に出現していくので、暇な時間はほぼなく、常に何かしらのアクションを取り続ける楽しさがありました。
ここに加えて、武器の回転率が良いのも面白く、敵機から武器を分捕ってどんどん入れ替えながら戦うことができます。武器はだいぶカジュアルにドロップしていくので、入れ替える分にはあんまり気負うことはありませんでした。テンポ良く様々な武器を扱っていくのは楽しいです。
その動きの速さの分、難易度は高くなりそうですが、そこは上手く抑えています。敵機の数や性質で道中は抑えめにしつつ、ボスについてもかなり抑えた性能をしており、早いが故に難しすぎるということはありません。
苛烈に感じつつもある程度は避けやすい調整になっている弾幕や、耐久のもろさでリスキルも容易な敵機性能など、細かいところの難易度バランスはかなり良いように思いました。
加えて、何度でもリトライが可能なので、シューティング初心者でも安心です。一方で、玄人は多分リトライせずにスコアアタックして楽しめると思います。リトライはスコアが棄損されるため、実質ノーコンクリアが前提となるので。
また、玄人向けにはエクストラにボスが用意されており、ここはかなり難しく感じました。筆者のレベルでは避けられなくないかな、くらいの弾幕を平気で放ってきます。弾が高速であること自体は健在なので、反射神経で対応するにも限界があり、それなりにパターンを組んで上手く倒してやる必要がありました。
筆者はやっとこさ1体倒せるくらいではあったので、そこそこシューティングできる程度の腕前だと、なかなか歯応えのある戦いが楽しめるんじゃないでしょうか。本気で調整されていたらこれがストーリーのレベルだったのかと思うと戦慄します。
個人的にシステム面で気になるのは武器と敵の視認性くらいで、これも慣れると判別できるようになってきます。弾がいっぱい撒かれているとたまに誤認する程度です。また、アイテムと弾丸の視認性は取れているので、そこで間違うことはほぼありませんでした。
後はキーコンの初期状態だけ慣れられませんでしたが、これもキー設定があるのでセルフでカバー可能です。細かいところにも手が行き届いていました。
さらに、凝ったグラフィック表現もこのゲームの特徴の一つと言えるでしょう。
まず背景が凝っています。ステージ間がシームレスに繋がって場面転換していく演出の完成度が高く、こだわりを強く感じました。シンプルな演出の中では、移動要塞の背景が回っていくのがお気に入りです。
弾幕が苛烈なのもあって、背景を楽しんでいる余裕があんまりないのは嬉しいような悲しいようなところなので、人がプレイしているのを見るのも面白いかもしれません。
キャラクターの動きもだいぶ凝っていて、それぞれが感情豊かに動いてくれます。
作品が出るたびに増えていくキャラクターも健在で、これまたアクの強いオアシスが増員されました。その出自故に戦闘能力に長けていればと思っているところがありそうですが、それはそれとしても単純に戦闘訓練狂なキャラクター性をしています。
各々のキャラクターが機械なのもあり、機械的なボイスが違和感なく受け入れられ、単純にプラスの働きをしているのも面白いところでした。
そして、ボスの動きは本当に凝っています。絶え間なく様々な部分が動いており、それぞれの部位破壊もちゃんと用意されていました。
しかもこのボスは非常に多く、全部で3つあるストーリーの要所で、それぞれオリジナルにボスが出現していくことになります。このクオリティをこの数用意するのは恐ろしい話です。
それぞれがシューティングの山場であるボス戦を飾るに相応しく、ゲームの起伏としての役割の一つを完璧に担うことができていたのも、この複雑に良く動くグラフィックが一因となっているであろうことは想像に難くありません。
また、細かなところの演出というかこだわりについても結構好きなところの多い作品でもありました。
個人的に好きなところを挙げると、最後に行われるハッチの演出とか、カーソルについたストラップが動かすと自然に揺れる演出あたりです。お洒落。
こういった細かい良さみポイントが色々詰まっているゲームでした。
これは余談になりますが、製作の闇を見る限り、やはりウディタ3は結構強力になっているみたいで面白かったです。こういう処理をいっぱい使う系は割と恩恵が大きそうですね。
そして、バグが出ない方が不安というのは、分かりすぎて首がもげそうなくらい首肯したい話です。割と複雑な実装をして、一発でコンパイルが通った時の得も言われぬ不安があります。
06. デスペレートホープ
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノンフィールドRPG | ケイ素 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
40分 | 1.19 | NORMAL |
良かった点
- スロットに作用するマス取りゲームから成る戦闘システムが秀逸です
- きちんと考えて戦略を選んでいく奥行きがありました
- コンパクトに遊ばせることに特化したゲームデザインで通貫されています
気になった点
- 一度戦略が固定化されるとスキルを変える動機が弱い印象があります
- 全体として短いので固定化されてだれるほどにはなりません
レビュー
自分に有利な盤面を作り、相手に不利な盤面を押し付けよう
デスペレートホープは、戦闘メインで進行していくノンフィールド型のRPGです。
いくつかの雑魚敵との戦闘やイベントを経た後、ボスに挑んでいく一方通行の流れとなっています。
遭遇する戦闘、とりわけ強力なボスとの戦闘に勝つためには、その戦闘システムを十全に活用する必要があります。
このゲームの戦闘システムはスロットをお互いに奪い合い、スロットが埋まった時に埋めていた数に応じてスキルが発動していく、マス取りゲームのようなものとなっています。
戦闘画面 |
---|
スロットは上記のように二つの盤面に分かれており、敵味方にかかわらず4つのスロットが埋まった時にそれぞれの配置数に合わせたスキルが発動します。
プレイヤーはターンごとに装填されるSPを消費し、このスロットをチャージして埋めることになります。例えば、このターンで下の盤面のスロットに1つチャージすれば、こちらのスロット1つのスキルであるブラスター、相手のスロット2つのスキルである体当たり、などが発動することになります。
一般に多くのスロットを埋めることで強力な攻撃が発動するため、一つの盤面を埋め続けて高火力で攻め立てるのは有効な戦略となるでしょう。その一方で、敵に多くスロットを埋められると、こちらに強力な攻撃が飛んできてしまいます。発動させたくない攻撃を妨害するためにスロットを埋めるというのもまた重要です。
二つの盤面の状況をよく見極め、それぞれの状態や敵の攻撃に必要なスロット数を見て、上手くSPを割り振っていきましょう。
加えて、特定の位置のスロットに状態異常を付与することもでき、これにより次にこのスロットにチャージした対象に一定のバフやデバフをかけることができます。上記の画像を例に取ると、上の盤面の最初の二回ぶんのチャージをすると性能低下のデバフを受けてしまいます。
上手く使えば自分にだけ有利なバフを乗せることもできますし、相手に目いっぱいのデバフを吹っ掛けることもできます。スキルを上手く駆使しつつ盤面をコントロールし、状態異常を押し付けることができれば、戦闘を優位に進めることができるでしょう。
こうした戦略に欠かせないスキルは道中のイベントや戦闘後に取得することができ、各スキルが発動するスロット数に応じて一つだけ保有することができます。
自身の戦略の要となるものを残しつつ、より良いスキルが手に入ったらどんどん乗り換えていきましょう。
これらの戦闘システムと得られたスキルを活用し、ボスを倒していくことでプレイヤーはクリアを目指すことになります。しかし、このゲームにはもう一つの側面として、スコアアタックというシステムが兼ね備えられています。
スコアを稼ぐには高難度モードに挑むことに加え、経過ターンを少なくしたり、被ダメージを多くしたりと、よりリスクの高いことに挑む必要があります。腕に覚えのある方は挑戦してみましょう。
感想
戦闘システムが面白い作品です。前作からすでに面白かったんですが、マスに対して効果が付与されるようになったおかげで、よりこちら側から取れる選択肢が広がって奥行きが増しています。
また、前作だとあんまりプレイヤーキャラの入れ替えを積極的に使う旨味が無かったんですが、今作はスキルが制約される都合上、コスト1とコスト2の同時発動をしたいケースも間々あり、キャラを変えて取るメリットも強めに出ています。
また、ゲーム性はデッキ構築型ローグライクっぽくなったというか、スコアアタックに寄った設計になっています。とはいえ、スコア要件がだいぶ特殊な性質をしているので、玄人はスコアを追求し、それ以外はとりあえずクリアを目指せる良いバランスに落ち着いてるような印象です。
難易度もそれほど高くはなく、NORMALであればHPを半分割ることすらなく終えることもできます。リソース管理を適度にやる必要がありつつ、あんまり厳しくもない良い塩梅でした。
マス取りゲームの戦略性自体は良い一方で、スキルの取得は戦略が固まってくると固定化しがちなところはありました。そもそも取り換えても活躍するか分からない上、枠が狭いので戦略の核としてるスキルとの取り換えを要求される場面も多いです。こうなってくると、安定戦略を捨ててまでお試しをするのはだいぶハードルが高くなります。
個人的には強制差し替えぐらいやっても良いんじゃないかという気がしますが、それだとスコアアタックとの食い合わせが悪そうです。スキル取得選択肢が地雷選択肢になりかねないというのも気になります。
そういう意味では、当意即妙に手持ちのカードで戦うというよりは、ちゃんと組んだ戦略でプレイヤーがやりたいことをやらせてくれることを優先した設計なのかなと思っています。
スコアアタックによって何度も挑戦することを推奨するデザインでもあるので、違う戦略を試すのは次の周回、くらいの感覚なのかもしれません。
シナリオについてはかなり簡略化されたというか、ある程度サクサク進めるために芯だけ外さずにほかの要素をそぎ落としたようなものとなっています。
なんとなくいつもなら依頼者あたりが黒幕となり一波乱あるような展開がありそうなところですが、そんなこともなく普通に良い人として終わります。疑ってごめん。
この辺もスコアアタックによる周回を念頭に置いたゲームの設計っぽいなと感じていました。
なお、NORMALクリア時の構成は以下の通りです。
1個で撃てるシンドロームが強く、ダメージ以上にHP減少を相手に押し付ける運用でだいぶ戦えました。メインの攻撃択はセパレーションで、付加無効をついでに拾えるとボス戦で安定します。
道中や長期戦の戦闘中はリペアミストの性能に頼りきりで、ここを外す選択肢は最後まで生まれませんでした。生命線です。
G・ダイナミックは発動機会に恵まれなかったですね。ミアズマはもともと回復枠でしたが、終盤にボス戦に向けて攻撃枠に挿げ替えました。結局シンドロームの方が強かったような気もする。
クリア画面 |
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とにかく、全体的に短くコンパクトに遊ばせつつ、スコアアタックで何度も挑めるデザインに、システムやシナリオを合わせに行ったような作品でした。
07. イマジナリーディストピア
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG/ADV | 銀ノ薺道 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
4時間 | 1.03 | クリア |
良かった点
- 個性的なキャラクターによるシナリオが楽しめます
- RPG要素が上手く演出に絡んでいました
- 世界観を表現するグラフィックが良かったです
気になった点
- 特にラスボスにおいて、リトライ性がやや悪いです
- イベントスキップか戦闘直前でリトライしたい気持ちがあります
- また、リトライ時については前回選択したセーブ位置に戻っていると助かります
レビュー
[イノル先生]を始末せよ
イマジナリーディストピアは、シナリオがメインのRPGです。
アドベンチャーゲームのようなイベントパートとRPGのような探索と戦闘のパートが交互に行われることで、シナリオが進行していく流れとなっています。
そのシナリオの軸となるのは、舞台である空想世界と、主人公である先生たちです。とある事件をきっかけに混乱に陥った世界の中で、生徒を救うためにもそれぞれの思惑と共に行動していくことになります。
その特殊な世界観と、生徒も含めた個性的なキャラクターたちがシナリオを盛り上げてくれることでしょう。
ただし、その物語を進めるにはRPGとしての戦闘を避けて通ることはできません。この戦いで勝利を収めていくには、キャラクターの編成とそれに伴う各々のスキルの使い方が重要になります。
ボスの性質を見極め、その攻撃手段や弱点を踏まえつつ、上手くスキルを使って戦闘を有利に進めていきましょう。
なお、レベルの概念がないため、無理に雑魚と戦う必要はありません。シナリオに集中したい場合は、適度にシンボルエンカウントの雑魚を避けていくのも良いでしょう。
世界観を上手く表現するグラフィックから、RPG要素である戦闘まで、全てを演出へと組み入れたシナリオは最後まで目が離せません。
主人公、そして生徒たちの行方を見届けるためにも、歯応えのある戦闘に打ち勝ち、シナリオをエンディングまで導いていきましょう。
感想
RPGなんですけど感覚的にはだいぶアドベンチャーでした。所々避けられない戦闘を乗り越える必要はありますが、雑魚戦はおおむねシンボルから逃げるのが安定なのと、シナリオパートの尺がしっかりと長いので。
その分、色々と世界観を広げたりキャラクターごとの特徴を描写していたりと、シナリオ重視感のある作品になっていました。
ひとまず戦闘面に触れておくと、キャラクターの入れ替えが激しいのもあり、そこにある手札で上手くいなす戦闘をやることになります。
アドベンチャー主体とは言っても戦闘は意外と歯応えがあり、適当にプレイしているとまあまあピンチに陥りやすいです。バフデバフや弱点、回復周りは注意深くケアしておく必要があり、なかなか気の抜けないレベルデザインになっています。
特にラスボス戦は初見殺し度合も高く、そこそこ難易度は高めでした。一応セーフスペースにおける会話にヒントがあるとはいえ、それだけで戦略を組み立てるのは難しそうです。筆者は二度目で通しました。
そういうこともあり、ラスボスのリトライが結構長いのは地味にしんどいところはあります。メンバー選択直前から始めるか、せめてイベントスキップがあると助かるだろうなとは思います。ラストイベントが結構長いので。
ちなみに、本当の意味でのラスボスで挑むメンバーがああなるのは割と好きな演出ではあり、それぞれのスキルを上手く活用するのも面白そうだなと思っていたんですが、ヘッドショット一発で沈めてしまいました。これが運を天に任せたということでしょうか。
直前のボスにも何度か一を引きに行ってはいたんですが、まさか最後の最後に一回で決まるとは思っていませんでした。豪運なのかそうでもないのか。
シナリオの面はむしろこのゲームの主眼ともいえるところであり、前述の通りかなり尺を取っています。
筆者はウディコンを遊んでいる都合上、前々作にあたるゲームはプレイ済みで、そこから拡張された世界を味わっていました。前々作はぷるあに焦点が当たる都合上、ほかのキャラクターたちはフレーバーくらいの印象しかなかったんですが、今作ではそれぞれのキャラクター性が割と掘り下げられていたのが良かったです。
ただ、前々作をやった記憶も相まって登場人物の把握ができたきらいもあるので、初見でこの人数を把握するのは割と難しいかもしれません。各々特徴的なキャラクターをしているので、プレイしているうちに覚えていけるとは思いますが。
キャラクターの個性もさることながら、世界観とそれを活かしたシナリオも良く、様々な場面で山場もあって盛り上がりもします。
この手のゲームとしては宿痾に近い、序盤のほのぼのパートに尺を取らねばならない問題についても、おおむね30分程度で収めているのでなんとかなっていました。
世界観については前々作をやった経験で多少なりとも世界への理解がなされているから把握できた側面を否定はできませんが、ある程度説明もなされているので多分理解はできるものだと思っています。
しかし、ラスボスの末路はまあそうなるだろうとして、真相を知って消されたっぽい3人は気になる上で、どうしても後味の悪さは拭えないではいます。かなりどうしようもない事態に陥っていた側面はあるんですが、微妙に主人公側の手落ち感が否めない幕引きになってる気もします。
まあそれも含めた人間臭さは、フィジカルつよつよメンタルよわよわの先生らしいところではあるんですが。
08. チーターは無理ゲーを走る
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | なごみやソフト |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 1.06 | クリア |
良かった点
- パズル的な戦略が楽しめる戦闘でした
- その上で、チートによる回答の幅も感じさせるデザインとなっています
- 特に各々のボスの攻略法が個性的です
- ヒントが充実しています
気になった点
- ラスボスだけ唐突に攻略の雰囲気が変わった印象を受けました
レビュー
無理ゲー攻略の鍵は戦略性
チーターは無理ゲーを走る は、無理ゲーの戦闘をチートでクリアしていくRPGです。
ゲームの舞台となるのはAI製のVRMMORPGであり、ここに閉じ込められるところから物語は始まります。主人公はハッカー集団のメンバーと共に、AIの暴走により無理ゲーと化したゲームのクリアを目指すこととなります。
無理ゲーの名に恥じず、敵の攻撃力がカンストのため一撃で倒してきたり、防御力がカンストなので攻撃が通らなかったりと、通常ならクリア不可能なゲームを攻略する羽目になります。
そんな雑魚敵ですら規格外のステータスを持つこのゲームにおいて、戦闘に勝利して攻略を進めていくには味方のチートスキルが不可欠です。
味方となるキャラクターにはそれぞれ、1%でも確率があれば必中になる、ターンの終了時に全回復で蘇生する、といった特殊な性能が備えられています。これを最大限活用し、上手く相手の攻撃をいなしつつ、こちらの攻撃を通すパズル的な思考が攻略の糸口となります。
そうして、これらの強力なスキルと状態異常を武器に、様々な無理を押し付ける敵を撃破していくことになります。
また、各ステージの最後には、とりわけ強力なボスが待ち構えています。理不尽な性能を誇るボスに対して勝利をつかみ取るためには、より重点的に相手の行動を観察し、適切な行動を見つけ出し、きちんと対処していかなければなりません。自身のスキルをよく見て、相手の行動に刺せそうな戦略を構築していくことが肝要となるでしょう。
また、場合によっては、チートの力でごり押すことも不可能ではありません。ボスを倒すことで得られる素材から、こちらもステータスのカンストを始めとしたチートスキルを獲得することができます。
ボスに負けた際に閲覧できるようになるヒントもまた充実しているため、これらを活用しつつ何度も挑戦して突破口を見つけていきましょう。
感想
戦闘というかだいぶパズルめいているんですが、そこそこチートによるゴリ押しも効くタイプの戦略性をしています。ラスボスはほぼ完全なるパズルですが。なお、ラスボスについては想定解以外でも回復アイテムでゴリ押せそうに見えるんですが、筆者は上手くいきませんでした。なんとなくできそうな気配だけはあります。
戦闘のデザインはシステム自体を乗りこなすギミックバトルという空気感があり、手持ちの札をどこで切って対応していくかを求められるような印象を受けます。
数値やらスキルやらぶっ飛んだシステムではあって、ともすれば大味な戦闘が繰り広げられることもあるんですが、大まかには相手の攻撃を封じてこちらの行動を通す繊細さで中和されていたような感じがします。
そういった戦略性が重視される設計でありながら、チートを題材にしていることもあって、上述の通り色々とゴリ押しが通るのも面白いところです。
特に雑魚戦はそれが顕著で、チートパワーが高まるまではある程度ちゃんと処理する必要があるんですが、チートパワーが充分あればなんとでもなります。ぶっ壊れスペックは正義。
ボス戦においてもあえて別解を許容していそうな緩さがあり、こちらのチートパワーによっては難なく撃破できてしまうこともあります。考えても無理なら稼ぎましょうという向きに感じました。
また、ボスについてはおおむね初見クリアはできるようになっていない気配を感じはしますが、そこは作中でも言及のある通りに、死んで覚えるデザインを徹底した結果なんだろうなとは思っています。
実際、リトライに特別なペナルティはないので、それほど気にすることなく再戦できます。試行錯誤はかなりしやすい部類に感じました。個人的には3戦もすれば大体突破できる難易度かなと思っています。
ただ、魔導王のところだけチートパワーが高まりすぎて負けにならず、突破口も見えないから回復もされ続けるデッドロックめいた状況になってしまいました。耐久タイプのボスなのでそういうものだとは思いますが、制限ターンあたりでゲーム側から諦めさせられる方が親切な気もします。
なお、前述のように結構緩めのボス攻略設計ながら、ラスボスだけはガチガチのパズル設計になっています。ここだけ毛色がだいぶ違うなというレベルであり、ギアが一段どころではない水準で上昇します。この間くらいのボスは感触としてはいないので、完全に一人隔絶したデザインとすら感じました。
ラスボスの立ち位置を考えるとある種当然なものではあり、シナリオ上の要としては納得感はあると思うんですが、ボスを連なりで見るとやはり浮く存在であるとも思います。
個人的には緩くも厳しくもどちらも好きなので、どちらでも良いんですが、一つの作品内でのスタンスとしては若干ブレているような印象を受けていました。
シナリオ面ではちょっとしたどんでん返しを用意しつつ、作品規模相応のサイズ感に収まった良い塩梅のものとなっています。ただ、ひっくり返す過程で大体納得のいく説明がなされるんですが、それでもやや解釈できていないバックグラウンドもありました。
AIゲームを作ったのが父であり、AIプレイヤーを作ったのも父である、AIプレイヤーはAIゲームを遊ぶために作られたプレイヤーである、あたりまで来て、では今幽閉されているこのゲームの立ち位置がどこになるのかというあたりが判然としません。
作中序盤はAI製のゲームという説明がなされていますが、そうだとするとクリア可能なゲームにしておく理由があんまりない気もするので、AIプレイヤーに恨みを持ったゲーム制作者による行動あたりが落とし所な気がします。ラスボスをどう捉えるかという話も残りますが。
なんかこの辺の話をしていたような記憶もあるので、もしかしたら筆者がラスボスの攻略に頭を悩ませている間に頭から消し飛ばしてしまっただけかもしれません。その場合はごめんなさい。
なお、これはどうでも良いんですが、タイトルから主人公が一人ハブられているのには涙を禁じ得ません。シナリオ上の要請からというわけでもなさそうなので、ごく単純に花を重視したのか和服を重視したのでしょう。かわいそう。
ハッカーっぽくのオーダーでも和服を合わせることを忘れない作品なので、和服が全てに優先されるのはさもありなんというところでしょうか。
09. イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi-
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクションRPG | わたえもん |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間30分 | 1.13 | クリア |
良かった点
- 手触りの良いアクションが楽しめます
- 合成システムを始めとした、自分なりのビルドを構成する楽しみがあります
気になった点
- エフェクトと攻撃判定間の納得感が薄めでした
- ゲーム規模に比してシステムがかなり複雑です
レビュー
自分なりの戦い方を模索しよう
イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi- は、二人のキャラクターを切り替えて戦う見下ろし型のアクションRPGです。
攻撃やジャンプ、スキルを駆使して上手く立ち回っていくアクションを楽しむことができます。
敵と対峙するにはそれらのアクションを上手く扱うことはもちろん大事ですが、それ以上に重要となるのは様々なビルドの構成です。
とりわけ、レベルアップで得られるポイントから習得することになるスキルをどう構成していくかは、その要となります。パッシブスキルに振って立ち回りを強化するも良し、攻撃スキルに割り振って早期決戦を挑むも良し、特殊なスキルを習得してトリッキーに戦うも良し、自分なりの戦い方を構築していくことができるでしょう。
さらに、敵を倒したり、マップに落ちているものを拾ったりすることで得られる素材を集め、それらを基に装備やアイテムを合成することもできます。
こうして得られた素材にはランダムでそれぞれエンチャント効果が定められているため、素材の組み合わせ次第では強力な装備を作り出すこともできます。エンチャントの種類はステータスの強化のみならず、詠唱速度の加速やHPの吸収などの特殊な効果の付与にまで及びます。
自分の戦い方に合わせて、最適なエンチャントを持つ装備を作ることができれば、戦いを優位に進められるでしょう。
そうして組み上げたスキルと装備を活かし、シナリオ進行の障害となる強力なボスに挑むこととなります。ボスの攻略法もまた様々であり、敵の行動を見切って的確に攻撃を当てていくプレイングで挑んでみたり、装備を固めてハメてみたりと、好きなやり方で挑むことができます。
自分なりの戦い方とビルドを基に、マップを縦横無尽に駆け巡り、ボスを打ち倒していきましょう。
感想
割とずっと言っているんですが、ジャンプで飛び回って戦うのが楽しい作品です。でも多分、一番強いのは法陣を敷いて殴り続けることなんだろうなとも思っています。事実上のゾンビアタックなので。
マップの段差がちょうど良い感じにあるのもミソで、とにかく飛び回りたくなります。そして、だいぶ奥まった所にもちゃんと素材が落ちてるので、適当に飛び回りながら深いところに入り込んでは、ここにも落ちてるんだと拾い集めている時間が長めでした。おかげですぐにアイテムがいっぱいになります。
アイテムの所有限界については結構大変で、本当に拾えなくなるまで何の警告もしてくれない上、捨てることも原則できないので、最悪ケースだとボスのドロップが拾えなくなります。筆者はこれで滋養のために二回倒す羽目になりました。無念。
多分、強制的に帰還させるための仕組みだとは思うんですが、せめて残りちょっとになったら警告が欲しいところではありました。こんなに一杯拾い集めている奴が想定外と言えば、そうなのかもしれません。
アクションについては、おおむねヒットアンドアウェイや回復からのごり押しも通じる幅のあるデザインです。
装備とかビルドによっては色々とやれることはあって、上手く作ると延々回復しながら殴ってくる永久機関みたいなキャラクターが出来上がります。でも、たまに毒にやられて戦闘不能になる。
筆者はヒットアンドアウェイが好きなのでチマチマ殴ってましたが、回復能力を相手取ると持久戦になりがちなので微妙ではありました。短期決戦には脳筋戦法が良いのかもしれません。
アクションの手触りは上記の感じで良いのですが、エフェクトと攻撃判定の関係の納得感の薄さや、マップ上にある引っかかるオブジェクトの多さや分かりにくさなどが、若干ストレスを生んでいるようには感じました。
特にエフェクトはほぼ消えていても判定が残っていることがあり、そういうエフェクトのある大技が総じて火力が高いのもあって、理不尽な戦闘不能に繋がりがちでした。片側が戦闘不能になるとぬるっと相方が出てくるのも相まって、あれいつの間にやられたんだろう、みたいな状態になることが多かったです。
引っかかりは主に雑魚戦で致命的で、マップのオブジェクトの物理衝突を理解できていないと、ジャンプの判断が遅れて袋叩きになるケースが間々あります。慣れるまでは割と初見殺しみがある。
また、扉系の場所も結構引っかかりやすいポイントで、1マス幅しかない所に急いで入ろうとするとそこそこ失敗します。1.5マス幅なら救われる命も多分ありました。
また、システム面で言うと、プレイ時間に比してかなり重厚なシステムが構築されています。
スキルの付与から始まり、装備合成、それによるエンチャントの厳選、継承、といったようにかなりカスタマイズ性の高い仕組みとなっています。これ自体の完成度は高く、色々と自分なりに作る楽しみはあるんですが、その楽しみが十全にできる頃にはほぼクリア目前になりがちでもありました。
10時間くらいあるゲームのシステムが3時間のゲームに積まれている印象で、尺があればもう少し色々工夫して楽しめたのかなと感じています。性質を理解するための時間があんまりありません。
なお、個人的に好きなビルドはHP吸収メインで、回復のハードルが若干高いところに効いてきます。上手く戦えば、少なくとも雑魚相手には敗北しにくいところもあり、好んでエンチャントするものの一つとなっていました。
個人的に気になった点としては換金アイテムがほぼないところで、本を買うためにはある程度素材を売ってやる必要があります。
ただ、素材一つ一つにエンチャントがあり、それぞれの効能がテキスト上でしか示されず、良く分からないうちから取捨選択を迫られるので、このあたりの換金作業が非常に手間でした。一発で売り切ってしまうのが思考的には楽なんですが、レアっぽいアイテムもちらほらあるのと、合成に必要なアイテムがあったりするのが難しいところです。
足切りが簡単にできればもう少し考える時間を減らせそうなんですが、かなり複雑なのですでにあるソートでも如何ともしがたいところです。いっそレアリティくらい分かりやすい概念がないとどうにもならない気もします。
シナリオ面では分岐がそこそこ中間のところにあり、見事に外したために正史ルートには入れませんでした。終わってそうな出来事がずっと残り続けていたのでそういうもんかと思っていたら、一つだけちゃんとルートにかかわることができていなかったようです。凡ミス。
シナリオ自体はアクションゲームとして考えるとかなりボリュームがあり、町で色々とイベントを起こすこともできるので楽しかったです。意味もなく、シナリオが進行していそうなタイミングで町に戻って色々と話しかけるなどしていました。
10. ±0 -Black Rain-
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクション/探索ADV | 氷瀬るん |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 1.09 | NORMAL |
良かった点
- 美麗なグラフィックと高い演出力からなるカットシーンは圧巻でした
- キャラクターがダイナミックに動く迫力のある戦闘シーンを楽しめます
- 戦闘パート以外にもバリエーションがあり、飽きにくい設計になっています
気になった点
- 戦闘パートは防御と必殺技優位なバランスとなっていて、攻める理由が余りありませんでした
- ダッシュジャンプ地帯について、ダッシュジャンプするとむしろ突破できなくなるミスリードに感じました
レビュー
死を齎すもの
±0 -Black Rain- は、美しいグラフィックに圧倒される演出が特徴的な、アクションと探索を合わせたようなゲームです。
探索パートを適宜挟みつつ、要所では戦いに挑むことになる流れとなっています。
ただし、一口に探索と言っても、プラットフォーマーめいたものから謎解きチックなものまで色々な試練が待ち構えています。時にはアクション性を要求され、時には思考を要求されつつも、上手くそれらを処理し、物語を進めていきましょう。
また、ただの探索パートでも、場合によっては後の分岐にかかわることもあり得ます。様々な場所を見て回ることも必要かもしれません。
そうした探索を経て、シナリオの関門として設定される戦闘へと突入していくことになります。戦闘パートでは、その圧巻のグラフィックによりダイナミックに動くキャラクターに圧倒されることは疑い得ません。
ゲーム性としてはチャンバラに類するものであり、タイミングよく攻撃し、相手の行動に上手くタイミングを合わせて防御するのが基本戦略となります。
敵の動きをよく見て、適切に守りつつ相手に攻撃を加えていきましょう。
探索、戦闘を通じて、そして何よりもシナリオにおいて発揮されるグラフィックの圧倒的な美麗さが、やや暗さをはらむ物語を美しく表現した作品となっています。高い演出力に裏打ちされたカットシーンもまたシナリオを彩り、より没入できるものへと昇華させてくれること必至です。
美麗な世界に足を踏み入れましょう。
感想
画の力が凄いゲームです。そしてそれは、もちろん要所におけるスチルの上手さや、立ち絵の綺麗さもあるんですが、特に戦闘シーンにおける画面の圧を絵の圧倒的な美麗さによる迫力で表現しているところが圧巻となります。
ひとまず戦闘シーン以外の画の強さに触れておくと、細かいシーンの表現力が抜けて高い作品となっています。絵による表現力がずば抜けて高いのはもはや見ずとも分かるとして、カメラワークや細かい尺など、カットシーンにおける演出力も極めて高い水準にあります。
ここに天元突破の画の力が入ってくるので、画面に込められている力のかかり方は尋常でないものになります。圧倒的と言って遜色ないレベルです。
もちろんよく動く立ち絵もクオリティが高く、それぞれの感情や機微を細かく表現するものとなっています。
そして何といっても印象に残る戦闘パートですが、各々のグラフィックが大きく映り、ダイナミックに動きます。これだけで迫力が出ています。凄い。
プレイフィールはチャンバラに近いですが、大写しとなったキャラクターの動きと大胆なエフェクトでかなり見目映える戦闘シーンへと昇華されています。余りにエフェクトと動きが強すぎて、下手に攻撃するとガードモーションと予兆モーションが被って被弾しがちなのはご愛敬。
なお、そういう面があるので、戦闘パートはゲーム性的には全段弾いて必殺を叩き込むのが安定行動にはなりがちでした。下手に殴るとガードされ、手痛い反撃をもらうことも多いので、ガード貫通の必殺に集中する方が色々と楽です。突発的な処理落ちにも対応しやすいので。
ただこのやり方だと相手の必殺技が見られないことが多いので、とりあえずは全力で挑むのも良いと思います。せっかくなら相手の必殺技も見たいですからね。
戦闘パート以外は主に探索パートで構成されており、ややアクション性があったり、シンプルな探索要素があったりと、ちょっとバリエーションを変えることで上手く間を持たせている印象でした。
個人的にはつくね選びが難関で、クリアした時点でさえ、何体か見分けのつかないつくねが混じっていました。最奥にいるだろうというメタ読みが無ければ危なかったです。翻って支部長は余りにも解釈違い過ぎて一瞬で分かりました。
シナリオ面で言うと、最後の時計塔に見覚えがあるなあと進めていたらプルートニオンを思い出し、そこそこ暗い気持ちになりながら最終戦を迎えていました。プルートニオンそれ自体、あんまりにもあんまりな結末の多い印象がありましたが、ここに加えてなおあんまりな結果になっているあたりは残酷ですね。あの人たちは一生くだらない漫才やっていて欲しかったです。
まあまあなことをしでかしてるラスボスではありつつ、その時の記憶から肯定はできないまでも納得はできる自分がいました。彼ならやる。
なお、このゲームは今ウディコンにおける飯テロゲームの一つでもあります。絵の上手いゲームは飯を上手く描いておなかを空かせてきがちですね。
11. 水底の記憶
ジャンル | 作者 |
---|---|
ADV | EHS(イースターハイスクール) |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 1.0.5 | 全END |
良かった点
- 豊かなアニメーションによる演出が強く印象に残りました
- 短編として完成度の高いシナリオでした
- イベントとミニゲームの塩梅が良いです
気になった点
- 初期マップにある自販機がミスリードに感じました
- ここで水を取得して使うと、アイテムの効果が無いものという誤解を招くかもしれません
レビュー
記憶の奥底から繋がるもの
水底の記憶は、短編のADVです。
夏祭りを謎のお面の少女と共に回っていきながら、記憶の奥底にある出来事を追憶していく物語となっています。
プレイヤーは射的や千本つりといったミニゲームを通して夏祭りを体験しつつ、そこで得られたものから過去を回想していくことになります。
こうした昔日の回顧は、幾枚ものスチルから成る叙情豊かなアニメーションの演出によって構成されており、強く印象に残る情景が描かれるものとなっています。
この在りし日の場面において交わされる短いやり取りの中で、主人公、あるいはプレイヤーは過ぎ去った日々の一幕の想いを選択していくことになるでしょう。そして、その選択次第で、二つのエンディングのうちのどちらに決着するかが決まります。
過去の選択とともにその出来事を追体験していき、やがて至るそのエンディングを見届けましょう。
一つのエンドに到達するのには10分強程度しか必要としないため、手軽にプレイすることができる作品となっています。加えて、その短い中には充実した演出とシナリオが詰め込まれており、プレイ後の満足度が非常に高い作品でもあります。
ぜひとも、ある日を追憶し、その選択を重ね、真のエンドへと辿り着いてみてください。
感想
良い短編のADVでした。要素一つ一つを拾ってどこが良いか語るのも良いんですが、とりあえずまずはその一言に尽きます。
情景が豊かに描かれるアニメーションスチルの印象強さや、そこから数少ないやり取りで想像させる物語性の妙が素晴らしく、また好みのものでもあるんですが、筆者が一番好きなのは真エンドへのヒントの出し方にありました。
それはいったん後述するとして、やはり触れなくてはならないのは細かいスチルの多さ、あるいはアニメーションとしての多様さです。
入りからして雰囲気最高の導入を演出していますが、その雰囲気を崩すことなく、抒情溢れる演出とともにゲームが進行していきます。それぞれのイベントが適切に印象に残る形で現れていき、全てがきちんとした意味をもって最後へと繋がっていきます。
なお、グラフィック面で個人的に好きなところは目の描き方と、気の抜けた表情の描写あたりです。内心気を抜いているかは分かりませんが。
探索アドベンチャーではないのでマップは一本道で、移動速度は演出の都合上なのかまあまあ遅めです。ただ、マップは狭いので、そこまで気にはなりませんでした。
分岐は入りさえすれば選択肢が出るので自明なところですが、イベントを起こすのにアイテムを使わないといけないことに気付かないと、何も見ずに終わることになります。筆者はここで一敗しています。
通常プレイなら最初に手に入るアメをとりあえず使うので分かるだろうという話なんですが、筆者は適当に歩き回った結果、自販機で水を購入して飲んでしまったため、何も起きないという学習をしてしまいました。それにしてもアメぐらい使えという気もしてきますが。
この個人的な体験をもとにすると、変なミスリードになる恐れがあるので自販機を撤去しても良い気はしています。必要なのはだいぶ先ですし。
このため、二週目でアイテムをようやっと使い分岐に気付き、最後の言葉で別の分岐に到達して全エンドクリア、という流れになっています。
このように3周やって30分、1周10分ちょっとくらいの本当に短めの短編ではあるんですが、先述の演出の力も相まって印象にはきっちり刻み込まれる作品でもありました。
前述したシナリオの話、あるいは分岐についての話にも触れます。
シナリオに触れる前に分岐に触れた方がスムーズなので、まずは分岐の話をするんですが、心理的に選びにくい選択肢をもって構成しています。
この手のゲームにおける分岐というのは、慣れてくるとおおむねグッドエンドに結びつきそうな選択肢が見えてくるものが多く、またそれがある程度は正しい様相でもあります。それっぽい選択肢がそのまま正解であるというのは、プレイヤーが持つ期待を裏切らないということであり、それが自然であるということも示すことが多いためです。これを裏切るにはシナリオ上なり構成上なりゲームシステムなりに、強いカロリーを要求することになり、一歩間違えると単なる不親切へと作品を貶める結果にさえ繋がりかねません。
前置きが長くなりましたが、この作品は心理的に選びにくいその選択肢をもって真エンドへと導くため、別の熱量を必要とする後者の方に位置すると言えます。その上で、きっちりと選択自体に意味を持たせ、そのハードルを飛び越えた作品となっていました。
まずシナリオ面で見ていくと、これはある記憶の場面における自身の感情への追憶です。
良く知られている通り、記憶というのはかなりいい加減なものなので、ちょくちょく都合よくその時々を改ざんすることがあります。あの選択肢を選ぶということは、その時の自分を都合の良いものへと改ざんする行為であり、そうして形作られた都合の良い自分では、最後の行為の際に過った感情にラベルを付けることができません。
それはある意味では自己のどこかを喪失するようなものであると解釈でき、最後のエンディングに繋がることに何の不思議もありません。シナリオ上の意味合いで取れば、振り返ってみればあの選択肢は明らかに失着であることが分かるようになっています。
不合理な選択肢の自然さはこのようにして担保されることになります。
次いで、ゲーム的な面で見ると、あの選択肢に反する理由付けが必要です。とはいえ、露骨にヒントを出すのも興が冷めます。
そういう難しい場面において、真エンドでない時に提示されるのは、ただ、難しいよねという共感とも無念とも取れる一言のみとなっています。そして、この一言が非常に良いヒントとして作用しています。
この状況下における難しかったことをイメージすれば、選択肢をどの方向に見定めるべきかが明瞭になり、また先述したような背景までがクリアに認識できます。
この一言は、ゲームの雰囲気を一片も崩すことなく、極めて示唆的であり、かつそれを解すること自体がゲームに奥行きを与える値千金の言葉だなと強く感じ入っていました。ルート示唆のヒント界隈で一番好きかもしれない。
そうして理解して初めに戻り、全てを自覚して進めていくことで、手をつなぎ、手を離れ、また改めて手をつなぐことで終わるまでの綺麗な流れを十全に堪能することができます。加えて、このあたりの機微をエモーショナルにグラフィックで表現しやすい、アドベンチャーという分野の良さが如何なく発揮されている作品でもあったと言えるかもしれません。
なお、何故か選択肢の構造とヒントの言葉にばっかり文字を割いてしまってはいるんですが、全体的な短編としてのシナリオやシステムのバランスも良くできている作品です。この短さの中で、お祭り感のあるミニゲームも差しはさんでイベントとのバランスを取りつつ、上手く気分を切り替えさせています。
シナリオの構成についても要点を絞ったイベントに集中し、その関係性を必要十分に表現した上で最後へとつなげていく短編として良くまとまったものとなっていました。
12. 魔女にお菓子を届けましょう
ジャンル | 作者 |
---|---|
魔塔 | ちぃ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 1.02 | 全END |
良かった点
- 1周30分程度で気軽に遊べます
- やや平易ながら程良いバランスの難易度でした
- HPとSPの二重リソース管理が上手く機能しています
気になった点
- ☆3装備の有用性が薄い、あるいはピーキーに過ぎるように感じました
- デメリットが強すぎる、あるいはメリットがその割に実感できるほど強くない印象があります
レビュー
当意即妙にルートを決めよう
魔女にお菓子を届けましょう は、魔塔系と呼ばれるパズル的なRPGです。
ランダムで生成されたマップをパズル的な戦闘を経てクリアしていき、塔の頂上を目指すことになります。
ただし、戦闘と言ってもその戦いは触れただけで終わる簡単なものとなっています。双方の攻撃力と防御力をもとに相手のHPが削り切れるまで殴り合い、その分のダメージを受けて戦闘を終えるという流れです。このため、3回の攻撃で倒せる敵と戦う場合は、その敵の攻撃力2回分のダメージを負うことになります。
そうして敵を倒すと経験値が得られ、一定以上蓄積するとレベルアップでステータスが上昇します。また、マップ上にあるアイテムを拾うことでもステータスを上げることができます。ステータスを上げることで、より強い敵を相手にしても被弾を抑えて戦えるようになっていくことでしょう。
これをひたすら繰り返し、HPなどのリソースが枯渇する前に塔を登り切ることができればクリアとなります。
リソースを使い切ることなくクリアするためには、敵をどの順番で倒し、アイテムにどの順番でアクセスしていくのかが肝要です。
塔の一つのフロアは5x5のマスで構成されており、全てのマスは敵やアイテムなどの何らかのオブジェクトで埋まっています。これらをどう巡回するかをパズル的に考え、最適な動きを取っていきましょう。時にはあえて戦わない選択肢を取ることも必要になるかもしれません。
ただし、HPだけに気を配っているのではクリアは覚束無いでしょう。このゲームにはもう一つ、SPというリソースもあるためです。SPもまた、枯渇するとゲームオーバーです。
SPは階層ごとに消費され、主にアイテムの取得で回復していきます。また、敵に対して先んじてダメージを入れることのできる魔法を使う際や、一部の障害物を破壊する際にも消費することになります。
有利状況を作るためには、ためらわずSPを消費する方が良いこともあります。しかし、場合によってはHPを犠牲にしてでもSPを回復しに行った方が良い場面もあります。双方のパラメータを注視し、最適な行動を選択する必要があるでしょう。
25マスで構成される一つの盤面を効率良く回るためには、短期的な視点で思考を巡らせていくことになります。その一方で、頂上に到達するためには、成長戦略を含めたやや長期的な視点に基づいた思考を必要とします。
こうした、短期の戦術を積み重ねて長期の戦略へと積み上げる作品でありながらも、一つ一つの盤面が短いゆえに頂上まで気軽に遊べる作品ともなっています。軽く思考を回して、頂上まで駆け上がっていきましょう。
感想
WWAあるいは魔塔系です。説明文に沿って、ここでは魔塔系と呼ぶことにします。
いわゆるこの手のゲームはあらかじめ見えている事柄から、中長期的視点をパズル的に突き詰めていくことが主眼になります。このため、最後の状況からの逆算と局所的最適解を見つける技能の双方が求められるゲームになりがちです。
これはこれで楽しいんですが、めちゃくちゃ頭を使うのと、大体一発で上手く通すのが難しいというのがネックでした。
このゲームでは、毎回ランダム生成される階層を攻略し、66Fを駆け上がるというものなので、最終的な状況というものは見えません。
プレイヤーが分かってるのは、敵がだんだん強くなっていくであろうことと、現在のフロアの配置だけです。このため、ぼんやりとリスクを取って進める中長期的視点と、現在のフロアのルートを考える視点だけが必要になってきます。
先ほどの例で言えば、極めて狭い局所的最適解を考えることに多めのリソースを使い、中長期的視点はなんとなくでもカバーできるようになっています。
このため、かなりカジュアルに魔塔系を楽しむことができます。
その分、難易度は恐らく低く、筆者は負けイベントを抜けばどれも一発で最後の階層まで到達しています。途中HPやSPが危ない状態にはなれど、ある程度ゲーム性を理解してさえいれば、上手く回避できるレベルでした。
ただ、そもそもランダムなのもあって、あんまり難しくはできないでしょうし、カジュアルに楽しめる点を踏まえても、個人的にはこれくらいの難易度が好みです。ちょっと頭を使って気持ち良くクリアできるレベルです。
また、クリアの度にローグライト風に能力値の向上や初期装備の取得もできるため、どんなに失敗してもいつかはクリアできるようにもなっています。
この辺のサポートもあるので、余りこの手のゲームをやったことが無い方でも遊びやすいんじゃなかろうかと感じています。
なお、個人的には装備のバランスだけはそこそこ尖った印象を受けました。特に☆3の最高レアリティの装備の癖が強く、正直☆2の装備をデメリットなく使った方が優秀なんじゃないかなと思いながら使っていました。
このゲームは長期的なプランが余り正確に立てられないので、そこそこプランが固定化される制約を持つ☆3を採用するのは中々勇気がいります。そのリスクに対してのリターンも実感を得られる程に高くはないので、結局☆2の装備に落ち着きがちでした。
完全上位互換を出すのは芸がないというのは凄く良く分かるんですが、装備レアリティを上げやすくする装備がある以上、もう少しご褒美的な強さがあっても良いのかなと感じていました。
装備についてもう一つ付け加えておくと、いつでも装備を拾えば付け替えられるのも面白いところです。その時その時に強い装備を選んでいくこともできるため、フル装備状態でも宝箱を空けるかどうかの葛藤が生まれます。
序盤は魔法出力を上げて体力を温存したいとか、後半は体力を増やして逃げ切りたいとか、その時々に有効そうな装備が用意されているのも好きです。
システム面でもう一つだけ言及すると、リソース管理としてHPだけでなくSPがあるのが、このゲームをやや複雑にしつつも、奥深さを出しているところです。
階段を下りるごとに減るため、ステージ内を歩き回ってSP回復アイテムを取得するモチベーションがちゃんと出ます。このため、できるだけ敵を倒す導線が自然に生まれていました。加えて、後半に行くにつれ宝箱のSP回復量が多分上がっていくため、鍵の価値が後半に上がっていくというのも面白い点です。どこまで温存するかのチキンレースができます。
その上で、どこでHPを犠牲にしてでもSP回復アイテムを取りに行き、どこでSPを犠牲にしてでも魔法を使ってメリットを享受するか、という駆け引きが生まれるというのが良いポイントです。
この時、SPはおおむね先行投資として機能していて、特に序盤はこれで本来取りにくいアイテムにアクセスしやすくなります。また、その敵を突破すると手に入る諸々のリターンも加味して後半でも振ることはあり、残HPとの相談も含め、思考に一段階奥行きが増す要因となっています。良くできたシステムですね。
最後にシナリオについて触れるんですが、だいぶふんわりとしたものなので、かなり解釈によるところだと思います。
割とスムーズに攻略したせいなのか、目に思い入れができる前に亡くなったのはちょっと残念でしたが、それ以外はある程度キャラクターも把握できて良かったです。
記憶の断片とEND2から一人分の魂と思っていたものが二人分の魂であることくらいは分かるんですが、そこもだいぶ曖昧なので解釈に迷っています。だからこそ干渉を受けないんでしょうか。
ENDについてもう一つ追記しておくと、光のおかげで勝てたようなもんだと思っていたんですが、光単独で挑むと相打ちになるのが意外でした。主人公の果たしている役割があるということでしょうか。謎は尽きません。
難易度に物足りなければチャレンジもあるので、カジュアルに楽しみたい場合もある程度ちゃんとやりたい方も楽しめるんじゃないでしょうか。
なお、筆者のクリア状況は以下の通りです。
3回目については、休息の宝石の効果でSPがみるみる減っていった時はだいぶスリルがありました。諸刃のパワーでアイテム回収をごり押してなんとか薄氷の勝利です。
4回目はさすがに慣れたのか安定していて、装備を割と雑にとっかえひっかえしていてもなんとかなりました。HPもだいぶ余っています。
END1 | END2 |
---|---|
13. アンブレラブレイバー
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノンフィールドADV | (影)苅田町役所 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 1.05 | 全END |
良かった点
- ラストに向かって良く演出されたアドベンチャーゲームでした
- 良いBGMが演出を盛り上げてくれました
気になった点
- ノンフィールドパートにおいて特別に意味を持たない歩みが多く感じました
レビュー
その手を取って歩もう
アンブレラブレイバーは、シナリオに重点を置いたノンフィールドアドベンチャーです。
主人公は廃墟の洋館の中で不思議なお姉さんと出会い、その廃墟からの脱出を目指すことになります。
その脱出のためには、ノンフィールドRPGのようなパートを通して、幽霊との戦闘に勝利する必要があります。
戦闘における幽霊の行動はあらかじめ明示されているため、プレイヤーはその情報を勘案して適切な行動を選択していくことになります。基本的には相手の行動を封じつつ、こちらの攻撃を通していく、特殊なじゃんけんのような戦略を立てることになるでしょう。
そうして戦闘を攻略していき、洋館の出口にまで辿り着くことができればクリアとなります。
しかし、このゲームはノンフィールドRPGではなく、アドベンチャーです。本当の意味でクリアするのであれば、戦闘以外にも目を向けましょう。ゲーム内にもヒントはあるので、その達成はそれほど難しくはないはずです。
是非とも手を取り合って、洋館の脱出を目指していきましょう。
感想
ノンフィールドRPGかと思ったけど、ノンフィールドADVでした。紹介文にもRPGって書いていないですしね。ノンホラーアドベンチャー。
ノンフィールドRPGとして見るなら割と無駄に思える部分はあるんですが、この辺は恐らくADVとしての演出の意味合いが強いんだと思います。空気感の醸成のために、この設計になっているような印象でした。
戦闘はかなりフレーバーであり、タイミングを取って殴るゲームになっています。大きくランダム要素もなく、固定行動しかないので対処も楽です。
そういう意味でも、ここもまた演出でしかなく、どちらかと言えば会話の方に重きが置かれた設計となっていました。一応何も考えないとマズい状態にはなっているので、適度に別のことを考えてリフレッシュする要素として機能しているのかもしれません。
どうでも良いですが、行動予測について、初めはUIを見てアメリが教えてくれていたのかと思っていました。しかし、終盤パートで普通にコウ一人でも敵の行動が見えているあたり、どうやら違ったようです。もしかしたらそういう能力を会得したのかもしれませんが。
また、ノンフィールドパートはそこそこ何もない歩みが多いんですが、ここも演出の都合上っぽい印象でした。会話のこともありますし、単純に二人で歩む道であることに意味があるという面もあります。
若干演出はもっさりしているんですが、そこはスキップもあるので周回時に気になるレベルにはなっていません。
反応範囲は、何もしなければ初手にビターへ行くようになっている印象で、ちゃんと全てのイベントを初見で進行するのはあんまり想定されていなさそうな気配はあります。好奇心旺盛なら触れそうですけど、それはそれでビターが見れないのがもったいない気がする。
一歩ごとに確認する手間は発生しますが、全体の歩数が短いので事なきを得ました。これが100歩とかだったらさすがにしんどかった。
シナリオについても言及しておくと、筆者はなんやかんやボーイミーツガールを好む向きにあるので、シンプルに好きでした。
シナリオ構造的には少しひねったことをしつつも、物語そのものは結構直球ストレート勝負なのも良くて、単純にラストバトルは心熱くなるところがあります。王道は外さないから王道足りうる面があるので。
なお、筆者は最初の方で見た、アレを幽霊と思いこまないと云々で若干混乱していたんですが、主人公は普通に生者と察していたということで決着しています。ビターというかあの辺の表現上、幽霊ルートもありそうに見えはしたので。
それはそれとしても、外に出れない理屈は未だ良く分かっていません。父の力なのだとしたらどういうスペックなんでしょうか。あるいは父の制約すらも自身の意志の発露でしかなく、勇気をもらうまでは外に出ることすら叶わなかったと捉えるべきなのかもしれません。
しかし幽霊食、栄養とか大丈夫なんだろうか。
14. Inifis
ジャンル | 作者 |
---|---|
マルチエンドRPG | 逃げ足 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分+2時間 | 1.09e | 全END |
良かった点
- マルチエンドRPGとして全てがちょうど良いサイズ感に収まっています
- 物語の尺、マップのサイズ、戦闘のバランスなどが丁寧に作られています
- マップ間の接続やイベントの配置を軸に、探索しがいのあるマップが構成されています
- 周回に向けたサポートが手厚く、別エンドを見に行きたくなる設計でした
- シナリオ面で動機付けをし、システム面で上手くサポートしています
気になった点
- 特にありません
レビュー
思うままに行動したその先を見届けよう
Inifis は、様々な選択からマルチエンドへ分岐していくことを特徴とするRPGです。
主人公の神官を操作し、聖者の依り代に選ばれてしまった彼女を救い出すため、戦闘やイベントを通じて行動していくことになります。
彼女を救う方法、あるいはエンディングに辿り着く方法は多種多様にあります。
それらを発見するには、様々なエリアに繋がるマップを探索して、アイテムを収集したり様々な人々と会話したりすることが大事になってきます。特に誰かとの会話の中でアイデアを思い付くことができれば、それが彼女を救うヒントになるかもしれません。
マップをくまなく調べ尽くしつつ、積極的に話しかけていきましょう。
また、そうした探索の中では、敵との戦闘が避けられないこともあるかもしれません。
戦闘は標準的なターン制のシステムを採用しており、テンポ良くやや歯応えのある難易度のものとなっています。そのため、雑魚との戦いはともかくとして、一部の強敵を倒すには主人公一人で戦うには厳しい場面もあり得ます。
そうなった場合は、様々な場所を訪れて人々に話しかけていき、仲間を得ていきましょう。複数人で挑むことができるようになり、強敵と戦う時の助けとなります。
こうした探索と選択の果てに取る行動によって、物語は多くのエンディングへと分岐していきます。そして、それぞれによって判明する真実もまた多様に存在します。
少しずつ明らかになっていく真相を知るためにも、様々なエンディングを周回して見ていきましょう。強敵を実質スキップできるアイテムなど、周回をサポートする機能も充実しているので、気楽に挑戦することができるはずです。
感想
短いマルチエンドRPGかくあるべしみたいなゲームです。こういうタイプの作品としての一つの頂上というか完成系みたいなゲーム性をしています。
マップの広さ、分岐の数、分岐に至るまでのイベントの数、といったところの塩梅が本当にちょうど良く、それでいて周回をサポートする機能もあるので、自然にマルチエンドを回収しようという動機が生まれました。
個人的に一番好きなのは、探索している感を出しつつも、実際にマルチエンドのために走り回ると意外と狭いマップになります。
まず、マップそのものがいろんなところで接続していて、いくつかの隠し道まで用意されているおかげで、実際の広さ以上に探索している感覚を演出することに成功している気がします。意外なところが接続する驚きもあって良い。
加えて、慣れてくると周回時にショートカット的にルートを選択していくこともできるようになるので、周回のサポートにもなっています。エンディング回収の最後の方では勝手知ったる庭みたいに歩き回っていました。
また、マップにあるイベントの密度も探索感の増大に寄与しています。程よくイベントのある町、戦闘をメインとしつつイベントもある墓地といった具合に、メリハリを利かせつつ、各所にちょうど良い具合にイベントが配置されています。
イベントの発見それ自体が探索の目的ともなりうるので、このあたりが充実しているおかげでだいぶ探索している感覚を覚えるようになります。
さらにシステム的に、イベントを経て大事なメモが手に入ることで行動に広がりが出ることもあり、大きな目的の観点でも発見に繋がるようになっています。
そして、これらのマップのサイズ感、イベントの尺や密度感が探索している雰囲気を残しつつ、周回において手間に感じない程度に収まっているのも良いところです。このあたりのバランス感覚が優れていました。
制限時間下でギリギリ調べ切るのは難しいが、ある程度次の周回に向けての情報も入りつつ、といった状態でエンディングを迎えられるようなレベルで調整されていました。時間制限もだいぶ良い調整で、筆者はいろんなところに顔出しした結果、魔界の家に行けないまま誰も倒さずに導師を倒すエンディングを迎えています。
戦闘についても割と難しいながらも、周回に向けたサポートもある良い塩梅です。
戦闘自体は人数が揃ってないと大変ですし、人数が揃っていても回復できていないと怪しいくらいのバランスです。ラスボスはそこそこ強く、全体攻撃手段の確保と仲間の確保が重要になる程度にはちゃんと歯応えのある戦いが楽しめます。装備も大事。
その上で、周回においては個数制限のある即死アイテムをどこかで切ることができるので、一度倒した敵と再戦することは基本的にありません。この辺の割り切り方が好みです。あくまでこれは主体ではない。
ちゃんとレベルデザインされた歯応えのある戦いを演出した上で、手間の観点からそれをスキップできる選択肢を残すというユーザーフレンドリーはコンコルド効果的にも中々選択しにくそうですが、この作品はそちらに振られています。
シナリオ面については、エンディングを明かすにつれて、それに付随するイベントも含めて主人公やその周りの状態が分かっていく形式が良いです。この事実の開示そのものがマルチエンドを探し当てる原動力ともなり、世界観の掘り下げにも繋がっています。
色々なルートが見られるからこそ、作中で主人公が取った選択を振り返ることもでき、全滅はさすがにやりすぎたかなという気持ちにもなれます。しかし一度殺すって選択肢が日常に入り込むと、全員殺してしまいますからね。筆者が最後に殺したのは忘れてた金髪の元生贄でした。彼女もカウントされるんですね。
しかし、人の身でネームドの悪魔を倒せる主人公、だいぶ強い気がします。
一応、作中で倒すには精霊と悪魔の協力が取り付けられるとより楽なはずなので、それが大きいのかもしれません。とはいえ、試してはいないですが、もしかしたらソロ討伐できるかもしれず、そうなるとだいぶ強力な力を有していることになりそうです。
実質悪魔との協力関係に元からあったのだから、そういうことなのかもしれませんが。
15. 箱庭ドールメーカー
ジャンル | 作者 |
---|---|
すごろく×デッキ構築育成RPG | こよる |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
10時間 | 1.1.0 | エンドロール |
良かった点
- システム同士の親和性が高い作品でした
- 状態スロットの押し出しを軸に、高い戦略性を持つ戦闘が楽しめます
- それに向けたドール育成によるパーティー構築もまた戦略的に挑める課題となっています
- 個性的なボスを攻略していく面白さがありました
気になった点
- 過去に育成したドールがほとんど無駄になるような印象を受けました
- 育成に時間がかかるため、新規のドールに手を出しにくいきらいがあります
レビュー
状態異常を制する者が戦いを制す
箱庭ドールメーカーは、ドールを育成し、すごろくライクなステージを攻略するRPGです。
ゲームの構成は主に、ダンジョンによるドールの育成と、そのドールを運用したフィールドの攻略に分かれます。
まず、ステージを攻略するにはドールを育成していく必要があります。
ドールの育成は、素体を決めて、ダンジョンに潜り、敵と戦いレベルを上げ、スキルを習得し、ダンジョンをクリアすることで完了となります。こうして、そのダンジョンで獲得したレベルとスキルを備えたドールを使えるようになります。
すなわち、育成のためにはダンジョンで効率良く敵と戦いレベルを上げつつ、スキルを習得していく必要があるわけです。
ダンジョンはそれぞれクリアまでの階層と、所要ターン数が決まっています。この中で、ターンを消費してダイスを回してマスに止まりイベントを起こしていく、すごろくのような構成で進んでいくことになります。
敵シンボルに接触すれば戦いになりますし、宝箱に接触すればスキルやアイテムが手に入ります。ダイス目というランダム性を上手く御しつつ、効率良くマスを巡っていきましょう。
さらに、成長をより加速させるためには、敵と戦った後にキャリーオーバーを行うという方法を取る必要があります。キャリーオーバーは3回まで行うことができ、その間に獲得経験値を徐々に引き上げる効果がある一方で、キャリーオーバー中はHPを回復する休憩コマンドが使えなくなります。
これを上手く活用し、可能な限りキャリーオーバーし続けてから最後に強敵と戦うことができれば、大きくブーストされた経験値が手に入ります。リスクはそれなりに高いですが、強いドールを育成するためにも挑戦してみましょう。
こうしてダンジョンを上手く活用し、ステータスとスキルを育成したドールによってパーティーを組んで、フィールドに挑むことになります。
フィールドもまたダンジョンと同じくすごろくのような構成となっており、基本的なルールはダンジョンと変わりません。ただし、レベルを上げることによるステータスの向上は、前述で育成したステータスに依存するものになります。そのため、きちんと育成していないと強さにキャップがかかりますし、育成していてもフィールドでレベルを上げないと十全の強さとはなりません。
フィールドにおいても、上手くマス目を巡回し、効率よく成長していくことが大事となるでしょう。
上述の通り、育成、攻略共に立ちはだかることになるのは、敵との戦闘によるレベル上げです。そして、その戦闘を有利に進めていくためには独特かつ戦略的な戦闘システムを理解する必要があります。
戦闘画面 |
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戦闘においてまず重要となるのは、育成で習得したスキルです。スキルは10個まで習得可能であり、戦闘開始時にその中から4個のスキルがランダムに配られます。上記の例では、攻撃スキルが3つ、スラッシュが1つ選ばれた状態です。
こうして配られたスキルを使うには、素早さに依存して蓄積するAPを消費する必要があります。上記で言うと、50APを消費すれば攻撃ができますし、75AP消費すればより強力なスラッシュを発動できます。
こうしたスキルの発動タイミングは完全にプレイヤーに委ねられています。短期決戦を仕掛けるためにAPを全て消費して攻めるという手もありますし、APやスキルを温存し、次の行動に備えるという手もあります。その時々の状況を見つつ、柔軟に対応していく必要があるでしょう。
なお、覚えていくスキルのタイプは、個々のドールによって特徴があります。その傾向はドールの装備系統に依存しており、オーソドックスな攻撃スタイルの剣、バフを盛れる扇、守りを主体とする盾などから、戦略をもとに選択していくことになります。
また、同じ装備でもドールごとに異なる部分はあるため、気になるならば試してみるのも一興です。どんなドールを選んでパーティーを構成するか、といったところからすでに戦いは始まっています。
加えて、戦闘を進める上で欠かすことができないのは、状態異常とそれを管理するスロットという概念への理解です。
バフデバフにかかわらず、状態異常は全て最大5個からなるスロットで管理されており、5個を超えると古い状態異常から消えていきます。上記の画面では、敵に攻撃低減のデバフと、攻撃強化のバフが入っています。ここに状態異常を4つ積むと、一番古い攻撃低減のデバフが取り除かれるという次第です。
強力なバフを5個重ね掛けすることで絶大な火力を得ることもできますし、相手に5個のデバフを重ねることで相手のバフを全て取り除くといった芸当も可能です。攻防両面において非常に重要であるため、常に彼我のスロットを確認し、上手く活用していきましょう。
ドールを軸にした育成システムと、育成したドールを用いて攻略に挑むフィールドという二重のデッキ構築システムのようなデザインが特徴的な作品となっています。
この斬新な設計に、多様な戦略が生まれる戦闘システムが取り入れられることにより、無数のドール育成戦略が生まれ、それぞれのプレイヤーごとに異なる攻略スタイルが生まれていくことは疑い得ません。
あなたのお気に入りのドールと戦略をもとに戦闘の場を制圧し、フィールド最深部で待ち構える様々なボスを撃破していきましょう。
感想
じっくり育てるデッキ構築という感じで、割と斬新に遊べた作品でした。デッキ構築というと、とにかくカードを切り替え続けて己のやり方へにじり寄っていく感じのものをよく見ていて、それゆえにローグライトと相性が良いところがあるんですが、この作品はデッキパーツ一つ作るのにまあまあ時間がかかります。
そのために、一回でかなり方針を固めて進めていく必要があり、アドリブ性もありつつも、かなりの部分でプレイヤー自身の戦略方針を問われているような印象がありました。
戦闘システムも面白い作品ではあるんですが、ひとまずは全体のシステムについての話をします。
個人的な印象としては、二重構成になったデッキビルド系のシステムと捉えています。ダンジョンによる強化で作ったドールがそもそもデッキな上に、それをベースにステージの成長を重ねることで、もう一つ構築要素が追加されています。
成長面においても、デッキ構築ゲームをやりつつデッキ構築用のドールを作る二重構造になっているあたりが面白いです。
一方で、ドール育成は特に後半になるにつれてカロリーが高くなるきらいはあり、1時間近くかかるダンジョンでようやく1体作れる中、それを4体用意するような状況になってきます。こうなると4時間近くかかりかねません。
深層を攻略した印象では、恐らく全員を最新のレベルに追従させなくても、一人二人入れ替えれば充分に対応できそうな気配はありましたが、少なくとも突入前にそれを知るのは不可能なので、全員最新ダンジョンで鍛え直してから挑戦させていました。
もっとも、準備自体がゲーム性を持っていて、戦闘システムが結構面白く、成長システムがスリルを持ったリスクリターン形式であるおかげで、中だるみするというレベルまではいきません。システムが秀逸ゆえに成り立っているバランス感といった印象です。
成長システムについても軽く触れておくと、まあまあに運要素がありつつ、自分で選択できるリスクとリターンによりメリハリがちゃんと付いている良いシステムでした。
キャリーオーバーは必ずやった方が良いという前提の元、想定外のことが起こった時にちゃんと損切りできるか、最後の最後に強敵を倒すためにどういうプランで敵を倒すか、など即時性も先を見通す戦略もどちらも要求される良い塩梅の仕組みとなっています。
その一方で、技の取得などはかなりランダム性が強く、想定するビルドに至るにはそこそこの運も要求されます。そもそもダイス運もありますしね。このあたりのおかげで、一本道をただ辿るようなゲーム性が回避され、上手く対応してプランを適宜修正しつつ、できるだけ理想に近付けていく楽しみがありました。
なお、戦闘後に連打する癖があると、キャリーオーバーを止めてしまうことがあるので、ここは注意が必要です。筆者は何度かやらかしています。キャリーオーバー継続の方がよくやる選択肢なので、それが上に来ているとより有難かったかもしれません。
ドールの種類については割と豊富に用意されており、それぞれの性能についても特色があって面白いです。自分が得意とする戦略に沿ったドールが選べると、ぐっと戦いやすくなります。個人的には雑魚の処理性能が高い銃を気に入っていて、ライラがほぼずっと活躍してくれていました。
ただ、上記の育成に時間がかかるという話もあって、中盤以降は余り新規のドールに手を出す余裕はありませんでした。面白そうなドールはちらほらいるんですが、素養を磨き、1時間かけて育成しないとその性能が真に確認できない以上、どうしてもすでに上手く運用できている戦略に固執してしまうところがあります。
ドール入手時にテンプレのドールが手に入ってお試しできると色々試せて楽そうだなとは思っていましたが、成長要素との噛み合いはだいぶ悪そうなので難しいところです。レンタルドールのような形式の方がまだ自然かもしれません。
恐らく、ほかの人のドール育成を観測して、互いに情報交換し合っていく昔ながらの攻略スタイルがだいぶ向いているゲーム性な気がしています。攻略Wikiが作られるタイプのゲーム。
なお、時間がかかるのは悪いことばかりでなく、そうして作ったドールには結構愛着が湧きます。残りターン数オーバーでHPギリギリの中、ダイス5でゴールにたどり着いて作り上げられたドールとか、ユニークボスを3回目に激戦の末倒して急激に成長したドールとか、各々のドールにストーリーが付随されているのが良い。
なお余談ですが、古いドールの記憶が何の役にも立たないのは若干悲しかったので、せめて金策に役立つくらいはしてほしい気持ちはありました。
割とちゃんと頑張って作ったとしても、序盤から中盤、あるいは後半ですら最新ラインに乗ってないドールは使えないので、結局余らせがちです。そこそこ時間をかけていることもあり、かなり勿体ない精神が働く結果となりました。
そもそもお金がまあまあ足りなくなるデザインになっている印象もあるので、ちょっとカバーして欲しい気持ちもあります。衣装を売るだけだとかなり早く限界が来る印象があるので。
そういった過程を経て、ストーリー最終ダンジョンに挑んだパーティーは以下の構成でした。
雑魚の一掃性能が高く、ボス戦でも強力な破壊力を生みやすいライラを軸としたパーティーです。雑魚戦はライラで片づけられる場合はそうして、そうでない場合はジャンヌが被害を抑える方針でした。
パラメータの都合上、ジャンヌとライラのHP差はえらいことになっていたので、ジャンヌに上手く引き寄せられないと事故る恐れはあったものの、ジャンヌがだいぶ優秀なおかげで助かりました。さすが残りターン数ギリギリまで稼いだだけのことはある。
ボス戦ではドロワの手数の多さでデバフをばら撒きつつ、ローズマリーがバフを積んでいく方針でした。ドロワはサブアタッカー的なこともこなしてくれていて、地味に助かる場面も多かったです。回転率だけで見ると、ドロワの与えた毒ダメージの方がライラより上だったかもしれない。
パーティー構成 |
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個人的に一番好きな戦闘システムの話もします。バフデバフ、状態異常をフルに活用できる楽しい戦闘ができます。こちらのデッキ構築次第では、バフを積みに積んで、相手にデバフを与え続けられれば、一撃でボスの体力の5分の1くらい持って行ける楽しいバランスでした。
また、全体を通して、相手の行動をいかに上手く止めて、こちらがいかに効率良く攻撃するかを考えながら進める、戦略性の高い戦いができるようになっています。
ボスが特に顕著で、一部の行動に関してはきちんと動きを掣肘できていないと、高い火力で一気にパーティーが壊滅状態に陥るヒリヒリ感があります。常に守れる状態をキープできていることがかなり重要です。
雑魚戦についても適度に難しく、強いシンボルに軽率に触りに行くと消し飛ばされることもあります。そもそもゲーム性の都合上、雑魚戦はできるだけ被弾しないのが好ましいため、瞬殺するための戦略を練りつつ、カバーとして被弾を最小に抑える退路を確保していく必要があり、また違った面白さがありました。
そして、特にこの戦略性を担保しているシステムとして、状態スロットとその押し出しシステムが挙げられます。このシステムは色々な面においてかなり秀逸なシステムとなっており、殊にこの作品のゲーム性との親和性が異常なまでに高い代物です。
まず、状態を押し出せるという仕組みは、相手のバフを消す手法としてデバフを重ねる手法が提供されていたり、重複を許すことで強力なバフを込めることができたり、連続攻撃スキルの価値を高めたりと、様々な面で戦略性を高めています。
ランダムでスキルが配られるシステム上、どうしても発生するであろうバフスキルの重複を明確なメリットにしている面が特に秀逸で、戦略の再現性のために同じようなスキルで固めることがむしろ推奨され得るデザインとなっています。
また、単純にボスの性能も面白く、それぞれ特色が合って攻略しがいがあります。
個人的に一番デザインとして好きであり、戦っていて面白く、同時に嫌いでもあるボスは木でした。こっちのバフを利用して攻め立ててくるわ、多重攻撃に相性の悪い防御性能しているわで、かなり苦戦しつつも突破した記憶が鮮明に残っています。最後にこちらの主力以外が全滅した状態でとどめの一撃が入ったのはある意味では奇跡に近い。
充分準備したせいか、ストーリー上のラスボスはそれほど苦戦しなかったものの、きちんと形態変化があるのは好きでした。前段をほぼ無傷で倒して、さすがに強くしすぎたかなと思ってからの真打登場はやはり良いですね。
なお筆者は、100階層育成ダンジョンがその1枠で出てきたあたりから10時間近くの育成が視野に入り、クリア後ダンジョンは断念しています。1時間強の育成を繰り返すのはさすがに堪えそうなので。
現パーティーで攻略するプランもありはしそうなので、気が向いた時にでもやる予定ではいます。
全体のシステムと戦闘システムが上手く回るようにできていて、長期的なパーティー構築と短期的な成長戦略のサイクルが良く動いている作品でした。割と大事なところを運に任せているような設計に見えて、その実プレイヤーはだいぶ堅実に立ち回れば運をほとんど気にすることがないあたりも秀逸です。
16. 瓶詰の誕生日
ジャンル | 作者 |
---|---|
謎解き | クリムS |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
40分 | 2.02 | 全END |
良かった点
- 緩く暗号解読を楽しめます
- いざとなれば総当たりからヒントを探れる設計となっています
気になった点
- 解が一意に定まらなさそう、ミスリードがありそうな問題などがありました
- ただし、いずれも試行すれば解けるレベルです
レビュー
少し頭の体操をしよう
瓶詰の誕生日は、暗号解読を通して進めていくゲームです。
暗号を解読して必要なアイテムと次の部屋を突き止め、その先で再び同様のことを行う形式を取っています。
解くべき暗号の中には、閃きが必要なものから、ある程度調べることが必要なものまで様々なケースが存在しています。時にはゲーム内を離れてみて、色々なものを駆使して解いていきましょう。
そうして暗号を全て解読し、所定のアイテムを持って最後の部屋に辿り着くことで、開催者の弟の誕生日を祝うことができます。
全ての謎を解き、最後の部屋で盛大に祝いましょう。そこで得られる日記を読めば、あるいはこの暗号解読イベントの背景を知ることができるかもしれません。
それに思いを馳せるでも、暗号を解いて終わるでも、どうするかはプレイヤー次第です。
ひとまずは暗号解読を楽しみましょう。
感想
軽く謎解きができて良いゲームでした。頭を使うというよりは、直感を信じるか調べるかのどっちかの選択肢を取ることが多かったです。
以降は謎解きの話をするので、まだやってない方は見ないことを推奨します。
逆立ちについては、色々逆さっぽいことをして何も分からなかったので、後ろ読みと解釈した上で1-3に行きました。実はこの時点では「をもって1-3へ」までは解読していましたが、Amdzdkeが分かっていませんでした。これは後の問題を解いているうちに、この出題者が「a」の反転を「d」っぽく書いてることに気付いたことで、甘酒とようやく理解しています。後発的な気付き。
個人的にはここが一番の難問で、ヒントを読んでいてもaと解釈せずに反転時のdとpの話をしているのかなと解釈していました。あんまり悩まずに先に進めば、どう考えてもaと解釈しないといけない場面が出てきていたので、さっさと進めれば良かったですね。
また、あかさたなの問題については、右並べか左並べかが不明であり、わをんの扱いも場合によるなあと思いながら解いていました。をの6があることである程度フェアになってる気もしますが、それでもどちらになるかは分かりません。解いていれば分かる話ではあるんですが。
このあたり、探索ゲームでこの辺の謎解きがあるとあいうえお表がどこかにあったりしがちですが、このゲームはそういう知識をゲーム外に移譲する構成なので、この辺の曖昧さは避けられていませんでした。ただ、曖昧でも解けるようにはなっているので、筆者のような解の一意性にこだわる変人以外は気にしないとは思います。
また、謎解きのことは考えなくても虱潰しができるのは面白い仕組みとなっており、その気になれば3分半くらいで全部屋を周れるし、何ならゴールまで行けます。
ここについては持っていくアイテムを謎解きに含め、アイテムの種類を増やすことで総当たりを避けている仕組みになっているのも面白かったです。事実上、答えにどうしても詰まったのであれば部屋の位置だけは分かるのでヒントになります。
物語は軽くホラーというか地獄ではあるんですが、部屋の数が足りないという部分だけ少し解釈に惑っていました。
暗号は確かに5個あり、部屋もまた5個あるので足りないことはないと思うので、個人的にはそのうちの2個をどう調達したかという話なのかなと解釈しました。そして最後の話を察するに、その2つの部屋は両親のものであると結論付けていました。それならば、やっぱりクローゼットは開けるべきじゃありませんね。
17. 魔族倒しFINAL
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノンフィールドRPG/ADV | プルゲーム |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間30分 | 1.01 | TrueEnd |
良かった点
- 壊し要素もありつつ考える余地のある、プレイヤー優位なレベルデザインとなっています
- 渾然一体となったカオスな体験ができます
気になった点
- 相性表の記載がデッキ構築時にもあると有用そうでした
レビュー
迸る思想と安定したゲームデザイン
魔族倒しFINALは、カードを集めて敵と戦うノンフィールドのデッキ構築型RPGです。
ステージの節目ごとに長尺のイベントも挟まれていくデザインのため、アドベンチャーゲームと捉えることもできるかもしれません。
ステージを攻略するためには戦闘を効率良くこなし、敵を上手く倒していくことが求められます。
戦闘はカードゲームのような形式で行われており、自身のデッキに組み込んだカードが勝敗を左右します。カードは敵を倒すことでランダムに選ばれた3枚から1枚を取得できるため、何を選択して組み入れていくかによって戦略は変化します。
回復を主体として立ち回ることもできますし、コストを抑えめにして手数を増やすでも、重いコストの攻撃で一気に仕留めるでも、戦略はプレイヤーに委ねられています。状態異常や相性による弱点も勘案しつつ、戦略を練って上手く敵を倒していきましょう。
また、敵と戦う際は連戦における最後の敵を強力にする代わりに報酬を引き上げることもできます。現在の状況と相談し、できるだけ報酬を増やしていけると後々有利になるでしょう。
そうして敵を撃破し続け、ステージ最後のボスを倒すことによって、シナリオもまた進んでいきます。
このゲームのもう一つの本丸とでも言うべきその物語は、主に主人公の語りという形式で行われます。その語りとイベントから生み出される、余すところなく敷き詰められた思想の発露と奇妙なMVのような動画のコンボにより、未だかつてないような体験が提供されるでしょう。
優秀なカードを多く取り揃えることで、難易度をプレイヤー優位とした安定的なレベルデザインのステージと、圧倒的な混沌に叩き込まれるアドベンチャーパートの対比は鮮明であり、渾然一体とした独自の空気感を醸成しています。
カオスな世界へと足を踏み入れてみましょう。
感想
ここまで問題作というか怪作と言いたくなる作品はほかをおいて無いんじゃなかろうかという作品でした。淡々と進むゲームデザインからいきなり繰り出される迫力のある論理展開、そして唐突に流れ出す動画と、あらゆるものが凄まじいパワーを持って迫ってくるような作品です。
作品性は後に話すとして、ひとまずゲーム性について話しておくと、システムとして安定していて、ある程度デッキ構築していく楽しみもあります。
強敵を倒すと二倍の効果が得られるので、できるだけ強敵を撃破しつつ、回復も加味して引き際を見極めるのも大事になってきます。
体力と精神力が分かれているのも面白く、被弾を拒否して強いカードを使って精神力を消費しに行ったり、最後のトドメを弱いカードに任せて温存したり、細かい戦術の立ち回りが効くようになっています。
ただ、この辺の繊細なムーブが必要なのは序盤だけで、ルーナスカーレットを引けると色々考えずに済むようになります。彼女は体力と精神力の双方を回復するので、最後にこれで締めることができれば、それまでのダメージも精神力の消費も無かったことになるからです。
その他にもいくつかかなり優秀なカードがあり、これらが揃ってくると負けるイメージが湧かなくなります。報酬で体力を上げていければより万全で、妙な状態異常を通されない限りはピンチに陥ることすらありませんでした。
ただ、このルーチンが構築された後でも、そこに持っていくまでのカード回しなどの概念は残るため、戦闘はある程度面白さを保ち続けるのが良いところです。
スカーレットに被弾少なく繋ぐためにも、どこで稼ぎ、敵の攻撃のどれを防ぎ、どの状態異常を通すかの駆け引きは依然あります。
特に、状態異常をつけて敵を倒すと2体目にそれが引き継がれる仕様なのか分からない現象を上手く活用するのが楽しく、強力な最終の敵に最初から行動不能を押し付けて場を有利に展開できるようになります。
全体的にプレイヤー有利っぽいバランスに見えるので、この辺の壊れカードも意図したバランスなのかもしれません。必ずもらえるカードも割と強いですし。
なお、相性表については戦闘中表記されているので覚える必要がないと思いきや、戦闘前には見えないので弱点をつく気なら覚えておくのが無難です。デッキ構築する際にも欲しい情報な気がする。
特に序盤は相性次第ではかなり大変なので、覚えておいて損はありません。
では、ゲーム性以外の部分について話します。割と明け透けに話すので、あんまり見たくない方はここで見るのをやめて下さい。隙自語でもあります。
ゲーム内でも明け透けなのでおあいこということで。
まず全体的に整理すると、資本主義社会への怨嗟と、ジェンダー論と、排斥的な集団に対する意見、活力に対する持論、和を以て尊ぶところからベーシックインカムの話に繋がる、くらいの構成になっています。
そこに遍在するのは競争というものへの強い忌避感であり、なにゆえ最大に繁栄した霊長類ともあろうものが競争で食い潰し合わねばならんのかという協調主義的なところを感じました。
その競争の最たるものである資本主義への憎悪は、その意味では妥当なところだと感じていて、そこから出発したものが共産主義と今日呼ばれるに至ったものへと繋がっていくのかなと思います。
ただし、競争の徹底的な否定は一歩先にポルポトがいたり、別の方向にはキムさんなどの独裁への道が開かれていたり、割と茨の道ではある気がしています。
競争のない世界というのは言い換えると下克上のない世界なので、独裁に都合が良いんじゃないかなと思っています。これを避けるのは富の再分配などの格差是正策だとは思うんですが、それをやれる人材が競争のない世界でどう生まれるのか、あたりに自己矛盾を抱えそうではあります。あるいはプラトンの哲人政治に回帰するべきなのか。
その辺を鑑みると、競争原理を適用しつつ、こぼれ落ちるものをできるだけ拾い上げる現在の仕組みの妥当性をある程度は評価したいなと考えています。塩梅が難しそうですけどね。
ジェンダー論はおおむね体験ベースで語られている印象があり、根拠がよく分からないグラフも出てきます。
原則的には女性が同質性を求め、男性が異質であろうとすることを基軸とし、それぞれがそれらに邁進する競争を嫌っているという印象でした。
これらの競争はモテに繋がっていく、あたりは論理が追えていなくて、そのまま論理を適用すると同質性のある男性、異質な女性がモテそうな気がします。このあたり、自分にないものを求めている、と解釈すべきなのか、反対に女性は異質を求め、男性は同質性を求めるからそれに準拠している、と考えるべきなのかは難しいところです。
いずれにしても、魅力的であろうとする努力というものの存在は分かるところなんですが、筆者個人はここをサボってるのであんまり言えることはありません。
感覚的には競争の行き着く先はルッキズムではないか、という問題提起っぽいなとは思っていて、そこ自体は大きく外していない気はします。努力は認められるべきであっても、それを他者に要求しだすと厳しいことになるので。
競争があくまで自己研鑽にとどまるのであればそれは個々人の自由と信条であり、他者をも秤にのせて蔑むのであればルッキズムの発露に他ならないと思うので、要は程度問題かもしれません。あんまり行き過ぎると確かに怖いですね。なお、要は程度問題、便利すぎて議論じゃ使っちゃいけない言葉なんですが、まあこれは語りなので見逃してもらうとします。
排斥的な集団についての意見に関しては、そもそもの発端からしても完全に体験ベースです。
自己を高めるばかりに他者を蔑ろにしているのではないか、競争という場は余所見を許さずに、そこで楽しもうとしてるものを見落としているのではないか、あたりの怒りと解釈しています。
TCGはDMとポケカを多少嗜んだ程度で良く知らないので言及を避けますが、一応ウディコンはプレイヤーとしてちょっとだけ見てきたので、多少話します。
作中でウディタ界隈の部員、という表現が出てきたあたり、ウディコンという場自体をそういった界隈のお祭りと捉えていそうな気がしていて、そうだとすれば割と解釈違いではあります。
ウディコンという場はふらっと出現する新規の方の作品も面白く、ある程度参加回数を重ねた歴戦の方の作品も面白い、結構バランスの取れた場だと感じているので。今後過疎化が進み、ある程度内輪っぽくなる可能性は否定しませんが、現在のところはそこまでの空気は感じません。
なので、排斥するも何もそもそも集団として構成されているものなのかというレベルで疑問には思っています。横の繋がりのある作者さんも多数いらっしゃいますが、それはそれとして持ち込んでワイワイやってる感覚が一番近いです。
この作品がウディコンに出て恙なく評価を得て終わるあたりからも察せられる程度に、規約にさえ違反しなければなかなかフラットな場なんじゃないかと思っています。まあ、筆者はここにゲームを出したことがないのでこの感想はまあまあに空虚だとは思いますが。
活力が地球温暖化に繋がる、あたりは風が吹けば桶屋が儲かる的な意味合いでは間違ってないんだろうなとは思っています。人間の飽くなき経済活動こそが温室効果ガスを生んでいる面は否定できるものではありません。
ただ、これは国家単位、あるいは種全体のレベルの問題なので、個々人がどうにかできるようなものはあんまりなさそうです。
いわゆる持続可能な社会の構築を個々人が目指していき、全体の流れを少しずつ変えていくのが筋が良いんだろうなという肌感覚を持っています。そういう意味ではSDGsは思想自体はそこにいるんですけど、EUの環境ビジネスが絡んでいるせいなのか、揶揄の対象になっちゃう現状はあんまり好ましくないのかもしれません。
和を以て尊ぶ国民性については筆者はだいぶ懐疑的ではあります。聖徳太子の時代からあるそれが論拠の出発点になりそうですが、ルール化したということはルールで縛らねばならないものであったとも解釈できます。性悪説じみてますね。
そもそも平安時代を除いてほぼ戦乱の絶えなかったわが国がそれほど競争しない人種であったのか、というあたりから疑問符が点灯するかもしれません。平安時代ですら都における政治闘争は激しかったようですしね。創作になりますが、ドリフターズでアナスタシアに寝ても覚めても互いに殺し合うことしかしない連中と言われるだけの存在ではある気がします。
そして、そこから繋がるベーシックインカムの話も難しいところです。生活保護がかなりベーシックインカムに近い存在ではありそうで、ここが広がった状態をぼんやりと考えるなどはしています。
市場クロガネは稼ぎたいでも取り上げている通り、一律配ることにすれば諸々の手続きが簡素化して良くなるといったメリットもあるので、ある面においては生活保護を超える働きを示すだろうなとは思います。
これは本当にどこかで社会実験でもしない限り成否の分からないところであり、手を出すのはだいぶギャンブル性が高いんじゃないかなとは思います。人間は所与で充分であった時に、なおも求め続けるものなのか、その答え自体は見たいのでどっかでやってくれないかな。
ただ、その前提としてある団結せよ、というあたりは若干主張の中でのブレを感じました。
それを可能とするのは弛まぬコミュニケーションの結実に他ならないと思っていて、そしてそれらは集団に対する苦言と表裏一体なところがあります。
TCGの件でもそうなんですが、集団に属し、集団の中であるいは集団を通して行動するというのは声をかけるといった初手から始まる一連のコミュニケーションから始まるものだろうと思います。
これは筆者の苦手とするところなので良く分かるんですが、コミュニティの輪に入るというのは棒立ちしていれば勝手に入れてくれるものではなく、積極的な行動の向かうところにあるものと解釈しています。
そういう意味では、団結せよというその団結の輪に入るには、前段でそこはかとなく否定している集団への帰属努力が必要になる行為なのかなと感じていました。
後、これは至極個人的かつ論拠のない意見なんですが、何故ネアンデルタール人が滅亡したのかということを引き合いに出す論理は大体疑ってかかるようにしろとばっちゃが言ってました。
あの辺のことは分からないことが多いので、偽を根拠とした推論はどんな結論であっても導くことができるように、あんまり信用できる論ではないんだろうなという印象です。ちゃんとしてたらもっと論拠のはっきりしたところから引用するはずなので。
さらにもっと個人的な話をすると、人間と本能を論じるのも割と変だと思っていて、人間は社会的動物であるという言葉をだいぶ傲慢に解釈したものなんじゃないかとは感じています。
我々はいわば社会性という本能を抱えているだけというか、動物のなす行為を全て本能と片づけているだけというか、そういう傲慢さを感じます。まだ感情と論理と呼んでくれた方が飲み込みやすいです。
唐突にこのゲームの良いところの話をすると、上記で綴ったようなこの作品の主張は、けれど押し付けてくるものではありません。あくまでも作中人物を介した表明にとどまっており、いくつかの例外はあれど、原則的にはそれを否定するものに対する人格的な攻撃はそんなにありません。全体を通して、陽の存在にはだいぶ辛辣ではありますが。
なので、対するプレイヤーもまたそれらの諸問題に対して自己の認識を整理し、こうして己の中にある曖昧な部分を明文化できる良い機会が得られるという寸法になります。
他者からの忌憚ない意見の表明をもって、自分の意見を見つめ直せる良い機会になる、そういった作品です。みんなも5000字くらい感想を書こう。
18. 赤の騎士と青の魔法使い
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | ろくぞう(n2_063) |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 1.07 | 全END/イベント |
良かった点
- 人間らしいキャラクターによる良いドラマ性があります
- イベント色強めでRPGを楽しむことができます
- ゲーム性に緩急が付いていました
気になった点
- サブシナリオの謎解きがやや理不尽です
- ただしその分、解かなくても影響がないようになっていました
- 人狼化の戦闘がやや大味すぎるように感じました
- あるいはアンが役立たずに過ぎるように感じました
レビュー
シナリオメインのRPG
赤の騎士と青の魔法使いは、探索要素やイベントが豊富なRPGです。
ゲームの進め方は、ダンジョンで戦いを潜り抜け、階層ごとに発生するイベントで物語が進行していくオーソドックスなものとなっています。
攻略にあたって避けては通れない戦闘はシンプルでありながらも、多勢に無勢となると攻撃の受け方を考える必要のある難易度となっています。敵の種類やその行動を勘案し、上手く受けるか攻めで頭数を減らすかを適切に選べなければ、集中攻撃を受けて敗北を喫することもあります。
ゲームが進行して主人公たちが充分強くなるまでは、彼我の戦力差を見極めて気を付けて戦う必要があるでしょう。
そして、このゲームの主眼は、そうした戦いを経て進行していくシナリオにあります。
主要なキャラクターたちが織り成す物語はドラマ性のあるものとなっており、ゲームの進行を強く牽引していきます。加えて、物語における関係の変化はゲーム性それ自体にも影響を与えていくため、相互作用的なゲーム進行を味わうことができるでしょう。
なお、シナリオは過去作の続き物という形を取りますが、必要な情報はあらすじとして開示されるため、この作品から始めても問題はありません。
また、メインシナリオもさることながら、サブイベントが充実していることも見どころの一つとなっています。
王都の様々な場所で巻き起こるサブイベントは推理要素や探索要素が強めとなっており、王都中を奔走してその解決を目指すことになります。
メインシナリオの箸休めに見てみるのも良し、発生した瞬間から挑むも良し、自分の好きにゲームを進めていきましょう。
感想
RPGって別に戦闘だけが主役じゃなくて、イベントを通した体験もまた本願だよね、という気持ちにさせてくれるRPGです。
メインルートでも戦闘が絡まない長期間のイベントがあり、探索っぽい要素と戦闘で進んでいくダンジョン要素が交互に発生します。
サブイベントもそこそこあり、王都をくまなくうろつくことで進行していくこともできます。メイン進行やエンディング分岐に影響しない設計なので、本当に好きな人だけリーチすれば良い設計なのも良いところでした。
ひとまずシナリオ面の話をします。前作の内容があるらしいとはいえ、ある程度のあらすじと情報の開示は行われるので、それほど気にはなりません。
内容としては、かなりちゃんと人間ドラマを描いていて、だいぶ人間らしいキャラクターたちの物語を味わうことができます。特に主要キャラクター群の人物描写がだいぶ人間臭いことが作用して、ドラマ性が上手く演出されていました。
エンディング分岐の内容も含めて、最後どうなったと解釈すべきかは人によるところがありそうには感じます。筆者個人の感覚的には、人格の統合というか受容が行われた形なのかと思ってはいました。
胡散臭いおっさんの言とはいえ、一応人狼病は治った扱いになっているので、それは人狼ではなくただの彼という状態に落ち着いたのかなという解釈です。治ったことを全面的に信用した上で、ラストバトルの演出を加味した考えなので、どの辺の情報に信頼を置くかで解釈は変わりそうですね。
後はサブイベントなんですが、全体的に難易度の高い謎解きになっています。
というか、ボールス氏殺害は本当に分からなかったのでヒントを全部見ましたし、見た上で何も分からないので全探査しました。クリアした今でもピンときてません。何ならベールしていることが不審でない占い師が犯人なのかとにらんでました。
超甘党くらいの癖なら町中のそこかしこにいそうなので、せめてボールス氏がその人物を飲食店で見つけたと思しき情報くらいはないと一意に定まらない気はします。見逃していただけであったのかな。
また、運が悪くて癖の強いおじさんも、最初は迷宮でずっと魔物に襲われていたハゲだと思っていました。運悪いし口調の癖が強い。
残りの戦闘や探索パートについては、途中まではそこそこリスクのある戦いができます。ただ、人狼化が入ったところから、割と大雑把なバランスになっていきました。
作中でも言及されるんですが、ランダムで出てくる人狼頼みの戦いにどうしてもなりがちで、ひたすら防御をし続けて人狼待ちにするのが最適解になってきます。
こうなると、せっかくアンが仲間になっても邪魔な印象を受けてしまいました。正直、超回復してくれていた時の方が役に立ちます。ただ、そこはシナリオ側の要請で氷を解かすフェーズを作ることでちゃんと意味を持たせているのが上手いところでした。RPG的には弱くなりましたが、必要な行為ではあるという納得はできます。
個人的に好きなところとしては、後半のステージをぶっ壊して進められるところです。
最初は少し入り組んだ洞窟を緊張感をもって敵を倒しながら進んでいたところを、後半は敵を無視して掘り進み、敵は人狼化でなぎ倒して進んでいくことになります。この緩急が良い。
そうなってくると、人狼化の導入で大雑把になる戦闘も緩急の一つとしてみなせるのかもしれません。
しかし、自由の民、その思想だと子孫繁栄しなさそうなんですが、どうやって存続してきたんでしょうか。
それとも存続は半ば絶望的で、ゆるゆると絶滅に近付いているんでしょうか。なんとなく後者な気もします。
19. 鶏空を舞う
ジャンル | 作者 |
---|---|
シューティング | スミスケ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
40分 | 1.03 | クリア |
良かった点
- 付かず離れずの空戦という独特なシューティングが楽しめます
- 緩いグラフィックと世界観がユニークでした
気になった点
- 被弾や攻撃のエフェクトが分かりにくく感じました
レビュー
感じるままに逃げ、感じるままに撃ち落とせ
鶏空を舞う は、回避を主体とした空戦を行う独特なシューティングゲームです。
移動と加速を駆使して敵機の攻撃を凌ぎつつ、全機を撃ち落とし切るとステージをクリアしたことになります。
敵機を安全に撃墜していくには、自機と敵機のスペックを大まかに把握することが重要です。
敵機は一定範囲内に入ると迎撃を始め、その範囲から更に近付くと自機に弾が届いて被弾してしまいます。このため、無傷で仕留めるためには、付かず離れずの距離を保ち、相手の弾が切れたタイミングで攻撃を仕掛ける必要があります。
なお、プレイヤーが駆る機体もまた一定範囲内に入ると自動で迎撃を行うものとなっているので、これらの駆け引きは移動と加速による彼我の距離調整だけで成り立っています。加速はリソースを消費するため、緊急脱出や引き離しなどの使い所を上手く見極めていきましょう。
そうして敵機を撃墜してステージを攻略するごとに、自機のパラメータを強化することができます。
速度を上げて回避しやすくするのでも良いですし、攻撃範囲を広げてより安全に戦うことを指向しても構いません。徐々に難易度の高くなるステージに対応するためにも、自分のプレイング、あるいはステージの傾向を見極めて、より良いカスタマイズを目指しましょう。
そうした独特なゲーム性に加え、空戦を彩る緩く特徴的なグラフィックもまた魅力の一つです。
その緩い世界観とグラフィックの中で、苛烈な攻撃を凌いで敵機を撃墜していきましょう。
感想
どうでも良いことから感想を始めるんですが、最初はこのタイトルを「けいくうをまう」と読んでいました。しかし、タイトルを見た限りでは「にわとり、そらをまう」と読みそうだなと薄々感じて、エンドロールで確定するという運びになりました。よく考えたら鶏空なんて言葉は造語であっても意味分かりませんね。鶏に毒されていました。
閑話休題。シュートしなくて良いシューティングというかなり特殊なタイプのゲームです。かといって、全部オート追尾弾で回避に集中するタイプでもなく、攻撃範囲と起動範囲が事前に双方定まっていて、そこの出入りによるヒットアンドアウェイを繰り返す、というアクションっぽい仕上がりになっています。
ただ、筆者がこれに気づくのは割と遅れていて、ステージ2の途中でうっすらと把握し、最終ステージ間際でようやく戦い方をマスターしました。遅すぎる。ステージ1ではアクセルで逃げれば攻略できてしまうこともあって、最初はそういうゲームと勘違いしていて、ステージ2でひたすら逃げまくっていたあたりからおかしいとようやく感じました。不覚。
ただし、ルールが分かっているからといって簡単なわけではなく、相手の攻撃範囲も索敵範囲も分からないどころか、こちらの攻撃範囲すらも表示されません。なので、なんとなくここまで近付いたら撃ってきそうだなあたりへのチキンレースと、その時の距離を感覚的に把握する能力が必要になってきます。
パラメータからして具体的な数値は全く登場しないので、全てがフィーリングで完成されているようなゲーム性でした。考えるんじゃない、感じるんだ、を地で行くゲームです。なんとなくこんくらいの距離で加速ボタンをこれくらい押してると良い感じに空撃ちしてくれる、を探りましょう。
グラフィックについてはかなり良く、緩い世界観と無骨な戦闘機が共存しています。かなり唯一無二な雰囲気が醸されていました。
個人的に好きなのは撃墜された自機を必死に修理して直す絵面で、連打して必死に耐えようとする自分とシンクロするのが良かったです。連打しつつ頑張れという気持ちになりますね。
後は、映画の最後みたいなエンドロールの終幕がだいぶ良くて、雰囲気が最後にビシッと締まったような印象を受けました。演出も含めてそういう銀幕っぽさがすごい。
ただ、エフェクトとSEがどちらの攻撃結果であり、どちらの被弾結果なのかが一瞥して分かりにくいのは気になっていて、ここの分かりにくさが仕組みの把握の阻害をしていたような印象を受けました。
細かいところだと攻撃エフェクトが前方にあるのに、システムの都合上大体後ろに攻撃することになってしまうあたりの不整合も気になります。機銃は戦闘機なら下にありそうなイメージもあるんですが、元ネタが違うんでしょうか。
個人的には、割と変わったシューティング体験である上に、その要素一切がパラメータっぽくなくフィーリングで作り上げられているというのが人によってはとっつきやすく、人によってはとっつきにくいものとなっているんだろうなとは思います。
数値に安心感を覚える筆者のようなタイプは明示されていない仕様を探ろうとして変に苦労すると思うので、本当に何も考えずに感覚的にプレイするのが良いのかなと感じています。最後はちょっと苦戦するかもしれませんが。
20. 装甲断姫_肆_デュアルタスク
ジャンル | 作者 |
---|---|
マルチタスクSTG/計算 | 水弐 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
10分 | 1.0 | 1397/1230/1242/422 |
良かった点
- 真にデュアルタスク能力を問われる面白いゲーム性でした
- 最高難易度が絶妙に難しいです
- 左右に表示する画面を切り替えられる親切さがありました
気になった点
- 特にありません
レビュー
マルチタスク適正テスト
装甲断姫_肆_デュアルタスクは、一度に二つの画面で別々のゲームを行うデュアルタスク体験型ゲームです。
それぞれを並列で行うか、順番に対応していくかはプレイヤーに委ねられています。
片方の画面で行われるのは簡単な計算です。四則演算の問題と、その答えの選択肢が表示されるため、これを矢印キーで回答することになります。
もう片方の画面で行われるのは、シューティングです。マウスで射線を決めてからクリックで射撃し、敵を撃ち落としていくことになります。
それぞれのゲームはシンプルなものであり、単独でやればそれほど難しいものではありません。しかし、この作品ではこれを同時に、かつ時間制限内にクリアすることを目指します。
計算を頭の端でやりつつシューティングするにせよ、計算に集中してシューティングを大雑把にやるにせよ、あるいは双方のバランスを上手く取るにせよ、情報を並列的に処理する能力が要求されます。
難易度は四段階あり、最後の難易度は中々の並列処理能力が問われるものとなっています。また、スコアを記録することもできるため、最高難易度で物足りない人はより高みを目指すことも可能です。
デュアルタスクに挑み、自らのその適正を知っていきましょう。
感想
マルチタスクの難しさと、慣れると割とできるなという感覚の双方を味わうことのできるゲームでした。
この手のゲーム性だと、片方のゲームがもう片方に影響を及ぼすような形式にしたくなりそうなところを、完全に分離しているあたり、ゲームのテーマが首尾一貫しているのが良いところです。本当に本当のマルチタスク能力が求められます。
筆者の初期の基本戦略は、数字を計算しながら目の端でシューティングするものでした。計算は見ないと始まらないので、目線を数字側に寄せつつ、シューティングをある程度大雑把な狙いで突破する作戦です。
この戦略はシューティングの難易度が低いうちはある程度成立するんですが、からいのシューティングになると破綻します。からいにおけるシューティングは、正直シングルタスクでやってもクリアするのが少々難しいレベルであり、片手間に雑にやってクリアできる類のものではありませんでした。
とにかくこの鈍足弾、手前に来ないとほぼ当たらない性能に感じています。もしかしたら出現を目の端で捉えて逆サイドに当てるゲームなのかもしれませんが、これはこれで反射神経が問われます。
このため、からいだけ戦略が異なり、シューティングの比重をかなり上げた上で、空いた時間で問題に意識を割く配分となりました。それでも問題が先に終わるレベルではありましたが。
シューティングをこなしつつ、脳みその空いたスペースで雑に計算を回し、適当に選んでいくのは中々マルチタスクをやっている感覚があって良かったです。計算がだいぶ雑に行われているので、たまにミスるのはご愛敬。
また、個人的に好きなところとして、左右画面の切り替えが存在するところも挙げられます。筆者はデフォルトよりも、左に計算がある方がやりやすかったのでそうしたんですが、そういうことに気が回っている細やかさが嬉しいところです。
なお、左右逆にした理由は、筆者は右手にマウス、左手でキーボードを操作していたので、それぞれに対応する画面が同じ方向にある方が対処が楽だったためです。位置が逆だと脳みそが定期的にバグります。
後は、世界観も何もない中での説明だけのキャラクターがいるというのも良いです。これは本当に何もなく、からいをクリアしても特に何もありません。真にフレーバーという感じです。もしかしたら作者記録を抜いたら何かあるのかもしれませんが、この感じなら何もなさそうだなとも思います。
なお、筆者はシングルタスクも試してみたんですが、かなり優位にスコアが落ちていったので、まず間違いなくマルチタスクの方がやりやすく感じるタイプの人間でした。皆さんはどうですか。
21. ジャンクエデン2
ジャンル | 作者 |
---|---|
ロボアクション | たがや |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
7時間 | 1.20 | クリア |
良かった点
- 良いゲームサイクルの中で熱中できました
- 豊かで広大なフィールドを探索していく楽しさがあります
- 機体をカスタムして自分なりのビルドを組み上げることができました
気になった点
- 収集物の管理、展示がやや手間でした
レビュー
ジャンクを組み上げ自分なりの機体を動かそう
ジャンクエデン2は、自分でカスタマイズした機体を駆って敵機を倒していく、オープンワールド2Dロボアクションです。
広々とした世界を縦横無尽に駆け回り、ミッションの成功を目指すことになります。
ミッションのクリア条件はシンプルで、エリア上方にあるボスの撃破となります。
しかしエリア上方は様々な機能により固く守られており、そのまま向かって攻略するのは至難の業です。この機能を無効化あるいは低減させるためには、四隅にあるエリアのボスと向き合い、そこにある装置を破壊する必要があります。
腕に覚えがあるのであれば、すぐに上方のボスに向かっても良いでしょう。しかし、ひとまずは四隅のボスを倒すことを目標にするのをお勧めします。
四隅のボスを倒すには、まずそこに至るまでのエリアを探索していく必要があります。
広々とした世界には敵の拠点と、ワープポイントにできる塔が点在しています。基本的には道なりに進んで敵の拠点で戦闘を繰り広げつつ、ワープポイントを増やしていくことになるでしょう。
さらに、敵機を撃破することで手に入るパーツを使えば、自機を自分なりにカスタマイズすることもできます。攻撃手段や移動性能、機体のスペックを見つつ、お気に入りのパーツを使って優秀な機体を作っていく楽しさがあります。
ただし、探索中は回復の手段がないため、連続して戦い続けると機体は疲弊していきます。大きく消耗している場合は、リスクを鑑みて早めに自分の拠点に戻るのがお勧めです。
そうして拠点に戻ったら、時間経過に応じて機体を回復させることができます。この時間を利用し、手に入れたパーツを確認して吟味し、獲得した収集物を展示するなどをやっていきましょう。そうしている間に回復は終わり、また出撃する準備が整います。
この探索、戦闘、帰還、吟味、出撃のサイクルが心地良く、気付くと延々とプレイしてしまうこと必至です。
そうして何度も出撃し、エリアボスに辿りつくころには、自身の機体もグレードアップしていることでしょう。しかし、それでもボスとの戦いは苦戦すること間違いありません。機体の力とプレイヤースキルをフル活用し、上手く勝利をもぎ取っていきましょう。
場合によっては、次に出撃する機体をあらかじめ別に用意しておき、交互に間断なく出撃することで相手の体力を削り切るという手法も取れるかもしれません。
どちらにせよ、ボスを倒すには入念な準備が必要です。敵機を倒しパーツを集め、良い機体を作り上げて挑んでいきましょう。
極めて広大ながらエリアごとに特色があり、起伏のある地形を巡る探索の楽しさ。飛び回り続けて敵機を打ち倒していく戦闘の楽しさ。戦いの中で得られたパーツを上手く組み合わせて戦術を練る楽しさ。これら全てが組み合わさり、ゲームループの中に組み込まれることで、終わりまでノンストップで楽しめる作品となっています。
自分なりの最強の機体を作り、敵機や強力なボスに挑んでいきましょう。
感想
めちゃくちゃ広大な空間をひたすら巡っているという体験は、割に飽きやすそうに感じるんですが、このゲームでは全然そういう感情を抱きませんでした。何か特殊な味付けがしてあるというわけでもないので、本当にゲームサイクルがものすごく綺麗に回っているということの証左なのだと思います。
この規模の作品で途切れることなく遊び続けてしまう牽引力を最後まで保ち続けているというのは、かなり得難いものがあるなと感じていました。めぐめぐの作者さんなのでさもありなん。
ひとまずアクション面の話から始めるんですが、多分丁寧に立ち回るにはある程度のプレイヤースペックが必要で、ごり押しで行くならジャンプと移動性能と誘導ミサイルがあればなんとかなります。
悪条件でなければ、おおむねプレイヤー側の方が強いこともあり、とりあえず一機から二機倒すことを目標に世界をうろつくレベルのバランスなんだろうなと思っています。
ただし、ボス戦となると様相が変わり、ちゃんとアクションするか、ちゃんと準備する必要が出てきます。
というのも、ボスは明確に自機よりスペックで優れているので、ちゃんとアクションして削る必要があるからです。アクションで足りない分は、ボスの弱点を突くパーツを集めたり、自機を増やしてゾンビアタックし続けたりと、そのボスに向かうための準備で補う必要があります。
アクションがそこそこ苦手でも、最悪ゾンビアタックでなんとかなるバランスなのは、そういう意味でもありがたかったです。ゾンビせずに倒せたボスは、たしか左上だけでした。
ボス戦について、個人的な印象としては、左上 < 右上 < 左下 < 右下くらいの難易度に感じていて、右下に関してはラスボスより苦戦しました。
左上は避けることが容易な上に固定しているから楽で、右上は単体性能がそこまで高くありません。左下は大量の雑魚を上手く避けて捌ければなんとかなります。一方で、右下は未だに攻略方法が定まっていません。弱点を突こうにも三種の敵がいて、高速で動き回るから一体一体に狙いを付けに行くのも難しく、多対一の常としてみるみるうちにこちらが消耗していきます。
結局ボスを打ち破ることなく、扉を打ち破って無理矢理クリア要件だけ満たしました。これが通るのもありがたい。
ラスボスについても割と強いんですが、そこに挑むまでにはある程度整っているので、マシンガンを積んだ四脚足を5機用意する力押しで突破しました。倒しても倒しても似たような機体が襲ってくる様はどっちが敵か分かりませんね。こちらは国を滅ぼそうとしてますし。
アクションついでに武装の話もしますが、個人的にはラスボス戦でも使っていたマシンガン系と四脚足が好きです。サブは誘導性能が高いのがお気に入り。
避けようとすると相手への射線も切ることになるので、自然と数撃ちゃ当たる方式にシフトしていきました。また、基本的にずっと移動性能が低い状態で探索も戦闘も進めていたのもあって、終盤に四脚足を手に入れてぬるぬる動けるようになるのが気持ち良すぎてハマってしまいました。四脚足最高。
それでいて、四脚足は割と厄介な慣性が付くので、めちゃくちゃ強いというわけでもないのも良い塩梅でした。慣れないと戦うこと自体が割と難しいです。
さらについでに捕虜の話もするんですが、最終的には捕虜5人の構成でしたが、ほとんどメカニックとして運用していました。
二機目を用意してしばらくは相棒のネコを僚機に暴れまわっていたんですが、ボスに挑んでいる最中にネコがそこそこ瀕死になって命からがら帰ってきたあたりで慎重になり、ある程度制御できる探索の範囲内以外ではメカニックに回ってもらうことにしました。いのちだいじに、です。
一応二人目のパイロットであるマンドラゴラも育成し、ネコの体力が充分でない時は二号機として運用していましたが、大体のケースでは幽霊二人に混じってメカニックに従事してもらっていました。
おかげで我々の部隊の回復能力は高く、ある程度のボス相手であれば二機用意すれば充分ゾンビアタックを仕掛けられるレベルとなりました。
しかし、ネコ、マンドラゴラ、幽霊x2と、明らかに変な部隊になりました。最後の最後に滑り込みで入ったウルファールさんにはさぞ肩身の狭い部隊であったことでしょう。プレイヤーキャラを魔法使いっぽい見た目にしていたのもあって、実験動物を使役しているようにすら見えていました。
閑話休題。続いてフィールドについて、冒頭でも触れましたが、本当に広いです。ちょくちょく戻りながら進めていたとはいえ、10日目達成時点でも3ボスの所に行くのが精一杯でした。道なりにある程度埋めながら進めていったとはいえ、だいぶボリュームがある印象です。
しかし、ただ広いだけのオープンフィールドではなく、起伏を設けていたり、場所によっては見目が変わっていたり、穴が開いていたり、川が流れていたりと、少しずつ変わっていく地形の影響もあってか、全く間延びせずに巡りつくせました。
また、プレイ感が間延びしないのには、恐らくゲームサイクルの秀逸さもあります。
よほど上手く立ち回らない限り2機も倒せば帰還するバランスのため、ずっと徘徊しつくすということがまずありません。適度なタイミングで必ず戻ることになります。加えて、帰還すると必ず回復のフェーズがあるため、この時間を利用して色々やることになります。
それは収集物の配置であったり、獲得物の吟味であったりします。配置物をとりあえず適当に並べ、装備の数値とにらめっこして変えて、また出動です。この時、大体装備が換装されることが多いので、新しい装備を携えてまた新鮮に出発できます。
このサイクルが非常に良く回っており、少なくとも全換装を終えるまではこのサイクル下の中で探索と接敵を楽しむことができます。
加えて、このサイクルがある程度落ち着いてくると、今度は二機目の作成や、捕虜の獲得が大体のケースにおいて発生します。
捕虜は上手く使えば僚機として戦闘をサポートし、さらに探索の幅を広げてくれます。そうでなくても、二機目を作成できれば、回復のフェーズをある程度飛ばしてすぐに探索に移ることもできます。
やることがある程度固定化したところに、今度はそのサイクルをより早め、より探索に重きを置ける状況へと進化するこの仕組みのおかげで、ある程度上達してきたところで探索をハイペースで楽しんでいけるようになっています。
最初からこのペースで探索できると情報量が多すぎて疲れますし、かといって最初のサイクルだけ推し進めるにはいくらか冗長です。このバランスの加減こそが、ゲーム全体を通じて間延びを生まないレベルデザインに強く寄与しているのではないかと考えていました。
個人的には、配置物のレイアウトをもう少し凝りたいところだったんですが、収集物の展示周りがやや面倒だったので手を付けていませんでした。
ただでさえ時間に追われる設計なので、展示に割いている時間が余りなかったのも寄与しています。時間停止して飾りつけタイムになっていたら、もう少し凝ったデザインにしていたかもしれません。
もっとも、会話と同じように時間停止すると不具合の温床になりそうですし、前述するサイクルのうち、回復フェーズでやることの一つでもあるので、時間経過が存在する理由も分かります。難しい。
後は、展示物がらみでポスターを張り付けられることが途中まで良く分かっていませんでした。厳密には、置けそうなボタンがあることまでは認識して、実際にボタンを押してみたんですが、微妙に置き方が違うので失敗して以降しばらくノータッチだった、というものです。
平たく言えば、サブ要素にとどまる展示物くらいにしか不満を覚えない程度に、ゲーム本編はずっと楽しめたということです。
自機をカスタムして敵機を撃破していくサイクルをひたすら回し、少しずつできることが増え、探索してきた領域も広がっていき、関門としてのボスもきちんと配されている隙の無い作品でした。今にして思えば、四方向ボスといい、ボスを倒さなくても厳密には良いことといい、割とBotWっぽいかもしれません。次作があれば、さらに空島と地底が拡張されるんでしょうか。地底っぽいのは既にありますが。
22. 雪山道
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノンフィールドRPG | WAIT |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
9時間 | 1.02 | クリア |
良かった点
- ゲーム全体を通しても各階層においても秀逸なレベルデザインでした
- 戦略性の広がりとボス攻略に向けた対応が綺麗に符合します
- 複数の手札から成る様々な戦略を組み立てる楽しさがあります
- 各階層のボスもまた個性的なデザインでした
- 軽妙な会話劇で描かれるキャラクターが魅力的でした
気になった点
- 10階層までの設計はやや容赦がありませんでした
レビュー
多様なボスを多様な戦略で打倒し、雪山を歩もう
※この作品は、ウディコンのエントリーから外れています。
ノンフィールドRPGというゲームジャンルの多くは、リソース制約の中で即応的な戦術をもって対処していくゲーム性となっています。
そのやや強い制約の中でプレイヤーの行動を変容させ、バリエーション豊かな戦略を取らせて楽しませるのは難行であり、それを成した作品は名作と言って差し支えないでしょう。
雪山道は、そのゲームシステムとレベルデザインの力によりこれを成立させた作品となっています。
このゲームにおいて雪山を登り、踏破していくためには、ほかのノンフィールドRPGの例に漏れずリソース管理が重要となってきます。
リソースの中でも、特に重要なのはHPです。戦闘を重ねて経験値を貯めるとレベルが上がり、最大HPが増加していきます。そして、この最大HPを消費することで、ステータスを上げることができるようになっています。
当然、耐久を落としてでもステータスを優先するか否かの判断も重要となりますが、ステータスを上げるべきタイミングの判断もまた重要です。最大HPを消費しても残りHPは減少しないため、全回復の直後などが狙い目となります。機を伺いつつも、適切なタイミングを計る駆け引きを楽しんでいきましょう。
また、経験値目当てに敵と戦いすぎると消耗し、ゲームオーバーのリスクは飛躍的に高まっていきます。強力な敵や厄介な敵と対峙した際は、時には逃げることも重要です。
HPを軸にしたリソース管理をもとに、こうした様々な判断をこなして上手く戦っていくことが肝要になるでしょう。
しかし、リソース管理だけを気にしていては、雪山の頂上に辿り着くことはできません。
階層を進むにつれてプレイヤーは最大HPを含めた様々なリソースを消費し、魔法という新たなダメージソース、スキルという拡張性、さらにはパッシブスキルから特殊な効果まで、様々な選択肢を得ることになります。
これらを吟味し、現在のリソースの範囲で適切に構築することができなければ、道中の雑魚にすら苦戦を強いられることでしょう。いわんや階層の最後にそびえ立つボスに勝つことは困難です。
現在使える手札を最大限活用し、時にはメタをとって戦闘を優位に進める戦略を考えていきましょう。
これらのシステムから成る戦略性の広がりと、それを余すところなく活用して挑まねばならないレベルデザインは極めて秀逸なものとなっています。階層を進むごとに様変わりしていく敵のスタイルに翻弄されつつも、その攻略を楽しめること請け合いです。
加えて、そういったシステム面も秀逸な作品ですが、シナリオもまた良い作品でもあります。
超然としつつもどこか人間らしくもある魅力的なキャラクターたちによる、軽妙洒脱な会話劇によって構成されるシナリオがテンポ良く進行していきます。雪山の激しさや回想の場面を強く印象に残すスチル、それらを効果的に使いつつ展開していく世界観、キャラクター同士の関係性、それぞれの魅力は雪山を歩む原動力の一つとなるでしょう。
リソース制約の中での組み立てと戦略の幅広さを両立させたシステムに加え、それを十全に活かすステージ設計により、最後まで試行を楽しみ続けられること間違いない作品となっています。
是非とも雪山の登頂に挑んでみてはどうでしょうか。
感想
端的に言うと好きな作品なんですが、感想として文字に起こすとあんまり芯を食った感想にならなさそうな気配も感じています。
何が好きかを表明するだけの文章にならないように、とりあえずはゲームシステム、シナリオ、そしてレベルデザインに触れることで体裁を整えていこうかと思います。
ゲームシステムについては、オマージュ元らしい雪道を遊んだことが無いので確かなことは言えないんですが、とりあえずいくつかの点を置いておけばまっとうにノンフィールドRPGです。
いくつか得られるリソースを管理し、その時々の戦闘を上手くいなし、都度待ち受ける障害たるボスをどう攻略するかを考える体験はオーソドックスなものになっています。このおかげで、基礎要となるところはかなり太い柱によりできている印象があり、面白さの強度を上げています。ありていに言えば、ある程度は巨人の肩に乗ったデザインです。
しかし、ただありふれたリソース管理体験にとどまらせず、それをよりユニークなものへと昇華しているのは、魔法を始めとしてゲームを進行するにつれて増えていく変わった手札の数々です。
ノンフィールドRPGはリソースで殴り合うゲームなので、ある程度まで進むとやることが固定化されるきらいがあり、その前に終わらせるか、何かアクセントをつけて延長させるパターンが割と多い印象があります。
この作品は後者の極致とでも言うべきものであり、先に進むにつれて増えていく手札と付き合い、少し変わった思考を随時要求されつつビルドを進めていくことになるため、常に変化を楽しむことができます。なお、これは後述のレベルデザインによっても補強されることなんですが、ひとまずは割愛します。
オーソドックスな殴り合い、MPと捏造MPを駆使して安定したダメージソースを稼ぐ魔法、SPを消費して物理にバフを乗っけるスキル、あるいは優秀なパッシブスキルの数々から、EPを消費する特殊行動まで、広がっていく選択肢に目を通して戦略を組み立てていく楽しみがあります。
やれることがとにかくどんどんと増えていくので、色々と組み合わせたり、その時々の敵に向けてチューニングしたりと常に考えて試行していく体験が用意されていました。拠点でおおよそのポイントをいくらでも振り直せるのも非常に良く、カジュアルにいろんなビルドを試して挑戦することができました。
試すという観点で言うと、攻撃性能やスキルの詳細について、ある程度は説明しつつ、ある程度は省略するという設計もまた絶妙な塩梅で完成されています。全てを説明すると試行錯誤の意識を削ぎ、説明しなさすぎるとそもそも試行錯誤もできないんですが、その中間択を綺麗に突き抜けた設計となっていました。
例えば魔法を得られた時、この作品では魔法のダメージ計算はある程度予測を付けて行い、その結果を元に効果を推定して効果的な対象を考えることになります。これを序盤で積み重ねていた経験があればこそ、中盤から終盤にかけての敵に対して魔法を使ってみるアイデアが手の届くところにあるという寸法です。
説明の省略をもってプレイヤーに学習を促し、それにより思考の中に選択肢を住まわせる手腕がとにかく絶妙な作品だと言えます。
リソース管理の中で行われる豊富な手札からの構築、その構築を自然に行わせる省略の妙、それをもって己から発する戦略性の広がり。
雪山道というゲームのシステムが持つ裾野はあらゆる挑戦を受け入れてくれる度量があり、その中で試行錯誤をのびのびとすることができるようになっています。
続いてシナリオ面の話になるんですが、ここは完全に好みです。筆者は、無駄っぽい話を織り交ぜながら軽妙に会話が進んでいく会話劇を好むところにあるので。全体的に見ると断章を繋いで会話のみで世界観からキャラクター性まで描写していくタイプなので、そういったものが好きな人は間違いなく好きだと思います。
言い回しが全体的に上手いのも良いんですが、それ以上に断章として抜き出す会話の流れが良くて、全体を通せばかなり少ない会話量に感じるんですが、各々の性格や関係性の変化から、それぞれの妙な歪み方まで綺麗に描写されています。
後は、主人公含めて周りがまあまあに変人でありつつ、きっちりしたところでは常識人の顔を見せるバランスも良いところです。魅力を感じる偏りを見せつけつつも、人間として外れすぎない良い塩梅の描写によって、人間っぽさとキャラクターとしての魅力が両立されています。人間と呼んで良いのか分からない登場人物もそこそこいて、そこは神性と俗さが共存しているあたりも良い。
また、シナリオ中に度々差し込まれるグラフィックについても、この良い意味で簡潔と言って差し支えないシナリオ性にマッチしたものとなっています。テンポ良く進んでいく物語を止めることなく、その場において印象に残る情報に先鋭したスチルは会話劇同様に軽妙に、しかして強く心に残るものです。
後は単純にレクサールが可愛い。
そして何よりも、終わり方が秀逸であり、安寧にいないというか、心の半身が常につんざく世界の天辺にあるあの空気感は最高と言って良いものでした。
願わくはAnother行きたかったんですが、筆者のプレイヤースキルの都合により断念しています。その先にある別の可能性を覗きに行きたい気持ちはあるので、ちょくちょくチャレンジはしようと思います。
しかし、掲示板を見てたら縛りプレイじみたクリアしてる人もいるので世界は広い。
最後にレベルデザインの話もします。システム設計が抜群に良いのは前述した通りなんですが、これを補強するレベルデザインの良さもあって、このゲームの体験はより強固なものになっているという面があるように思います。
大枠におけるゲーム設計全体におけるレベルデザイン、そして階層ごとのテーマに沿ったレベルデザインのどちらも秀逸なんですが、とりあえず前者について触れます。
このゲームはおおむね、10階層までがチュートリアル、18階層までがボスチュートリアル、そしてラストバトルに向かうという構成に感じていました。
特に10階層到達にあたっては、リソース管理の殴り合いから魔法を習得した別次元の戦略の広がりをマスターしないと攻略できない難易度になっています。後々9階層にナーフが入ったらしいので今そうなっているか分かりませんが、少なくとも筆者のプレイタイミングではそういう設計でした。
なお、魔法無しで突破していた筆者はここでつまずいたので再走しています。
これは、ともすればスパルタと言って良いレベルの設計なんですが、これのおかげでこのゲームは多様な戦略をとって幅をもって戦うゲームということを叩き込まれます。少なくとも第二の札を持っていないと、まともな勝負にさえならないこともあります。
この10階層までの道筋は、このゲームにおける表明のレベルデザインであり、戦略の道筋を提示するものとなっています。若干選別のレベルデザインに片足を突っ込んでいる感じもしますが、その辺は9階層のナーフで緩和されているかもしれません。
10階層へ到達した先に待ち構えているのは、これまでのリソース管理による切り詰めた戦いから一転して、1階層ごとに全力を出せる設計に切り替わります。同時に取れる選択肢の広がりの可能性もまた提示されることもあり、切り詰めから解放される安心感も得られます。
そして、Anotherを目指すならともかく、本質的には負けても問題ないデザインに切り替わることで、ここからは攻略に向けたレベルデザインに変化していきます。10層までの場当たり的故に限られた戦略性から脱し、より幅広い選択の中で攻略の糸口を見つけ出す戦略性へとシームレスに繋がっています。
ここから18階層に至るまで、途中の雑魚や中ボスですらも、ある程度特徴を持ち、どうやって上手く攻略するかを考える必要が出てきます。いわんやボスはどれも個性的であり、それぞれがそれぞれの攻略法を要求し、あるいは固定的な攻略法を封じる性能を秘めています。
このため、ボスごとに戦略をある程度様変わりさせていく必要が生じていき、階層ごとの色を適切に捉えて現状の手札からの戦い方を試行し、攻略していく楽しみが味わえました。
そして、この土台となっているのは間違いなく先行して体験した10階層までの経験です。おかげで、その経験に立脚し派生していく思考を基に奥深い戦略を突き詰めていくことができるようになっています。
そして、それらを総括するようなノエル、あるいはラスボスの設計は見事というほかになく、まさしくこれまでの戦略の総決算として挑むことができます。ボスごとの固有能力に対応してきたこれまでの経験を総動員し、めくるめく戦況に対応しつつ戦っていく感覚は得難いものがありました。
また、レベルデザインとは直接関係ありませんが、各階層におけるボスの特異性というか、デザイン的な面でのネタへの走り方もまた良く、次の階層で出会うボスを楽しみにする牽引力ともなっていました。
もっとも、ここが原因でウディコン的には停止になってしまった部分でもあるので、あんまり色々と言うのもアレではありますが。ただ、Cross Fait Battleでは笑いましたし、地獄を見せてあげるで終わりかと思ったらまだまだ終わらずに続くマトリョーシカには思わずおいという声が出ました。
また、もう一つレベルデザインとして秀逸な点として、確かにインフレしていくように設計しつつも、戦いになる程度に抑えられているところがあります。
リソース管理を軸とするノンフィールドRPGにおいて、成長は明確には数値でもって表されるものであるため、数値のデザインはかなり重要です。そして、この作品では、この数値のインフレ具合と、一部パラメータにおけるインフレしない具合が絶妙にコントロールされています。
特に、各パラメータが関わり合った結果のダメージは確かにインフレを感じ、大きく成長を感じていく一方で、コストとして使うポイントの多くはそれほどインフレさせられません。
ゲームシステムを崩壊しない範囲で成長を実感させつつ、絞るべきところはきっちり絞られた設計に感じていました。
そしてこれは筆者がAnotherをクリアできてない立場で言うのは大変に烏滸がましいんですが、Anotherに向けての0回死亡クリアという導線が引かれているのも極めて良いところになります。
ここまでで段階的に引かれてきたレベルデザインに対し、さらに上級者向けに一本筋を通して新たなる試行を行わせしめるものとなっています。挑戦のレベルデザインとでも言いましょうか。
ある意味ではチュートリアル的にクリアに向けての導線としての役割を担っていつつも、それ全体を一貫してより大きなチャレンジへの布石となしている、この分離と統合のデザインは一粒で二度おいしい設計として完璧に機能しているように感じました。
長々と書いてはきたんですが、端的に言えばめっちゃ面白いのでやれば良いと思います。
筆者はノンフィールドRPGが下手ではありましたが、何度でもやり直して戦略を練り直せるので、不屈の闘志で挑み続けていくことでクリアまで到達できました。雨垂れ石を穿つです。そういう意味でも、9階層さえ抜けられれば誰でもクリアできるようにはなっていると思います。
なお、この作品とは直接関係ないんですが、オマージュ元らしい雪道の作者さんの新作がSteamに出ていたので買おうと思っています。雪山道をやったら滅ぼし姫をやろう。
23. 魔王復活物語
ジャンル | 作者 |
---|---|
メタ謎解き | かげろう |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 1.5 | クリア |
良かった点
- 常に発見のある良い謎解きの体験でした
- ゲーム内のらしさの完成度が高いです
- ヒントの塩梅がちょうど良かったです
気になった点
- 特にありません
レビュー
あんまりネタバレしたくないのでここに書くことが無い
初めに断っておきますと、この作品を十全に遊ぶ上では、余り情報を入れずに起動することを強く推奨します。
もしもあなたが謎解きを好んでいたり、発見を伴うパズルを気に入る性質の方であれば、ここから先を読まずにプレイしてください。素晴らしい体験になることだけは保証できるでしょう。
とはいえ、事前に情報を仕入れても楽しめることもまた確実ではあります。そういう方のためにも、少しだけレビューを書き留めようと思います。
魔王復活物語は、メタ的な要素を活用して進むパズル的な謎解きを主体としたゲームです。
ゲーム内ゲームを進める上でぶつかることになる、主に不具合を起因とした障害に対し、あの手この手ですり抜けてゲームを進行していくことを目的としています。
様々な形で発生する障害を上手く回避するために必要となるのは、プレイヤー自身の閃きと発想です。
ゲームシステムを上手く運用するなり、最終決戦前にあるデバッグ用のセーブデータを上手く活用するなり、あるいは注意深く周りを見渡すなり、様々な要素を隅々まで観察し、思考し、使い尽くすことによって、初めてその問題を解消することができます。
物語中のイベントから示唆される導線を上手く使い、時にはヒントシステムにも頼って思考を補助しつつ、適切な手段で対応していきましょう。
そうして謎解きを進めてゲームを進行させる毎に、回想の形でそのゲームの作者とのかつての交流が描かれていきます。ゲーム内の展開とも密接にかかわり続けるそれらの記憶は、やがてシナリオの本流へと回帰していきます。
謎解きの秀逸さもさることながら、そうして語られたゲーム製作にまつわる物語もまた良質なものとなっています。その誘引力は間違いなく、最大の難易度と呼ぶにふさわしい最後の謎を解く原動力となってくれることでしょう。
あらゆる困難を発見を伴う知恵と工夫で打破し、ゲーム内の要素を全て拾い上げ、その物語のエンディングを迎えていきましょう。
感想
最後が余りに綺麗に作られているので、それだけでも最高のゲームです。おまけに、そこに至るまでのメタ的なパズルの設計も秀逸なので、全体を通しても最高のゲームでした。
第四の壁のないメタゲーとしての新鮮味と、それだけに頼らない謎解きというかパズルの強度の点において、ここしばらくやったメタゲーの中では指折りに好きな作品です。OneShotとかアトペス以来くらい。
最後がどう良いかを追々記述していくので、まだやってないのに感想を読んでいる人はとりあえずやってからお願いします。何ならやったら以下の感想は読まなくても良いです。
いったん別の話をすると、ゲーム内ゲームのらしさを突き詰めているのも良くて、確かにこういう作り方しますよね、というところを適切に突いてきます。
バグ発見ゲーム系は割とあるあるのバグを出すためのバグというパターンが共感性のためにか強めになりがちなんですが、このゲームのバグは本当にそうなっていそうな印象があります。ちゃんとエミュレートされた不具合という感じ。
加えて、そういった不具合以外においてもゲーム内の要素がきちんとそろっていて、魔法復活物語そのものが活きた作品のように思える出来となっています。ちなみに、ここで言う魔王復活物語はゲーム内ゲームの話です。
そして圧巻であるセーブデータを活用した謎解きというパズルの設計は絶妙であり、常にそういう視点もあるのかという発見に満ち満ちています。
つづきからというギミックから出来得る全てのことをやったんじゃないかという程にバリエーションに富んでいて、そこから生み出される発展性とどこまでも伸びていく斬新さは10点以外何を付ければ良いのか分からないレベルです。これだけは迷うことが無かった。
終わりから始まる物語、バグを活用したクリア、みたいな系譜のゲームの先例は様々にあれど、ごり押しによる突破、存在しない情報の活用といった異なる視点からの活用を主眼としたパズルというのは目から鱗のシステムでした。
そしてこれは何度でも擦るんですが、最後の謎解きは完璧です。
連携、レベルによって到達する奥義、武器による技の追加、全ての説明された要素を余すところなく活用した上で、タイトルを叩きつけるという設計は余りにも美しく完成されています。カタルシスがある。
筆者は王復活を構成した上で、それぞれを探し出していくという理想ルートの体験を通ったというのもあるかもしれませんが、とにかく得難い体験だったように思います。発見をベースに置いたパズルの体験の美しさという面において、The Witnessをやった時のレベルで感動を覚えました。
その分、とりわけ最後の謎解きの難易度は充分に高いようには感じています。分かる人には一瞬で分かりそうですが、筆者は30分くらい彷徨っていました。どうやらプレイ前のバージョンではタイトルのヒントもなかったようなので、世の中には勘の良い人もいるのだなと思っています。
連携+タイトルと了解してさえ、タイトルがタイトルそのものなのか悩みながら進めていたところもあり、迷走してこねくり回してルーズソックスを作ろうとしている時期もありました。とはいえ、王復活が見えるあたりでほぼ確信が取れるので、野暮にならない範囲では絶妙のヒントだとは思います。
ヒントについてもう少し触れておくと、最後以外のヒントについてもかなりちゃんと作られています。
筆者は余り見ないで進め、大体分かった後に聞くようにしていたんですが、かなり良い塩梅の情報となっていました。雪のヒントは特にちょうど良い塩梅であり、戻るアイデアへの導線も、戻った後に何をすれば良さそうかの導線もきちんと完備されています。
一方で、エニムへのミスリードは若干ズルいところもありそうには感じました。筆者はなんとかして一番下の街を消す方法を探していました。
また、システム面においてはセーブが限定されているのも良いところです。おおむね、ここであなたをハメますよという意思表示になっています。その上で、ボスの前に置かれているなど、余り作為的になりすぎないようになっているため、このあたりのバランスも取られています。
謎解きによっては明確に詰みもありうる中、そこを上手くカバーしたデザインになっている印象がありました。
セーブデータを残さないタイプの人向けにも塞がれているなど、細かいところのケアも良く整備されており、謎解きに集中できるような環境が完成されている作品となっています。
筆者はパズルだけで感動できるんですが、そういうタイプでない人向けにも、シナリオもまた良いものであったということも付記しておきます。
ずっとノリの良いコメディー調のストーリー展開で明るめにテンポ良く進めつつ、終わりに向かっては制作にまつわる熱をもって物語の強度を補完してきます。
殊に、筆者の記憶している限りでは往年のRPGの主人公よろしく一言も喋ることのないヒロが、最後に語りかける演出が良いです。それまではあくまでもヒロとしてのロールプレイであり続けたところに、最後にhiroとしてというかその人そのものとして作用することで、物語が綺麗に着地していました。パズルもそうなんですが、構造的に秀逸なところがあります。
加えて、個人的に好きなのは、魔王がエアロブラストを使ってくるし、ブラインもやるし、何なら形態変化後はちゃんとマオになっているあたりです。
別段それが強くシナリオで主張されることは無かったと記憶していますが、このゲームそれ自体の持っている意味をシステムで上手く主張しているあたり、これもまた物語の一つなのだろうと思います。
返す返す最後が秀逸なんですが、最後が秀逸であることを説明しようとすると強烈にネタバレになるので、とりあえずやってと言うほか無い作品です。
最後に至るまでの謎解きも当然素晴らしく、やるたびに新たな発見があって好きだったんですが、余りに最後が美しすぎて、そっちのインパクトにだいぶ持っていかれつつ、この感想を書いています。
24. なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる?
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノベル | カッパ永久寺 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間 | 1.00 | TRUE END |
良かった点
- 不安定な中で描かれる物語を楽しめます
- 日常パートとそれ以外の配分がちょうど良かったです
気になった点
- 回収されない要素があるような印象を受けました
- そういうシナリオであると解釈することもできる作品ではあります
レビュー
なかよしな日常
なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる?は、ホラー要素を含む短編のノベルゲームです。
記憶喪失の主人公を中心とした、いつもの日常が描かれていきます。
主人公は、記憶喪失の前から友達だった3人と共に、以前のような日常を送るために学校生活を進めていきます。
何か不穏なことがちらほらありますが、それはそれとしてなかよしな日常を見ていきましょう。
恐怖を与える表現はもちろんのこと、あらゆるものを疑いたくなる不安定な描写の中で紡がれていくシナリオが特徴的な作品です。
何かがおかしい日常を覗いていきましょう。
感想
終始信頼できない語り手をやるので、ずっと不安定な足場の上で組み上げられた作品を読んでいるような印象の作品でした。ホラーにぴったり。
どこまでの情報を真実とし、どこまでの情報を誤りとみなすかによって色々解釈は変わりそうではあります。個人的にはある程度第三者視点を信じるのが良さそうだなと感じたので、おおむね刑事さんの推測を当てにしていました。
こういうタイプの作品は日常パートをどれくらい描くかが割と難しく、長すぎるとだれる一方で、短すぎると日常の浸食を充分に表現できないままホラーに突っ走ることになってしまいます。
一度ホラーパートに入ると日常パートに戻ってもホラーの残滓が残り続けるので、自然に最初にやる日常パートの尺が大事になります。
この作品におけるそのあたりの塩梅はちょうど良く、ギリギリだれない範囲で日常パートを描いていたように思いました。そもそも最初にホラーを突っ込むことで助走をつけていたというのもあります。まずは死体を転がせというのは、ミステリー小説の基本みたいなところがありますね。
一方で、解釈の幅を広げるためなのか、最終的にあんまり回収されない宙ぶらりんな要素もそこそこある印象がありました。
顔のない追跡者、突き落とした気になっている理由、京先輩周り、この辺の掘り下げは余りなされません。あくまでも、主人公の周囲に発生する事象がメインなので、世界や他者にまつわるあたりは突っ込んで話されないというのはあります。
全部妄想にすぎませんでした、もまた解釈の一つではあるんでしょうが。
中でもメモ書きは誰が残したのか、はどう解釈するべきか迷っているポイントです。あの時点では恐らくループが始まっていないはずで、そうだとすれば誰が書き残したんでしょうか。犯人がいるとして、書き残すとは思えません。
それともループが実はもっと早くから始まっていて、無間地獄の後にアレを残すフェーズがあったんでしょうか。真相がどこに辿り着くにしろ、基本的には気にしなければ何も起きないことは事実ですからね。
京先輩周りについての解釈も難しく、冒頭はほぼ間違いなく京先輩を指しているはずですが、その場合でも解釈は分かれます。おおむね、京先輩は普通に自殺し、この件とは無関係であってアレはただの演出である、という解釈と、京先輩は入れ替わったが記憶が無いので無間地獄に囚われている、という解釈の双方が可能です。
どっちに転んだとしても、その自覚がないものが過去の所業に囚われて無限の苦しみを味わい続けているので、ある意味ではどっちでも変わらないとも取れるかもしれません。
こういう要素について、もやもやとするとか、考察の余地とするかは人に寄りそうですが、個人的にはややもやもやよりなのかなと感じています。視点がそもそも信頼できない語り手の時点で、曖昧な部分が発生するのはやむを得ないところではありそうです。
ただ、メインの主人公の境遇と末路に関しては解釈が分かりやすく二分され、そのどちらかは分からない、という終わり方をするので、ある意味ではこのような事実の重なり合いを観測するという旨のゲームとも言えるかもしれません。
ちなみに余談として、筆者はホラーにはそこそこ耐性があるんですが、カッターみたいな現実的な痛みを読んでると若干むずむずして辛くなります。あのシーンは、どのシーンよりも目を細めてしまいました。多分想像できる痛みがしんどいんだと思います。
25. At End of the World
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | エルトン |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間+1時間 | 3.4 | クリア+ |
良かった点
- 技を入れ替え己の戦略を追求していくハクスラが楽しめました
- 新陳代謝が終盤まで充分に続くバランスとなっています
- 戦闘システムそのものがシンプルなため、技のデッキ構成だけに注力できます
- 手に入れた技が無駄にならないシステムが完備されており、安心して技を集められます
- 終末的な世界観が印象的に表現されており、シナリオに良い影響を与えています
気になった点
- スキル構成について、簡単なソートや保存がしたい気持ちがありました
レビュー
技を組み立て自分なりのビルドを作り上げよう
RPGというジャンルの戦闘における楽しみの一つとして、用意した戦略が上手くはまって敵を倒す楽しさが挙げられるでしょう。戦略を練り、手札を準備し、それが上手く運用されて敵を圧倒していく達成感は格別のものです。
At End of the World は、技をハクスラで集め、その技のみで戦闘を行うゲームです。ゲーム中のステータスの強化は限られているため、プレイヤーはほとんど技の構築だけを考えることになるでしょう。それゆえに、そうした戦略を準備し、練り上げて攻略していく楽しさを十全に味わえるゲームとなっています。
戦闘画面 |
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このゲームの戦闘は、ランダムで4個の技が配られることから始まります。
この技の中から消費するHPやSPの許す限り技を選択し、攻撃を繰り出し続けることになります。そうしてターンを終了したら相手から攻撃を受け、これをどちらかのHPがゼロになるまで繰り返すというものです。
例えば、上記の戦闘の例ではSPが10あるため、消費SP1のダガー、SP3のスラッシュ、SP2のソードの全てが発動可能です。HPを消費して良ければ、ナイフを発動することもできます。
SPはターン毎に一定値だけ回復していくため、最後に残るSPや残りHPに気を配りながら、各ターンで適切な消費量に基づいた技選択をしていく必要があるでしょう。
ただし、戦闘に出てくる技は、あらかじめ自分で構築した20個の技のみから選出されます。このため、戦闘は事実上戦う前のデッキ構築から始まっているとも言えるでしょう。どういったプランで戦いを進めていくかを考え、持っている技の中から選りすぐりの20個を決めていきましょう。
ここで選び出す技を決める上で重要になるのは、その技に付与されたオプションです。状態異常の付与からカードのドローまで、技には様々な性能がランダムでいくつか付けられています。例えば上記の画面のうち、ダガーは防御力を上げるバフを持ち、ナイフは回復できるバフを持っています。
バフを盛って戦いを有利に進めてみたり、デバフで相手を封じたり、ひたすら同一ターンで回せるようにドローを積んだり、戦略は様々です。自分が思い描く戦略を実現するためにも、様々なオプションが付与された技を集めて構成を練っていきましょう。
なお、技に付与されるオプションはレアリティが上がるほど強力になっていきます。このため、プレイが進む度により強力な技へと入れ替えられていくため、常に新鮮なデッキで戦いに臨むことになります。技を常に更新していき、戦略の理想を追い求めていきましょう。
とはいえ、そうして手に入れた古い技も無駄にはなりません。合成の素材として別の技の生成に用いることもできますし、オプションが気に入っているならアイテムを消費してレアリティを引き上げれば前線に復帰させることも可能です。
あるいはデメリットだけが目立つ技でさえも、そのデメリットを変質させ、別のデメリットに変えることもできます。いまいちだった技が化けることもあるわけです。
どんな技を手に入れても無駄になることは無いので、ガンガン技を手に入れていき、デッキをどんどん進化させていきましょう。
このようにデッキ構築を進めて強敵と相対せるようになっていくと、より奥地へと足を進めることができるようになります。
そうして次々と探索していくことになるマップはどれも終末感の漂うものであり、そこで描かれていくシナリオもまたどん詰まりのような暗さを抱えています。そんな終わりの世界の空気の中でも歩みを止めず、強敵を打ち倒して最奥まで進んでいきましょう。
また、マップには時折NPCがいるので、積極的に話しかけてクエストを行ってみるのも良いかもしれません。報酬となるアイテムは便利ですし、この世界の終末的な空気感に触れることもできるでしょう。
技を手に入れ、デッキを強化し、さらなる強敵に挑んではより強い技を手に入れていくハクスラを楽しめる作品となっています。
たとえデッキが完成したと思っても、オプションの吟味や安定性の向上、あるいは別の戦略の試行など、ブラッシュアップの余地はいくらでもあります。技を入れ替え最強の戦略を目指していきましょう。
感想
筆者は軽戦士を選んでいたので、ずっと俺のターンができるゲームでした。最初にゲームシステムと、職業のデザインを見た時から使おうと思っていたので、上手く運用できて楽しかったです。上級者向けとか関係ない、この手のゲームは行動回数が正義なんだという思想があります。
手に入る技を吟味し、理想に一歩ずつ近付けながらデッキを構築していくのは大変に楽しかったです。
このゲームのメインはやはり戦闘システムと、それを左右する技の数々だと思うので、そこに触れていこうと思います。
まず、戦闘システムは状態異常の多彩さ、技の豊富さをいったん考えないでおくと、かなりシンプルです。特殊な行動はそれほど多くなく、シンプルにHPの削り合いの勝負に終始します。
特殊な戦闘システムで戦うところはさておき、基本的な設計がごくシンプルであるがゆえに、状態異常とそれを操る多様な技にじっくりと目を向けることができる設計でした。ベースの簡単さから戦闘自体は飲み込みやすく、すぐに特殊な異常仕様への慣れや、各種技性能の強さの吟味に注力できます。
また、20枚というデッキ構成のサイズ感、ハクスラで手に入る技のランダム感がちょうど良いために、クリアに至るまでかなり新陳代謝が激しいのも好きなところです。
筆者はほぼラスボスに到達するくらいまでは頻繁に技を入れ替え、理想に向けたビルドを行うことができていました。方向性の完成は中盤くらいにある程度整っていましたが、事故率を下げたり、細かいところをブラッシュアップしたりと意外とやれることは多く、終盤まで強い技を追い求められます。
そして最終的には、ラスボスだろうと裏ボスだろうとワンターンキルできる圧倒的な手数の多さを手に入れることができました。HPの続く限りほぼ無限に行動し続けるマシーンの完成です。
そんな最終構成は以下の通りになりました。
オメガは余り使わず、ドローソースを大量に仕込みつつ、威力増加と鋭刃で単価を引き上げ、手数でごり押すスタイルです。SP消費技の数を抑えてHP消費技主体で戦うため、HPさえ持っていれば絶大な火力を叩き込むことができます。道中の雑魚にすらHPを消費しないといけないのは若干ネックですが、回復をちょっとだけ混ぜて保険としていました。
そして、強力な技に必要となるデメリット効果はどうせワンターンキルするならと、毒や傷をふんだんに癒しています。どうせ相手のターンになることはほとんどないので。よく考えれば、傷を避ける必要もなかったかもしれません。
これでも色々と妥協して組んだ部分も多く、まだまだブラッシュアップの余地はあります。ドローソースが初動に関しては100%安定するわけではないですし、SP技についても強力なものは残ってしまっているので、この辺も可能ならHP消費技に切り替えたいところでした。
ついでに、以下のスキルの中でも特に強力でお気に入りだったものをピックアップしてみようと思います。
まず、問答無用でナイフドローは強いです。消費HP2程度でドローソースになってくれます。このため、カタストロフと一段階落ちてはいますが採用に至っています。もう少し時間を遡ると、普通にブレスでも採用されていることがありました。
続いて、ドロソ+威力増加+鋭刃を全て兼ね備えたサイズが強力です。SP消費無しでやりたいことが全部できます。しかもデメリットが弱い。
また、ドロソではないものの、威力増加9+4、鋭刃6のソードや、威力増加合計17のソードは手数の多さで戦うこのデッキにはかなり刺さっています。後者に至ってはハザードのレベルですが採用されています。
ただ、ソード/スラッシュ共にSP消費対象ではあるので、できればナイフ、あるいはサイズあたりで揃えたい気持ちはあります。また、ドロソだからという理由だけで入っているブレスのソードなど、やはりまだまだ改善の余地は残されていますね。
最終構成 |
---|
閑話休題。この辺の技のハクスラを進める際に、合成やアイテム消費による上書きである変性、あるいは進化など、技を余すところなく活用できるシステムについても上手くできています。
全く不要な技は合成に投げ込むことで二回目のチャレンジを獲得できますし、ある程度強いけどデメリットや一部スロットが気になるような技は、変性で最強の技に生まれ変わらせることもできます。序盤に拾って性能と使い勝手が良いために愛用していた技を、進化を繰り返して常に最前線にレベルアップし続けることも可能です。
どんな技であっても何らかの方法で活用したり、上手く使っていたものをそのまま継続させられたりと、無駄がありません。このおかげで、技を取得した際に残念な気持ちになることがありませんでした。
一方で、技はかなり手に入ることになるので、適時整理していかないと、だぶついて調整が難しくなります。せめて、デッキの種別ソートくらいはしたい気持ちもないではないですが、ソートすべき対象の多さを鑑みると難しそうです。種別、コスト、あるいは効果スロット、レアリティ、いくらでもソートしないといけないものがあります。
一応保有スキルはレアリティソートされていて、これは結構便利なので、このままでも良いかなという印象はありました。かなり過積載気味のソート機能がないと満足に使えなさそうなので。
シナリオ面というか、世界の空気感も素晴らしく、まさしく世界の終わりといった退廃的な世界が強く演出されています。
NPCの数は決して多くありませんが、世界を物語るに足るようにはなっており、各々のクエストも良い味を出しています。やればやるほど人が死んでいく。何だったら何もしない方が良かったのかもしれない、と感じたところからの最後です。
そういう意味でも、ラストバトルは本当に清々しい気持ちで挑めるものであり、これまでずーっと暗かったぶんを全て吐き出した晴れやかさを感じることができるものでした。
廃村はちゃんと村になり、最終ステージの元あった黒々しい靄が晴れ、ここまで澄んでいたのかと感じさせる青空をバックにラストバトルです。演出としては完璧と言って良いでしょう。
この明るさを取り戻すための物語として、綺麗に結末まで導かれています。
なお個人的に気になっているのは、アルフォンソが狂ったのかそうでもないのかといったところです。プレイヤーというか主人公ですらも、何度か終わらせてしまおうかということが頭をよぎり続けているので、これの果てがアルフォンソであるということなのかもしれません。あるいは主人公になれなかったものとしての位置付けなんでしょうか。
そこに至るまでの物語が詳しく描写されることはないので、真実は闇の中です。
余談ですが、筆者は初見時に完全に教団エリアを見逃していたので、いきなり始まった教団の話には若干ついていけませんでした。それがヒントになって発見できた側面もありますが。
まあプレイヤーはともかく、主人公はこの1000年で色々と見てきたのでしょう、多分。
ともあれ、ずっとスキルを入れ替えて、己の理想を追求しつつ、現実として手に入った性能も強いなこれと思いながら使っていく、非常に楽しいハクスラ体験ができる作品でした。
ここではあんまり触れていませんが、変な戦闘システムの中で戦える場所もいきなり用意されていて、ただ戦うだけでなく、制限の元戦いに挑む楽しさも担保されています。奥が深い。手数ゲームしていると特殊ルールには相性が悪いこともあり、遊んでいる最中は複数のデッキを登録できる仕組みが欲しくなっていました。
26. カニハザード~カニ滅外伝~
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクション | sugo-rock |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
20分 | 1.1.1 | 49260 |
良かった点
- 終わりのある中のスコアアタックであるため、明確に目標をもってプレイできました
- 差し合いを意識する立ち回りが求められます
気になった点
- カニのステップが場合によっては理不尽に感じました
- 攻撃予兆前のバックステップからの差し返しがかなり厳しいです
レビュー
カニを100匹滅せよ
カニハザード~カニ滅外伝~ は、次々と出現するカニを倒していくアクションゲームです。
それに加えて、カニを100匹倒し切るか敗北するまでのスコアを競うこともできます。
絶妙なステップと特殊な行動で攻めてくるカニを上手く倒していくには、いくつかのアクションを使いこなす必要があります。
中でも基本となるのは通常攻撃と回避です。通常攻撃は発生時に向いていた方向にだけ攻撃するタイプなので、良く狙いを澄ませて当てましょう。連続で攻撃すれば範囲と威力が伸びるため当てやすいですが、その間は移動ができないので当然隙も大きくなります。適宜使い分けていきましょう。
また、攻撃後の後隙に被弾しそうになった場合は回避が便利です。回避で行動を上手くキャンセルすることができれば、ぐっとダメージを抑えられるようになります。
その他、回転切りや遠距離攻撃などの特殊な攻撃も駆使しつつ、上手くカニを捌いていきましょう。
しかし、漫然とカニを倒しているだけではスコアは伸びません。スコアを伸ばすには、コンボを意識する必要があります。
コンボを伸ばすためには、カニを一定時間内に継続して倒し続けることが重要です。制限時間内に次々と倒していければ、その倍率はどんどん高くなっていきます。このため、後半にスコアの高い強敵を倒すほどコンボによる上乗せが入りやすくなっていき、ますますスコアが伸びていくでしょう。
時にはあえて強い敵を残したまま戦いを進め、リスクを背負うことでスコアを伸ばすこともできます。慣れてきたら狙ってみるのも一興です。
アクションを使いこなしカニをひたすら滅し続け、コンボを伸ばしてスコアを稼ぎ、100匹捌いていきましょう。
感想
いわゆるスコアアタック系のミニゲームでした。さっと遊べます。
個人的には100体という明確な終わりがある中でスコアを稼ぐというのが好きで、きちんと制限がかけられた中で上手くやることが求められるので、だれにくい設計になっているんだろうなと思います。
100体というやや多めの目的に対しても、少しずつ性能の違うキャラクターを出していき、ボスのような巨大な敵を用意することでさらに大きく盤面を変化させることで、その目標値を多すぎないように感じさせています。
アクションの面で見ると、自機の攻撃性能はかなり低く、爽快感を求めるタイプというよりは、ずっしりとしたアクションという感じがしました。鎧を着込んだソウルライクみたいな遊び味であり、軽快なプラットフォーマー系アクションみたいな遊び味ではありません。
特に攻撃後に即時向きを変えられないので、かなり窮屈に戦うことになります。軽快に捌いていくというよりは、相手の動きをある程度読んで一撃を当てに行くという遊びになっていました。持ってるのはショートソードっぽいですが、挙動は完全に大剣のそれです。
とはいえ、即時転換が可能になるとそれはそれで簡単そうなので、これくらいの窮屈さによって難易度をある程度担保しているんだろうなという感触でもあります。
プレイ中の被弾は、おおむね前隙の初見殺しか、攻撃方向のミスによる後隙を狩られるかでしか発生しないので、リスクをちゃんとつけるならこの要素がないと困ります。後隙は上手く回避でキャンセルしましょうね、というデザインだと解釈していました。
ただ、大剣のような性能の割にリーチが短いのは若干辛く、特に初撃はかなり心もとない印象を受けました。敵のステップが予測不能なことも相まって、噛み合うと最近接で振っても空振る可能性があります。リスクを取って近付いて攻撃したのに避けられるのは、後隙も込みでリターンが見合ってないなという印象を受けました。
また、敵のカニの挙動はかなり独特で、攻撃予兆直前ですらステップを踏むので、結構攻撃を当てにくいです。連続攻撃で範囲を取るか、回転攻撃でケアするかしないと、上手く当たらないことが間々あります。
ステップのタイミングを読むのはかなり慣れが必要で、適当にプレイしているとバックステップによる回避から差し返しを食らってダメージを受けやすいように感じました。ここはプレイヤーの慣れが必要です。慣れても大量のカニの動きのテンポを把握するのは割と難しいですが。
また、攻撃判定は思いのほか残っているので、下手に近付くとダメージを受けることもあります。攻撃間隔がつかめないうちは、余り積極的に攻めない方が良いのかもしれません。
カニをバシバシ倒していく爽快感というよりは、立ち回りをちゃんとして、倒す敵もちゃんと選んで、上手い人はハイスコアを目指しつつ、そうでもない人は生き残りを目指していく、そういった堅実な方に振ってあるアクションというイメージです。
漫然とプレイせず、クリアに向けてちゃんと動きを覚えていくことが求められるあたりは楽しかったです。カニに適応していく。言わばAnother Crab’s Treasureのようなヤドカリソウルライクよろしく、ソウルライク・カニアクションなのかもしれません。
27. 不思議な世界の観光日記Ⅱ
ジャンル | 作者 |
---|---|
オムニバス | nananana |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
5時間 | 1.06a | クリア+全隠し実績 |
良かった点
- 多種多様なゲームが遊べます
- 個々のゲームに良い意味で突っ込みどころが満載です
- 比較的高難度なゲームには救済措置がありました
気になった点
- 続編のためか、キャラの名前やストーリー進行でやや追いてかれがちです
- 必要な範囲では情報が開示されるので致命的ではありません
レビュー
吹き荒れるオマージュの嵐
不思議な世界の観光日記Ⅱ は、様々なゲームジャンルのごった煮となっているオムニバス形式の作品です。
ミニゲームや音ゲー、レース風ゲームからアクション、果てはクリッカーまで多種多様な形式のゲームをクリアして進行していくことになります。
各々のステージをクリアしていくためには、それぞれのジャンルのゲームに適応することが肝要です。各ゲームの特徴を捉まえ、プレイを通して学習していくことで、適切に対処できるようになっていきましょう。
そうしてあるゲームに適応してクリアできたかと思えば、次から次へと全く異なるジャンルのゲームが矢継ぎ早に現れていきます。新たなゲームにどんどん対応し続けていくような、めくるめくゲーム体験を味わうことができるでしょう。そこには、たくさん遊び、たくさんクリアしていく楽しさがあります。
また、そのいくつものゲームを遊ぶ中で出会うことになる、様々なところにまで散りばめられたオマージュは、このゲームの最大の特徴と言えます。
あるいはオムニバスとなっている多様なゲーム群よりもさらに高い密度で繰り出され続けるオマージュと、それに合った個性的なキャラクターたちが織り成す物語のテンションにより、常にピークを記録するようなノリの良さが続いていきます。
こうしたノリに感化され、オマージュネタの宝庫に浴した最高潮のテンションをもってプレイし続けられること請け合いです。
加えて、それらのオマージュは細かい言い回しにとどまらず、ゲーム性そのものであったり、グラフィックであったりにも強く影響を与えています。
オムニバスにより七変化し続けるゲーム性同様に、そのオマージュに基づいてゲームの雰囲気そのものもまた多種多様に変容し続けることになるでしょう。絵柄の統一感をある程度崩すことなく、オマージュ元を想起させる手腕は見事の一言に尽きます。
様々なゲーム性、そしてオマージュの嵐に身を委ね、怒涛のゲーム体験を味わっていきましょう。
感想
オマージュに次ぐオマージュの雨霰が降り注ぐゲームです。キャラクターのインパクトの強さもあって、常にハイボルテージが維持され続けていて、オマージュに対して○○じゃねえかと突っ込み続けられる活力も得られます。
各ステージにおいて様変わりし続けるゲーム性もまた良く、次は何が来るのかずっと楽しみにしてプレイできるゲームでした。
ゲームセンターCXもやるし、メイドインワリオもやるし、ロックマンもやるし、Papers, Pleaseもやるし、パワプロもやるし、Undertaleもやるし、ほかにも色々なものが詰まっています。多分拾えていないオマージュも大量にあると思います。悪魔城ドラキュラっぽいのも多分あった。
よくもまあこれほどまでに詰め込んだなあというレベルのパッケージであり、いつ何が出てくるか分からないドキドキ感はなかなかのものがあります。
加えて、グラフィックのレベルが高く、きっちりとオマージュ元に寄せ切っているのも良く、それぞれに対して安心して心の中で突っ込むことができます。絵柄の幅が広いというか、その絵柄に寄せつつ作者さんの画っぽさを出すのが上手いというか。
ゲームの難易度についても、幅広いながらそこそこ難しいものと平易なものが上手くバランスして配置されており、ここの緩急の付け方についても完成度は高いです。
難易度が高いものが連続しないように、アクション性の高いものの後は別種のもので味を変えるように、そして最後に向けてはきっちりテンションを上げられるジャンルのもので固めるように、上手くデザインして巧妙に配されたステージ構成に感じました。
なお、個人的には最初にクリッカーをもってきているのだけ解せないところはあります。メイドインワリオの方が、ゲームの雰囲気的にも尺的にも導入っぽいんですが。いきなり1時間近くクリッカーをやらないと始められないゲーム、とも言える状態にはなっています。
それではせっかくなので、各ゲームについて触れてみようかなと思います。
クリッカー、筆者はクッキークリッカーを手焼きで恒河沙枚焼く程度の嗜みなのであんまり玄人ではありませんが、良い感じに拡大を楽しめるようにはなっていました。
とにかく客単価を上げてぼったくり続けるのが楽しく、店が完全に軌道に乗ると異様なペースでお金が膨れ上がっていきます。
前述の通り1時間くらいで全実績達成できるレベルで、クリアだけならもう少し短縮できるとは思います。これはクリッカーとしては短く、オムニバス形式としては割とちょうど良いかなと思うんですが、筆者がクリッカーに毒されているきらいもあります。時間だけ見ると、最初に遊ばせるゲームとしては長いような気もします。どうなんだろう。
音ゲー、だいぶ苦手だったんですが、判定が中心でなくて前にあることを理解してからは割とスムーズに進みました。また、ボタンの対応に慣れる必要もあって、Xと書いてあるところでZを押す能力が求められます。脳みそバグりそう。
また、音ゲーだけでなく釣りゲーでもあるんですが、こちらはこちらで変なものが釣れて楽しいです。正直最高レアよりも、その一つ前の方が釣りにくいんじゃなかろうかという気がしていました。単純に出現率が低いんだろうか。
メイドインワリオ、このゲームらしさであり、ここの主役であるリョーさんらしさが存分に出ていて好きなところです。このゲームのステージで好きなところのトップ3に入るかもしれません。
オムニバスゲームの中にオムニバスゲーム入っているが入れ子構造を作り上げ、その中でもちゃんと完成度を担保しているミニゲームが矢継ぎ早に出されるのは贅沢だなという印象がありました。
元ネタが分からないアクション、ここはシンプルにアクションとして楽しいところです。ここまでのゲームジャンルの流れから、ちょうどアクションがやりたくなりそうなところに差し込まれるアクションというのが良いポイントです。給水所みたい。
難易度についても、後半のステージの難度を考えるとステージ4に相応しいちょうど良い塩梅になっていました。ここで詰まるのは時期尚早ですが、簡単すぎても面白くはないところ、その中間をきっちり抑えています。
Papers, Please、元ネタ通りにやらねばならないポイントが増えていくあたりのオマージュが光ります。単純なトレースでもなく、逆側というか元ネタとは別種のポイントで判断することを増やしているのも、ただのトレースになっていない感じがします。
なお、筆者は「昨日のセジカ様」と言われて、5-3の情報を聞かれてるのかなと思って1回誤答しました。不覚。
パワプロ、適度に攻略しがいのあるRPGとしても面白いです。ステータスを上げたり能力を取得したりして挑み、足りない部分を補強してまた挑み、を繰り返して突破口を見極めていく様はローグライトっぽさもあります。
この建付けで1本ゲームが完成しそうなレベルで完成度が高く、個人的にも全ステージでトップクラスに好きなステージとなっています。適度に運ゲーなのも本家っぽくて良い。
単純作業、難しいというよりは大変です。ミスると厳しいので。筆者は隠し実績を継続していたので詫び石を使わなかったのですが、多分使えるなら使った方が楽です。
それでも人間は慣れるもので、なんとか条件反射が完成した後に来るリバース30という設計も巧妙というか嫌らしいというか良くできています。実は難易度はそれほど高くないんですが、パブロフの犬を押さえつけてやるのが結構大変でした。
ここで再びアクション、これ以降はクライマックスに向けて、だいぶアクション性の高いステージが続きます。締めがアクション性の高いステージで構成された上で、きっちり難易度を右肩上がりにしていくことで、ゲーム的な盛り上がりも作られている綺麗な構造になっています。
また、ひとつ前の単純作業の繰り返しで疲労していた脳みそをアクションで活性化させることにも繋がっていて、交互浴みたいな感覚で挑むこともできました。配置の妙としても、このステージは割と好きです。
SIBLINGSっぽい何か、そこそこ難易度は高いものの、慣れれば突破できるラインに収まっています。連続切りを二連続で出されると、スタミナが足りないんじゃなかろうかとは思っていますが。
きちんと覚えて対応できればクリアはできるけど、そう易々とは突破できない絶妙な調整のおかげで、最終戦に向けて良いテンションで攻略できます。
Undertale、筆者はGルートをやらないことを決めているのでサンズ戦は詳しく知らないんですが、ほぼサンズ戦です。ちゃんと短時間の切り替わり行動までやってきます。
ここは最後の山場だけに、さすがの難易度になっていて、オマージュ元を考えてもさもありなんという苦戦を強いられます。とはいえ恐らく本家ほどは難しくなく、冷静に対処すれば突破可能になっているのは親切なところです。
以上、これらのオムニバスがそれぞれ手抜かりなくクオリティ高くお出しされ続けるのは、楽しい体験でした。
シナリオ面にも軽く触れておくと、前作引継ぎのキャラがいるからなのか、細かいところはちょくちょく置いていかれるような展開は多めになっています。とはいえ、全体のノリはコメディーなので、その勢いに乗れるのであれば細かいことは気にしなくても楽しめます。
なお、隠し実績ヒントで知らない名前をクリックしろと言われた時はさすがに焦りましたが、ちゃんと名乗ってくれたので事なきを得ています。
せっかくだし、前作のSteam版もやろうかな。
28. 神殺しの聖戦
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | shot.arrow |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 4.3 | クリア |
良かった点
- リソース制約の中で緊張感をもってダンジョンに潜れました
- ある程度早く魔王のもとにも辿り着けるような自由度のある世界でした
気になった点
- レトロ風のためか、プレイヤーに不親切な仕様が散見されます
- もちもの制約が通知されない、前触れなく宿屋で現金をスられる、などです
- シナリオを自由に進められるため、重要イベントを十全な状態で受けられない可能性があります
- 各イベントが簡素であることも寄与しているかもしれません
レビュー
レトロなオープンRPG
神殺しの聖戦は、レトロ風味なRPGです。
そのゲームの特徴として、かなり自由な順序で攻略できることが挙げられます。プレイヤーは始まりの村の周辺をうろつくでも、いきなり奥地に向かうでも、好きな形で冒険していくことができるでしょう。
ただし、奥まったエリアには相応にやや強めの敵が待ち構えています。
これらに対応するためには、装備とアイテム、そして魔法を整えていく準備が不可欠です。このゲームには基本的にレベルの概念がないため、それらの準備が勝敗を左右します。
装備は回数を消費して敵にダメージを与える消耗品であり、敵からのドロップや店の購入により補充できるものです。強力な装備は高価であったり入手困難なものが多いので、価格などのバランスを取りつつ揃えていきましょう。
また、奥地に向かうには雑魚との消耗戦を戦い抜くことになるので、回復アイテムも欠かすことはできません。アイテムは8個までしか持てないので、こちらもバランス良く揃えておく必要があるでしょう。
しかし、こうした消耗品に頼るだけではジリ貧になりかねません。これを打破するには、魔法の力を借りて活用するのがお勧めです。
魔法は各地で習得でき、MPを消費することで強力な攻撃を浴びせることができます。雑魚散らしにもボスへの痛打にも使えるため、事前に習得しておくと役に立ちます。
これらの準備を上手く整えることができれば、どこにでも行ける開けた世界を思いのままに冒険していくことができます。様々な場所を巡り、世界を旅して各地でイベントを進めていきましょう。
その中で記憶を失った主人公の正体と目的、そしてやるべきことが少しずつ明らかになっていきます。
やがて立ち向かうことになる強敵に消耗戦を乗り越えて挑むためにも、各地を巡って準備を万全にしていきましょう。
感想
この後で感想を書くダーゴラスとはまた違った方向性でレトロの空気感を醸成している作品です。
モンスターの性質もだいぶ違っていて、こちらはなんとなく洋ゲーの敵っぽい印象を受けるモンスターが多めでした。スライム、あの見た目だと強そうですね。実際D&Dでは強かったらしいです。このゲームではドラクエのスライムポジションではありますが。
個人的には、開始1時間で魔王のもとに辿り着けるような自由度のある世界が良くて、いきなりちょっと難しい砂漠越えにも気軽に挑めます。
というのも、このゲームは武器や魔法の概念はあれどレベルの概念が無いので、ある程度の武器と魔法が揃えばそれなりの相手でも戦えてしまうからです。あえて全体的な戦闘バランスをそこそこ均しておき、その分で自由度が確保されている印象でした。
それでも魔王を始めとして関門にはきちんと強敵を配しており、ある程度準備をしないと負けるようにもなっています。良いバランス。
戦闘バランスについてもう少し言及すると、武器より魔法の方がコスパが良い世界です。
武器は攻撃回数が決まっているので、何度か殴ると壊れる消費アイテムになります。一方で魔法はMPを消費すればアイテムの消費なしで行うことができ、HP回復ついでに宿屋に泊まればMPも回復します。さらに威力もおおむね魔法の方が優秀です。
具体的には、魔法はMP全快から11発撃てて、宿屋は20Gなので単価2G未満に対し、武器はグラディウスを最低限度に据えても40Gで15発です。しかも大体火力が二倍くらい違う。
魔法が通りにくいモンスターもいるにはいるんですが、そういう相手は殴ってもコスパが悪いので逃げるのが得策でした。ただ、逃げるのも絶対安全じゃないので、割とヒリつきます。特にリソースが厳しくなりやすい井戸は中々の緊張感がありました。
なお、ラスボスはある意味イベント戦なんですが、割と体力があります。裏ボスっぽいのを倒したおかげでHPが半減していたんですが、それでも結構時間がかかりました。ここだけは魔法より物理をどうにかした方が良かったかもしれない。
話を変えてシナリオについてですが、かなり情報量が少なく、淡々と進んでいくのがレトロっぽくて良いです。長いイベントなどほとんどなく、自由に歩き回っては思い通りにサクサクとイベントをこなしていけます。
その分、ストーリー性というかキャラクターへの記憶はだいぶ定着しておらず、仲間になるキャラに最初どこであったかしばらく思い出せないほどです。最初に会ったところに行こうと言われたんですが、本当に分からなくてだいぶ彷徨い歩いていました。
また、自由シナリオ的な動かし方ができる弊害で、ある程度重要なイベントを後ろ倒しにできてしまいます。これもあって、仲間キャラ加入が遅れ、即座に離脱イベントが始まったので覚悟を問われても感情が追い付いていませんでした。思い入れができるほどには、一緒に旅ができませんでした。残念。
後は、全体的に許容できるギリギリのラインの不親切さをしています。
例えば、もちものを8個まで持てるんですが、これは持てなくなるまで分かりません。今もちものがいっぱいであることは、ドロップや宝箱を開いて初めて分かります。
また、宿屋に泊まるとランダムで金をスられます。3Gで泊まれる明らかに劣悪な宿ならまだ分かるんですが、開始地点近くの宿屋ですら確率でスられます。せめて誰かその情報を伝えておいてほしい。
ほかにも、狭いとはいえキメラの翼もなく、ダッシュしてなおやや遅い行動速度を持ち、聞き逃すと致命傷になる重要な会話がそこそこあります。
この辺は良い意味でも悪い意味でもレトロっぽく感じました。
レトロな雰囲気を味わいつつ、そこそこシビアな戦闘とリソース管理もやれる良い作品でした。魔法を撃ち尽くして辛くも勝利するのが一番楽しいですからね。
しかし、性質が違うとはいえ近い印象のダーゴラスと並んでしまったのは奇跡的ですね。近い作品が出ることは間々ありますが、綺麗に連番で出てるのは中々見ません。
29. ダーゴラス
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | げむつくマン |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 1.10 | 全END |
良かった点
- レトロ風を保ちつつ、利便性の面が現代ナイズされています
- モブも含めたキャラクターの台詞が良いです
- 割とスリリングな戦闘を楽しめます
気になった点
- 不運が重なると、ミスなしでも負ける戦闘バランスに感じました
- ただし、リカバリーがノーリスクなのでストレスはそれほど感じません
レビュー
現代的レトロRPG
ダーゴラスは、ドット絵で描かれるオーソドックスなRPGです。
余り情報を開示することなく進行していくシナリオや、ゲーム全体に漂う空気感は往年のRPGを彷彿とさせます。
しかし、この作品は単にレトロなRPGを再現するにとどまるものではありません。
移動速度を速めて操作感を快適にし、重要な情報は常にメニューから参照でき、死亡に大きなペナルティもありません。ゲームをプレイしている時の感覚は、現代風の快適さでコーティングされています。
それでもレトロな空気感を崩さないのは、必要な情報を足で稼ぐ往年のスタイルを取るゲーム進行や、短いセンテンスでパンチを効かした様々な台詞回し、サシで殴り合う原始的な戦闘システム、といったようなコアな部分を崩していないためです。
核にレトロ風の要素を据え、その印象は確かに往年のものであれど、触ることで感じる遊び味はとにかく快適といった仕上がりとなっています。
レトロな空気に浸りながら、サクサクとプレイして楽しめるRPGです。
手に取ってさっぱりと遊びましょう。
感想
レトロっぽいゲームなんですが、だいぶ現代ナイズされたゲームでした。レトロ風ゲームは空気感を演出するためにあえて不便さを含めるところが多々あるところを、このゲームでは、ドット絵の風味やキャラクター数の少なさ、センテンスの短さで空気感を作り出し、システムはかなり現代風に作っています。
それでいて、許せる範囲ではレトロ風の理不尽さも内包しているような印象も受けました。この辺が摂取限界というあたりの見極めが上手いです。
理不尽さの大きなポイントとしては、戦闘における敵行動のばらつきを挙げたいところです。要素が少ない一対一構造であるがゆえに、敵の特殊攻撃のバリエーションは少なめで、単純に振られると辛い技が多めになっています。この行動が偏ると、こちら側が一気に瓦解していくバランスになっています。
一対一ゆえにリカバリーを利かせるのも難しく、強行動を引かれ続けないように、できるだけ早めに決着を付けに行くのが理想の展開となっています。
ただし、ゲームオーバーになっても大して問題はなく、ロスト無し、何なら何故かちょっとお金をもらって復帰できます。このため、ある程度ラッキーパンチで負けたとしても、そこまで苦ではありません。
むしろ、これくらいのリスクがあるバランスになっていないと、シンプルな戦闘なので刺激が少なめになりそうです。スリリングさを求めるためにはこの程度のバランスが必要で、その天秤がハードラックで変に傾いてしまったのであれば、そこはシステム側で救済しようという設計になっており、トータルではかなり良いバランスになっていると思っています。
特に個人的に良かったのは、回復ギリギリの状態でひりゅう戦前に到達し、抱えていたアメを2つ舐めて突撃したところ、残りMP8で薄氷の勝利を掴んだあたりです。このギリギリの戦いをしたという感覚が好き。
ラスボス周りもちゃんと強く、乱数行動でピンチに陥る前にボーボーヤで焼きにいく必要のあるスリリングな難易度でした。適当に殴っているとすぐに負けが近付きます。
また、救済措置なのかチーズバーガーで能力値を上げることもできるので、あんまりリスクを取りたくない場合はレベリングしていくことも可能だとは思います。筆者はチーズバーガーの存在にクリア後に気付きましたが、うろうろと探索している方は早々に見つかると思います。
ちなみに、実はかなり早く場所については見つけていたんですが、あれとチーズバーガーがすぐに結びつきませんでした。反省。
そして、レトロっぽさというかこの空気感を演出してる最大の要因は、短いセンテンスにパンチのある言葉を詰め込んでいるセンスだと思っています。
長々と説明もしないし、情報がやたら精細すぎたりもせず、しかし情報として不足しない程度に、かつユーモアを伴って構成されています。各々が短く、面白くもあるので、モブに積極的に話しかけに行く誘因ともなっていました。
原則プレイヤー側に通知してくれることは何もないので、自分から積極的に話しかけに行って足で稼ぎ、情報を手に入れてはそれを基に行動する、という古き時代のRPGの構造をなぞりつつ、きちんとその導線が引かれている作品となっています。
ちなみに、クリア時の状態は以下のようになりました。
いくつか盗めそうなものはありましたが、それらをできるだけ盗まなかったので、衛兵にお世話になることはありませんでした。次やるのなら悪人プレイをやるべきでしょうか。
敗北については、最序盤とラスボスの2回です。それ以外は割と安定していました。
クリア画面 |
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30. 早咲飛立Presents ウルファールの短編集
ジャンル | 作者 |
---|---|
オムニバス | 早咲飛立 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
40分 | 8/15 | 全メダル |
良かった点
- サクッとミニゲームを色々と楽しめました
- オムニバスを緩くつなぐ要素もあります
気になった点
- 黒文字がやや読みにくさを覚えました
- ただし、その分強調色の文字は読みやすかったです
レビュー
短編ゲームオムニバス
早咲飛立Presents ウルファールの短編集は、様々なミニゲームが遊べるオムニバス形式の作品です。
いずれも短い時間でさっと遊べるゲームが収録されています。
ゲームの種類は謎解きのようなものからアクション性を求められるものまで様々であり、色々なミニゲームを遊ぶことができるようになっています。
難易度はどれも抑えめなので、サクッと遊ぶことができるでしょう。
ただし、ノーミスでクリアすると得られるパーフェクトメダルを始めとした、裏ミッション的な要素を集める場合は一筋縄ではいきません。それらを達成したいプレイヤーは、断続的に配置された要素に目を光らせつつ、そこそこの緊張感のもとで挑むこともできます。
サクッと短いゲームを遊ぶも良し、パーフェクトにこだわって慎重に目ざとく進めるも良し、お好みのプレイスタイルで挑みましょう。
感想
サクサクとミニゲームがやれる作品です。オムニバスの中にオムニバスが入っているような入れ子構造をしていて、色々なネタが詰め込まれています。
一つ一つはシンプルなのでさっさと次に行けて、破綻も瑕疵もないのでサクッと遊ぶのにちょうど良い作品でした。清涼剤みたいな感じ。
それでいて、パーフェクトメダルがあるので程々にミスしたくない緊張感はありますし、隠れウルファールという遊び要素も入っています。
ちょっとだけ気を配る対象があると、本来繋がりのないオムニバスの合間も引き締まるので良い要素でした。意識の端に常にウルファールがいる。ただ、Aのウルファールは初見で見つけるのは困難な気がしています。あのウルファール以外は全部初見で見つけられましたが、アレだけはもっと気を配ってても無理筋っぽいです。
個人的に好きなミニゲームはニワトリ操作で、もう一つ二つギミック足せば一本できそうな良いアイデアでした。Aを遊んでいて時間制限タイプでも良さそうだなと感じていたらCで近いのが来たのも良くて、順序通りに遊ぶとちょうど基礎、応用の順序で遊べます。
また、念のため最終ステージについては大幅に割愛するんですが、個人的にはBが割と難しい印象でした。ギリギリ一発で通せた。
個人的に遊んでいて気になったのは文字がずっと黒文字なことなんですが、これはだいぶ人によるところなのかもしれません。
筆者だけの可能性もありますが、黒文字は白背景以外で読んでいると何故かめちゃめちゃ読みにくく感じます。何故。ただ、おかげで白寄りの強調色が目にものすごく入ってきやすいので、特に謎解きやギミックの作用としてはかなり良い効果を発揮していました。多分これは白字だと薄まりそうです。一長一短。
これを書きながらスクリーンショットを見て感じた印象としては、文字のドロップシャドウが黒いのかもしれません。それで滲んだ印象があるのかも。
何にせよ、色々やれて楽しかったです。
31. アルバトロス新聞社
ジャンル | 作者 |
---|---|
アドベンチャー | みずゆ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 8/6 | 終了 |
良かった点
- 独特な世界観がシニカルに描かれています
気になった点
- 特殊な用語を検索できますが、そこそこ対応していないものがあります
レビュー
ただ何もせずとも低きに流れる
アルバトロス新聞社は、記事編集を繰り返す日々を送るアドベンチャーです。
プレイヤーは記事を編集し、就寝するという一連の流れのみを行って日々を過ごすことになります。
記事の編集においては、ほとんどプレイヤーの意思が介在する余地はなく、ただそこにある悪意へと流れ続けていきます。
そうしてひたすらに流れていく日々と時々に起こる時事を眺めつつ、気になるものがあればちょっとだけ外の反応を伺ったり、検索することができたりするだけです。
無為の中の悪意に身を浴しつづける、奇妙な体験を得られることでしょう。
多くの時事ネタはどこかで見たようなものでもあり、それに対する反応もまたどこかで見たようなものとなっています。
どこかで見たようなその何かを、改めて眼前に晒してはみませんか。
感想
毎度のことながらこれはゲームなのかと思いながらプレイしています。やりたいことと胡乱な情報を詰めて、一定の法則で飛び出すようにした装置なんじゃないかという気すらしてきました。
飛び出してきたそれに意味を見出して物語を構成しても良いし、そのまま漫然と受け入れて咀嚼することなく飲み込んでも良いような作品です。筆者はこれを後者で解釈したので、追体験のようなゲームだと認識しています。
タイトルなどを見た印象はHEADLINERっぽいのかなと思ってはいたんですが、実態はだいぶ違っていて、時事を操作するというよりは時事を眺めるゲーム性をしています。時事ネタ盛り盛り。日本に住んでいれば分かる時事ネタだけで構成されている、と言っても過言ではないかもしれません。
一応チャンネルを変えることによるルート分岐などもありはしますが、おおむね単純に日々を消化し続けることになるゲームでした。選択肢はほぼなく、どっちのルートに入ろうとも、ほとんど分岐することなく進行していきます。
情報の空虚さや行為の無為性をもって表現された世界観という感じです。
時事の取り上げ方は皮肉っぽいというかシニカルな感じで、冷笑系に近い温度感が表現されています。これは何もゲームの主張そのものが冷笑系というわけではなく、ゲーム内でトレースする世界が冷笑系という話です。
そうした世界を鋭くえぐって批評するでも、声高に批判するでもなく、その行為やそれを行う人々をひたすらトレースし続けることで表現しているのかなという印象でした。有体に言えばTwitterの悪意の再現度が高い。
なお、ちょくちょく特殊な用語が出てくる上に、全部がちゃんと検索で出てくるわけではありません。イノチの木って何ですか。また、検索したら検索したで、知らない言葉を知らない言葉で説明されることもあります。Wikipediaの解説みたいですね。
32. チリガミの塔
ジャンル | 作者 |
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ノンフィールドRPG | Masaqq |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間 | 1.2 | NORMALクリア |
良かった点
- 緩く協力できるオンラインのシステムが機能しています
- ボムを基点とした思考を回せる、独特な戦闘システムが楽しいです
- 武器のサイクルが上手く回るデッキ構築型の仕組みが整備されていました
気になった点
- 攻撃のアニメーションが冗長に感じました
- UIの主にドラッグ周りがやや使いにくかったです
- 現行バージョンでは改善されている可能性があります
レビュー
チリも積もれば何とやら
チリガミの塔は、独特なシステムで構築されたノンフィールドRPGです。
回数制限付きの武器を上手く運用しつつ戦闘を進め、一定階層ごとのボスを撃破していくことになります。
戦闘において雑魚からの被弾を抑え、ボスを効率よく攻略していくためには、その独特なシステムを理解して上手く立ち回る必要があります。
戦闘画面 |
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戦闘は上記のようなヘックスのマスの中からターゲットがランダムに選ばれ、そのいずれかに手持ちの武器で攻撃することで進行していきます。
武器には攻撃力が設定されており、各マスにある数値をこれで削り切ると、その色に応じて敵にダメージが入ります。赤は5、青は3、灰は1ダメージとなっており、加えてそれぞれの色の弱点となる武器属性で攻撃するとより多くのダメージを与えることができます。
さらに武器には攻撃する範囲が設定されており、上記の斧であれば、縦一直線の範囲を攻撃できます。
これらの情報を踏まえ、相手の体力、マスの位置や色などを勘案し、手持ちの武器から適切なものを選択して、効率良くダメージを与えていきましょう。例えば、上記の例では攻撃力6の武器で縦に全てのマスを削り切ることで、17のダメージを与えられますが、相手のHPは5なのでオーバーキルであるとも考えられます。
かてて加えて、思考を複雑にするのはボムの存在です。
これに触れてしまうと敵の攻撃力が上がり、ゲームの難易度によっては追加でダメージを受けてしまいます。ボムを受け入れてでも相手へのダメージを優先するか、ボムを避けてリスクを防ぐべきかどうか、現在の状況と敵の性能を加味して適切な判断が求められるでしょう。
こうした様々な情報が絡み合う複雑な戦闘システムとなっているため、ともすれば全てを把握できるか不安になるかもしれません。
しかし、使用したい武器の攻撃ボタンを右クリックすることで、その武器を使用した時に起こる結果の予測を、上記の画面に示されるような形で簡単に出すことができます。運用上は、こうして出た予測の中から適切な選択を見つけていくのが便利です。
そうしてこちらの攻撃を終えると、相手からの攻撃を受けることになります。この時、敵からのダメージを一番上に置いた武器の使用回数を消費して受けることもできます。
受け性能の高い武器を装備の中に含める、使う予定のない武器を上において消費する、あるいはあえて空にして攻撃を受けるなど、どうやって敵の攻撃を受けるかもまた戦略の一部となるでしょう。
これらのシステムを前提として、どんな武器を手に入れるか、どの武器を残して攻撃を選ぶか、プレイヤーはそういった時々に応じたリソース管理を重ねていくことになります。
このため、雑魚との戦闘であっても気を抜くことはできません。最後に待ち構えるボスを効率良く倒すためにも、道中の戦いにおける武器の選択は妥協せずに、リソース管理を徹底していきましょう。
また、このゲームにはオンラインによる緩い協力要素がいくつか存在します。
特に、ほかのプレイヤーがクリア時に持っていた強い武器をギフトとして受け取る仕組みは攻略の助けとなるでしょう。序盤から高い性能の武器を獲得できるため、上手く活用すれば戦闘を優位に進められます。
オンラインの連帯を上手く活用し、塔を登っていきましょう。
感想
オンライン要素が好きな作品です。この辺の緩い連帯感、ウディコンという場に上手く刺さっているように感じました。場に向けて設えられた仕組みとして美しいです。
その上で、ただそのシステムだけで勝負するのでなく、ゲーム本体も面白い独自の戦闘設計で構築されているのも良かったです。アイデアが二重に乗っていて、上手く噛み合わせて機能させています。
戦闘のシステム面で秀逸なのが、ボムの仕組みです。ゲームの設計上、ターゲットと火力は一番良いのを選べば一番強いということになりそうですが、ここにボムが入り込むことで判断を一段階深める設計になっています。
これにより、ボムのデメリットを受け入れてでも高い攻撃力を通すのか、相手の被弾を受け入れてボムを避けるのか、リソース管理の面での思考を必要とします。一番攻撃性能の高いパターンを選ぶ、一番ボムを食らわないパターンを選ぶ、許容可能な範囲でボムを受けるパターンを選ぶなど、複数のターゲットがあることに意味を与える良い設計だなあと感じながらプレイしていました。
また、ゲーム全体の設計はデッキ構築型ローグライク風ではあるんですが、相手の攻撃を武器で受ける、という設計もユニークに感じています。
使用回数がそのまま防御なので、何を防御に回すかの選択も考える必要が出てきます。回数の少なくなった武器を上に回して受けに使うのも良いですし、ちゃんと防御用のカードをデッキに組み込んで運用するのも良いですし、色々と戦略の幅があります。
加えて、この仕組みと使用回数の兼ね合いにより、頻繁に装備がリニューアルしていくのも良いところです。ゲーム後半になるにつれ武器が強くなるため、基本的にはサイクルを回した方がアドが取れるんですが、それをプレイヤーが意識せずとも行えるデザインになっています。
その上で、お気に入りの武器があれば合成である程度延命ができる仕組みもあり、ランダム性と新陳代謝のバランスが上手く取れている印象でした。
なお、初見だと武器の性能が分からないので選択が難しい面はあり、基本的には武器は拾ってぶっつけ本番でテストしてみるしかありません。
この影響で、特に終盤は新しい武器に手を出しにくいところはあります。少なくとも序盤のうちにある程度武器を触って、バリエーションを把握しておくのが重要っぽいです。もしくは二週目に頑張りましょう。極端に弱い装備は無さそうなので、とりあえず入れておけばなんとかなることもあります。
また、制度設計自体は以上にあるように高い完成度だなあと感じていたんですが、一方でUIの触り心地はちょっと慣れが必要でした。
特に武器順入れ替えがだいぶ直感的でなく、掴んだ位置がやや上にはみ出るくらいだと下の方を掴む挙動を示します。加えて、入れ替えのドラッグが交換の挙動になり、挿入ができません。並び順の変更として、交換というのが微妙に非直感的でした。
ただ、このあたりの使用感はプレイ後のバージョンでも改善が行われたようなので、現在はそんなに違和感があるほどではないかもしれません。
冒頭でも触れたオンライン要素についても言及しておくと、ギフトと共有ポイントという緩く協力できる仕組みであるというのが個人的に好きなところです。ウディコンにおけるオンラインの仕組みは、割とランキングという競争の仕組みに寄りがちなんですが、このゲームでは皆でチリを積らせてエンディングに届かせる連帯が感じ取れる設計になっています。
また、ギフトというゲームを初めてすぐに恩恵を感じられる仕組みと、最後にチリをもって分岐する遅れて分かる恩恵の二段構えになっていることで、初めにも終わりにもオンラインによる協力を感じられる設計であるのも良いところです。ちゃんと皆と緩く協力していたということが印象に残ります。
このあたりの基本的な仕組みのほかにも、オープニングで流れる3Dのアニメーションとか、寒いステージで画面に霜が出てきてドラッグで消せるとか、細かい遊びも個人的には好きなポイントです。
アイデアが惜しげもなく積み込まれた作品という感じがして良いゲームでした。
ちなみに、プレイデータは以下になります。
割とボディを満遍なく使ってますね。武器の新陳代謝が良くできていることがここからも見て取れます。
プレイデータ |
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33. 怨御霊 -URAMITAMA-
ジャンル | 作者 |
---|---|
探索ADV | 餓鬼郎党 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
40分 | 1.01 | 全END |
良かった点
- キャラクターのアクが強かったです
- 程よく脅かしのあるホラーでした
気になった点
- 渡り廊下の扉の演出がやや冗長に感じました
レビュー
本当に怖いのは
怨御霊 -URAMITAMA- は、ホラー要素を含む探索アドベンチャーです。
主人公は雨の中辿り着いた不気味な屋敷の中で、様々な現象に巻き込まれることになります。
館もののホラーとしてはオーソドックスな仕上がりであり、適度な脅かし要素やイベントを交えつつ進行していきます。探索要素もシンプルであり、適宜セーブを推奨するシステムの存在もあり、それほど詰まることなく進めていくことができるでしょう。
そうして屋敷の中を探索することで、シナリオは少しずつ進行していきます。その中でも特筆すべきはヒロインに位置していそうなキャラクターのアクの強さであり、そのキャラクターの強さでもってシナリオを終わりまで牽引するものとなっています。
彼女に振り回されつつも屋敷の探索を進め、その屋敷に隠された真相を突き止めていきましょう。
感想
よもや続編が出るとは思いませんでした。相も変わらずミサオのキャラクターが強いです。しかしミサオ、カメオ出演も含めると、ウディコンでの登場は3回を数えることになるんでしょうか。4回かも。
ホラーゲームあるいは探索アドベンチャーとしてはかなり真っ当な作りで、キャラクターの奇抜さに反してかなり堅実な設計によりできています。
中でもON/OFF可能なセーブ促し機能は割と助かるところで、探索していたら急にイベントなりに遭遇してセーブの機会を逃すというようなことはほぼありません。この作品の性質上、そういったこと自体があんまりないというのはあるかもしれませんが。
渡り廊下の扉の演出がややもっさりしているくらいで、探索やイベントのテンポ感も良く、マップサイズも短編規模としてかなりちょうど良いものとなっていました。この演出についても、なんとなく渡り廊下が一つの境界であることを示しているのかなと感じています。
どうでも良いですが、プレイ当初は普通の家なのにトイレが男女で分かれているものなのかなと思っていましたが、作中でも言及がある通り、鳥居の幻覚がむしろ正しい姿であるあたり、恐らく神社由来の設備だからという解釈で通りそうです。
神社に風呂があるかは定かではありませんが。ある設備を流用して、無い設備は作り上げているんでしょうか。神様の力は凄い。
シナリオ面はオチを用意しつつ、やはりというか二段のオチとしてミサオが活用される上手いものになっています。二段オチをやる上でミサオというキャラクターが強すぎる。神様をも利用しようとするの、普通に取り壊してリゾートホテル建てるより悪辣じゃないですか。Win-Winっぽいから良いんだろうか。
二回目になるんですけど、こういった行先を教えてくれる先輩はミサオの指金じゃないかと疑ってかかりたくなります。
また、ジャンプスケアがホラーサイドではかなり弱く、むしろミサオで強くやってくるあたりも面白いところです。神様は基本的に善性の存在なので、その脅かし方は雑というか手慣れていない感じがあります。神様よりよっぽどミサオの方が怖い。超常の存在にジャンプスケアで勝利を収めるヒロインだ。
しかし、ウディコンのバナーでウディコン規約上アウトなものを隠すネタはこのコンテストでしかできない味だと思うんですが、余所の媒体に投稿する時はどうするんでしょうか。そのサイトのバナーで隠すのかな。
34. 霧の街の迷宮譚
ジャンル | 作者 |
---|---|
3Dダンジョン系RPG | abon |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 8/4 | クリア+彫像 |
良かった点
- シビアな難易度も、ある程度の無法を許す難易度も双方楽しめる作品でした
- 一部武器の強さが光ります
- 状態異常の優秀さもありました
- 3Dダンジョンの中で上手くギミックを構成していました
気になった点
- 霧システムが余り有効に機能していないように感じました
- 弱い霧を引くまでステージに入り直すのが丸く思えます
- 基礎的なシステムの説明も宿屋の会話に任せているため、プレイヤーによっては知るべき情報が手に入らないということが起こりそうです
レビュー
深い霧の中を歩む
霧の街の迷宮譚は、3Dダンジョンを進むRPGです。
いくつかのステージに分かれた3Dダンジョンを充分に探索してから、ボスのいるダンジョンへと向かうという流れとなっています。
3Dダンジョンを探索していく上で気を付けるべきなのは、特定の位置に触れることで発生する戦闘です。戦闘の外の回復手段が宿屋などに限られているため、上手く消耗を避けないとゲームオーバーが見えてきます。
その戦闘におけるシステムは、ターン開始時に充填されるSPを消費してスキルをいくつか発動していくものです。装備によって使えるスキルは変化していくため、消費SPの少ないスキルで行動回数を増やすか、消費SPは高くても性能の高いスキルで殴るか、バランスを取るかはプレイヤー次第となります。なお、良い装備であるほど良いスキルとなる傾向が強いため、戦闘に勝利するには良質な装備を集めておくのが重要となるでしょう。
また、戦闘中は基本的に敵の行動予測が見えるようになっているため、これを参考に使用するスキルを組み立てていくのも肝要です。
ただし、ダンジョン内には霧がかかっており、この霧の深さによって戦闘の難易度は大きく変わっていきます。
というのも、霧が深くかかるにつれて敵の行動が見えなくなったり、敵の種類が分からなくなったりといった不利な状況に陥るためです。敵が剣士なのか魔法使いなのか分からなければ、スキルで防御を上げるべきか魔法防御を上げるべきかが分かりません。霧が深い時は、余り戦わないようにするのが良いでしょう。
そうしてダンジョンを進んで出口に辿り着くと、それまでに探索した量に応じて探索度が上がります。この探索度を一定以上貯めることで、ボスのいるダンジョンに挑めるようになります。
各ステージのボスは、いずれも特殊な攻撃を使ってくる難敵揃いです。装備を適切に集め、相手の行動を観察してスキルを上手く運用していかなければ勝利は難しいでしょう。何度も挑戦して傾向をつかみ、装備に付随するスキルで上手く対処することが肝心です。
それらのボスを撃破し、さらにダンジョンを進むにつれて、主人公は霧の街という異変の正体に迫っていくことになります。
その謎を解き明かすためにも、何度もダンジョンに挑んでレベルを上げつつ装備を集めていき、立ちはだかるボスを倒していきましょう。
感想
個人的に色々と好きなところのある作品です。序盤は割とシビアなデザインとか、そうは言っても整ってきたら色々無法できる仕組みとか、大仰な言い回しとか、諸々です。
3Dダンジョン形式とマッピングの中で出来る限りギミックをやろうとしているステージ構成とかも好き。
一方で、全体の設計的に見ると、霧はあんまり機能していないような気がしていました。
プレイヤー側にとっては、霧4で探索するメリットは無く、基本的には霧1で探索するのが楽です。加えて、脱出にデメリットがない以上、ステージに入った時に霧が深いなら、リセマラして霧1を引くまで粘る方が後々楽になります。
こうなると、ステージ中で霧の変化が起きるまでは霧1ばかりになるため、あんまり霧がある意味がありませんでした。
なんとなくイベント周りに霧が絡むものがありそうではあったんですが、デメリットがそこそこ大きいので、安定する霧1を選びがちな側面があります。ネームド武器の売り出しが霧4だと多い、などがあればチャレンジする意味はあるかもしれません。
また、カルマについてもデメリットが宿屋の会話を見るまで良く分からず、それを見てなお取得するデメリットが不明瞭であるがゆえに、わざわざやりにいくのは難しいように感じました。襲われるというのがどういうレベルで不便なのか分からないので。
なお、ここに限らず、作中のシステムの説明は、かなり思い切ったところまで宿屋の会話に集約しているので、初見だとシステムの把握はまあまあ難しめです。夜システムに関してはほぼ終盤にようやく理解しました。
手探りで進めている感じは霧の中というテーマにマッチしていて好きではあるものの、さすがに基礎的な判断に使う範囲は説明してほしくもあります。難しい。
ついでに言うと、泉の回数制限の存在意義も微妙なところで、序盤以外では戦闘中の回復手段で事足りるので活用することはありません。そして序盤においては、この泉をどれくらい使うか分からないので、おちおち使うこともままなりません。
この辺における、全体的なシステムのアンバランスさは気になるところが多かったです。
ただ、そういう細かい点は抜きにしても、全体を通したゲームデザイン自体は好みで、難易度のカーブも好きな作品でした。
序盤がだいぶギリギリの戦いで、HPの回復が間に合うかの瀬戸際くらいのヒリヒリした戦いになるんですが、ネームド武器が揃い、SPが増えてくると、かなり余裕が出てきます。
特にSPが増えてくると行動回数で無双するようになり、ほとんど雑魚敵には負けることが無くなってきます。
ネームド武器が思い切った強さなのも良くて、状態異常の圧倒的な性能でごり押せるレベルの性能をしています。氷柱の短剣がお気に入りで、初見のローレイネをほぼ完封する性能をしていました。強すぎる。
全身をネームドで固めた強さは絶大で、雑魚はともかく、ボスにすらかなりの有利を取って戦いができるバランスとなっていました。
ただ、マントだけはずっと粗末で、終盤にダンジョンに入り直し続けてなんとか揃えたという状態です。
これは裏ボスにも通じていて、裏ボス自体はきっちり強いんですが、こちらの武器も相当強いため、強力な技の応酬となります。
攻撃手段さえそろっていればローレイネ以外にはほぼ負けないんですが、ローレイネだけ氷が通りにくいっぽかったり、強力な魔法攻撃を打ち込んでくるので場合によっては相打ちにされたりと、一筋縄ではいきません。
専用の戦略として、紅蓮の弓に切り替え、魔法防御をちゃんと上げる方針にして撃破しました。ちゃんと裏ボスで一番強いのは良いですね。
なお、最終的な装備の構成は以下になりました。
霧裂きは全体攻撃として優秀で、前述の通りお気に入りの氷柱の短剣は最強の状態異常である凍傷を連続攻撃でカジュアルに与えられるので優秀でした。アイスガードで守りの方からも凍傷を与えられるので、上手くいくと一方的な戦いにできます。
前述の通り、ローレイネだけ紅蓮の弓を持ってきて対処しましたが、こっちはこっちで威力が高いので矢筒さえあれば充分に戦力になります。
装備 |
---|
シナリオ面でも霧の町という世界観が上手く表現されていて良かったです。個人的にこういう言い回しが好きなのもあって、満足感は高めでした。それぞれのステージの空気感の違いも良い。
また、裏に入ると三女神のキャラが崩壊するという点についても面白いポイントでした。黒塗り、真の姿をさらけ出していないことを指していたんですね。
なお、想定プレイ時間については4から6時間とありますが、筆者は3時間で裏まで終えています。装備が上手いこと手に入ったのか、何か噛み合ったのか。
一つ一つのステージについても決して長くはないので、書かれてある印象よりはサクッと遊びやすい作品でもあるとは思います。
35. グッドバイ
ジャンル | 作者 |
---|---|
サウンドノベル | 睦涼(むつみ りょう) |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
10分 | 1.02 | クリア |
良かった点
- 不安感を掻き立てる良質なグラフィックとアニメーションでした
- 短い中でも強く印象に残ります
気になった点
- 特にありません
レビュー
無
グッドバイは、精神的ホラーに類する要素を含んだ短編のノベルゲームです。
ゲームはいくつかの会話とアニメーションで成り立っており、そのいずれも短い時間でプレイできるものとなっています。
しかし、短いからと言って流して見ることのできる作品ではありません。
むしろその短さがゆえに、描かれた表現は心を不安定にさせ、恐怖ともとれない居心地の悪い不安感を掻き立ててくれることでしょう。
ごく短い作品となっているため、多くのことを語る必要はありません。気になったら是非プレイしてみましょう。
感想
マトリョーシカみたいなゲームです。作中作の存在とその演出をもって、その作品自体のエンディングが定まっています。
短い間に感じた違和とか不気味さは凄まじく、この短い間にここまで不安感を掻き立てられるものなんだなとグッドバイを眺めながら感じ入っていました。
sessionを分けているのもこのマトリョーシカの感覚をより強くしていて、地続きと言っても良い会話をあえて分断することによって、作中作の外側がまた作品であることが分かりやすくなっています。
また、これはシステム面でもアニメーションを差し込むタイミングとしても上手く機能している上で、リセットボタンを押しやすい構造にもなっているのが良いところです。
このレベルで短いとはいえ、全部やり直すハードルは思いのほか高いので、明らかにそうだろうなと思っていても、本来は安易にF12キーは押しにくいところです。しかし、sessionを分けることでその負担をだいぶ抑えてくれているなという印象がありました。
また、アニメーションの不気味さが本当に絶妙なのも良いところです。ギリギリ教育番組に有るか無いかで言ったら無さそうなラインを突いてきます。コラージュなどを使うような、わざとらしいほどに不気味なものでないのが逆に不安感を覚える要因となっていました。
よりホラーっぽくするなら目のバランスなどを変えるといったこともしそうなものですが、そのようなあからさまなことは行わず、ただ白黒であることと、奇妙な間を作って強制的に見つめ合わせることで、なんとなく怖いという感情が引っ張り出されるようになっています。
シナリオ的には結局意図は何だったんだという話ではあるんですが、あるいは作中で言われているようにそれ自体には意味が無いのかもしれません。
人々の記憶の中にはグッドバイのような子供の頃に朧気に見た記憶のある、何らかの恐怖を抱いた番組のワンシーンがあって、そういう原体験を呼び起こすためのグッドバイである、あたりの解釈をしています。筆者の例でいうとストレッチマンが該当しますね。
あるいは砂嵐の中に少しだけ映った番組、のような都市伝説の類型とも捉えられるかもしれません。
36. 翠玉郷のオリヴィエ
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクション | 秋月ねこ柳 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 2.01 | クリア |
良かった点
- 移動が上昇を兼ねる独特なアクションを楽しめます
- 序盤から中盤にかけて操作に慣れていくことのできる、ステージの段階的なレベルデザインがなされていました
- ある程度平易でありつつ、玄人向けには最高難度が用意されています
気になった点
- 終盤の難易度の上がり方がやや急に感じました
レビュー
水中操作を面白さに昇華したアクション
翠玉郷のオリヴィエは、水中を舞台とした独特な操作性を持つアクションゲームです。
移動に常に上昇がつきまとう操作を使いこなし、障害物に満ち満ちたステージをクリアしていくことになります。
各ステージを上手く攻略するためには、何よりもその特殊な操作性に習熟していくことが求められます。
そのアクションは水中挙動をベースとしており、左右どちらに移動しても必ず上昇を伴う設計となっています。このため、適当に動いているだけでは詰む状況に追い込まれかねません。例えば、左右に動かないと弾に被弾するけれど、上昇すると上端のトゲに当たるといったような、リカバリーが不可能なシチュエーションもあり得ます。こういった事態を避けるためにも、動きの先を見据えた操作が肝要になってきます。
ステージに挑んで動きを習得していきつつ、先まで見越した想像力と咄嗟のアドリブ力とを駆使して難関を乗り越えていきましょう。
ただし、スタンダードな難易度であれば、体力を活かしてゴリ押しで突破することも可能です。複雑な操作が要求される地帯を抜ける際に、たったの1ダメージで済ませられるならば安い時もあるでしょう。時と場合によっては、積極的に残り体力を活用していくことも大事になってきます。
また、それでは物足りない方に向けて難しい難易度も用意されています。腕に覚えのある玄人の方はこちらに挑まれるのがお勧めです。
良くレベルデザインされたステージを攻略しつつ独特な操作性に慣れていき、各所の難関やボスを打ち倒していくことで、徐々に難易度の高いステージに挑めるようになっていきます。それまでに得たスキルをフル活用し、最高の難易度を誇る最終ステージをクリアしていきましょう。
感想
通常難易度の範囲だと、ある程度苦戦しつつもクリアはできるちょうど良い感じのアクションでした。アリュイラよりはだいぶ簡単な印象です。
スタンダードではダメージ覚悟でゴリ押しの効くエリアがそこそこ多く、アクション能力が足りない分はHPを支払って突破できる程度に抑えられています。
ただし、だからと言って簡単すぎるということはなく、移動が必ず上昇を兼ねる操作性も相まって、アクション自体は歯応えを感じつつ楽しむことができます。
ちゃんと先を見て動かないと容易に詰みうるデザインになっているので、移動を闇雲にしているとミスしがちです。ちゃんと考えて動くことが求められる良い設計でした。
その上で、詰みやすいような配置は終盤に固めてあって、序盤のうちは敵の密度が低いので容易にリカバリーが効くようにもなっています。このため、操作に習熟できていない期間でも、それほどミスることは多くありません。かなり易しめです。
また、それでは物足りないアクション上級者には最高難易度が用意されており、裏ステージも含めればプレイヤーに牙を向く難易度も完備されていました。
最高難易度に関しては、筆者はクリアせずに冒頭だけ遊んだんですが、だいぶ難しいシステムだなと感じています。何なら部分的にはアリュイラのレベルを凌駕しそうです。どうりでボス戦の泡がやたら潤沢だなと思っていました。
なお、筆者の状態は謎解きとライツアウトを除いてクリアしたという形になります。
謎解きはそもそも何をすれば良かったのかよく分からないまま進めていて、ライツアウトは途中で心が折れました。もともとライツアウトを試行回数で解くタイプなので、今作の操作感でイライラ棒しつつ解くのが厳しかったです。いい加減型を覚える頃合いかもしれません。
シナリオ面で好きなのはタイトルの出オチ演出で、クリア後に別の意味も付与されるあたりが良いです。
基本的にシナリオは軽く進んでいくので、アクションの阻害をすることなく世界観を軽く紹介していく感じなのも好きなところでした。猫昆布という概念も好き。
後は、独特なアクション性と、ある程度それを学習させようとするレベルデザインのおかげで、慣れつつ最終面へと進んでいけるところも良いポイントでした。
最終面のレベルの上がり方だけは並大抵のものじゃない気もしますが、ここら辺は多分プレイヤーを信用しているんだと思います。ここまで来たからには、まあクリアできる能力は備わっているはずなので頑張りましょう。
37. エリスと悪魔の書
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | こうさか |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
6時間 | 1.06 | クリア |
良かった点
- 戦闘メインながら、ノーマルな難易度では比較的緩く戦略性を楽しめます
- ある程度相手の行動に対応する戦略性が求められます
- 随所で誤操作を避ける配慮がなされていました
気になった点
- UI操作がややトリッキーです
- 慣れると使いやすそうな感覚はあります
レビュー
スキルを回して敵を討て
エリスと悪魔の書は、戦闘を主体としたRPGです。
ダンジョンによる探索要素が多少ありますが、基本的には戦闘を通してストーリーもゲームも進行していきます。
その戦闘で雑魚やボスと相対する際は、戦闘システムを十全に活用することが肝心です。
ベースはWTと呼ばれる待ち時間を基軸としたCTBに近い形式であり、それぞれのキャラクターごとのスキルを上手く使いこなすことが攻略の糸口となっていきます。
中でも特に重要になるのは、行動ごとに蓄積していくSPの使い所です。SPを消費して発動するスキルはどれも強力であるため、敵の行動パターンやこちらの状態を鑑みて、適切なタイミングで刺していけると良いでしょう。
また、勝利を目指す上では状態異常の運用も欠かせません。そのまま状態異常が通る雑魚戦はもちろんのこと、それが通らないボスであっても状態異常を狙う価値はあります。
何故なら、状態異常を継続して与え続けると対象がブレイクと呼ばれる状態になり、長大な待機時間と被ダメージ増加の効果を与えることができるためです。可能であれば積極的に狙っていき、戦闘を優位に進めていきましょう。
加えて、戦う前の準備もまた勝ち抜いていくには必要な要素です。
戦闘で使うスキルはレベルアップとともに強化することができます。よく使うスキルを強化しておいたり、パッシブスキルを習得したりと、自分の組み上げた戦闘プランに沿って、適切にポイントを割り振って戦力を増強していきましょう。
また、素材を利用した装備の強化も忘れてはいけません。特にメインメンバーの武器は常に最強の状態にしておけると戦いやすくなります。
そうしたインゲームの戦闘における戦術性と、アウトゲームの準備における大局的な戦略性とを掛け合わせていくことで、強力なボスを相手取ったとしても勝利をつかみ取ることができます。
準備とアドリブの力を駆使して並みいる強敵を倒していきましょう。
感想
難易度ノーマルでクリアしたんですが、多分それより高い難易度で挑んだ方が良かったかもなと思っている作品です。筆者はノーマルを見ると、それが作者推奨難易度なんですねの気持ちで選ぶ癖があるんですが、これが裏目に出た感じです。
恐らくもう少し高難度だと戦略にバリエーションが出ていそうな作品でした。
エクスキューズをこの辺にして戦闘における筆者の戦略感を述べておくと、おおむねスイーツパーティーを最強とした永遠に持久して戦うタイプのものに感じました。時間経過による火力上昇のようなものはないので、短期決戦を狙う旨みはあんまりありません。
相手の火力はゲーム終盤につれて上がるとはいえ、デコイをちゃんとしておけば流れはほぼ取られることなく完遂できます。ブレイクすら狙わなくてもなんとかなります。ラスボスの初弾を食らって初めて回復アイテムを切ったくらいには、危なげない戦闘に終始する印象でした。
また、SP100イベント以外では控えの起用も行なっておらず、初期メンバーのバフデバフがあれば最後まで戦えるバランスです。起用が推奨されるようなボスも体感ではいなかったので、結局性能を知ることもなしに最後まで進めてしまいました。
全キャラクターで勝てるバランスという意味では割と良いバランスな気もしますが、用意された駒を十全に活用する機会と必要がないバランスとも言えます。この辺は一長一短ですね。
また、料理システムもほぼ使っていませんでした。これから登場する敵にメタるためのような性能をしている一方で、そのメタが何か分からないので安易に切りにくかった印象です。
ただ、最初に10個もらえるあたり食い得のものにしたいんだろうなという意図は感じられて、かつそれがHP増強というどんな場面でも有効打になる料理である、という点はすごく良かったです。
なので、これは筆者のエリクサー症候群によるものというのが多分にあるのだとは思います。反省。言い訳をしておくと、直前にスイーツパーティしておくだけで全回復して挑めるので、回復手段としての価値というか導線は弱い印象を受けました。
このあたりを含めた全体の印象として、戦略性を問われるという形式の中でも、型ができたら安定化していくルーチンタイプの戦闘設計だなという感覚が最後まで終始していました。多くのボスには発狂もないので、一度安定したら後は流れ作業になることが多かったです。
とはいえ、固定ルーチンを構築し、押し付けるにしても相手の行動いかんで対応する必要がないわけではないので、戦略性はそこで担保されているという塩梅でした。手落ちを避けて持久を継続していく、というプレイ感です。
戦闘メインのこの系統には珍しく、かなり緩い難易度で仕上げているなあという雰囲気を感じました。
戦闘システムに触れておくと、ブレイクシステムについては積極的に使わず、プレイ中も大して発動はしませんでしたが、仕組みとしてはだいぶ好きでした。
状態異常スキルはボス戦、特に強力なボス相手にはどうしても死に技になりやすく、せいぜいなんらかの特殊条件付きで一部が通る程度になりがちなんですが、そこがシステム面で上手くカバーされていて、全て活躍の機会が巡ってくる可能性がありました。
この仕組みのおかげで、ボスごとの状態異常の通りやすさのバランスがかなりバリエーション豊かになっていて、その上で致命的なバランス破壊にも繋がっていません。状態異常技とボスの関係性に対する一つの回答となりうるシステムに感じました。
UI/UX系については、慣れると使いやすいんだろうなと思いつつ、最後まであんまり適応できなかった、くらいの感覚です。
特に攻撃/スキルの切り替えがCXであること、強化周りのZ/Cキー押しっぱなしによる選択処理など、割とトリッキーな設計をしている印象があります。
前者は一度慣れると固定された行動へのアクセスまでの操作数が少なくて便利なところはありそうですし、後者は欄が二列になっている以上やんぬるかなといった感じです。
個人的に面倒だったのは店のUIで、誤購入を極限まで防ぐことには特化していると思うんですが、ちょっとした買い物をするハードルは上がっているような気がします。
また、強化周りは誰に割り当てられているか分からないので、メインメンバーを強化しようと思った時に一回装備を確認するフェーズを挟む必要があるのも面倒でした。魔石の種類は少ないので覚えておけという話な気はします。
最初に選択肢が選択されていない選択肢であったり、先述の店のUIであったり、可能な限り誤った操作を防ごうとする親切なUX思想ではあるものの、それゆえにだいぶ回りくどい印象もセットで感じる、といった具合でした。この辺のトレードオフは難しいですね。
それに加えて、遷移する選択肢の数を減らすUI設計なのか、中間選択肢がかなり排除されている印象もあり、上述のように戦闘面では行動の大枠を決める選択肢の代わりに切り替えがあり、メニュー面でも同時押しを使うことで押し込んでいる設計です。ここは思考と行為をできるだけ直結させようとしているのかなと感じました。
ダンジョンについては、色々とギミックが仕込まれているのが面白いです。
各ステージごとに特色もあって、簡素ながら攻略している感じがします。その上で、戦闘メインを崩すほどにはガッツリしたものではない、というのも良く、適度に清涼剤となって機能してくれています。
そういう意味でも、2層にはギミックがないので結構寂しく感じていたのですが、緩急をつける意図があったのかなとぼんやり思っていました。暗闇はあるけど。
シナリオはずっと信頼できない語り手をやっているのかなと疑っていたのですが、ある程度素直に進行して終わりました。ルコの情報開示が遅れた理由は納得しにくいものではあって、明確に意味もなく疑われる羽目になってる印象はあるんですが、主人公の性格がそういう感じなのかもしれません。
どうでも良いですが、ゲーティアの半分がティアなら、もう半分はゲーということになるんでしょうか。
38. ぐぅたら少年の七転八起
ジャンル | 作者 |
---|---|
ローグライト自動戦闘 | はるしし |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 1.04 | クリア |
良かった点
- 主人公が快活で良いキャラクターでした
- 緩くビルドを探れるゲーム性でした
気になった点
- 終盤ほど持久戦を要求されるため、ビルドが固定化されがちでした
- 最低限回復とデバフなしでは立ち行かないイメージです
レビュー
半自動戦闘
ぐぅたら少年の七転八起は、ほぼ自動で行われていく戦闘が特徴的なローグライト風味のRPGです。
ステージに挑戦し、連戦を繰り返して一定数まで勝利できればクリアとなります。
ステージで繰り広げられる戦闘は自動で進行しているため、プレイヤーが干渉できることは多くありません。
干渉できる要素の中でまず重要となるのは、戦闘に勝利する度に得られるスキルやその強化の選択です。戦闘中は、ここで取得したスキルが一定時間ごとに発動していく仕組みとなっているため、この組み合わせ如何によってはスペックに大きな差が出ます。試行錯誤して、有効なビルドを模索しましょう。
加えて、もう一つ干渉できる点として、戦術の変更が挙げられます。これは戦闘中に行うことができ、一定時間ごとに回復、攻撃、防御、チャージ速度のどれを優先するか決めることができます。さらに、変更のタイミングで状態異常を回復する副次的な効果もあります。
戦況を見て柔軟に変えてみたり、状態異常に対応するために緊急で変えてみたり、その時々に合わせて上手く戦術を変更していくことが攻略においては重要になってくるでしょう。
なお、たとえステージをクリアできなかったとしても、その経験からステータスが向上していくため、次の戦いはより有利に進めることができるようになります。
諦めずに何度でも挑戦し、ビルドを組み上げ、連戦連勝を重ねてステージのクリアを目指していきましょう。
感想
ある程度放置で行けるかと思ったら、最後はモグラ叩きになるゲームでした。割と忙しいのでぐぅたらできません。ジャンルもオートチェスとかではなく、セミオートバトルなのでさもありなんではあります。
筆者は序盤はスロウ、ポイズン、ヒーリングのコンボで突破しつつ、ウィークを入れて安定を図っていました。スロウがかなり強く、これ一つで攻防両方で強いアドが取れるようになります。おかげで、鍛錬完了イベント前に完了するレベルで進展しました。主人公の成長速度が早い。
終盤もこの方針は変わらず、スロウ、ウィーク、ヒーリングはほぼ必須で導入されています。攻撃択はちょくちょく変えられているものの、たまにドレインが引けるとより嬉しい程度で、余り変化は生まれませんでした。
と言うのも、このゲームは終盤の相手の体力がかなり高く、ほぼ持久戦になることが確約されています。そうなると、回復はともかく、遅延とデバフも半ば必須になってしまいます。何故なら、速攻で潰す戦略が取れないので、高火力で固めるメリットが限りなく低くなるためです。
こうなると、終盤の戦略においてはスロウとウィークとヒーリングは毎回LvMaxで入ることになってしまうため、ビルドの幅はかなり狭くなります。
加えて、長期戦になると火力差やスピード差に大した違いも出なくなり、攻撃択ですらどれも似たり寄ったりの性能に収束しがちとなります。特殊性能付きの魔法が輝くくらいで収まる印象です。
この状況下だと、中盤以降はビルドが固まり、持久戦になり、格別バリエーションは増えません。
また、この固定化した盤面の中で発生する終盤のプレイングについては、相手の攻撃に合わせて発生した状態異常に対して素早く対応するボタンを押すゲームへと変化します。
序盤はチャージにおいて高速で回し、中盤から終盤は戦略を変えて封じ続けるゲームになります。ラスボスですらここに変化は無いので、見慣れたビルドを盾にステータスを叩きつけるようなプレイ感になってしまっていました。
ゲーム性自体は割と好きで、クールタイム付きで平行でスキルを撃ちだすそのビルドを構築するという方向性は面白いなと感じています。ただ、最終的な戦略性の幅が狭く感じ、やることが固定化されるのだけ気になっていました。
スキルのレベルアップのために中盤以降盤面に変化が無いのが原因なのか、回復ベースの持久戦しか許されないようなHPのデザインが原因なのか定かではありませんが、その辺の幅が広がると楽しくなりそうな気配を感じます。
単純に難易度を上げて良いなら、ウェーブごとの少量回復を当てにする短期決戦型にバランスを振れば良さそうですが、それはローグライクのレベルデザインであって、ステータス成長によるごり押しも許容する緩めのローグライトであるこの作品とは相性が悪いように思います。
スキルのレベルアップ性については単純に廃止して取り換えを推奨するデザインにしても、回復メインが優位なことには変わらないので、戦略を変える要求力に乏しいように思います。難しい。
とはいえ、あんまり深く考えずに半分放置するつもりで遊ぶのであれば、強いビルドを組んで敵を殲滅していけるので楽しいゲームです。
シナリオも良く、快活な主人公と過保護なジジババという黄金律を見ることができます。元気なのは良いことですね。
39. 鬼童-oniwarawa-
ジャンル | 作者 |
---|---|
ホラー探索ADV | ゆらもり |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間+2時間 | 1.03 | 全END |
良かった点
- 良質なホラーの雰囲気が醸成されています
- 演出、シナリオ、トラップのそれぞれが上手く作用していました
- 謎解きの質が高いです
- 作業だけでなく思考も求められる良い塩梅でした
気になった点
- ほぼ周回前提ですが、周回はやや手間です
- 慣れれば1周30分程度ではあります
レビュー
良質和風ホラー
鬼童-oniwarawa- は、ホラー系の探索アドベンチャーです。
和風の屋敷の中に迷い込んだ主人公を操作して、様々な障害を突破していくことになります。
障害は主に謎解きの形として表れており、その謎を解くには文言を読み解き、マップに配されたオブジェクトを注視することが重要となってきます。
探索範囲はさほど広くはならないので、余さず調べつつ、提示された謎を解き明かしていきましょう。
謎解きとしての難易度はちょうど良いものとなっているため、適度に頭を使いながら挑めること請け合いです。
また、そこかしこに遍在する和風のホラー要素も見逃すことはできません。ジャンプスケアと違和感を絶妙に交えつつ展開されるホラーは良質なものとなっています。
適宜挟まれるそうした演出に肝を冷やしつつも、冷静に対処して逃げおおせることが肝要となってくるでしょう。
そうして恐怖を乗り越え、謎を解決していくことで屋敷の先へと進んでいき、それに合わせてシナリオもまた展開していきます。
この屋敷は一体何なのか、襲い来る怪物は何者なのか、それを知るにはエンディングに辿り着くしかありません。加えて、異なる分岐に至れば、また異なった事実を知ることもできるでしょう。
あらゆる謎を解き明かしていき、真のエンディングへと到達しましょう。
感想
完成度の高いホラー探索アドベンチャーという印象の作品でした。ホラーの雰囲気とか、開示する情報のペースとか、謎解きの難易度やひねり方とか、それぞれが良い塩梅で構成されているので、体験として非常に良質です。
やり残したことがあるなと思ったら、即座に別ENDのために戻ろうと思えるレベルには完成されていました。追加で2時間かかってるんですが、色々やるべきことを考える時間でもあったので良い時間を過ごせたなと思います。
特に個人的に好きなのは謎解きがちょっと捻ってあるところで、解けた時に良くできているなあという気持ちにさせられます。四方向から見ているとか、晴れの掛け軸とか、よく考えればすんなり分かるけど、初見でちょっと惑う程度の仕掛けの塩梅が絶妙です。個人的にはクイズが一番好き。
さらに真エンドに行くために必要な要素として追加でひねっているのもあり、かなり謎解きというか探索要素をしっかり遊ぶことになる作品となっていました。
筆者は大体の謎は自力で解いていましたが、千代紙の順番だけごり押したので、後でヒントを見て理解するなどしていました。生贄の順番かなと思って色々試していたんですが、どうやら八の部屋のものだったらしいです。確かに最後が橙で締められるので、さもありなんといった感じですね。
それ以外の謎についても、元あった謎を発展させたものもありつつ、ちゃんと探索する必要があるのも散見され、調べていく楽しさがありました。
初見でTrueに行けない設計ではあるなと感じてはいますが、きちんと遊べばそれなりに分岐も納得がいくところではあります。ED1なら初見でもワンチャンスありますしね。ED0は多分無理。情報が後出しなので。
また、ホラー要素としてはブービートラップの設計も個人的には好みです。
好奇心猫を殺すといった雰囲気で配されているものに触れに行くと、問答無用にゲームオーバーにされます。このあたり、余計なものに首を突っ込んでいる自覚はあるので、全く理不尽さを感じません。ふすまが開いたらヤバいと思いつつ見に行きたくなりますし、それでゲームオーバーになるのもまた当然です。
加えて、こういう緊張感がそこかしこにあるので、実際には意味を持たないようなオブジェクトにも敏感に反応し、恐怖を増長させるようにもなっています。良いホラーの雰囲気が醸成されています。
ホラーの雰囲気については鬼がちゃんと怖いのも良く、適宜ちゃんとビビらせてくれます。追いかけっこの難易度が適度に難しいのも良い作用をしていて、恐怖を煽る設計となっていました。
一方で、鬼神までくると怖いよりも気持ち悪い形状ですねの気持ちが勝るデザインとなっており、ラストイベントで対峙する対象としてちょうど良い落とし所にもなっています。立ち向かう対象なので、不気味が勝つくらいが気分に沿っています。サイズ感も大きいですしね。
シナリオ面はホラー探索アドベンチャーの常として断片的にしか語られない歴史と、それに巻き込まれていく形に収斂するものではありますが、最後の対決を含めて大オチがきちんと用意されているのが良いところです。
エンディング分岐にもよりはしますが、そこそこの惨劇があり、犠牲があった話であっても、最後にある程度清々しく終われるのはこの終幕があったからにほかなりません。こういうタイプで、ちゃんと解決するパターンは逆に珍しいかもしれない。
しかし主人公、頭に角生えた何かに対して最初にやるのが「声をかける」なの、なかなか肝が据わってますね。そりゃあ好奇心に殺されかねない。
40. 作者が1日で作ったRPG
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | クロア・レア |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
10分 | 7/21 | 未クリア |
良かった点
- タイトルに相違ない1日で作れる範囲の設計でした
気になった点
- 進行不能と思しき不具合があります
- マップが余り意味を持たずに広いです
レビュー
1日突貫作業感
※この作品は、ウディコンのバージョンでは進行不能の不具合を含みます
作者が1日で作ったRPGは、1日で完成させる範囲のボリュームで構成されたRPGです。
軽いシナリオがあり、主には戦闘がメインのゲームとなっています。
全体で見て二つのエリアで構成されるマップ、それぞれの広がりは確かにタイトルに違わぬ体験ができるでしょう。
中盤あたりに進行不能がある点は注意が必要です。
感想
前提として、筆者のプレイしたバージョンでは進行不能でした。急に性別がどうのという話をしていたあたり、手前のイベントがスキップされているんじゃないかと推測しています。ウディコン終了間際に軽く確認した感じでは動きが無かったので、そこまでの感想を書きます。
開始早々、1日でまあまあ広いマップを作ってるなあという感想を抱きつつ、次のマップがほぼゴールなのを見て確かに1日に収まりそうだと納得しました。最初のマップ、イベントも特にないので1/10くらいにして本編マップの方に力を入れた方がコスパが良い気がします。
また、全体的にちょっとだけ広いのでダッシュが欲しい気持ちもありますが、1日しかないのであれば無理っぽい気がします。コモンイベント拾ってくればワンチャンスといったところでしょうか。
進行不能については2ステージ目みたいなところの手前に扉の上部分だけ置いてあるのが目立つので、多分扉を開けるイベントがあるんじゃないかなと想像していました。その周辺で決定ボタンを連打しても何も起きなかったので、あくまでも推測ではあるんですが。
進行不能があっても修正しないというあたり、ある意味では1日で作ったというテーマに殉じている感じはあります。修正したら2日で作ったことになりますからね。αもβもノータッチもない開発だ。
41. デモクラシア演義
ジャンル | 作者 |
---|---|
選挙 | 投票率向上委員会 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 7/21 | 4大統領/戦火 |
良かった点
- 選挙活動の厳しさをエミュレートしています
- 選挙シミュでありながら、選挙のための選挙となっていません
- 候補者が個性豊かでした
気になった点
- 降りかかる国難が一律であることについて、一部違和感がありました
- かなりランダム性が高く、ともすると選挙活動そのものの無意味さを感じることもありました
レビュー
選挙活動は足で稼げ
デモクラシア演義は、選挙活動をシミュレーションするゲームです。
6人の候補者から1人を選び、その候補者を広報して当選を目指すことになります。
選んだ候補者を当選させるためには、地道な選挙活動が鍵となります。
町やマップにいる人々にとにかく話しかけにいき、ひたすら候補者をアピールしていきましょう。アピールは成功率や得票率の上昇が異なる選択肢から選ぶ形式となっているため、可能な限り素早く有効なものを選び出していくことになります。
各地を行脚し、とにかく目一杯泥臭く候補者の宣伝をしていくことが、選挙活動を結実させる近道となっています。
そうした活動を経て、いくつかのイベントを迎えた後に投票当日を迎えることになります。
最後に選んだ候補者が国民から選ばれるかどうか、そして選ばれた候補者のその後を見届けていきましょう。
感想
選挙活動の厳しさの一端が分かる作品でした。めちゃくちゃ頑張ってたくさんの人に語りかけたところで、大体は冷たい態度を取られ、熱心に話を聞いてくれるような人はそんなにいません。
その中でも持てる武器をフル活用して、とにかく活動し続ける孤独な戦争でした。本来は選挙活動事務所とかあるんでしょうけど。
選挙結果については何度かやってみた感じでは、ある程度頑張った影響はあるけれど、時の運にだいぶ左右されるなという印象でした。
割と頑張ってアピールした結果増えた得票数より、乱数で増減する値の影響がかなり大きいです。頑張り方を最適化すれば、そのあたりの壁を越えられる気がしないでもないですが、その壁は厚そうでした。
また、何度もやり直しては色々試した範囲では、どうやら最終バトルというか国難、あるいはその文言に変化はないようです。
たとえ当選者が王族になろうと叩き上げになろうと、勇者のメンバーになろうと、降りかかるものは変わりません。これは現実味があるような、無いような要素に感じました。
個人的には、現実に対処せねばならない問題というのは立場の差に依存しない、という主張と飲み込んでいます。アプローチ(スキル)や能力(地盤/得票数)の違いはあれど、それを武器として挑む国難に変化はないという解釈です。
ただ、そうだとしても王族が既得権益を破壊しようとしているあたりは、まあまあ理解が難しいなという印象です。
そもそもが王族を民主主義が選んだのであれば、それは既得権益の一定の保護を民意として認めているという向きにも捉えられるので、それに反した行動をするというのはそれほど民主的なものではありません。むしろ党首の独断専行にも思えます。
閑話休題。ゲームとしての話に戻ると、いきなり投票が始まるのではなくて、そこに至る経緯をダイジェストでまとめているのが個人的には好きです。ちゃんと目的に対する理由が示されています。
選挙活動においても地盤を意識すると成功率が目に見えて変わるという小さなゲーム性もあり、こういう細かいところの作りでそれっぽさが担保されています。
また、選挙で終わりにならず、最後にそのトップをもって国難に当たらせるというのも、選挙をテーマとした上で誠実に思えました。選挙して終わりとなるものは選挙のための選挙でしかありませんからね。その地続きにあるもののための選挙という印象が強く残っていて好きです。
ちなみに筆者は何度やり直しても謀反に勝てませんでした。一度だけ応援者が良いところまで行ったケースがあったので、多分選挙活動を真面目にやって、上手く噛み合えばいけそうな気配はあります。謀反は絶対に覆せない民意であるという可能性も否定はできませんが。
そういう意味では真のクリアはしてないとも言えるかもしれません。
42. パーソナル戦記 Memories
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | ゾローク |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 8/12 | クリア |
良かった点
- マップが広いぶん、ダッシュはかなり高速に動作します
- 難易度ノーマルに有用な救済措置がありました
気になった点
- 探索を要求する割に、世界が殺風景です
- 一部スキルの性能が高すぎて、ほかのスキルの意味や弱点の価値がほぼなくなっています
- 続編のため、この作品と直接関係ないキャラクター名が説明なしでよく使われていました
レビュー
だだっ広い草原をダッシュで駆け抜けろ
パーソナル戦記 Memories は、一つのマップを駆け回って戦闘を行っていくRPGです。
東西南北に大きく区分される巨大なマップからボスを探し出し、倒していくことになります。
戦闘はオーソドックスなコマンド形式で行われるため、メンバーのスキルやステータスが戦いにおいては重要となってきます。
強力なボスを倒すためにも、マップ内のエンカウントエリアで戦闘を重ね、充分にレベルアップしておきましょう。
また、ゲーム、ひいてはシナリオを進行させるためには、ボスを探し出す必要があります。
ボスは広大なフィールドのどこかにいるので、ダッシュを駆使してくまなく探し回りましょう。あるいは、ボスを探し回ることで戦闘を重ね、充分に成長することもできるかもしれません。
四方八方を探し回り、様々なボスを撃破していき、シナリオの終わりまで歩みを進めていきましょう。
感想
色々な感想が全てただただ広いワールドの印象に塗りつぶされている作品です。ダッシュが本当にすごいダッシュするんですが、この広さだとさもありなんという感じでした。
ダッシュの高速感はかなり面白く、周囲に何かオブジェクトがあるとより顕著にその速さが分かります。主人公たちは特に何も習得することなくこの能力を使っているんですが、何か謂れはあるのかそういう仕組みというだけなのか。
初めにシナリオ面に触れておくと、おそらく続編っぽい話の流れをしているので、ちょくちょく説明なしで初見の人物についての会話が繰り広げられていきます。クリアした現在も、それぞれの関係性はかなりおぼろげな把握しかできていないんですが、因縁などを気にしなければメインの物語は追える程度にはとどまっています。ちんぷんかんぷんというレベルではありません。
なお、特にエンディングでそれは顕著で、作中ではほぼ触れられていないキャラクターのその後についても語られます。
また、作中の目的である守護神を倒している理由もかなり納得感がありません。どこかから聞こえる声に従ってやり続けているというものであり、黒幕の傀儡っぽい行動に終始しています。
それにもかかわらず、その行動に対しての言及はなしに、黒幕と対峙しだすのでかなり違和感を覚えました。
戦闘面で見ると、初期のうちはバリアシールドが最強スキルに見えつつ、最強の攻撃手段であるスターダストスラッシュがさすがに群を抜いた最強スキルだなという感想に落ち着きました。
バリアシールドはかなり強く、恐らく引きつけ、カウンター、シールドの全ての要素を兼ね備えます。
しかし、それを置いて余りあるほどにスターダストスラッシュが強く、ほかの攻撃技の何回分もの攻撃性能を一打で叩き込みます。正直弱点を気にして攻撃を選ぶくらいなら、こっちを打った方がお釣りが来ます。ほかの攻撃手段の存在価値が脅かされるレベルです。消費MPがスターダストスラッシュより多いスキルであろうと例外ではありません。
そういう意味でも戦略はだいぶ固定化されると感じていて、バリアシールドを張って回復しつつスターダストスラッシュをとにかく撃ち続けるのが安牌になります。ほかをサポートに回してでも、毎ターンこの行動が打てる方が強いです。
手が空いたほかのキャラが攻撃しても良いですが、余り効果は得られません。魔法などもってのほかでした。
ステージについては、とにかく広く、オープンワールドと呼ぶにもさすがにオープンにすぎるなという印象です。
難易度ノーマルのお助けキャラらしいマオがいないと、この中で中ボスを探し出すことになるので、かなりしんどい気はしています。筆者は何も考えずにこの救済を使いました。
また、全体的にレベルデザインがプレイヤー任せになっているという感触もあります。レベリングをするにあたっては、基本的に明示されたエンカウントエリアでどの程度戦闘をするかでその結果が決まるので、道中までの距離、道筋などに由来する基準はありません。このため、プレイヤーがボスに負けた時、ステータスが足りないのか戦略の方向性が間違っているかの指針が全くない状態になります。
なんとなくポケモンっぽいデザインではあるんですが、あっちはトレーナーがいるから成立しているデザインであるような気はします。捕獲したくなる種類が多いというプレミアもありますし。
また、ステージがかなり殺風景なのもしんどく、場所を覚えるのがほぼ不可能になっています。これは探索済みのエリアがどこかを把握するということが事実上不可能であることを示しているので、虱潰しすら困難になってきます。
一応東西南北で雰囲気は変わりますが、その各ステージ内でもせめて小物などの配置で差異が出ているともう少し探しやすいんじゃなかろうかという感じがしました。
とにかく色々と広いなあという印象に支配される作品でした。
ここまで広いと、ウディタで該当マップを開くだけでも動作が重くなりそうですね。
43. 少女大猩猩 -ゴリラvsデカヘドロン-
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクション | 餓鬼郎党 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 1.05 | クリア |
良かった点
- 緩急の付いた良いゴリラアクションです
- 最後はシナリオとともに良い演出で敵と相対せました
気になった点
- 特にありません
レビュー
ゴリラメタモルフォーゼ
少女大猩猩 -ゴリラvsデカヘドロン- は、ゴリラに変身するアクションを駆使して進めるゲームです。
ゴリラになれる特殊能力を武器に、薬物で人間を怪物に作り替える犯罪組織に挑むこととなります。
ゲーム中で遭遇する様々な敵に対し、人間のまま触れるとゲームオーバーになってしまいます。一方で、ゴリラは無敵の霊長であるため、変身中は全ての敵をなぎ倒すことが可能です。どんどん敵を吹き飛ばしていきましょう。
しかし、無敵のゴリラであり続けることはできません。ゴリラに変身している間はGPを消費し続け、これが枯渇すると人間に戻ってしまいます。
GPが溜まるまでは、人間のまま上手く逃げることが肝要となってきます。あえてゴリラ状態を短めに抑え、回復する必要のあるGPを少なくするというのも良手となるでしょう。
また、ゴリラのままでは知能が低下している上、体が大きいため探索や謎解きでは不利となります。ゲーム中の探索パートでは大人しく人間のまま過ごすのが良策です。
ゴリラと人間の良いところを上手く活用し、マップを探索していきましょう。
そうして犯罪組織をゴリラの力でなぎ倒していく中で、やがて組織の生み出す最大の怪物にも相対すことになっていきます。
溢るるゴリラのパワーを最大限に活用し、強大な敵をも打倒していきましょう。
感想
3作目まで出るとは思っていなかったです。ゴリラものは続編が出る、というジンクスでもウディコンにはあるのでしょうか。
映画なんかでは3作目に面白いものが出るかどうかがシリーズ物の分水嶺っぽい向きがあるらしいんですが、この作品は3作目まで面白いので良かったです。ずっとシリーズ物やってほしい。
各作品ごとにゴリラアクションを主軸としつつも、微妙に味が違うことをやっているのが個人的には好きなところです。今作はやや探索風味やパズルっぽさが随所に見受けられる印象があります。
その上で主軸となるゴリラメタモルフォーゼはきっちり要所で炸裂し、爽快感を与えてくれる設計にもなっています。しかし何度見ても、ゴリラメタモルフォーゼって何なんだ。
加えて、ゴリラアクションはついに巨大化まで果たし、規模感をますます上げていきます。巨大化したゴリラ、もはやそれはキングコングなんじゃなかろうか。
この巨大化はかなり良く、木々をなぎ倒し草原を闊歩する最高のパワー体験を与えてくれます。最終戦ということもあって、かなりインパクトが大きい演出になっていました。地に響くおおきなものになりましたね。空を渡ってはいないですが。
巨大化が物語的な演出としても機能していて、ただ奇をてらうだけの巨大化じゃないのも良いところです。ラストバトルの雰囲気をしっかり醸成しています。
シナリオの面では、伏線も含めて割とあからさまなところはあるんですが、その辺がむしろ娯楽映画っぽくて良い感じがあります。まさに副題にゴリラvsデカヘドロンと付いていそうな雰囲気です。
起承転結も、結末としてのオチも完備されつつ、ウディコンに常にゴリラ成分を供給してくれる作品でした。
もはや最初の入りについては、劇場版の名探偵コナンみたいな感覚を覚えてきました。確かに初見は面食らいますからね、この設定。
なお、筆者はそこそこ探索したつもりですが、今回は隠しアイテムを見つけられませんでした。残念。どこかの隠し道でも見逃したんでしょうか。
44. 優しいごはん
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | mashiro |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
17時間 | 1.08 | 全END |
良かった点
- 作業的なメインループが良く回っていました
- 料理と素材の関係が良く循環しています
- 戦闘のテンポもちょうど良いものでした
- ご飯を軸としたシナリオの空気感が良かったです
気になった点
- お使いクエストが作業的に過ぎました
- 終盤のギミックはやや理不尽です
レビュー
ご飯を食べて活動しよう
優しいごはん は、美味しいご飯を食べて進めるRPGです。
自然豊かなミノリ島を訪れた若者たちを操作し、収穫や交流を経て成長していく物語を体験していくことになります。
RPGと言っても、攻略に血道を上げるような戦闘はほとんどありません。
基本的にプレイヤーのやるべきことは、収穫のために食物と戦ってその素材を獲得し、それを元手に料理を作っていくことです。料理があれば体力などを適時回復できるようになるため、より多くの戦い、ひいては収穫が見込めるようになります。
そうして、ひたすら収穫と料理を交互に繰り返し、少しずつ行ける場所や作れる料理を増やしていくことになるでしょう。
料理のバリエーションが増え、行動範囲が広がるにつれて住民との交流も盛んになり、それぞれのお願いごとを聞くことも出てきます。積極的に交流を行って依頼を叶えていき、ご飯をごちそうになりましょう。
このような緩やかなルーチンの中でイベントをこなしていく中で、物語はちょっとずつ進展していきます。様々な場所で様々な食材を収穫していきながら、緩やかにこの世界と物語に身を委ねていきましょう。
感情を激しく揺さぶるような戦闘をするわけでも、思考を強く要求するパズルをするわけでもありませんが、素材をひたすらに狩り、料理をたくさんこさえていく過程は確かに没入することのできる作品となっています。
無心で素材と料理のサイクルを回し、たくさんご飯を食べていきましょう。
感想
説明に違わぬ作業系RPGでした。とにかくルーチン通りに色々作業をこなし、ひたすらご飯を作って食べるゲームです。
最初の作業からしてルーチン行動になっていますが、やることが決まってくると、さらに動きがどんどん決まってきます。その中で少しずつ進展するものもあり、変化するものもありはします。ただやはり全体を通して見ると固定的な行動を繰り返していくことになるので、そういった作業に抵抗がないと楽しめる作品なのかなと思います。
筆者はこのレベルでちゃんと固定ルーチン化させるモチベーションがあるなら好みなので楽しめました。クリッカーとか工場系ゲームみたいなイメージ。
攻略にあたってのルーチンというか行動パターンについて触れておくと、序盤をおにぎりとナス丼でしのぎつつ色々な場所を巡り、徐々に足りなくなっていく回復量を補う形でグレードアップさせていく方針で進めていました。ナス丼は畑の収穫物で賄えるので、序盤はかなり有用な料理に思えます。回復量も充分高いですし。
ただ、どこかでHP1500回復では心許なくなってくるので定食系やオムライスに鞍替えしています。これを活用している間にウシタマを狩れるようになってくるので、それを元手にステーキ定食を作る形に移行しました。
一方、MPの回復はカボチャプリンがかなり優秀で、こちらも畑と乳製品でカバーできるので作りやすくなっています。MP700が不十分になってきたあたりでパンプキンパイを作るようになっていました。こっちも結構作りやすい。モンブランやアップルパイの作り置きもしておきましたが、MPの消費量はHPほど激しくないので、割とパンプキンパイだけでも行けます。
勝負飯に関しては、物語最終盤以外はほぼ不要なので余り試していませんが、適当に作り置きしていた海鮮丼でHPはほぼ持ちました。
MPはイチゴを荒稼ぎしてショートケーキを量産していましたが、そこまでしなくても作り置きだけでも充分カバーできるレベルです。やはり、MPよりはHP回復に比重を置いて料理をしておくのが良さそうな印象があります。
最終的には1100回も料理を作っており、よくこんなに作ったなあという感慨に浸っていました。単純にこの量の料理を作りまくっているクルミが凄い。
そして、これだけ料理を作りまくるモチベーションとして、戦闘システムがきちんと設計されていたのが個人的に好きなところです。
基本的にHPを消費してスキルを発動するのが効率的なので、とにかく雑魚狩りでもHPを消費して全体攻撃をぶっ放し続けることになります。こうなると、たとえ被弾していなくてもHPはみるみるうちに減っていきます。MP消費型の場合もほぼ同様です。このため、継戦するなら料理によるHP回復が不可欠なので料理を重ねることになり、そうして得た戦利品からまた料理を作り続けられるという良い循環が回っています。
自然と作業的な戦闘がループを生み出しており、没頭していると食材の循環が自然に行われていき、時間を忘れて無心で食材を狩ることになります。いつのまにか食材を99個持ってることがザラにあります。
最大所持数が99個なのはやや手間のかかる面もありますが、あんまり素材を貯めずに料理に変換しようというモチベーションを生むので、総合的にはかなり良い仕組みだと思っています。
確かに、コメなんかは99個をすぐにあふれさせますが、これが余りに多いと、そもそも食材を狩っている時間にも終わりが来なさそうです。適度に終わらせるためにも、99個という区切りはかなり機能しています。
また、料理もバリエーションを要求するとともに、おにぎりを1000個作る、みたいな面倒なことをさせない抑止力にもなっています。グレードの低い料理をいつまでも使い続けるより、グレードの高い料理に移行する方が総合的に楽であり、自然にそちらへ移行するためには制限が必要になるという寸法です。
上記のような作業的循環にマッチするかどうかがプレイを楽しめるかどうかの分かれ目になっている節はあり、その辺で好みが分かれそうな作品ではあります。
加えて、1時間30分くらいかかるチュートリアルもまあまあ関門であり、40分のインターンのあいさつ回りや雑草狩りの10分強など、ふるい落とす能力が高い構成だなあという印象はあります。インターンのロールプレイとしては凄い適切なんですが。
また、お使いクエストや終盤のギミック神殿周りはそこそこしんどく、ここもふるい落としの能力が高い構成になっています。美味しいごはんを作って渡す話はまだ分かるんですが、それを連続で配り歩くのはかなりしんどい気持ちになります。特に同じような場所を巡って置いておくのは、ルーチン外の作業的な感覚が強く、余りマッチしていない印象を受けました。
神殿のギミックもまた手間がかかるものが多く、かなり面倒なものが取り揃えられています。料理を大量に使わせようという設計である気もするんですが、それ以上にこちらのモチベーションがだいぶ奪われてしまいました。個人的には氷神殿が一番しんどい。
一方で、サブイベントで料理を振舞ってもらえるようになる展開はゲームタイトルにもマッチしていて、かなり好きなイベントです。
上手くイベントをこなしていくと、HPとMPを使い切ったあたりで全回復させることができ、1日の間に際限なく行動することも可能になってきます。筆者は人の家でご飯を頂きまくることで終わらない9日目をやり、2時間くらい9日目を堪能したことがありました。ただ飯は偉大。
そうして色々なことをしていると探索範囲が広がっていくのも良くて、その度に敵に出会い、新たな料理に出会うことができます。メインルートそれ自体のルーチンはかなり良いように感じました。
戦闘についても軽く触れておくと、作業の名に違わず、おおむね考えることなく終わらせられるものになっています。
現時点で強すぎる相手に挑む時や、強力なソウルに挑む時はさすがに戦略を考えることもありますが、それ以外の作業と言って良い戦いはちゃんと作業的です。そして、スピーディーに戦闘が終わるので作業に没頭しやすくもなっています。
こうした中に前述したようなソウルといった特殊個体が混ざることで、たまにちゃんと戦う必要が出てくるのもアクセントとして良いです。
また、終盤の強敵も当然思考が必要な上、ここからは勝負飯が必須のレベルになってきます。この辺の段階というかランクはちゃんと分類されている印象がありました。
なお、実はシロシリーズの技が、ちゃっかり重ね掛けできるんですが、上3つのアイコンが同じなので認識は凄く難しいものになっています。しかし、重ねると火力が割と上がるので強い行動ではあります。強敵相手にはターン経過を覚えて効果的に活用できると、かなり優位に立つことができました。
続いてシナリオなんですが、どう解釈すべきか迷うあたりもあり、最初の印象よりは複雑な感じでした。
序盤に関しては、職業体験の余りものグループという珍しい取り合わせから始まり、かなりリアリティのある失礼さをもってスタートします。誇張された失礼さというか、物語的な失礼さではなく、本当に失礼なムーブをする人間という嫌な現実味があります。ハル君がだいぶアレな性格っぽい。
そんな彼らが少しずつ交流して意識を改めつつ、成長というか感化されていくという物語のベースラインは分かりやすいものです。
ただ、明確な分岐から始まる一連の流れと、その分岐を見ると、急に世界観が変化していきます。
あの表現をそのまま取ると、今際の国のアリスみたいな話になりそうな印象を受けますが、実際のところどういう解釈をすべきかは判然としません。実際、世界観的にそういうものなのかと受け入れていたそれらは変な話ではあるので、そういう世界であると受け取ることも充分可能です。
そうであるなら、そこで死ぬというのはどういうことなのか、そこから旅立つとはどういうことなのか、そもそもあの二人はどういう存在なのか、と色々考察の余地はありそうですね。
余談になりますが、この作品もまた今ウディコン飯テロ作品の一つとなっています。今回多くないですか。
しかも料理のバリエーションが一番多く、料理を食べる時間に一番時間を割いている作品でもあるので、おなかの空き具合で言えばダントツでトップかもしれません。本当に美味そうに食べますからね。
45. イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノベル | うぉじろ(woziro) |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
40分 | 1.01 | 読了 |
良かった点
- テンポ良く物語が進んでいきます
- 独特なシナリオを味わうことができました
気になった点
- 特にありません
レビュー
疾風怒濤の体験記
イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~ は、分岐無しでシナリオが進んでいくアドベンチャーゲーム、ないしはノベルゲームです。
イマジナリーフレンドとそれにまつわるエピソードが怒涛の勢いで描かれています。
圧倒的なエネルギーで綴られていくその物語の特徴は、理解できる範囲の際まで飛躍し続ける流れと、それを軽妙なテンポ感と演出で叩きつけてくるところにあると言えるでしょう。
さながらウルフの意識の流れのごとく、絶えず流れるように移ろっていく観念と主題の勢いの中に呑まれる体験は得難いものとなっています。
そうした物語に込められた情報の洪水とでも言うべき勢いは、迫力と凄味を存分に発しているため、ともすれば気圧されてしまうかもしれません。しかし、素早い場面転換やバックログの用意など、システム的な助けもあるのでゲームとしてはすんなりと消化することができるでしょう。
読後には嵐の後のような感覚が残ること請け合いです。
テンポ良く進む言葉の濁流のような体験に没頭してみてはいかがでしょうか。
感想
センシティブなテーマだなあと思っていたら、余りの勢いに終始気圧されていました。開始1秒で出力する台詞からして馬力が違います。
何より恐ろしくかつ素晴らしいのは、この凄まじい迫力とテンポ感が一切途切れることなく終わりまで続き、何なら登場人物の追加とともに加速していくことです。どんどん加速してるジェットコースターに乗っているような気分。
筆者個人の考えとして、ノベルゲームというかシナリオを読む際は、意図的にせよ無意識的にせよ先読みしていることがあると思っていて、それによって認知負荷を下げていたり、意外な展開で驚いたりしていることが多いんじゃないかと考えています。
しかし、この作品はその投機的先読みが機能不全を起こすので、もはや字面をそのまま受け取って逐次処理していくしかありません。テンポは良いし読み味は軽いのに、読むのにめちゃくちゃ体力を使いました。得難い体験です。
ワードサラダという言葉にも代表される、統合失調系における一つのありうべき特徴として意味が通っているけれど通っていない文章があり、この物語の大半はそれに近いもので紡がれています。
話はほとんど脈絡なく別の箇所にジャンプし、と思えばやたら詳細に話が入るフェーズもあります。話の濃淡がバラバラで、その接続が余りにも唐突なものとなっています。しかし、ともすれば読みにくいという感情を惹起しそうなこれらの特徴を抱えつつ、ここまで読みやすいというか勢いで消化できるようになっている構成は脱帽の域です。
バックログがあったり演出を所々に挟んだりと、細かいところで補助を欠かしていない仕組みも、この読みやすさに大きく寄与していると思います。
どうも上記の特徴を列挙していると批判っぽく見えてしまっている気がしますが、決してそうではありません。念のため。むしろかなり刺激的というか一波乱も二波乱も唐突に訪れる、波にもまれるような体験が得られる良い物語になっています。全体を通した迫力と凄味はなかなか味わえるものではありません。それと同時に、安易に覗いて良い深淵なのかという気持ちにもなってきます。
どうでも良いですが、日本の天使と聞いてフランシスコザビエルが頭をよぎりました。あれは守護聖人。
46. 日替わりフルーツ
ジャンル | 作者 |
---|---|
記憶 | ブ瓶 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3分 | 1.0 | 40 |
良かった点
- 気づくとスコアが伸びていく良いミニゲームでした
気になった点
- ハイスコアが記録されたセーブデータがある状態で起動するとフリーズしていました
- 多分ver1.2あたりで直っていそうです
レビュー
記憶を頼りに果物を当てよう
日替わりフルーツは、記憶力と反射神経が問われるミニゲームです。
ゲームとしてはシンプルであり、時間制限内に表示された果物と同じ果物を選択肢から選んで回答していくゲームとなっています。
ただし、選択肢は常に同じではなく、一定の法則で並び変えられた状態で隠されます。
このため、法則を理解して順番を推理し、記憶をもとに回答を行う必要があります。
なお、一定の数だけ回答する度に体力が増え、間違ったらその体力を消費するという仕組みであるため、一回のミスではゲームオーバーにはなりません。ある程度リスクを負って素早く回答するか、順番を確定させるまで待つかはプレイヤー次第です。
法則を理解し、選択肢から順番を読み解きながら高速で選択してハイスコアを目指しましょう。
感想
最初はルールが分からず運ゲーかと思い、ルールが分かって記憶ゲーだと把握し、最終的におぼろげな記憶をもとに運ゲーした方が強くないかなと気づいたゲームでした。プレイ時間は短いのに学習が三段階発生しています。良いゲーム。
筆者は一週目でローテートに気づいたものの、時すでに遅かったので活用できませんでした。その次は記憶して挑んでみたものの、それだけではスコアが伸びませんでした。
というのもの、このゲームは間違えても一発アウトではなく、体力が減るだけです。時間のロストもありません。また体力は定期的に増えます。なので、記憶から算出するくらいなら、なんとなくこの辺だろうなという位置をある程度の体力の犠牲を覚悟で押した方がスコアが伸びます。
それに気づいた結果、無事目標スコアに到達できました。
恐らくここから一歩進み、このフィーリングで決めてるローテートの位置を完璧にできれば、50あたりも狙えそうな感覚はあります。ガチ勢はどこまで行けるんでしょうか。と思っていたら、100点を超えている方がいらっしゃいました。人類には無限の可能性がありますね。
47. 「■」の多いダンジョン
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | 遊句 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 1.06 | クリア+ |
良かった点
- 程よく頭を使う戦闘システムでした
- できることの進展の度合いもちょうど良いです
- 色々と気になっていたことを回収する導線が整備されています
気になった点
- おまけが流れ作業でやや手間でした
- ただ、埋めた技が持ち越されるので強く面倒には感じませんでした
レビュー
■■■■■■
「■」の多いダンジョンは、特殊な戦闘形式を持つ短編のRPGです。
戦闘は事前にスロットにスキルを入れておき、ターンごとに順番にスロットにあるスキルが使われていく形で行われます。
ステータスはあるものの、レベリングの概念は基本的にないため、勝利するには彼我のスキルの順番を観察することが重要になってきます。
相手の行動順をよく見て、こちらの使えるスキルを上手く組み立てて相手を制圧していきましょう。
そうした戦闘を乗り越えることで少しずつ世界のことが明らかになり、やがてシナリオが展開していきます。
不思議でほの暗い「■」の多い世界をさ迷い歩き、戦いに打ち勝っていきましょう。
感想
何の説明もないままに放り出されても、最終的に何をやるべきかはある程度明瞭になるゲームは良いゲームなので、このゲームも良いゲームです。
情報を極端に絞っている代わりに、一方通行型のステージだとか、分かりやすいレベルで会話に■を埋め込んでシステムを理解させるとか、要所を締めておくことで迷うことが少ないようになっていました。
戦闘面を見ると、ほとんどパズルと言って良いタイプであり、特定のフェーズを除けば回答も一意に定まっていそうな感じではありますが、頭の体操としてはちょうど良い塩梅です。それほど多くの選択肢がないので、きっちり詰めていけばさほど難しくはありません。
また、敵の能力を使って拡張していくという仕組みも良く、新要素への理解がスムーズに行えるようになっています。敵の行動パターンを理解して攻略するところにリソースを集中しやすいです。
システム面では、後で聞きに来ようかなと思わせるシステムになっているのが良くて、ちゃんと導線もあるので回収もできるようになっていました。筆者は変に細かいので、終わり際にわざわざ会話しに戻ってしまいましたが。文章差分は無さそうでした。
それと戦闘以外の要素がほとんど無いのもシンプルで良く、やるべきことだけが明確に存在するようなスレンダーなデザインに感じていました。
気になる点と言えば、メニューだけ若干ラグい気がしていたくらいで、それ以外はシンプルなのもあってスムーズにクリアまでたどり着くことができます。メニューに関しては、セーブしようとしてカーソルを動かしたらロードで止まったのであわやという一場面があったので印象に残ってしまっただけかもしれません。
後は、おまけがほぼ流れ作業なので簡略化したいという気持ちが湧いたんですが、あそこの無双っぽさも好きではあるので難しいです。思念伝達もしたいですしね。個人的には未セットがあっても許容してくれると、いきなりスキルを7個埋めなくてはいけない煩わしさが無くなるんじゃないかなと思っていました。どうせ埋めた技は次に引き継がれるので一回やれば良いんですが。
また、学校モチーフなど、ふんわりした概念としての世界観があるのも良く、シンプルに過ぎない程度にゲーム全体を覆うような装飾として機能しているように思いました。これと、都度流れる良いBGMがないとひどく無機質なゲームになりそうです。
とにかく不要なものをそぎ落とし、上手いことゲーム体験だけ切り出した彫刻みたいなゲームでした。
48. 屍の仔と死返しの竜
ジャンル | 作者 |
---|---|
探索ADV | ろぜちは080 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3時間 | 0-07 | 全END |
良かった点
- 要所のグラフィックが素晴らしいです
気になった点
- ブービートラップが殊に序盤において過積載に感じました
- 無味乾燥な廊下が長く感じました
レビュー
暗い世界を彷徨い歩く
屍の仔と死返しの竜は、ホラー要素のある探索アドベンチャーです。
分岐ありのおおむね一本道のマップを進んでいき、シナリオを進行していくことになります。
ゲーム中にはいくつかの即死トラップを始めとした、様々な仕掛けが潜んでいることもあります。それらを上手くかわし、解決して、少しずつ先へと進んでいきましょう。
また、進行に必要なアイテムをきちんと集めていくには、周囲を注意深く見渡しておくことも肝要となります。詰まった時は、目を凝らして周りを見てみましょう。
そうして注意深くプレイして先に進んでいく中で、主人公たちにまつわるシナリオが進行していきます。
特徴的な筆致で描かれるスチルが印象的なその物語は、プレイヤーの行動次第で二つの終わりへと分岐します。きちんと探索を進め、より良い結末を目指していきましょう。
感想
ジャンプスケアと初見殺しの詰め合わせパックみたいなゲームでした。少なくとも分岐路前にセーブを取ることは推奨です。
そこそこ脈絡なくジャンプスケアが飛んでくるので、ある程度驚きを流せるタイプでないと心臓に悪いかもしれません。
ゲーム性はおおむね探索アドベンチャーのそれを踏襲していて、一部を除くとおおよそ分岐ありの一本道の構成です。分岐ルートのどっちに行けるかはシナリオ進行次第になっていて、直感に任せてどっちかに行けば大体シナリオが進行します。
分岐開放と扉の因果関係はそれほどないので、どちらが正解かは大体ギャンブルになってきます。なんとなくこっちに誘導されてそうだなという方に行きましょう。
マップとしては、ずっと似たような景色が続くのが若干辛く、割と迷路っぽいのもあって頻繁に迷います。マップ構成それ自体はかなり一本道然としているので迷いにくい面もあって、そこと相殺されていなければ永遠に迷い続けていたかもしれません。
その分、力の入ったマップは良くデザインされているので、正直合間合間にあるそこそこ長く何もない永遠の廊下は無くても良いように思えてきます。澱んだ空気の表現として存在しているような気はしますが。
特に序盤に顕著ですが、ブービートラップがあるのも辛いところで、そのリトライ性の悪さも含めてモチベーションを明確に削いできます。
序盤は特にまだシナリオで惹起される面が乏しく、進行するための燃料が少ないところもあるので、そこを的確に削がれるとかなり辛いです。合流以降や別離以降のブービーは慣れたのもあり、かつシナリオ面でも先に進むモチベーションがあるのでなんとかなります。本当に序盤がしんどい。
また、このブービーはほとんど影みたいな見た目をしています。そのため、そもそも視認性が悪く、何が起因か分かりにくいという納得感の無さも着実にダメージを与えてくる印象でした。
探索アドベンチャーとして以外だと、最後に戦闘があるんですが、このグラフィックは凄いの一言に尽きます。イベントスチルも当然綺麗なんですが、一枚絵としての迫力はこちらの方が個人的には好きです。神々しさがあります。
それにしても、シナリオは過去の話だったんですね。それなら確かに、アレは別END扱いになるのも頷けます。正史じゃないので。子々孫々が丸ごと消し飛んだ世界線の話になってしまいます。
もはや余談になりますが、ここが語られるエンディングの文字はかなり高速で消えます。これまでのゲームテンポに慣れていたからなのか分かりませんが、読めるかどうかギリギリのラインになっている気がしました。危なく読解できずに終わるところだった。
49. 暴れんぼアリスちゃん
ジャンル | 作者 |
---|---|
プラットフォーマー | 創造神司&モンブラン |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
20分 | 1.0 | クリア |
良かった点
- ちょうど良い塩梅でギミックにバリエーションがありました
- ポップともダークともつかない良い世界観でした
気になった点
- ジャンプと文字送りボタンが同じなので、直前にジャンプ連打していると誤操作する可能性があります
レビュー
オーソドックスなプラットフォーマー
暴れんぼアリスちゃんは、ジャンプと攻撃を駆使してステージを攻略するオーソドックスなアクションゲームです。
敵を動物に変える攻撃を駆使して、障害を排除しながら各ステージを攻略していくことになります。
それぞれ異なるギミックが待ち構えるステージを安全に攻略していくためには、不意の被弾に耐えるための体力を増やしておくのが重要です。
枯れ木に触れて緑を蘇らせたり、敵を動物に変えたり、スコアアイテムを取得したりしてコツコツと得点を稼ぐと体力を増やすことができるため、上手く活用して進めていきましょう。
立ちはだかる障害を動物に変え、ジャンプで足場を乗り継いでいき、プラットフォーマーを攻略してみませんか。
感想
アーケードみのあるオーソドックスなアクションでした。リトライあるけど。ただ、リトライすると挑戦時より実質の体力が減るので、リトライがあるからと言って簡単になっているわけでないあたりが良い調整です。
枯れ木に花を咲かせ、敵を動物化して得点を稼ぎつつ進んでいく見た目も良くて、ポップかつ見目にも良いのでつい枯れているポイントへ行きたくなります。その上で、そういう不思議な世界観なのかと思っていたら、2話目あたりでまあまあ怖い能力であることが分かるのも良いです。中盤以降は普通に家のものを壊すこともあるので、だいぶ破壊的なイメージに遷移しました。まあ暴れんぼですしね。
アクションステージとしてのギミックも過不足なく揃っており、水中ステージや登りくるマグマステージなど、バリエーションもきちんと整備されています。この規模のアクションゲームとして、最後まで楽しめるようにギミックが配されている印象でした。
ただ、移動床に関してはちょうど良く乗ると引っかかる不具合があり、そのまま落ちもしないせいで火山面で被弾を招き、ギリギリノーコンできなかったのは悔やまれます。あとちょっと早く乗れば多分行けた。
個人的に気になっているのはジャンプと文字送りが同じボタンに割り当てられていたことで、これのせいで魔王戦前のイベントを完全に見逃しました。直前のステージでジャンプ連打していたので。
なお、ボスは割と強いんですが、体力さえあれば結構ごり押しが通じます。むしろ、体力があるなら下手に避けるよりごり押しの方が楽な気もしています。そういう意味でも、道中で出来る限り被弾せずに体力を増やすのはかなり重要で、ここができるとだいぶ楽になります。どんどん寄り道すると楽になるのはありがたい。
ちなみに、リザルトは以下です。それにしてもごり押しに頼り過ぎなんじゃなかろうか。
リザルト |
---|
50. POV
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | Tomgames |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
8時間30分 | 1.3 | クリア |
良かった点
- 世界観とシナリオが良かったです
- 各イベントにより先が気になる展開になっています
- 世界観に合ったグラフィックにより各シーンが印象に残るものとなっていました
気になった点
- 進行不能が散在し、軽微なバグも数多く存在します
- メインルート以外に寄り道することがかなり危険な設計となっていました
レビュー
奇跡の視座
POVは、少年少女の冒険譚を綴るRPGです。
システムそのものはオーソドックスなRPGの形式を取っており、雑魚やボスとの戦闘を乗り越えつつ世界を巡り、シナリオを進めていくことになります。
特徴的なのはその世界観とシナリオであり、様々なイベントの連なりで構成されていく物語の中で、それぞれのキャラクターの懸命な生が描かれていくことになります。物語の中で描かれる様々なシーンは印象的なグラフィックとともに心に残るものとなっており、そこから惹起する感情がゲームを前進させる強いモチベーションとなることは疑いありません。
各々のキャラクターがどういった運命を辿るのかを、その目で見届けていきましょう。
ただし、公平のために記しておくと、このゲームには多くのAバグが存在しています。ゲームを進める上では、こまめにスロットを分けてセーブすることを強く推奨します。
プレイヤーは、そういった進行不能さえも障害の一つとしてやる気の薪にくべて、物語のその先へと足を進めていくことになります。メインルートそれ自体にAバグは無いので、エンディングに至る道筋は開かれています。クリアを目指して、数多の障害を乗り越えていきましょう。
不具合ですらそのゲーム体験に組み込まれたような、特殊なプレイフィールを得ることのできる作品となっています。
刺さる人にはめった刺しになる作品とも言えるので、気になった方は是非プレイしてみてください。
感想
このゲームの感想を書くのはまあまあ難しく、言葉の過不足で誤解を与えることが予想されるので、予めこの感想を書いている筆者のスタンスを明示しておこうと思います。
POVというゲーム自体は間違いなく個人的には好きなゲームであり、世界観やシナリオ、グラフィックによる表現が好きな作品でした。一方で、数多の不具合、戦闘バランスのピーキーさ、テキストの不足感といった点は間違いなく存在し、ゲーム体験そのものは決して良いものとは言えません。
筆者はそれらのデメリットを背負ってなお最後までやる価値のあるゲームであったと感じていますが、万人がそう感じるゲームではないだろうとも思っています。そのぐらいのスタンスです。
まず、色々な意味で避けては通れない不具合の話をします。
進行不能にどこで遭遇するか分からず、軽微なバグは後半には気にならなくなるというレベルで散在しています。特にかなりの数存在する進行不能は遭遇するな、というのが不可能なレベルです。
例えば、最初のマップで落ちている棒っ切れを拾うと進行不能になります。この時、武器屋前のおばあさんが消えたり、本来存在しないはずのその先のイベントの一部が動いたところから推察するに、恐らくイベントフラグが書き換わっているのでしょう。状況からの推測ですが、恐らく閉じ込められるイベントの時に拾った木をマップ上にコピペで置いたんじゃないかと思います。
そして、このレベルの進行不能は枚挙に暇がありません。回想で行くべき場所を通り過ぎて孤児院に行けば戻れなくなり、もう一度同じダンジョンに入ると戻れずにシナリオ上は先に位置するマップに入れるようになります。
探索しているだけで意図せず不具合を踏むので、いわんや作中のワープ機能は怖くて使えません。戻る必要があるケースが少ないので、実際料理屋に行くつもりが無いなら不要ではあります。
この進行不能を回避する術は、とにかくセーブを分けるしかありませんでした。プレイ時間5時間30分に対し、セーブは160に及びました。ほとんど2分に1回はセーブしているペースです。
また、進行不能にはならないけど致命的なバグというのもあり、一番厳しいのは料理屋で注文を途中キャンセルすると、以降無限に人数を聞かれるようになるものです。実質的に料理屋が封じられるので、場合によっては進行不能になるよりも辛いです。筆者がこれに遭遇した時は、迷いなくその手前のセーブデータに戻しました。やはりセーブデータをたくさん残すのは大事。
軽微な範囲ではマップチップの通行判定だとか、メダルゲームが遊べないとか、エルの髪が急に長くなるとか、隊列にエルが二人現れるとか、アイがHP0で出てきて倒されるとか、枚挙に暇がありません。終盤は進行不能以外は凪の気持ちで受け入れていました。
ただし、ここまで不具合が山積されていてなお、止めるという選択肢が微塵も脳裏を過らなかったのもまた事実となります。この飽くなきモチベーションを支えていたのは、まずもって世界観の良さであり、シナリオというかその雰囲気あるいは空気感ないしは関係性のセンスとも言うべき物語性によるものでした。これが強い誘引性を持っていたがために、1日がかりで夜更かししてまでクリアしています。
加えて、その強い世界観による牽引力もさることながら、進行不能を含めたバグの解決それ自体が一種のゲーム性まで孕んでしまっていたという点もまた、振り返ってみれば隠れたモチベーションになっていた気もします。
過去のウディコンに「鶏は音を置き去りにした」という作品があったんですが、これは恐らく不具合によってプレイヤーが透明化していて、その状態でイライラ棒をするという妙な斬新さが創出された作品となっていました。
POVもこれに近いところがあり、余りにも存在する進行不能と軽微なバグによって、それに遭遇したら原因を取り除いて解決させる別種の遊びが含有されるようなゲーム性へと変異しているところがあります。いつどこでAバグに遭遇するか分からない緊張感や、どこまでを軽微なバグとして処理するかの判断、そして何より不具合に遭遇した時に想定ルートを逆算していく行為など、もはや不具合無しでは語れないレベルでゲーム体験が構成されています。
ゲームというのは一般に障害を乗り越える構成になっていることが多く、アクションゲームなら難度の高いステージ構成やユニークなボス、RPGなら複雑なダンジョンや強敵との戦闘、パズルゲームなら頭を悩ませるパズルなど、ゲーム性に応じたその障害をプレイヤーの創意工夫で乗り切り、カタルシスを得るようなものとなっています。
翻ってPOVという作品においては、乗り越えるべき障害の一つとして間違いなく進行不能を含むAバグが存在し、それらを乗り切っていかにメインルートに戻していくかという体験が得られます。すなわち、バグを乗り越えるというややメタな障害まで体験に組み込まれた形となっており、それにカタルシスを得られるプレイヤーであればあるほど、のめり込みやすいゲームへと変異しているというものになっています。
ここで強調しておきたいのは、とはいえそれは障害を増やしているに過ぎないということです。障害だけを増やしても、本来はゲーム的に面倒になるだけです。この作品において障害が増えてもなお先に進ませる力として働いていたのは、やはり先の展開を見たくなる世界観の良さ、キャラクターの良さであり、その力なくしては変異したそのゲーム性自体が破綻していたに違いありません。
世界の強度が充分にあったがゆえに、そこに何が乗せられても耐えていた節があります。凄い絶妙なバランスで完成されたゲームと言えます。
ちなみに、この不具合で構成されたようなゲーム性については、意図的にやっているのかという疑いも若干抱いてはいたんですが、クリアした現在は多分そうではないんだろうなと結論付けています。
根拠の一つとしては、前述した棒っ切れの不具合のように、ミスのやり方がある程度は想像のつくものが多いところです。どういう設計でそうなったのかがなんとなく理解できます。
もう一つは、これは邪推になるので話半分にはなりますが、絵のタッチからなんとなくwisdom of historyの方じゃないかと思っているためです。 ゲームに存在している進行不能の性質も近いところがあります。ちょっと寄り道すると進行不能があるものの、ちゃんとメインルートをまっすぐ進む分にはAバグには遭遇しない感じがまさにそんな印象です。そうだとすると、この作品の不具合の性質もまたなんとなくそういうものなんだなと思うことができます。
閑話休題。続いては、その世界についての話、あるいはシナリオについての話もしておきます。
大前提として、不具合調査中に得られた情報から推察するに、恐らくマルチエンドっぽいし、いくつか分岐がありそうな気配は感じており、その中で筆者が選んだ選択はいくつかあるであろうエンディングの一つに過ぎないということは付記しておきます。
このゲームにおける世界の良さは、世界観そのものというよりも、局所的なイベントのセンスの良さに集約されるものであると個人的には思っています。
それはボスとして選ぶ対象の良さであったり、対立する対象の描き方の対比の上手さであったり、開示する情報から生まれる余白であったり、様々なところに現れています。余白が余りに広大なので、そこそこ多くのシーンでテキストの不足として表出してしまうことはありますが、それを補って余りあるほどに各キャラクターの心情への解釈の幅として機能していました。
大筋として読んだ時のシナリオの良さはあるとは思いますが、それ以上に部分部分におけるやりたいことの詰め込み方と、そこで惹起される感情の高まりに重きが置かれているような印象であり、それ故に常に先が気になる展開を作り上げられています。これが先述したゲーム性との相性が良いという点もまた面白いところです。
その分、特に学校編に顕著なんですが、唐突にメインシナリオからだいぶ外れたところに物語が動くことも多々あります。しかも結構尺を取る。リアル魔王復活物語をやることになるとは思いませんでした。
シナリオの都合以上に、そこでやりたいことを表現し、そこでやりたいことを全力でやるスタイルではあるので、整合性を何よりも重視するタイプのプレイヤーは恐らく相性は悪いと思います。ただ、整合性以上に場面のパワーを重視するタイプだと相性は良いと思います。筆者は前者と後者のハイブリッドなので、微妙な面持ちのまま、とはいえ面白いから結論としてはアリだなあと思いながらプレイしていました。
なお、シナリオ面で明確に厳しいところを上げると、前述した不具合の多さがゆえに、特殊な演出と不具合の区別がつきにくいところがあります。
例えば、筆者の好きな演出の一つとして、勇者と戦っていると途中でお面小僧に切り替わる演出があるんですが、これは最初不具合なんじゃないかと疑っていました。現在は、色々解釈した上で、意図的な演出だろうと結論付けています。
ほかにも、唐突にアイが合流したかと思ったら変装だった、あたりも顔グラフィックの不具合を見慣れていたせいでスルーしかけました。この辺は、シナリオを楽しむ上で明確にノイズになっていて、惜しいところではあります。
とはいえ、その辺の様々な点を差し引いてなお、要所における演出の良さ、内容の良さ、キャラクターの良さは間違いなく良いものであり、トータルではとても美しいものとなっているように感じています。
前述の通り解釈の幅はとても広いので、それぞれに込められた意味だとか、それぞれのキャラクターが持っていた感情や思考はある程度状況を咀嚼して自分なりに解釈を進めていかないといけない部分はありますが、それをやればちゃんと味が出るような設計になっています。
また、そのシナリオをより美しく際立たせているのは、要所における絵本のような優しさと温かみのあるグラフィックにあります。
先述した通り、イベントの構成や登場人物、その時の状況や心情が極めて優れている中、それをより高みへと彩る一枚絵の力によってさらに良いものへと昇華させていました。場面によっては宗教画みたいな美しさがあります。
表現が難しいので陳腐な表現を用いると、とにかくエモいです。何故そうなったのか、それがどういう意味を持つか、ということをいったん思考の蚊帳の外に置かせしめ、ただ感情によってその場面の良さを理解させる力に溢れています。そこら辺の考察は、そのイベントを終えた後にゆっくりやれば良いですからね。
グラフィックについては合成や料理についても雰囲気が出ていて良く、後者は今ウディコンの飯テロ作品の一つとなっている部分ではあるんですが、どちらも人によってはシステム面では余り使わないかもしれないのは勿体ないところです。
前者は仕様の不透明さとレシピなどのシステムの分かりにくさ、後者は前述した不具合もあるためです。後者に関しては、不具合にさえ遭遇しなければ貴重な回復手段なので、人によっては多用することになると思います。
続いて、RPGとして戦闘面にも触れておきます。
まずは前述した通り、ボスとして選択する対象のチョイスが凄く良いため、各節目での戦いは極めて良いコンディションで挑むことができます。RPGにおけるボス戦が総合芸術として要の存在だとするならば、POVにおけるボス戦はその中でも高い位置エネルギーを持った存在として機能していると言えます。
一方で、戦闘バランスそれ自体はかなりピーキーなものとなっており、戦闘を楽しむものと考えるとやや難しいところはあります。
基本的にはやけどにして防御と回復に専念するゲームだと気付くと、やや攻略しやすくなります。その一方で、相手の行動如何や状態異常によっては壊滅的被害を被ることになるパターンも数多くあるため、ある程度までは運ゲーの様相もあります。
雑魚との戦いについてもそういった面は否めず、一部の雑魚に至ってはめちゃくちゃ強力な全体攻撃を連発してくるタイプすらいます。バランスはだいぶ尖っていると言って良いでしょう。
ただし、だからと言って運に全てを任せるかというとそうでもなく、ある程度は頑張った上で天命に任せるような戦闘スタイルが要求されていて、麻雀とかポーカーをやっているプレイ感に近いものがありました。人事尽くしたら天命を待つのみです。
ラスボスについても例外ではなく、雷撃が連続で飛んできた時はどうしようもありません。そうなる前に可能なことを全てやっておいて、決着を早期に付けるしかありませんでした。
最後に、細かいところを拾って感想を終わろうと思います。
文章に組み込むのも難しいものを集めてしまおうとしているので、文脈はありませんがご容赦ください。
まず、移動可能範囲について。
移動可能な範囲がそれほど区切られていないというのが、このゲームにおける進行不能を生み出している要因の一つであることはほぼ間違いありません。その時点で本来行けない場所に対して特にブロックがされていないので、入ってしまうと進行不能、というパターンが非常に多いです。たまにブロックされている場合もありますが、多くの場合は素通り可能なので、メインルートを察する力が求められてしまいます。
ただ、これのおかげで、自分の部屋に帰って寝ようかなとしている時に、姉の部屋に入って物色する主人公だとか、窓から脱出したイベントの後に正面玄関から再入城する主人公だとか、妙な行動が取れる面白みも同時にあります。
中盤以降はこういう遊び方をしていると危険なことが分かっていたのでたまにしかやりませんでしたが、色々できることそれ自体は面白いので難しいところだなと思っていました。
調合について。
色々と拾ったものを有効活用できるシステム自体は面白く、戦闘においてもそこそこ使えるものを量産できました。一方で、レシピを使うと何をどれくらい消費したのかがブラックボックスになって分からないこと、中盤以降くらいでないとアイテムそのものの優位性も余りないこと、拾うために彷徨っている間に進行不能を引く恐怖と戦わないといけないこと、あたりの理由で、十全には活用できませんでした。
寄り道に対してメリットを与えるものとしては結構面白い仕組みで、実際に序盤はやたら拾いまくっていたので、ひしの実は700個以上抱えていました。せめてレシピがもう少し透明に使えたら、積極的に使えていたかもしれません。
学校パートについて。
前段でも若干触れているんですが、かなり異質なパートです。そして、このゲームで恐らく一番メインルートを探るのが難しいパートでもあります。
目標が特別どこにも記録されず、しばらく彷徨っていると何をするべきだったかを忘れがちなので、とりあえず目標っぽいものが示されたらメモっておくのが重要なパートでもありました。
ここをスムーズに突破できないとモチベーションが下がるのは良く分かるので、ある意味このゲームでの一番の関門でもあります。ここだけは攻略チャートをネタバレしてあげた方が親切かもしれません。
カルネーについて。
提示された情報のどこまでを信じ、どこまでを疑うかによって立ち位置の変わるキャラクターです。POVの解釈の話をする場合に、最も濃い味がする部分だと個人的には思っています。
アイの記憶のトラウマを巡るあたりまで信じるとかなり意味が変わってくる一方で、ほぼ全ての前提を疑うこともできるので、個々人によってパーソナリティからその存在まで多様に揺れ動きうる存在でした。
個人的にはエンディングの行く末も考慮した上で、おおむね中間択くらいの解釈にとどめています。ただ、エンディングがマルチっぽいところも加味すると、もしかしたらそこの印象でも変わりうるのかもしれません。キャラクターとして登場するシーンは数えるほどしかない割に、解釈の上では結構重要な立ち位置にいて面白いです。
終盤におけるエルの選択肢について。
同コンテスト中のInfisに近いですが、より悪質な選択肢の表示方法をしてきます。そして、それを惹起するようなシーンすらあります。
個人的に一番良い意味で性格が悪いなと思ったのは後を追わせる選択肢であり、エルというキャラクター性も同時に見せている良い設計だなと感じていました。筆者はノータイムでこの選択肢が出たおかげで、間違えて押してしまってリセットしています。そんなつもりじゃなかった。
感覚的には夜廻の最初のチュートリアルの指示に従った結果に近いものがあって、プレイヤーの意思のように見せかけたゲーム上の悪意という感じがして良いです。
ボスという存在について。
このゲームでは、ほとんどあらゆる味方がある場面においては敵としてボスの位置に収まっています。終盤にプレイアブルが交代する面も含め、これは意図的なものなんだろうなと考えていました。
この設計は全体的な関係性を複雑にし、ともすれば物語の解釈というかキャラクターの状況を分かりにくくする要因にさえ繋がっているところはありますが、それを差し引いても物語全体に深みをもたらしています。
敵対するということをもってそれぞれのキャラクターの関係性を整理し、それぞれの目的や決意を暗示させ、解釈の余白を広げていくことに成功しているように感じていました。
後は、単に作者さんの癖なのかもしれません。筆者としても、やっぱりかつての味方が何らかの理由により敵対して立ち向かわねばならない状況というのは好きなので、それでも充分に首肯できます。
まとめのような、総合的な話もしておきます。
前述した通り、この作品は全体を通して良いゲームだと感じており、あらゆる障害をクリアしてでも完遂まで進めさせる力のあるゲームであると思っています。その上で、それを万人がモチベーションを持って取り組めるかと言えば、これは難しいところであろうとも感じる作品です。
すなわち、シナリオや世界観が美しく、グラフィックも素晴らしい中で、システム全てが圧倒的なまでのピーキーさをもって構成された作品です。ここまでアンバランスな作品は初めてプレイしたかもしれません。
シナリオについても、余白を埋めよう、解釈しようというモチベーションがない限りは十全に楽しめるかは微妙なラインであり、何らかの要因でこのゲームを先行的に好きになっていない限りはそう感じるのも難しいかもしれません。
そういう意味でも、ウディコンという場でもなければ出会うことも遊ぶこともなかったであろう作品であることは疑いないので、この場で遊べて良かったなと感じています。果たして、ほかの場で出会って手に取って遊び切れたかというとはなはだ疑わしくはあります。
そして、プレイ時間について。
3時間で最速エンドに行けるかも結構怪しいとは思っています。筆者のプレイ時間的には、最初のエンディングまでにプレイ時間換算で4時間30分かかっています。
そして、実時間では6時間30分かかっていました。2時間はほぼデバッグしていました。寄り道無しでメインルートを突っ切ればギリギリ行けそうな気もしますが、ほぼ最速タイムなんじゃないでしょうか。特に学校パートが鬼門になると思います。
最終的には、実時間8時間30分、プレイ時間5時間30分で、全体の1/3近くは進行不能の回避やデバッグに費やしています。3時間から4時間で終わると思っていたら長引いてしまったので、だいぶ夜更かししました。お気を付けください。
余談としてレビューについても雑に記します。序論をいくつか書いて没にしたので、上記のレビューは素直なものになっています。せっかく書いたので、没にした文章をここに供養しておこうと思います。
偶然は遭遇もしくは邂逅であろうというのは九鬼の言であり、企図しないものの交わりの中にある虚ろな存在をこそ偶然と呼び得るのかもしれません。そうであるならば、POVが持つ様々な要素の交叉はその交わりをもって確かに強い意味と意志を生み出しており、そこから創出される偶然性を伴った体験は得難いものであると言えるでしょう。
ここに在る良さというものは、作品そのものが持つ良さの交叉によって発生したある種の偶然性の中で存在しているものでもあって、それは虚ろなものだから目的化して得られるようなものでない、あたりを言いたいんですが、何を言いたいのか良く分からなくなったので没になりました。言語化は難しい。
最後に繰り返す形になりますが、この感想はだいぶ書くのが難しいなと思いつつ、なんとか言語化したものになります。筆者自身、このゲームをどう批評して良いか分からないところがあるので、まとまりのない文章になってしまっていることは否めません。
ですが、POVという作品を遊ぶことでしか得られない栄養素は確かにあり、POVという世界からしか得られない旨味は間違いなく存在しているということ、この点だけは確証をもって断言できます。
つまり、トータルすればこのゲームを遊べて非常に良かったなという感想に落ち着くという点はご理解いただければと思います。ウディコンという場と出展頂いた作者さんに感謝。
51. 迷宮郷まよろば
ジャンル | 作者 |
---|---|
探索 | そぞろ豆腐 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 1.0.2 | 100%/100% |
良かった点
- 素晴らしい世界を尋常でない表現力と演出力で彩っていました
- 細部に至るまでの演出や設計が世界の輪郭を確かなものにしています
- モチーフのバリエーションが豊かで、常に新鮮味があります
- 素晴らしいグラフィックもさることながら、シチュエーションごとのサウンドもまた秀逸です
気になった点
- アクションパートがやや処理落ちのような印象を受けます
- そういった演出かもしれません
レビュー
見えるようにする芸術
探索における分岐した道に対するリワードの設定は、ゲームデザインにおける関心事の一つです。多くのケースでは、そこに宝箱のような分かりやすいメリットを配するか、エンカウントのようなリスクを付けることでバランスが取られています。
しかし、探索それ自体を主眼とするゲームにおいては例外もあり得ます。探索して得られたその景色、あるいはその体験そのものが価値を提供し得るのであれば、そこに何も配置せずとも意味が創出されるでしょう。
迷宮郷まよろば は、その圧倒的な表現力と演出力によって、あらゆる探索に価値を生み出し、遍く場所を巡る楽しさを作り出している作品と言えます。
この作品の基本的なゲームシステムは探索に強く依拠しており、世界各地を巡りつつ、おたからを拾い集めてゴールに辿り着くことができればクリアとなるものです。
おたからは各地に散在しているため、色々な場所を巡り、マップを探索していくことになるでしょう。その過程でちょっとした謎解きやアクション、あるいはギミックを使うこともあります。しかし、このゲームにおいてのそれらは様々な体験を演出せしめるフレーバーとしての性質が色濃く出ています。
何故ならば、このゲームの真髄は探索であり、それを強く誘引せしめる世界観の表現と演出であるからです。
その圧倒的な表現力により、プレイヤーはめくるめく世界を自由に回りつつ、おたからを探すために様々な場所を訪れてはその趣を楽しむことができるようになっています。時には、物質的には何も得ることのないエリアさえありますが、精神的な充足性によって充分に代替されています。
心の赴くままに色々な場所を巡り、まよろばの旅を楽しみましょう。
一度世界を旅して回ったとしても、全てを知り尽くせるわけではありません。
ちょっとした隠し要素があったり、細かい演出が隠れていたりします。世界を自由に彷徨い歩き、その表現に浴してはみませんか。
感想
表現力と演出力が突出して高いので、仮にただそれだけであったとしても遊ばせる力のある作品でした。もちろん、それだけではないので、より遊ばせるような作品でもあります。
ここまでの表現性能があれば、MandagonやEL NE RUEのような、ただ歩くだけのゲームに落とし込んでも充分に過ぎるレベルではあるんですが、ここに色んな体験も配してあるのが個人的には好きです。
最初に見た印象としては、ドット絵に圧倒的な情熱が傾けられたタイプのEastwardやらOwlboy系の作品かと思っていました。実際、一部マップにおけるドット絵の表現力は飛び抜けて高く、ただそれだけで体験になるレベルまで磨き込まれています。
しかし、実態はそれに限ったものではないというのも面白いポイントです。影の印影まで変わるような、印象の変化が各世界において発生していきます。あえてファンタジーな世界観ゆえに緩くまとめられた世界、ドット絵という方向ではなく美しく描かれた世界、赤いライティングを始めとした表現で彩る世界、多種多様な表現であらゆる方向から攻めてきます。引き出しが多い。
個人的に好きなポイントを話すとキリがないので詳しくは後述しますが、とりあえず海中パートのアクションが抜群に水中っぽさが出るのは良いポイントです。ちょくちょくおなかがすくマップもあります。なんで絵が上手い人は飯テロしてくるんだ。
アクションパートもそういった印象を変える一助を担っていて、ワープを活用すればあんまり頻繁に訪れるところでないのも含めて良い感じでした。ただ、処理落ちしているわけでは無さそうなのに、なんとなく処理落ちしているような動きをすることだけは気になっています。この感覚がどこから生まれたものなのかは、筆者にも分かりません。スクロールに違和感があるのかな。
また、個人的に最初に地図が手に入らない設計なのも好きではあります。ここは好みが分かれそうですが。
地図、もといガイドマップが手に入ると、一気におたから集めという目的のための探索になってしまいます。あそこにお宝があるから、ここの道をこう通って回収しに行こう、ここは何もないから適当に通り過ぎよう、みたいな感覚がどうしても付きまといがちです。
なので、特に序盤のうちはガイドマップなどは持たずに、周りを好きに見て回っては探索し、世界を存分に楽しめる方が好みでした。もっとも、それがある程度許されうるのは、このゲームが異常なまでにマップ全体に表現を行き渡らせており、どこに行っても、そしてそこにお宝が無かったとしても満足できる設計になっているためとも言えます。表現のパワーは偉大。
そして、この表現の密度というのはまよろばという作品の特徴の一つであって、この作品の満足感が総じて高い所以でもあると思っています。
探索ゲーム、かつ何かを集めるようにする場合、どうしても外れの道、あるいは意味のない道というのが生まれることになりがちです。ここは探索アドベンチャーの宿痾みたいなものです。
そこをこの作品は、何かユニークなオブジェクトを置いたり、圧倒的な表現を持つ作品を屹立させたりと、とにかくその演出と表現のパワーで補っています。おたからが無かったとしても、そのルートそのものが無駄になることはありません。何故なら、そこでしか見れないものがあるからです。
加えて、モチーフがどんどん様変わりしていくために、それぞれの表現に飽きが来ることもありません。常に歩き回っているだけで楽しい作品となっています。
また、表現の密度が高いおかげで、マップを広く錯覚するというのも面白いなと感じているところです。実際に探索のために歩き回ると分かるんですが、マップ全体は決して広すぎるというほどではなく、おたから探しに適度に歩ける程度に収まっています。しかし、画面の外にある無数のオブジェクトのせいなのか、バリエーションに富んだ表現の広がりのせいなのか、感覚的には世界はかなり広く感じることができます。
これもまた、余りにも詰め込まれた密度が高いことが成せる業の一つなのかもしれません。
それではせっかくなので、マップごとに好きなところでも話そうと思います。
まずは最初、このゲームの自己紹介とでも言うべき場所であり、一発でどういうゲームか分からされる場でもあります。蝉の声、風情ある街並み、そして神社と、全ての雰囲気が締まっています。個人的に好きなのは、この時点で隠し道があるところで、色々と探索をするようなプレイヤーはこの時点で、そういうゲームであるということも理解できるようになっています。
加えて、この探索要素にあえて何も与えないことにより、このゲームの方針もまた一目で了解できるものともなっています。このゲームにおける隠し要素とは、そういうものである、と分かります。
続いて、ちょっと抜けておもちゃ街道。ここでいきなり分岐があり得ます。探索を諸々していると、唐突に分岐が現れ、完全に未知の世界に放り出されるのが良いです。
一方で、探索をしなければ一本ルートのままである、というあたりも絶妙で、それほど探索をしないプレイヤーは特別迷うことなく進められるようにもなっています。
神社で見せたドット絵とその表現力から、こういった異世界的というかともすれば乱雑な世界へと遷移していくというのも良く、ここもまた一つの自己紹介となっています。このゲームは多様な世界を旅する作品である。
額縁回廊から地下水路。厳密にはここで筆者はワープを選択したので額縁回廊はスキップしたのですが、とりあえずマップの流れで話します。
途中にアクションパートが挟まることもあって、ここもまた印象がだいぶ変化していくところです。いきなり静かな空間と厳かで絵画のほかに何もない空間が出てきたと思ったら、すぐに曲調の良い地下水路に飛び出します。
この脈絡の無さが好きです。ここまで来れば、もうどの世界とどの世界が繋がっていようが、何の疑問にも思わなくなってきます。
また、アクション、扉選択、視界不良、と微妙にそのモチーフごとのオリジナリティが配合されているのも良く、それぞれが短いがゆえにある程度デメリットを負うようなものでも好意的に捉えることもできています。こういうステージが長いと厳しいけど、さっと終わってくれるので良い。
地下水路を抜けて、シャボンランドあるいは温泉郷まで。
ここで出てくるような縦に登っていくステージに代表されるように、頻繁に視点が変わっていくというのも面白く、また世界が多様であることをより強く感じる要因になっています。見下ろしのみならず、時にはカメラを引いたり、横スクロールアクションにしてみたり、あるいはノンフィールドにしてみたりと、その印象の変化をもってして探索に広がりを与えていました。
そして、この辺でワープを体験していなければ初めて分岐が発生します。ちょうど良いタイミングですね。
温泉郷もシャボンランドも地下水路との差別化が良く、それぞれ別方向で全く異なる印象を提供しています。
シャボンランドは後続のスイーツも含めたメルヘンな世界の方向性、温泉郷は序盤にあったような風情の構築と、それぞれ全く異なる世界が隣接していくことで、目くるめく世界の構成を見事に実現しています。
温泉郷で特に好きなのは光の表現です。フロートちゃんにかかる光も良いんですが、それ以外の装飾におけるライティングが綺麗で好きでした。後は入り口で待っていると手前を列車のようなものが通り過ぎていくような、細やかな演出も好きです。
シャボンランドからスイートストリート、そしてシャーベットタウンに至るルートは、これまでとは反対に、ある程度印象の統一されたルートともなっています。いずれも印象は微妙に変えているので、全く一緒というわけではありませんが、このゲームにおけるファンタジーというか不可思議なタイプの世界が連続して表現されています。
ここに限らず、序盤はある程度目くるめく変化を見せつつ、中盤以降はある程度エリアごとに特色を固めていくのも上手い設計です。
個人的にはスイートストリートが好きです。バームクーヘンでループする道なんかは、全くの無意味だけれど見目として面白いという、前述したような面白みが詰まっています。
また、奇妙な世界繋がりでは、ファミレスもあって、ここも好きです。筆者はスイーツよりこっちの方が飯テロでした。美味そうに過ぎませんか。
そして、ファミレスから続くきのこ、そしてそこから繋がるひまわりヶ丘は接続として好きなポイントです。
このメルヘン地帯を抜けると、一気に青空を幻視するような世界へと開けます。このギャップが余りにも良い。一見青い空が見えないはずなのに、ここまで抜けるような青空を感じさせる表現には脱帽です。水たまりに映る青空で、この青空が幻でないことを知るのも良い演出です。
そして、自然豊かな滝や夏の青空です。晴れやかさが凄い。ここにはおたからが全くないことは知ってたんですが、それでも来てみたし、来た方が良い場所です。道中のビデオ表現も良い味を出していて、適度に緩急がついています。
そして、ここから地獄に繋がります。一番爽やかに見えるところから、一番おどろおどろしいところに繋がっています。
そりゃこの表現力でそういう方に振れば恐ろしいよね、というものであり、根源的な恐怖の一端に触れられます。
地獄で個人的に好きなのは、そのBGMであり、かつその使い方です。このBGMのおかげで、恐怖というか背中がぞわぞわするような不快感が際立っていました。後は、一度入ったからには戻れない世界であるあたりも良いですね。
翻って、キノコと反対側には火山があります。
ここで一番感動したのは、何と言っても近付くごとに赤く照らされるフロートちゃんです。ウディタにライティングなんてないのに、何故かライティングをやっています。キャラチップをいちいち差し替えているってことですか。
また、ここで手前に木が見える縦方向マップ、提灯と瓦造り、というようなどこかで見た、あるいは見ることになる風景が織り交ぜられているのも印象的です。このあたりの、各モチーフの印象を変えつつ、どこかでリフレインするようなマップ構造が素晴らしいところになります。
少し戻して、スイートストリートの反対側は夜桜公園です。この間に、いずれとも異なるタッチのマップが差し挟まっているというのも面白いポイントです。ここからシームレスに繋がっても良いところを、あえて一気に断絶した世界を挟むことで、両者の境界がより際立って見えます。
話を夜桜公園に戻すと、夜桜と満月です。魔性のコラボレーションですね。再三言ってきた、その演出力というか表現力の高さも相まって、ここの情緒はもうえらいことになっています。
ここの好きなところは当然そのエモさとしか言いようがない空気感ではあるんですが、細かいところに言及するなら反射率の違いです。木目と水面の細かな反映の差が好き。こういう細かいところの徹底が、そういった空気感を生んでいるというところがあります。
そして、菜ノ花小路を抜けて、西日の園です。
ここに関しては、時間の経過が示されているという面が好きです。夜桜から夕方、そして西日です。この時間感覚の違いが、この世界の不可思議さを十全に表現しています。夕方と西日にそれほど違いは無いので、どこまで意図したものなのかは分かりませんが。
夜桜から来た場合は時間を逆行する摂理に反した不可思議さも味わえるので、筆者個人としてはこちらをお勧めしたいです。もっとも、西日の園側から侵入するケースであっても、時間経過そのものを感じるという体験を得ることが可能ではあります。
ここから、迷いの森とゴーストマンションがあります。
こちらは地獄とはまた異なる雰囲気の方のホラーとなっています。ホラーという表現の引き出しも複数あるわけですね。
火山や地獄と並ぶ行き止まりの設計となっており、三者三様にその空気感が異なるのが面白いところです。どこも共通して、それほど明るい印象じゃないというのがあるんでしょうか。
なお、後述する竜宮城も性質は近いんですが、微妙に分岐点でもあるので個人的にはこの分類には含めていません。
またちょっと戻して、シャーベットタウンから星の湖へと繋がり、龍ノ宮へと繋がります。また、雪の迷路を経ることでも到達できます。前者だとほとんど通過点ですが。
星の湖は夜桜公園のリフレインとして良いです。先述で反射の演出が好きと言ったのは、ここでの違いも楽しめるからというのも理由になっています。
また、雪の迷路はここまでの探索形式から全く異なるものに変化するのが面白く、中間点での奇のてらい方として完璧でした。
そして、龍ノ宮ですが、先述した通り海中パートの水中っぽさが良いです。ちょっとだけ動けること、モーションが異なること、そのままいると沈んでいくこと、とにかく細かいことの積み重ねで水中っぽさを上手く表現しています。そして、この水中パート、登場機会が限定されています。これだけちゃんと作っているのに、惜しげもなく限定的に投入してくるというのが凄い。思いついたアイデアの宝石箱という感じがします。
圧倒的なドット絵のパワーや、ライティングを含めた絵作りの上手さのみならず、このような細かいところの配慮こそがまよろばという世界を美しく描き出している側面があるので、この辺の工夫は好きです。
そして最後にある竜宮城の行き止まりは、この作品だからできることの煮凝りとなっています。おたからも無く、ただただ梯子を上っていくだけでありながら、その表現の力だけで推進されてしまいます。
話を戻して、龍ノ宮からは最後へと至るプラネタリウムに接続します。
ここについても、宇宙という新たなモチーフでありつつ、キノコや水晶のような既視感のあるデザインも配し、世界に融和させています。重ね重ね、このあたりの構造が上手いです。
そしてゴールから、最初の街へとループ構造となって完了です。筆者は最初の探索時にこのルートを見つけており、最後に綺麗に接続してとてもすっきりしたことを記憶しています。
このように、ある程度分岐はシンプルで、各マップについてもそれほど広くないので、おたからを集めるのはそれほど難しくはありません。地図と見比べていけば、それほど苦労せずに集められます。
ただ、分かりやすいチェックリストが用意されているわけではないので、収集箇所を朧気に覚えておいた方が、ヒントと突き合わせて特定しやすい面はあります。できるだけ一日の記憶が鮮明なうちに終わらせるのが得策だろうとは思います。
筆者はクリア時に子供部屋が残ったくらいで、ショートカットは全て開通し、それ以外もおおむね完了していました。探索好きなら大体そうなりそうです。
子供部屋についても、ある場所は大体予測がつく上、地図からもそれっぽいものを感じ取れるので、チェックリストコンプリートについてもさほど難しいものではないと思います。
もっとも、あんまり気負わずに、色々見て回るのが一番楽しいですが。
とにかく全体を通してずっと表現力の暴力に晒される作品だったと言えます。しかもバリエーションの引き出しまで凄まじいので、常に驚きをもって世界を巡っていくこともできるようになっています。
もし、このゲームに唯一の欠点があるとすれば、サムネイルを親指の爪というファイル名で同梱しているくらいだと思います。ホラーゲームかと思った。
52. 記憶のあらいかた
ジャンル | 作者 |
---|---|
メタパズルADV | みやの |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
20分 | 1.0相当 | クリア |
良かった点
- ボイスが極めて有効に活用されていました
- キャラクターの個性が際立っています
- インパクトのある作品でした
気になった点
- 特にありません
レビュー
天下無双のインパクト
何も説明を受けずに始めた方が良いゲームというのは確実に存在し、この作品はそれに属するものとなっています。
もしも体験を損なうことなく、ゲームを十全に楽しみたいのであれば、以下の文章は読まずにそのままプレイすることを強くお勧めします。
記憶のあらいかたは、フォルダを活用した謎解きを行うノベルゲームです。
また、その謎解きの設計はパズルにも近く、シナリオの構成はアドベンチャーゲーム的でもあります。
プレイヤーはそれぞれのフォルダを上手く操作していくことで、個性的なキャラクターとの交流を図ることになります。
一癖も二癖もある特徴的なキャラクターに対し、適切な操作を行ってシナリオを進めていきましょう。時には記憶を消したり、入れ替えたりといった行為を通して、上手くコミュニケーションを取っていく必要が出てくるでしょう。
そうしたゲームの設計はパズルのような面白さを有しています。しかし、やはりこの作品の圧巻は「作者がヒロインです(天下無双)」と注意書きされるほどのインパクトです。
そのボイスでより強調され、よりメタに飛び出してくるキャラクター性の強さにより、短いプレイ時間の中でさえ絶大な印象を残すこと疑いありません。
ぜひともプレイして、その衝撃を味わってみてください。
感想
この作品は完全に好みなので、割と得点を意識的に抑えるか悩んだんですが、好みでもまあ面白いだろうということでそんなに遠慮はしていません。所詮主観ですからね。
個人的には短編の中では水底の記憶と並んで1位です。印象に残る度合いなら、全作品を通してもトップクラスかもしれません。
なお、以下の感想はかなり大きくネタバレするので、まだプレイしていない方はそもそも読んでいないとは思いますが、読まないことを推奨します。面白いので、まずは遊んでみてください。
とりあえずボイスの話をしないとこの作品の良さを十全に語れないので、まずボイスの話をします。
ボイスが良いです。やれば分かります。声質というか表現というか、ちゃんとキャラクターごとにその色を分けていて、どうやっているんだろうなあと思っていたら作者ボイスと書いてあって驚きました。上手すぎないですか。
作者がボイス担当、作者がヒロインです(天下無双)の言葉通り、真に天下無双の設計をしています。すごい。
ゲーム内の謎解きについてはそれほど難しくはなく、メタ的な面白さが担保されているタイプです。
その謎解きの設計もちょうど良く、みーちゃまが何が起きるのかを示し、ゴールの提示役として機能した上で、みーさまが別ルートにヒントを残し、みーさんは全探査してないことを確認した上で思考を巡らせる必要があります。三者が三様の役割を当てられたパズルとして設計されています。パズルとして綺麗ですね。
個人的には、みーさんの謎解きが好きです。
シナリオは個人的には若干解釈に惑うところがあれど、おおむね楽しむ分には問題ないようになっています。
はじめ、あるいは割と終盤まで、そもそも受け入れられないなどの話があったので、ゲーム内存在から第四の壁を示した話なのかと思っていて、外注の一枚絵あたりの言い方がその示唆なのかなと感じていました。ただ、最後のやり取りを鑑みるとその辺も少し怪しく、好きに解釈して良さそうな気配を感じています。
また、各キャラクターの個性が立っているのも好きなところです。これは、半分くらいはセンテンスのセンスで構成されていますが、もう半分くらいはボイスの力じゃないかなと感じています。声が持つ力の偉大さを実感しました。
その強烈な印象は他の追随を一切許さないレベルであり、このコンテストにキャラクター部門があれば一等賞に燦然と輝く域にいます。誰が一等賞かは議論の余地があるかもしれません。何なら作者さんなのかもしれない。
また、個人的に面白いと思った表現として、ボイスを付けることで漢字の読み方に突っ込みを入れるメタ表現があります。台本すら自由なんですね、このゲーム。
提示される文字それ自体を否定することで、このゲームのそういう自由奔放さや、メタっぽさがかなり強く印象付けられるので、システム面でも割と好きな表現です。一発でそういうゲームであるということが分からされる感じがあります。
なお、上記で示したジャンルは色々悩んだ結果、割とえいやの気持ちで決めたものです。メタっぽいけどメタではない気もしていますし、パズルって程パズルでもない気もしますし、かといってヴィジュアルノベルは完全に違います。何と言えば過不足なく印象が伝わるのか分かりません。語彙力が無い。
全体を通し、やった時間こそ短いながら、強く印象に残る作品でした。フルボイス、ファイル操作を伴うメタゲーム、変に個性的なキャラクターと間違いなくおなべのこげになるゲームです。
20分程度のゲームプレイ時間だったとは思えないほどに密度の濃い体験ができるのでお勧めしたいんですが、説明するとネタバレに抵触するので難しいです。魔王復活物語といい、面白いのに説明できないゲームはだいぶもどかしい。
53. 通り雨
ジャンル | 作者 |
---|---|
探索ADV | いのせんとわーるど |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 1.0相当 | true/normal |
良かった点
- マップチップの使い方が斬新でした
気になった点
- 不具合のためか終始無音で進みます
- 安定しないイベント挙動が散見されます
- 隠し場所のヒントが薄く、ほぼ全探索を強要するゲーム性となっていました
レビュー
洋館もの
通り雨は、洋館を舞台とした探索アドベンチャーです。
洋館の中をくまなく探索し、その脱出を目指すものとなります。
洋館の中にはいくつかの謎解きとアイテムが散りばめられており、上手くそれらを解き明かし、見つけていき探索範囲を広げていくことになります。
そうして洋館を彷徨いながら謎を解き、様々な部屋に入れるようになるにつれ、物語は終わりへと近付きます。
結末は2種類あり、それまでの行動如何によって分岐します。どういった結末を迎えるか見届けましょう。
感想
洋館ものです。洋館はそこまで広くないので、短編のラインに収まっていますが。
全体的に謎解きと探索メインで、探索要素は割とノーヒントです。謎解き要素はちょっとミスリードっぽい台詞回しというかイベントフラグの立て方があるんですが、それを除けばある程度解きやすくなっていました。
個人的にはマップチップの使い方が面白いなと感じていて、テーブルクロスに水を張ってお風呂に見立てたり、垂れ幕を垂らして椅子の後ろ側っぽく見せたりしています。その発想はなかった。慧眼ですね。
なお、作者さんの制作環境の都合上、不具合が解消できないためか、そこそこ不具合や不親切な仕様が埋まっています。
クリアには支障がそんなにないんですが、ちょくちょく引っかかったり緑帯に遭遇することにはなります。
また、ヒント会話周りのフラグ管理も特になされていないので、謎解きの片割れを見ていなくても会話が起動します。分からない謎解きが出てきた場合は飛ばすのがお勧めです。
シナリオについては、エンディング分岐はなんとなく分かってはいますが、カセットテープ無しでもtrueに行けるのは意外でした。割と緩い。
一応、おおむね主人公を中心に物語が展開していくので、友人が割と空気になっているのは気になりました。語る相手として用意されたような印象を受けます。館もののホラーならもう少しひどい目に遭うかと思っていましたが、よく考えたらこのゲームはホラーじゃありませんでした。さもありなん。
54. 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~
ジャンル | 作者 |
---|---|
闘技場育成シミュレーション | カザ&ソロー |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
30分 | 1.08 | 腕っぷしEND |
良かった点
- 成長のシステムの塩梅が良いです
- 自由度、制約、イベント性のどれもがバランス良く組み立てられています
- 主人公のキャラが良かったです
気になった点
- 特にありません
レビュー
自由気ままに鍛錬を積もう
放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~ は、自由に育成し戦闘に勝利していくシミュレーション的なゲームです。
訓練やイベントを通じて能力値などを強化していき、徐々に強くなる敵に勝利を収めていくことを目的としています。
プレイヤーが主にやることは試合までの間に訓練を選択し、ステータスを育成していくことです。
筋トレをすれば攻撃力が上がり、ダッシュの訓練なら敏捷が上がり、イメトレをすれば防御力などが上がっていきます。自分の伸ばしたい方向にステータスを育成していきましょう。もちろん、満遍なく上げていくという手もあり得ます。
また、日数の経過や会話に応じて起こるイベントを通じて、ステータス上昇などの恩恵を得ることもあります。イベントは積極的に起こしていきましょう。
そうして一定日数が経過したら、育成したステータスを武器として戦闘に挑むことになります。
戦闘は攻撃と防御から成るシンプルなシステムとなっており、防御はHPの回復を兼ねています。高い攻撃力を活かして速攻で決めたり、防御を厚めにして持久戦に持ち込んだりと、育成に応じて戦略は多様に広がります。育成の方向と、敵の性質に応じて柔軟にバランスを変えていきましょう。
様々な育成方針で戦いを楽しめる、良質なバランスを享受することのできる作品となっています。
天然なようでいて頼りになる主人公と周りのキャラクターの掛け合いを楽しみつつ、自分なりの育成方針を武器に次々と立ち塞がる敵をなぎ倒していきましょう。
感想
きちんとデザインされた短編という印象を受ける作品です。勢いのままに作られる短編も良いんですが、バランスや設計がシステムとして完成されている短編もまた良いので、この作品も良い作品です。
中でも、割とカスタマイズ要素が強めで、その枠組みの中で筆者はピーキーに調整したつもりなんですが、かなり良い勝負になり続けるあたりが特に凄いなと思っています。作者さんの掌の上にいる。
まずは、クリア時の進め方というかビルドに触れておきます。
筆者は攻撃回数を重点的に上げて、蹴り倒すビルドにしていました。命中率はある程度ブートの薬で担保しつつ、とにかく蹴りを進化させることで圧倒的な攻撃力をもって戦える方針です。
序盤こそ命中率と攻撃回数の運ゲーっぽくなりますが、割とビルドが安定してくる中盤はやや危ない場面がありつつも上手く切り抜けられる程度には強くなります。最後の二戦に至っては、防御コマンドを押すことなく突破できています。火力は正義。
ほかのパラメータもある程度は振っており、状態耐性や回復力も後のために上げていたところはあったんですが、状態異常系統の敵の初撃を食らってしまったので、あんまり意味は無かったかもしれません。
ただ、HPと回復力をセットで上げようとすると勝手に状態耐性も上がっていくので、気休めというかおまけくらいに思うことはできます。これで状態耐性だけ重点的にポイントを割り振る仕組みなら無駄になったなと思うところですが、そもそも総合的に上げているので、あんまり意味無かったなと思う程度で済んでいます。システム設計の妙です。
そうして得られたリザルトは以下になります。
上述の通り、防御力の4倍近い攻撃力、パンチの5倍のキック数、明らかに少ない防御回数あたりが特徴的です。序盤のうちは手探りだったのでパンチを使うなどしていたこともありました。
なお、このやり方はHPで攻撃を受ける想定のビルドなので、HPがある程度高くないと破綻します。そういう意味で、看守と会話し続けて差し入れてもらわなければ危なかったかもしれません。看守がMVPかもしれない。
リザルト |
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閑話休題。このあたり、シミュレーション内容に応じてプレイヤーの好きなプレイングを選べるのが良く、自分の得意あるいはやりたい構築で戦うことのできるデザインとなっていました。ゲーム全体が短いので、ほかのビルドを試したい場合も割と気軽にできそうです。
また、単なる強化以外の面でも選択肢があったり、イベントがあったりして、成長に波を与えるようになっているのも面白いところです。このおかげで、パラメータをただ上げていくような単調さが無くなり、ゲーム全体にメリハリがついています。
特に好きなのは、パンチを使っていればパンチの強化がもらえ、キックを使っていればキックの強化がもらえる設計です。プレイヤーのやっていることに沿って順当に強化する恩恵が得られるというように、プレイヤーの意図にぴったりと沿ったメリットを享受できます。
このシステムはプレイヤーが思考することなく、プレイヤーのやりたいことに合わせた補助が入る仕組みなのかなと思っています。こういう設計ばかりだと遊ばされている感があるかもしれませんが、このゲームはアクセント的にしか使っていないので良いです。ここでもメリハリがついています。
シナリオ面にも軽く触れると、短編でありながらも主人公のキャラクター性で強く引っ張っていく良いものとなっています。
悪役の三枚目っぽさも絶妙なラインで、まあまあの悪事をしているし、そこそこに報いは受けているものの、シナリオ全体が暗くなりすぎないようにコントロールされている印象を受けました。
余談ですが、最初は徹底的にモブに名前を付けない方針の作品なのかと思っていましたが、状況に即した名前が適宜つくタイプの作品でした。コメディー調っぽくて良い。
さらにどうでも良い余談ですが、説明文で触れられているほどランディスが宿敵っぽくないのは気になりました。通りがかりでついでに倒したくらいの空気感っぽいんですが。ブートにとっての宿敵という扱いなのかな。
55. デス ウエスト トレイル
ジャンル | 作者 |
---|---|
ノンフィールドRPG | 雪見大介 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 1.23 | 二本角1位クリア |
良かった点
- 装備を入れ替え自機をカスタムしていく楽しさがあります
- リソース管理要素が程良いものでした
- サクサクと戦闘が進む攻めのバランス調整です
気になった点
- レース順位がやや奥まったところでしか確認できませんでした
- レース中は常時表示するくらいだと分かりやすいのかなと感じました
- 宝の地図の攻略と本編の進行順によっては主人公の会話が不自然でした
レビュー
装備をカスタマイズしてレースを制そう
デス ウエスト トレイルは、機体をカスタマイズしながら戦闘を繰り返し、誰よりも先にゴールを目指すRPGです。
大陸を横断する大規模なサバイバルレースを勝ち抜くために、素早くしかし確実に歩を進めていくことになります。
挑むレースは戦闘も妨害も何でもアリとなっているため、その道中は戦いにまみれています。
サイドビュー形式のこの戦闘に勝利し、消耗を抑えて道中を安全に進むためには、自身の機体のスペックを上げることが何よりも重要です。機体そのもののスペックを上げる、装備によりスキルを強くして殲滅力を上げる、微弱ながら騎乗者のレベルを上げるなど、様々な方向から強化を進めていきましょう。
とりわけ重要となる装備については、どのような方向にカスタマイズするかはプレイヤーの自由となっています。
範囲殲滅に向いた全体攻撃を重視するも良し、単独攻撃に特化して敵の頭数を減らすも良し、攻撃に特化して雑魚の消耗を抑えるでも、防御に特化して持久に備えるでも、好きなスタイルで攻略が可能です。思い思いの装備を携え、レースに挑んでいきましょう。
また、道中では遺跡や廃墟に寄り道することもでき、時間を犠牲にするものの、有用なアイテムを取得することが可能です。
強力な装備を得ることができれば、後半の攻略において優位に立つことができます。時間や消耗の状態を鑑みつつ、積極的にチャレンジしてみましょう。
レースを繰り広げながらカスタムを続け、時に寄り道をして強化しつつ、レースの一着を目指して駆け抜けていきましょう。
感想
カスタムした機体で敵機をなぎ倒していくゲームです。大陸横断レースを勝ち抜いていくことを目標とします。
SBRならぬDWTといった感じで、遺体は争奪しませんが、何やらきな臭い背景はあるようでした。
戦闘バランスが面白く、敵の攻撃がそこそこ痛いのでさっさと倒すことを目標としたい攻めのバランスになっています。
ノンフィールドRPG特有のリソース管理も絡んでくるので、上手くリソースを回しながらいかに効率よく敵を殲滅するかを考えて機体をカスタムする楽しみがあります。
個人的にはさっさと仲間を増やしておくべきだったなと感じています。砲術を雇ったタイミングでようやく安定するようになりました。
また、敵と長期に戦うとターンが経過し、これによりレースに遅れるという要素もあるため、1位を目指すならより攻めていく必要がありそうでした。
ただ、二本角でプレイする分にはそんなにレース順位を気にする必要もなく、たまに見て1位なことを確認する程度で事足ります。レース順位自体もレース中であっても常時表示はされておらず、そこそこ奥まったところに見に行く必要があり、余り頻繁に見るのも手間なので。
結局妨害無しで探索をそこそこしても1位を取れたあたり、難易度を上げない限りは気にする要素にはなっていなさそうでした。
なお、全体的にはノンフィールドRPGっぽい様相を呈していますが、所々宝の地図を使った探索ステージという寄り道もあります。
おおむねメリットが大きいことと、シナリオや背景がちょっと深掘りされることもあるので、見かけたら行くのをお勧めします。本編に絡む時もありますが、少なくとも二本角の場合は本編シナリオ自体には影響を与えていなかったようでした。おまけのサブシナリオみたいな感触です。
後は、自機のカスタム要素は割と楽しいです。特に装備の入れ替えが良く、後ろの方ほど強い武装が手に入ることもあって、適度に入れ替えが発生していました。
明確に威力の設定がなされ、即座に実践投入して数字でその強さが分かるので、適度に入れ替えてはお気に入りの武装を探すことができます。
レベルによる強化はあれど、装備による強化の方が体感優秀だったので、ちゃんと吟味するメリットがあって楽しかったです。
その一方で、機体性能には結局ノータッチでした。拠点でしか変更できない一方、実戦に入ると後戻りしない限り再変更できないので、気軽に変えにくい要素でした。そもそも、二本角自体が完成されたパーティーということもあり、お世話になる必要が無かったという面も多分あります。
難易度を上げたらちゃんと活用する必要があるんでしょうか。
個人的には、砲術の速度を積んで全体攻撃させて殲滅するのが好きでした。やはり攻撃は最大の防御です。
56. リーフの1人花屋営業
ジャンル | 作者 |
---|---|
花屋 | あまてん海老 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
15分 | 1.0相当 | HARD/一流 |
良かった点
- ミニゲーム然とした設計でした
- 運要素もある中で、かなり緩めの難易度設計となっています
気になった点
- 同じシンボルでも強さに乖離があることが一見して分かりにくいです
レビュー
ゆるい世界のミニゲーム
リーフの1人花屋営業は、花屋を営業しつつダンジョンに挑戦するちょっとしたゲームです。
パーティーを強くしつつも、お金を稼いでいくことが主な目的となっています。
お金を稼ぐには、ひとまず花屋を上手く経営するのが先決です。
主人公はお客さんの心をある程度読む読心術の心得があるので、それに基づいて条件に合う花を渡せるとお金を獲得できます。
そうして稼いだお金をもとに、パーティーの強さや行動できる回数を増やし、ダンジョンに挑むことになります。
敵と戦ったり、宝箱を開けたりすることができるのは、そうして獲得した行動回数ぶんだけとなります。とりわけ重要な宝箱に辿り着くには、弱い敵を大量に倒すルートや、強い敵と戦うことになるルートがあります。限られた手数の中で、パーティーのレベルに合わせて適切な行動を選択していきましょう。
宝箱まで辿り着けば、お金やレベルの上昇のほかに、読心術のレベルを上げることもできます。これにより、花屋でより多くのお金を獲得しやすくなるため、積極的に狙っていくのがお勧めです。
花屋とダンジョンを行き来して、お金を稼いでパーティーを強くしていき、そしてさらにお金を稼いでいきましょう。
感想
ミニゲームでした。難易度がそこそこ緩めだったり、デザインも緩かったり、何よりグラフィックが良い感じに緩いです。
ミニゲームはミニゲームであることそれ自体に価値があるので、ミニゲームの枠を飛び出ない範囲でさっと遊べるようになっているのが良かったです。
ひとまず花当てゲームの話をするんですが、最序盤が運要素で、そこから少しずつ作業要素になっていく感じです。序盤はそもそも指標が無いですし、中盤以降は特に制約のない中で決めていくので、そういうゲーム性なんだとは思います。
時間制限などでも導入されていれば、もう少しゲームゲームした出来になるのかなとは思うんですが、作中でも説明がある通り、それそのものに自覚的な設計ともなっています。ゲーム性というよりはフレーバーに寄った印象を受けました。
RPGパートというか戦闘については、そこそこミスをしても特別問題なく進められるタイプです。何なら、ゲームオーバー的なものがあるわけでもないので、気楽に臨めます。筆者は二回くらい強敵にぶち当たることで行動を無駄にしていますが、それでも最後の方は全部の宝箱を開けられるくらいにはなりました。
ある意味ではこっちもフレーバーっぽい立ち位置ではあるんですが、どのルートを通って敵を倒していき、上手く宝箱に辿り着くかのゲーム性は担保されています。こちらは割とゲームっぽい。
一方で、同じシンボルでもその中でさらにランクというか強さが分かれており、これを見た目で判別するのが不可能なため、なんとなくで挑んで負けるパターンはどうしても発生しがちです。さっきこのシンボルに勝てたのだから、その経験を活かしてこういう計算で行こう、みたいな戦略を許さないタイプです。
純粋に奥に行くほど、シンボルに対しての強さも上昇していく傾向にあることを掴めればある程度立ち回れますが、それに気づくのにそもそも時間がかかるという面もあります。そもそも作中は5日しかないので、それに気づいたころにはほぼ全勝できる状況にあることが多いとは思います。
ただし、そういったトラップに引っかかったとしても、最終的にはレベル上限に易々と行けたあたり、バランスとしてそういう塩梅にしていそうではありました。この辺は緩めに作られています。
なお、一番の強敵はかなり強く、レベルを上げていても一発で破壊してくる強敵でした。全体攻撃がないのでレイズループにはめて倒したんですが、これが正解なんでしょうか。一応、単体攻撃しかしてこないのであれば、一ターンに一人蘇らせれば帳尻が合うようになっています。
また、最後にゲームはスコアでまとめられているんですが、これもまたフレーバーな気もしています。作中でも言及がある通り、そこそこの運要素が強いシステムの中でのスコアアタックではあるので、あんまり血道を上げるようなものではありません。
とはいえ、一プレイは短いので、さっきはできなかったちょっと良いプレイングを目指そう、くらいのモチベーションであれば自然に湧きます。そこを評価するシステムであると考えると、結構割に合った設計なんだろうなと感じていました。片道勇者の最終スコアくらいの立ち位置。
余談になりますが、筆者はノーマルがあれば必ずそれを選ぶようにしているのですが、イージーは絶対に選ばない歪んだ主義もまた同時に抱えているので、こういう難易度選択になるとハードを選択することになります。ハードでもそれなりに難しくない難易度で助かりました。
57. 真の自由はわが手にあり
ジャンル | 作者 |
---|---|
超短編 | ミツザネェェェ!!! |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
3分 | 1.0相当 | クリア |
良かった点
- 勢いで最後まで遊べる作品でした
- 細かいところは真面目に作られてもいます
- 小ネタもあります
気になった点
- 特にありません
レビュー
強いぜ
真の自由はわが手にあり は、数分で終わる超短編の作品です。
勇者になり、魔王を倒すことになります。魔王にはすぐ会えるでしょう。
疾風怒涛の勢いで始まり、その勢いのまま駆け抜けていくような作品であるため、多く語ることはありません。
ちょっとしたネタに気を配っても数分で終わるような短い時間の中で、勢いを感じるエキサイティングな体験をしましょう。
感想
全編通して勢いだけで作っていそうに見える作品なんですが、所々細かいところのケアや手の入れ方が丁寧な作品でもあります。
駆け抜けるだけの時間しかかからないようなゲームであっても、勢いに任せるところは任せつつ、勢いだけに委ねられていない良い塩梅で構成されています。
細かいところで言うと、デフォルトゲームあるあるの残ったままの相談にちゃんと手が入っていたり、何か分からんけど花に理不尽に嬲られるブービートラップが仕込まれていたり、逃げることができるのが最後だけになっていたりします。
別にゲーム全体の導線のシンプルさや、シナリオというか空気感の勢いを鑑みれば、そこが無くても充分にクリアには困らないものではあると思います。それでも細かいネタとケアする要素を投げ込んでおくことで、より一層に主軸の勢いが輝いて見えます。なおざりでない設計が、むしろ本筋を際立たせていました。
紹介文通りに短いので、感想としてそれほど書き連ねる部分は無いんですが、短い中にネタを詰めていて個人的には好きな作品でした。強いぜ、が本当に強いのが良い。こういう勢いが好き。デフォと勢いだけで最後まで突っ走れます。
58. 綺羅星の射手
ジャンル | 作者 |
---|---|
シューターアクション | 戯塚よどみ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
7時間 | 1.0 | クリア |
良かった点
- バリエーション豊かなボス戦が楽しめました
- 投げが選択肢に加えられたユニークな体験ができます
- エリアごとに特色あるギミックで探索を盛り上げてくれます
- エンディングに向けての演出が良いです
気になった点
- 筆者のプレイバージョンでは不具合が散見されました
- 現在はおおむね修正済みのようです
レビュー
探して回るシューターアクション
綺羅星の射手は、探索要素を含むシューターアクションです。
プレイヤーは三つのミッションを与えられた状態で各地を探索し、シューティング的なアクションを駆使して遭遇する敵を打ち倒していくことになります。
基本的なアクションはキーボードで移動し、マウスで照準を合わせて行う攻撃を主軸とするものです。接敵した場合は、上手く移動して相手の攻撃を回避しつつ、マウスで狙いをつけて狙撃していくことになります。
そのアクションの腕は、とりわけボスと相対した時に問われることになります。ボスはバリエーション豊かな攻撃手段を持っており、一筋縄では勝つことができません。その多彩な攻撃を見極めて避けつつ、適切に反撃を加えていくことが肝心になってきます。
また、落ちているアイテムを上手く敵に当てると大きなダメージを与えることができる点も見逃せません。可能であれば、敵の攻撃をかいくぐりながらアイテムを回収して積極的に狙っていきましょう。
しかし、強力なボスと戦うのに初期の装備とステータスでは心もとありません。装備を集め、ステータスを強化するには各地を巡って様々なアイテムを回収していくことが必要になります。
色々なロケーションに接続されたマップを巡り、待ち受ける様々なギミックに対処しつつ、自機を強化するべくアイテムを探していきましょう。また、敵を倒してソウルを集めることでも強化ができるため、道中の敵を片付けておくというのもお勧めです。
そうして強化を重ね、ボスに挑んで攻略していくことで、よりマップの奥地へと進んでいくことができます。そこでの出会いや回想を経て、この世界の状況であったり、目的までの道筋が見えてくるでしょう。
適切なアクションを駆使して難所を乗り越え、目的を達成していきましょう。
感想
時期的にかなり早くにプレイしたせいか、いくつか不具合に見舞われるなどして完全にクリアはできていないんですが、それでも楽しめる作品ではありました。
個人的には探索とアクションを融合させたゲーム性が好きで、メトロイドヴァニア的な面白さがあります。寄り道して強化を重ねてボスに挑んだり、探索範囲を広げていくのは楽しい。
アクションについてまず触れておくと、探索面ではシューターっぽくありつつ、ボス戦でまた違った遊びになるあたりが良い仕組みとなっています。
マップをうろついている間の雑魚敵との戦いは見下ろしシューティングのそれであり、オーソドックスに楽しむことができるようになっていて、ボス戦も基本的にそれを踏襲しているんですが、アイテム投げが随所に導入されていることで上手く変化を与えています。
このゲームにおけるアイテム投げはかなり強く、積極的に狙いに行きたくなる性能をしています。なので、回避しながら敵にチマチマ攻撃を当てるという選択肢以外に、弾幕をかいくぐってアイテムを回収してぶち当てるという選択も生まれてきます。リスクを取ると大きめのリターンが返ってくるのが良い。
また、相手の攻撃フェーズであり、自分が攻撃できないような特殊挙動時にもアイテムを拾いに行こうという行為を取ることができるのも良く、ダイナミックな攻撃挙動を入れつつ、プレイヤーに単調さや飽きを感じさせない設計になっているなと感じていました。
感覚的には、星のカービィの吐き出し弾みたいなイメージです。
なお、個人的に一番好きだった武器は狙撃銃でした。ピーキーさが好き。単に照準を合わせるのでなく、マウスカーソルからさらに先に対して合わせるという設計にしていることで絶妙な難度を演出しています。
スタンダードに使いやすいものもありつつ、こういった性能の尖った武器も上手く活用できる懐の深さがあるのは良かったです。
また、ステージ設計もかなりバリエーションに富んでおり、探索する上での味変として機能していました。
地雷発見、強風、トロッコ、とギミックも加えつつ上手く散らしていて、それぞれのエリアの特徴も出ています。馬鹿真面目に敵と戦うだけではないステージもちらほらあり、ゲーム性の面でも変化が与えられていました。
とはいえ、全体を通すと探索メインの趣は強く、フレーバーに関してはまちまちにしか置かれていないため、探索がぐだると若干だれがちなところはあります。このあたりは、プレイヤースキルでだれないように頑張りましょう。接続構造を記憶するのが重要です。
そして、このゲームで個人的に一番好きなのは、ボス戦の多様さです。姿形のユニークさもさることながら、それぞれの攻撃行動から特殊挙動といった動きの数々が常に新鮮で、どのボスも戦っていて楽しいものとなっています。
ギミック盛り盛りの中で上手く処理して勝ち切っていく楽しさとともに、攻略しているという実感を確かに得ることができます。
とりわけS級がちゃんと強いのも良くて、序盤にタランチュラに遭遇してゲージの長さに絶望する、あの体験は非常に良かったです。FF8の訓練施設でアルケオダイノスに出会うような感じ。
難易度の面でも、体力回復アイテムが即時回復じゃない分、常に緊張感がある戦いができて歯応えがあります。とはいえ、きちんと探索を重ねて強化が充分になされていて、ボスの攻略法を確立することさえできていれば、それほど苦戦することもない良い塩梅です。
筆者は回復薬、ダウジング、回復薬x2、スキルの順序で解放したのもあって、回復薬に頼って出方を伺えたのが良かったのかもしれません。やっぱり回復能力は偉大。
一方で、探索メインとなっているためか、以前プレイした流星の射手よりは、ややシナリオは薄目な印象を受けました。あくまでメインシナリオや、そこに付随する回想はフレーバー的な立ち位置といった印象です。
ただし、それでもラストバトルへと向かっていく展開はテンションを上げてくれますし、綺羅星の射手としての演出は非常に綺麗なので、エンディングまで到達するとかなりすっきりした気持ちで終わることができます。締めが良い。
なお、前述したとおり不具合はそこそこあり、詰みポイントやら細かい変な挙動も散見される程度にはありました。特に詰みはセーブの都合上、こちらに非が無くてもかなり戻されるので、ストレスフルなところはあります。
一口に詰みと言っても色々あり、暗転が残り続けて消えない、閉じ込められて道が繋がっていない、ワイヤー移動後に戻れないといったパターンがあります。中でもワイヤーは探索したい気持ちをまあまあ阻害してくるもので、下手すると戻れないかもしれないと考えると、色んなところに向かう意欲が削がれてしまう傾向にありました。
また、不具合というわけではありませんが、通行設定がおかしかったり、引っかかりやすい通路設計になっていたりするあたりも微妙なストレス要因になってはいそうでした。
とはいえ、ウディコン中に不具合の修正が諸々なされたようで、現在は唯一と言って良い欠点が消えた状態なので、万全に遊べるものとなっていると思います。
全体を通してシューターアクションとしても探索アクションとしても気持ち良くできる作品となっているので、個人的には結構お勧めです。そしてこれが面白かったら流星の射手もやろう。グランドグレイザーでも良いよ。
59. 勇者の苦難
ジャンル | 作者 |
---|---|
WWA | バル |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
4時間 | 1.04 | ノーマル 2785(お助けなし) |
良かった点
- 短期、中長期双方の戦略が求められる良い設計でした
- 配置やアイテムの性能が上手く思考を要求してきます
- 見やすく情報を整理しやすいUIでした
- 程良く難しい良い難易度でした
気になった点
- マップ間移動よりもマップ内移動の方がよく使う気はしました
- このため、マップ間移動に一足飛びしない方が利便性が高いように思います
レビュー
経験と思考のパズル
勇者の苦難は、WWA風のパズル的な戦いを詰めていくゲームです。
運要素は一切なく、戦いの順序とステータスの構築といった選択の連続によってゲームを進めていくことになります。
基本的には、プレイヤーはフィールドの障害となっている敵に戦いを挑んで排除することでステージを進めていきます。
敵との戦闘はこちらの攻撃力で相手のHPを削り切るまでにかかるターン数だけ相手の攻撃でダメージをもらう、というシンプルなシステムとなっています。相手のHPが100、防御力が30、攻撃力が50で、こちらの攻撃力が70、防御力が30なら、3回殴るまでに2回殴られるので40ダメージです。
そうして敵を倒していったり、フィールド上のアイテムを拾ったりすることで、ステータスを上げていくことができます。ステータスが上がれば被弾は下がり、より強い敵にも挑めるようになっていくでしょう。
被弾を最低限に収めるために、どの順序で敵を倒し、どうアイテムを取得していくかはプレイヤーの腕の見せ所です。ルートの選択に頭を悩ませながら、最適解を探していくことになるでしょう。
加えて、盤面のそこかしこに配置された扉を開けるには、鍵というアイテムが必要になります。拾える鍵の数は有限なので、その鍵をどの扉に対して使うかもまたルート選択においては肝要です。強敵を避けて貴重な鍵を消費するか、HPを大きく使っても将来のために鍵を温存するか、中長期的な視座も持って行動を選択していきましょう。
そうした選択に必要な情報は一画面に綺麗に収まっているので、プレイヤーは思考にだけ集中することができます。
現在のステージの盤面から短期的な有効手を見つけ出しつつ、長い目で見た強化の方向性やアイテム、扉の選択を重ねていき、クリアを目指していきましょう。
感想
割とずっと頭を使うゲームでした。先読みの力というよりも、長期的にどこまで投資できるかの感覚を養っておく方が大事なゲーム性なんだとは思いますが、それはそれとして短期的な盤面の最適化には脳のリソースがだいぶ持っていかれます。
今ウディコンで一番疲れたゲームかもしれません。その分達成感もありました。
長期的な損得勘定の感覚がずっと大事なゲーム性をしており、例えばこの後1000回殴られるなら防御を1上げれば1000の得になるけれど、攻撃を上げるとどこかでその閾値を破ってさらに得になるかもしれない、といったことを長めの視座で見ることになります。
加えて、中期的な盤面の思考も重要であり、例えば防毒後に掃除できるとして、防毒前にどこまで敵を倒しておくのが最適なのか、あたりはそういった思考力が求められます。
やや長期的な視点としては、お金や経験値の向上アイテムもあるので、これを取得するまでにどこまで稼ぐか、という面もあります。筆者はこれを見た瞬間にセーブデータを差し戻して再走していました。幽霊を無駄にスイープしていたので。
このように、攻略において余りにも損害が多すぎるならある程度の稼ぎは必要なものの、やりすぎると終盤に向けての総獲得数でデメリットを取ることになるので、ギリギリを攻めつつもどこまでを損得分岐点とするかを常に考えて進めることになります。
プレイミスがあったとしても分かりにくい形で顕在化するので、とにかく自分の考える範囲では失着をしないように詰めていくのが肝要なのかなと思いました。振り返って反省するのは難しい。
ただし、難易度としてはノーマルなら割と余裕があるレベルに収まっていると思います。いくつかの関門さえ抜けることができれば、HP9999で最後に乗り込むことも充分可能です。
このタイプのゲームがそこそこ苦手な気がしている筆者がお助けなしでクリアできたので、割かしちょうど良い難易度になっていたのではと思います。
一方で、玄人にはハードがあり、ルナティックもあるので、その辺の歯応えも充分にあります。筆者は金鍵を3つ用意できる気がしないので、多分クリアはできないと思います。どこを詰めれば良いのかも余り分かんない。
UIというかシステムの面では、情報がおおむね画面にまとまっているのが良く、考える時の補助として上手く機能していました。願わくはDEFを減らした際に発生する減少値が欲しいシチュエーションもありはしましたが、特殊ケースなのでその時に計算すれば良いという向きはあります。
情報が整理されていると、盤面のパズルを解くことや中期的思考に思いを馳せることに集中できるので、こういう丁寧さは非常にありがたいところです。
個人的には、マップ移動を使い、同じマップ内で移動したいケースが間々あったので、ここがもう少し使いやすいと捗りそうだなとは思っていました。
同じマップ内で移動することと、マップから出ることであれば、なんとなく前者の方が多い気もするので、マップ選択に戻すために一手必要なくらいが個人的には好みかなと思います。この辺は、戦略を立てる時の見方とか動かし方による差異がありそうなので、玄人にとっては逆なのかもしれませんが。
確かに、終盤においてはむしろほかのマップを比較検討するケースが増えていたので、トータルでどっちの方が楽なのかは微妙なところな気もしています。ギリギリ同じマップ内での移動の方が多かったかなという印象にとどまります。
なお、全24面で想定プレイ時間が2時間なので、恐らく作者さんの想定では1面あたり5分で終わるというものらしいです。本当ですか。
とはいえ、筆者がお助けを縛って勝手に苦しんでいた側面は否定できないので、ちゃんとお助けを使ってカジュアルにやればそんなものなのかもしれません。
ちなみに、以下がリザルトになります。
クリア後に少しだけ詰めてお金を稼いではみたものの、やはり途中から抜本的に見直さないと次のフェーズには行けない気配をひしひしと感じました。どこを詰めると良いんだろう。なんとなく、いくつかのボス相手には失着した気がしないでもない。
結果 |
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60. モダレスクエスト
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | カイダ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 1.04 | クリア |
良かった点
- 不思議のダンジョン系の仕組みをRPGに上手く導入しています
- 特殊行動を行う敵が脅威となる良いバランスでした
気になった点
- 装備と回復アイテム以外を採用しにくいきらいがあります
- 枠数が少ないので、余計なものを持つモチベーションが生まれづらいです
レビュー
ターン制RPG
モダレスクエストは、不思議のダンジョン系のシステムとRPGを融合させたゲームです。
ターン制進行やリソース管理の仕組みを導入しつつ、ステージ進行と攻略を目的に据えた双方がミックスされた仕組みが特徴となります。
ステージを徘徊する敵を倒していくには、ターン制を上手く使うのが重要になります。先手を取れるようにターンを回していきましょう。また、多くの敵に囲まれると痛い目に遭うため、一対一になるように立ち回ることも大事なポイントです。
加えて、戦闘をより優位に進めていくには、各地で拾ったり、敵を倒したお金で購入したりすることで得られる装備やアイテムを使うことも重要です。数少ないアイテム枠を有効に活用していきましょう。
そうして敵を倒してレベルを上げ、装備をグレードアップしていくことにより、プレイヤーはどんどん強くなり、どんどん先へ進めるようになっていきます。
ステージが進むにつれて特殊な攻撃をする敵が増えるなど、その歯応えは増していきます。その時々の状況に応じて上手く立ち回り、退却すべき時を見極めつつ、ターン制の冒険に身を投じていきましょう。
感想
ローグライクというか不思議のダンジョン系のアイテム管理などの要素を持ち込んだRPGという感じです。
とはいえアイテムを持てる数にはそこそこ強い制限がついているので、どっちかと言えばターン制で進行して接敵して戦うRPGという印象の方が強いかもしれません。
不思議のダンジョンよろしく戦う戦闘システムは良い設計になっていて、そのジャンルで遊ぶ上では必要になるテクニックとしての、多対一を避ける、不要な戦闘は避ける、遠距離をはじめとした特殊攻撃持ちには各々必要な対処をする、といったことがそのまま有効手となる仕組みが組み込まれています。
たとえステータスが上がり、装備が充実してきても固定ダメージや遠距離攻撃系の特殊な敵は依然として強いので、その辺をどう捌くかというゲーム性が、このシステムにより担保されていました。
筆者の攻略においては、経験値アップの装備を片時も外さず、Goldアップ装備も基本的に身につけ、一度も死亡することなく進めていました。ちなみに、正直なところ途中まで経験値と金の倍率について、表記上かかっていないことから効いていないか端数切り捨てを疑っていました。実際は得られている本当の値にはきちんと倍率がかかっていました。ここはちょっと分かりにくい。
とにかく恒常的な性能強化を優先したため、終盤はかなり強くなっていて、装備も充実していたことで、危なげなく突破できました。とはいえドラゴンは強かったですが。
ただ、その強化については、クリア後にセーブする機会がないとは思わず、クリア時のステータスどころかその手前の30分くらいのデータも消えています。Lvは97くらい上がり、装備もだいぶ一新したんですが、見せられないのは残念です。リザルトは以下の通りでした。
リザルト |
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なお、最後まで個人的に重要視していたのは命中率の安定化です。これはローグライクというかシレンをやっていると分かると思うんですが、必中の剣は本当に強いです。最新作ではクリア後ダンジョンのレアという水準でしか出てこないレベルです。
なので、命中率の維持を絶対の条件とし、ワンパンできる状態を可能な限り維持するのが安定性に寄与していました。後はハーピーの保持ができるとより良いです。ハーピー抜きでHP6の状態で拠点に戻る必要が出てきた時はなかなかスリリングでした。
全体的にローグライク系のシステムを上手く流入しているなと感じてはいるんですが、アイテム枠の制限あたりはやや気になるところはありました。
基本的に装備で2枠埋めるのはかなりの序盤から確定しますし、それ以外は回復アイテムで埋めるのがだいぶ無難です。それ以外のアイテムもありはしますが、枠が少ないことと、活用できる条件が限られることから、ほとんど外すのが最適行動に感じていました。
超終盤で活用できそうな場所もありはするんですが、そこまで持ち込む労力を考えると難しいところです。そもそも必要かどうかはそこに行かないと分かりませんし。
合成や保存、装備への特殊行動を持つ敵が存在しない以上、あんまり予備の装備を持つメリットがないので、少なくともここは分たれていても良いんじゃないかなと思います。枠ももう少し多いとアイテムを積極的に使うモチベーションが生まれそうです。
後、これはどうでも良い話ではあるんですが、紹介ページのスクリーンショットが明らかにテストプレイデータっぽいのは余計な心配を惹起させそうなので避けるのが無難なのかなとは思います。
すわテストプレイをデバッグモードでしかやってないんじゃないかな、みたいな不要な詮索が入るかもしれません。気にしすぎかもしれませんが。
実際のところはシステムはかなり安定していて、おおむね快適に動作する設計のまま最後まで遊べたのでいらぬ心配ではありました。
61. やけくそ料理人と不良債権
ジャンル | 作者 |
---|---|
デッキ構築型お料理ローグライト | なす太郎 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間+α | 1.01 | Hard |
良かった点
- 良く設計され没入できるゲームの流れが構成されています
- 各リソースの扱いや強化要素の仕組みが秀逸です
- 能動的にシナジーを生み出せるゲームデザインの裾野の広さがあります
- 認識しやすく扱いやすいUIでした
- 絶妙な難易度設計となっています
気になった点
- プレイ方針を定めやすくなった反面、良くも悪くも偶発的な出会いが少なくなった印象があります
レビュー
時間泥棒
目指すべきやることの明瞭さと、無限のごとき一期一会の体験の広がりは、共にデッキ構築型ローグライトにおいて重要な観点です。しかし、その両者は一見すれば相反する存在に思え、その両立は困難を極めることは想像に難くありません。
やけくそ料理人と不良債権という作品は、類稀なるゲームデザインの妙と絶妙なバランス感覚のもとに、双方を高いレベルで完成させたゲームとなっています。
その設計は、デッキ構築型ローグライトと料理を混ぜた独特なものです。制限時間をターンに見立て、その時間内で勝利点のような評判を一定以上勝ち取っていき、最後に待ち構える審査員の求める料理に到達できればクリアとなります。
道中で評判を稼ぎつつ、審査員を唸らせるためには、ゲームルールを捉まえてビルドを思うままに強化していくことが重要となるでしょう。
ゲーム画面 |
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そのルールを端的に説明すると、カードを駆使して食材を集め、お客さんに提供して評判を稼いでいくというものになります。
例えば上記の画面では、お客さんはハートの合計値が4以上、写真映えが1以上、2品の料理を要求しています。これを満たす組み合わせはいくつかあり、例えば「生ハム」と「ムニエル」、「サーモンサラダ」と「アクアパッツァ」などが考えられます。
これらの料理を作るには、その料理に示された食材が必要です。例えば「生ハム」を作るには肉を4つ必要とします。これらの食材を用意するために、画面下に示されたカードを使って対応する食材を獲得していくことになります。
上記のカード構成であれば、肉料理と肉・野菜料理を実行すれば肉を5つ確保でき、「生ハム」が作れます。加えて、プラスワン実行後に魚料理を使えば魚を3つ確保でき、「ムニエル」も作れます。これら二つを提供すれば、お客さんは満足するでしょう。
ここで注意したいのは、同じキャラクターが描かれたカードは特殊なものでない限り、同じターンには1回しか使えないということです。このため、野菜料理と魚料理は同時に行うことができません。
また、クリーンアップを選択して1ターンを終了させると、時間が経過し、食材もまたリセットされます。料理にしていない食材は無駄になるので、余った食材はできるだけ料理にしてキープしておきましょう。
こうしてお客さんの要望に応えることで、評判を稼いでいくことができます。お客さんをどんどん呼び込んで、評判を集めていきましょう。ただし、お客さんには各々の制限時間があり、その堪忍袋の緒が合計3回切れるとゲームオーバーです。このため、キャパオーバーにならない範囲で適切に取り回していくことが肝要になります。
そうして評判を稼ぎつつも時間が経過していき、12:00から18:00になるまでの間に評判を100まで上げることができればひとまずの目標は達成できるでしょう。
ただし、時間の進行とともにお客さんの要求のハードルは上がっていきます。加えて、最後には高いハードルを持つ審査員の要求に応えなくてはいけません。これに対応するためには、より良いカード、より良い料理を構成し、ビルドを強化していくのが重要になってきます。
評判が10の倍数に達する度に、カードの追加であったり、人員の追加かレシピの強化を選べたりといった強化を手に入れることができるので、これらを上手く活用し、よりお客さんのニーズに合わせられるようなデッキを構築していきましょう。
構築にあたって重要なのは、人数と料理のバランスです。カードを使うと、上記の通りキャラクターの行動を消費してしまい、同じターンで同じキャラクターのカードを使うことはできなくなります。このため、行動回数に直結する人数は重要です。
しかし、どれだけ人数がいても手札に来なければ意味は無く、料理が既定のレベルに達していない場合も意味がありません。適度に人を増やし、適度に料理をレベルアップさせる、そのバランスを探っていくのが攻略のカギとなるでしょう。
このように文章で説明してみると取れる手段のバリエーションの多さから複雑そうに見えますが、やることそれ自体は明瞭です。簡潔に言えば、目的を達する料理を作るためにカードを駆使して食材を集めていくゲームと言えるでしょう。
また、ゲーム画面は整理されたUIにより直感的に操作して理解できるようになっているので安心です。チュートリアルもあるので、ひとまずプレイしてみることをお勧めします。
全体を通して、その時々の手札の構成、お客さんの要求の性質の違い、手に入るカードや加入するキャラクターの性能、あらゆるものがランダムに立ち現われ、プレイヤーに選択を迫ってくるローグライトの楽しみを十全に味わうことのできる作品となっています。
加えて、そのランダム性に反して難易度設計は絶妙な完成度となっており、難易度によってはクリアできるかどうかの瀬戸際のバランスを楽しむこともできます。
直感的で分かりやすく遊ぶことが出来ながら、そこに込められた無限の広がりの魔力に支配されてしまい、ついつい次のプレイに手が伸びてしまうことは間違いありません。お料理ローグライトの世界に没入して楽しんでいきましょう。
感想
何で毎回こんなに面白いのかと思いながらプレイしているんですが、この作品もその例に違わず面白いです。シナジーと難易度カーブのレベルデザインだけで、ここまで面白さを色んな観点から創出できるのかと脱帽しきりなところがあります。
ここまで組み込まれた面白さを構造的に分割して俯瞰するのを試みるのは、もはや野暮な気もするんですが、そういうのが好きなので感想がてら勝手にやろうと思います。
まず、ゲーム全体の流れが良いです。前半に取れる選択肢はそれほど多くなく、後半になるにつれて一つのターンでやるべきことが増えていくそのカーブが綺麗に設計されています。複雑化していく過程にきちんとしたフェーズがあるので、初めて触った時に適応していきやすいというのはもちろんのこと、ゲーム内における緩急の面でも優れた仕組みとなっていました。
どこかでドミニオンと表現されていたのを見かけたんですが、これは言い得て妙で、あの手の拡大再生産ゲームの良いところを上手く取り入れたような仕組みになっているなという印象があります。あちらの流れに比べると、札の強化と勝利点の獲得の効率化はある程度分けて考えつつ、方針としては同一化するようになっている点も面白く、どこで勝利点を獲得するかといったタイミングによる決断が余りない代わりに、思考がシンプルに整理しやすくなっています。
このゲームには色々考えながら札を回していると、本当にいつの間にか最後まで遊んでしまう魔力がありますが、その一つの原動力は間違いなくこの流れの設計の上手さにあると思っています。絶妙なレベルデザインの中で、この流れに乗ってしまうと、ゲームが終わるまで至極スムーズに遊べてしまうので。
作者さんのほかの作品もこの流れの作り方がべらぼうに上手く、どの作品も何故か最後までやってしまうし、何なら手がそのまま次の難易度にまで伸びてしまうんですが、この作品もまたそれが顕著に表れたものと言えるでしょう。中毒者を生み出す作りだ。
流れの面でついでに触れておくと、時間というリソースの使い方もまた上手いです。
このゲームは基本的に時間を一つの区切りとしてターンを構成するので、終了までのターン数は決まっています。しかし、時間をリソースとして消費することで使えるカードが出てくることで、ここに変化が生まれてきます。
この設計については、第一に、変化が与えられるという点が素晴らしいです。それまでただのターンの品替えだったはずの時間が、一気に残りのリソースとして生まれ変わってくれます。これだけでゲーム性に起伏が生まれています。
第二に、一段異なるレベルの思考が挿入されるという点が面白いです。カードをただぶん回すのではなく、上手く回りそうなら時間を使ってでもより上手くぶん回す、あんまり回らなかったら時間を使わずに次のターンに委ねる、など多層的な思考への誘導として抜群に機能しています。
最後に、時間をプレイヤーに使わせることができる、という点が優れています。時間をリソースとして消費するということは、総合的にはその周回に掛かるターン数を少なくしています。つまり、プレイヤーの意図にかかわらず全体で見るとテンポの向上に寄与している形になっています。
プレイヤーからしてみれば、複数ターンに分けて余りを作るより、一ターンで使い切る方が合理的な場合も多いので、要素が揃ってくると積極的に狙うインセンティブが生まれています。それがゲームテンポの向上にそのまま繋がっていく構造は美しくすらあります。
ゲーム性のもう一つの要である、料理というリソースにも触れておこうと思います。これはプレイヤーの目標であると同時に、バランサーとしての役目も担っているのが面白いところです。
まず、高等な料理が並べられているという点が、プレイヤーはここに届くようなビルドを目指すという指針として機能しています。しっかりと先を見据えたビルドを構築しなければ、寿司やハンバーグにはなかなか手が届きません。
加えて、料理が大まかに肉と魚に分類されることで、いずれかに偏った構築になることをやんわりと阻害しています。魚に偏ると肉料理が来た時にえらいことになりますし、その逆もまたしかりです。ビルドの際は、どちらかを得意とするならともかく、どちらかに偏ってしまうと致命的な問題を抱えかねません。ここでもまたシステムによって知らずのうちに、プレイヤーはデッキのバランスを意識せざるを得ない構造になっています。
また、デッキのビルドを平滑化するとはいえ、多様さが失わせしめられていないという点にも留意する必要があります。
魚や肉を作りたいとなった時に、大量調理できるものを雇うのでも良いですし、強化を重ねて無理矢理届かせるという方向でも構いません。それは、提示された手札やその時々の道筋によって千差万別に広がっていきます。
例えば筆者の初回プレイでは魚のルートに乗ってしまったため肉の調達が遅れる中、3回までミスれるのを良いことにハンバーグの生成を遅らせつつ、肉の大量調達とタクティカルサポートによってなんとかその場を切り抜けたという流れがありました。難易度が平易なうちは、この辺のアドリブが効くレベルに収まっているのも嬉しいところです。
料理については、一時的に置いておけるというのも良い味を出しています。次に来る客が不明なので、言ってしまえばギャンブルではあるんですが、これがシステムの手によってかなり割りの良いギャンブルになっています。
というのも、客が要求する料理が抽象的なために、意外と対応できるようになっています。加えて、客にプラスアルファを与えるとより良いメリットが返ってくるシステムも同時にあることで、より無駄なく使ってしまえる設計になっていました。
ゲーム性の都合上、どうしても無駄な食材は出てくるし、そこから無駄な料理は生み出されがちです。やたら肉だけ溜まって作られた行き所の無いハンバーグほど悲惨なものはありません。
しかし、このゲームは作り置きができることと、それがある程度有効活用できる土台が整ったシステムの完成度により、この無駄が無駄で無くなるパターンが非常に多くなります。これはプレイヤー感情に対して明確にメリットがあって、せっかく作れたものが無駄にならなかったというちょっと得した気分が得られる上に、損をしたという感情を排除するデメリットの撲滅に貢献しています。SDGsの12だ。
とはいえ、調子に乗って作り置きするとあんまり上手く使えなかったり、上手く使いこなすための補助装置があったりと、ここを使いこなすこと自体も一種の技量のような設計にも落とし込まれており、同時にシステムの深みも出しています。
特に、同一の客に同じ料理を出せないのが良いです。余った魚で作ってしまったムニエルがだぶついていくのもまた一興。
続いて強化のシステムについても触れます。前述した通り、ある程度は拡大再生産の形を取りつつ、このゲーム独自のシステムに落とし込まれている素晴らしいものです。
一般にこの手のカードゲームは、行動回数が多い方が有利が取れることが多いです。老師敬服だろうとドミニオンだろうと、何らかの形で行動回数でアドを取れると一気にやれることが広がります。人が増える、アクションが増えるといった形でそれは表現されることが多くなっています。
このゲームもその例に漏れず、人を雇うことで一ターンにおけるアクションを増やすことができます。しかし、このゲームはそれにとどまらないというところが魅力的です。
このゲームの一ターンの行動は人によってのみならず、原則は配られたカードによって決定づけられます。このため、いくらアクションが多かったとしても、配られたカードに偏りがあれば満足にそのアクション数を活かすことができません。
反対に、連続行動可能なカードなどもあるので、アクション数が少ないからと言って一概に不利とも言えません。
とはいえ、アクション数が多くあることは明確に有利で、実際に拡大していく上では人を雇うのはマストと言って良いんですが、それでも純度100%のアドバンテージであると言い切れないところに仕組みの面白さがあります。良い塩梅、落とし所を見極めてアクション数を増やしていく必要があり、何も考えずにアクション数を増やすだけではないところに思考の余地が生まれていました。
また、各々のアクションや覚醒の特色も良くて、強化の仕組みとしての多様性が広く担保されている形となっています。個人的に好きなのはインスタントに効果を得られるスキルの存在で、それ自体が切り札としてどこで切るべきかを考える要素となっています。
ギリギリの客を満足させるために使うのか、最後の審査員を突破するために温存するのか、常に特別枠として思考の端にある戦略性というのは、中盤から終盤にかけての若干広めの視座において、かなり重要な立ち位置にあります。もったいないなと感じているうちに使わずに終わってしまうのもまた一興。
後は、アクション数の増加を取らないケースにおいて得られる、料理の強化という要素もまた良いです。アクション数との対比構造として、そのアクションで得られる効力の強化として設定されています。このため、きちんとバランスを取れば、より効率の良い掛け算となり、かなり有効に働いてくれました。
強化がランダムに決まっているのも面白く、もともと考えていたビルドの方向性を少し曲げる偶発性の力として機能します。ずっと計画通り進めていくのでは味気ないところに、ちょうど良い具合の再考の機会を与えてくれるシステムです。
システムの秀逸さばかり綴っていても終わりが無いので、最後に一連の流れの終わりに関門があるというまとめ方の良さについて触れて終わろうと思います。
ゲーム性を考えれば、耐久式にしつつ、評判という一定量を上回れたかどうか、あるいは一定ターン数以内に上回ることができた、というような設計にもできるゲームでした。しかし、このゲームは最後に審査員に挑む形を取っています。
この設計の良い点の一つは、ビルドした結果が最後にきちんと試されるという点にあります。せっかく積み上げてきても、周回の中で上手く回すだけにとどまっているのだと、あんまり上手く作ってやったという気持ちになれません。しかし、審査員がいれば、そこまでに組み上げてきたビルドを披露し、ぶつける場が提供されます。
もう一つの良い点は、上述にも絡むところとして、ぬるっと終わらずにクリアしたという達成感を演出する要素として機能しているというのが挙げられます。最後に出し切って、全てを解決して終わらせるフェーズが入ることで、ゲーム全体の区切りがより一層明確に設定されていました。
軽くUIの話にも触れておきます。
全体を通してすっきりしていて、やるべきことが明瞭で分かりやすい印象を受けていました。
通常プレイの範囲内では、カード選択で食材準備、料理作成、と余計な切り替え無しで行うことができ、するするとプレイすることができます。この辺のプレイフィールの良さがゲームテンポの良さにも繋がっているので、割と重要なところでもあります。気にしない限り気にならない、という良いUIの雰囲気をまとっていました。
また、ショップや覚醒といった使用頻度の比較的少ないものをタブに押し込む構造になっているのも良いところです。
情報は一画面上にあればあるほど良いというものでもなく、認識できる範囲、使いたい範囲で収まっているのが助かるなと思うんですが、このタブ構造によって普段のプレイ中では認識せず、その操作をやる段階で認識の俎上に上がってくる作りになっています。
他方で、たとえば覚醒非選択時にキャラを選んだら自動的に覚醒を選ぶ、といったようなシームレスな自動操作を組み込むというのもありそうには思います。しかしそうすると、意図しないで切り替わりが発生するケースが拭えず、先述した認識においてのノイズに繋がります。なので、個人的にはいっそ取っ払ってるのが良い判断だなと感じ入っていました。
UIの認識しやすさの面で言うと、グラフィックのクオリティにも触れておくと良さそうです。平たく言うと、凝るべきところは凝っているデザインです。
UIのような見やすさ重視のデザインに振るべきところは振っておきつつ、キャラクターなどの立ち絵はリッチなものになっていて、この辺の緩急も良いです。そもそも凝るべき点が割と少ないゲームではありますが、その中での取捨選択と方向性の策定が良いです。
なお、個人的には料理アイコンが小さいのは若干気になっていて、要求料理が最初は分かりにくく感じていました。やっているうちに慣れましたが。今となっては何と何を誤認していたのかも分からない。
最後に、難易度の話をします。あるいはレベルデザインかもしれません。
とにかく、絶妙に行けるか行けないかのラインを突く上手さは他の追随を許さないクオリティです。前作、前々作もそうなんですが、あと一歩で行けそうという空気感、あと一歩が届いた感覚のある終盤の設計が非常に秀逸でした。
難易度調整とは言っても敵の体力を上げたり、攻撃力を上げるといった軽いパラメータ調整で済ますゲームは割と散見されていて、そういうのもあってNormal以外あんまり遊ばないという偏見を持つ筆者ですが、このゲームは何の躊躇いもなくNormalクリア後にHardに行けます。たとい形は同じパラメータ調整によるものであっても、それぞれの難易度における体験がきちんとデザインされているであろうという確信があり、またその確信を叶える設計にきちんとなっている作品でした。
Normal クリア |
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まず、筆者のNormalのクリアは前述の通り魚特化ビルドになってしまったことで、肉料理に苦戦しながら進める羽目になるものでした。どうにかこうにか軌道修正しつつ、肉の大量調理やらタクティカルサポートで誤魔化して薄氷のクリアです。何なら一度客に帰られています。
リザルトを見るとそれが分かるんですが、圧倒的にハンバーグを作れていません。1回て。寿司を7回も作るアンバランスさも含めて、課題の残る走りだったと言えるでしょう。
とはいえ、ここで時間消費型のスキルの強さに気付き、また先見の優秀さにも気づけたのは収穫でした。この知識が無ければ、次のHardはだいぶ厳しい戦いになっていたと思います。
Hard クリア |
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続いて挑戦するHardは、流れでそのまま一発で通しました。寝る前に一回だけやろうかなの気持ちでやっています。睡眠時間が削られる。
前回強かった先見を確保するため脳筋を仲間に加え、タクティカルサポートの強さも分かっているので、これも仲間に加えています。仲間という視点で見ると、一人しか入れ替えていません。
その中で、前回お世話になったフードショーケースなども携え、Normalで得た知識と方針のまま走り抜けた形になります。
Normalに比べると、提出料理のバランスが非常に良いのが分かります。やや肉偏重なきらいはありますが、ハンバーグと寿司は同程度の提供率となっています。
何より体験として良かったのは評判で、見ての通りギリギリ規定値を超えています。終盤になってきて、上手く帳尻を合わせるためにリロールの回数や呼び出しをコントロールして、ギリギリで一歩届いた感覚は筆舌に尽くしがたいものがありました。
なお、このHardにおけるムーブから察される通り、ビルドの方向性における自由度は広いものの、一期一会なものにはなりにくいなと個人的には感じていました。
前作などでは、一度に習得可能なスキルが少なかった影響により、あんまり使わない技にスポットライトを当てざるを得ない場面が割とありました。リセマラしない限り。翻ってこの作品は、スキルというかカードが人からカードという二段階構成になっている都合上、人のバリエーションがカードより少なく、結果としてより要求したビルドになりやすい傾向にあります。
この設計はすなわち、こうしたい、という想定に沿った構成にしやすいということなので、戦略性は上がっています。その一方で、ゲーム中の偶発性から生まれる、これこんなに強かったのかとか、これ思ったより弱いなとか、使いにくいけどシナジーあったら凄いなとかは、少なくとも偶然には発生しなくなります。
ただし、だからと言ってシナジーが無くなって固定化されたわけではありません。自分で試しにいけば、いくらでもシナジーを探していける自由度はあります。さしずめ、今までが受動的な自由度だとすると、この作品は割と能動的な自由度とでも言ったような印象でした。
また、それ以外の面では偶発性を高めておくことで、戦略性をある程度担保しつつも毎回同じプレイ体験にならないような工夫もなされています。
それは料理の強化であったり、客の要求であったり、そもそも毎回引くカードのパターンだったりします。それ自体は一期一会なので、体験そのものは思った通りになることはほぼありません。ここには偶発性の体験が込められています。
とりとめが無くなってきたのでまとめると、今までよりはある程度方針を固めやすくなり、思うようなプレイングをしやすくなった作品です。その反面、妙なプレイングを強いられる面白さは多少減じています。ここは多分好みの範疇で、どちらが良いとかいう話はありません。個人的には後者の偶発性が高い方が好みではあります。
加えて、だからといって全てが思い通りにならないように、その他のランダムなシステムがふんだんに盛り込まれているため、体験そのものが固定化して飽きがきやすくなった、というようなことはありません。ゲーム全体で見れば、何度遊んでも面白いゲームに仕上がっています。
ここまでつらつらと良い点を羅列してきて、やけくそ全肯定botみたいな感想になってしまうのもあれなんですが、本当に細かい点か好みの範疇くらいしか気になる点として言及できるポイントがないので、これは仕方がないところではあります。面白いのが悪い。
ごく個人的には、さすがにHardは難しすぎやしないかと思っていたんですが、どうも難易度調整を若干ミスったバージョンだったようなので、今だと割と正常化されているのかもしれません。もう欠点とか無いんで、良いから遊びましょう。
62. Welcome to タムタムわかめ
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | ハネケテス |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 8/1 | クリア |
良かった点
- シリアスな物語が良かったです
- 選択に重みを感じる設計でした
- 戦闘システムがサクサク進むものとなっています
気になった点
- 一部ボスの一部挙動が強力すぎる印象がありました
- HPを充分強化していないとほぼ耐えられません
レビュー
良い意味でタイトル詐欺
Welcome to タムタムわかめ は、スピーディな戦闘が特徴のRPGです。
方向キーを使ったシンプルな戦闘で敵を倒しつつ、様々な場所を訪れていくことになります。
戦闘がシンプルである分、その勝敗はステータスに強く依存することになります。とはいえ、遭遇する敵を倒していけば充分に成長することは可能です。戦闘はサクサクと進んでいくので、連戦しても苦にはなりません。接敵したらできるだけ倒していきましょう。
また、敵を倒すとお金を稼ぐことができますが、これをわかめに与えて育てることもできます。何の役に立つか分からないものにお金を入れるか、強化にお金を使うか、その選択はプレイヤー次第となるでしょう。
そうして敵を倒し、世界を巡っていく過程で、謎の人物の暗躍やその目的、そして主人公であるタムタムの謎が明らかになっていきます。
タイトルや主人公の名前からは想像だにしないシリアスな展開とともに、プレイヤーは重要な選択を迫られていくことになります。自分の意志に従って、正しいと思うことを成していきましょう。
軽い雰囲気とサクサクと進む戦闘、そして所々で挿入されるサブゲームといった要素は、そのタイトル通りの気軽なエンターテインメント然としています。
しかし、その中で描かれていく物語は決してその限りではありません。各地のイベントを経て、様々な選択の果てに待ち構えるその結末を迎えていきましょう。
感想
タイトルからは想像できないくらいにシリアスな物語でした。良い意味でタイトル詐欺みたいなところがあります。
ずっとタムタムという名前の響きが付きまとってくるので、シリアスムード一辺倒になり切らないところもあり、シビアな世界と選択でありながらも軽い雰囲気を同時に感じる作品です。
ひとまず戦闘システムについて触れておくと、サクッと終わるのが個人的に良いなと感じていました。コマンド式に比べて、こういう形式だと決着が早いのは明確に良いです。
その点、毎回逃げるかどうか聞かれるのはやや手間にも感じるんですが、これに救われた面もあったので難しいところです。不要な機能というわけではなく、むしろ場面によってはかなりありがたい機能となっています。ただ、逃げたい時は大体のケースでずっと逃げたい場合が多いので、スイッチング式になってると嬉しかったかもしれません。ポケモンのスプレーの類似みたいなイメージです。
難易度についても、逃げなければレベリングがある程度上手くされていくので、余り意識しなくてもそれほど問題にはなりません。上下左右キーを同時押しして雑に狩れるようになってくると、レベリング自体も捗ってきます。
ただし、エンディングにおけるラスボスはかなり強く、成長が充分でないと最後に777のテラエターナルが飛んでこないかの運ゲーをやる羽目になります。HPアップを買っておくかレベリングできていないと耐えられず、かつ戻ることもほとんどできないので、場合によっては完全に運否天賦に身を委ねることになります。
筆者は二度目の挑戦でたまたま撃ってこないパターンを引けたので勝てましたが、それが想定解なのかは良く分かっていません。
そしてシナリオの面ですが、前述の通りタイトルからは分からないレベルでこのゲームの主眼です。なんとなく分岐があるようにも見え、ずいぶんとシビアな選択をプレイヤーに迫ってきます。
加えて、ゲームの性質上、その選択にやり直しは許されません。選択の結果というものを絶対にプレイヤーに押し付けてくれます。ありえたかもしれない未来を見ることはできません。
殊に2周目封じはかなり凝っていて、セーブデータをどうこうするのでは解決できないようになっています。そもそもセーブの性質も特殊なので、分岐を探るのも最後以外難しいでしょうが。
その分、シナリオの空気やその中での選択にはきちんと重みが乗ります。タムタムという名前が頭の片隅に飛ぶくらいにシリアスです。
筆者はエンディング分岐でウィズダムを選ばない方向で解決しましたが、どっちが良いのかはよく分かっていません。ただ、ウィズダムへの思い入れの無さがそこそこあり、イベント一つの重みではさすがに選択できなかったという面が強かったという経緯はあります。
ありえたかもしれないもう一つの未来を観測する方法は分かってるんですが、別の物語を歩むのはこのゲームにおいてはだいぶ野暮なので手は付けていません。この作品はOneshotなので。
個人的に気になっているのは難易度面を除けば幽霊面の設計で、ここに関しては面倒さがかなり勝つ遊びになっています。全体を通して戦闘以外のミニゲーム的な遊びも結構配され、プレイヤーが飽きにくいように工夫されている印象はあるんですが、幽霊面だけはそこそこストレスがありました。
せめて、鍵の下りとイベントをスキップできるとまだストレスフリーだったかもしれません、リトライ性がまあまあ悪い。
なお、全体的にギリシャ神話モチーフっぽい名前も散見されつつ、ウィズダムはまんまですし、おうさ、まはまた別として存在しています。そも主人公からしてタムタムであり、色んな世界が混ざったような状態となっています。これは、シナリオ要請上も割と良いものだったように感じていました。
それにしても、表題の Welcome to タムタム、桃源郷へようこそ、くらいの意味合いなんでしょうか。
余談ですが、レビューでどこまで触れるか悩んだ部分もあります。最終的にはサムネでそれっぽいシーンがあることも踏まえて、物語について触れることにしました。個人的に物語が好きなので、そこを推した方が書きやすいですしね。
63. 異世界転生(即死)
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクション | Ponchiki |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
45分 | 1.02 | クリア |
良かった点
- ネタに振りつつ締めるところはしっかり作られていました
- 基本的にボケ倒すノリで構成されています
気になった点
- 第二戦のリトライがやや面倒でした
- 序盤は大して苦戦しないので、後半からリトライしたい気持ちがあります
レビュー
良い意味でのサムネ詐欺
異世界転生(即死)は、そのサムネイルに違わぬ雰囲気のゲームです。
一方で、そういった雰囲気はそのままにゲームとしては堅実に作られた作品でもあります。
ゲームの本筋は、そのタイトルからも察せられるようにノリ良く進行していくものです。そうしたコメディー調で進むいくつかの会話パートと、合間に発生するアクションパートを乗り越えることで物語が進んでいきます。
時たま遭遇するアクションパートはそこそこの歯応えがあり、その攻略を楽しむことができるでしょう。
往年のFlashゲームのような空気感をまといつつ、ゲームとしてはしっかりと作り上げられた作品です。
安定したゲームの基盤の上で、ネタゲーっぽい雰囲気を存分に浴びていきましょう。
感想
サムネイルから漂う出オチっぽさとは裏腹に、ちゃんとやるアクションになっています。ある意味ではサムネイル詐欺の一種かもしれません。タイトルと最初の展開、あるいはコメディーパート全体はサムネイル然としたネタっぽさがあるんですが、割と中身は真面目です。温度差が凄い。
中身としては、スライム戦は実質チュートリアルで、ピエロ戦が本番であり、実質ラスボスです。この辺のコンパクトさは印象とそう離れていません。
しかし、割とピエロが強いです。長いのもあるんですが、高速時の最終段階はそこそこのアクション能力を要求されます。ここで負けると最初の低速からやり直しであるという緊張感の中戦っていました。頭からっぽでやるには難しすぎませんか。
個人的には、序盤が薄いので高速化からリスタートしたい気持ちはありましたが、その分気持ちは入りやすいので一長一短な気はします。
そうしてピエロを乗り越えた先に待ち構えているのは、択一ゲームです。ここからちゃんとネタに振り切りつつシナリオを進めてくれます。択一については、勘が悪いのでそこそこ長いムービーを二度見せられる羽目になりました。爆発落ちなんてサイテー。
いらすとやをふんだんに使った緩さとネタっぽさに比して、要所要所はまともに締めつつ、大体のところではボケ倒してくるあたりがちょうど良い塩梅にバカゲーというかネタゲーの雰囲気が出ていて良かったです。
なお、いらすとやを見ると21点超えてないか毎回不安になるんですが、よく考えたら商用じゃないので多分適用範囲外です。そもそも多分超えてない。
ちょくちょく口調が別の人に移っていたり、魔王が???で通している中で一瞬だけイレプトという名前が出てきたり、細かいところにテキストの粗っぽいものはあれど、基本的に勢いで進んでいく物語なので大して気になるレベルではありません。
やっぱり物語は勢いが大事ですね。
64. QUEST RPG
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | hinapiko |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間 | 1.0相当 | クリア |
良かった点
- タイトル通りクエストを主眼に置いた進行をします
- ドロップアイテムで料理をするのは面白かったです
気になった点
- クエストの仕組みがやや使いにくいものでした
- 特に現在のクエスト状態を簡単に知る手段がありませんでした
- 合成システムに達成不可能なアイテムがあるようでした
- 一部施設へのアクセスが悪いように感じました
レビュー
ひたすらクエストをクリアしよう
QUEST RPGは、クエストを主体としたRPGです。
ゲームの目的はクエストに集約され、クエストのクリアとともにシナリオも進行していきます。
クエスト攻略のためにはおおむね戦闘を重ね、敵に勝利していく必要があります。時には拠点に戻りつつ、ひたすら敵を倒していき、クエストのクリア条件を達成していきましょう。
そうしてクエストをクリアし、シナリオを進めることで仲間も増えていき、より強い敵にも挑めるようになっていきます。
クエストをとにかく達成し続け、戦闘を重ねていくゲームです。ひたすらクエストを進めていきましょう。
感想
クエスト主体で進み、クエスト主体で全部終わるゲームです。題名に偽りなし。
割と長い期間一対一で戦うことになるので、クエストの攻略はそこそこ難しいです。エンカウントグループの変わり目を跨ぐと、一気に別世界みたいな強さになることがあります。
戦闘バランスはそういう意味では余り良いとは言えず、そこそこちゃんと稼いだり、ある程度は逃げることを必要としてきます。
特にメンバーが揃うまでの序盤は非常に辛く、揃ってくれば手数も増えて割と戦えるようになってきます。手数は大事。序盤は大人しくレベルを上げつつ、できるだけストーリーを進められるように上手く立ち回るのが大事なんだと思います。
また、クエストがメインにはなっていますが、クエストの仕組みが使いやすいとは言えないのも辛いところで、今どのクエストを受けているかを知る手段に乏しいことや、進捗がほぼ分からないこと、受理不可クエストが分かりにくいことなど、細かいところで厳しい印象を受けます。
草原のモンスター討伐がいつまで経ってもクリア扱いにならないこともありましたが、ここは多分進捗が示されていれば打開策を探れた気もするので無念でした。
また、合成システムにあるはずの素材がないあたり、部分的に未完成なのかボツ要素が混じってそうです。闇はギリギリ作れたんですが、ほかは素材がそもそも見つかりません。銅、どこかにあるのかな。
後は、料理や装備など、ちょくちょく見たい要素が拠点からだいぶ離れているのも辛く、アクセスが悪いことも相まって余り運用することがありませんでした。料理は特に使ってみると面白い仕組みだっただけに、もう少しアクセスしやすいところにあると嬉しかったです。
ちなみにどうでも良い話ですが、エンドロールで企画制作がSmokingWOLFさんになっているのにだいぶ引っかかりました。その役職は多分ディレクターなので作者さんにあたると思います。
65. モンスター・レプリカ
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | 恋音リルル |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
5時間 | 1.10-1.12 | クリア+コンプ |
良かった点
- 多種多様なモンスターが用意されています
- 加えて、様々なロケーションに上手く配されていました
- 良く探索しがいのある世界の構成をしています
- 難易度は適度に抑えめのちょうど良い塩梅でした
気になった点
- ソートが無いので、コンプリートの確認は難しいです
- 図鑑の一覧性が低いため、こちらも確認が難しいところでした
レビュー
モンスターといっしょに旅をしよう
モンスター・レプリカは、世界各地を巡ってモンスターを仲間にし、パーティーを組んで戦うRPGです。
強制される道筋はほとんど無いため、自由気ままに世界を探検していくことになります。
そうして探索することになる広大な世界には、200種以上のモンスターが分布しています。ロケーションや時間帯によって、遭遇するモンスターは様変わりしていくため、各地を隅から隅まで歩き回って様々なモンスターと戦っていきましょう。
それらのモンスターとの戦いに勝利を収めると、各々に応じたアイテムを取得することができます。このアイテムを消費することで、対象のモンスターを仲間にすることができます。強いステータスを持っていたり、強力なスキルを使ってきたりしたのであれば、仲間に加えて積極的に育ててみるのも良いかもしれません。
戦闘においては、そうして集めたモンスターを4体選出して戦わせることになります。
役割ごとにモンスターを配してシナジーを得るという選択肢もありますし、スキルを重視したり、パワーに振り切ったり、耐久力を重視したりと、200種以上のモンスターから成る多様な性能のために、プレイヤーには様々な選択肢が用意されています。
お気に入りのモンスターやスキル、戦略を武器に、各地のモンスターやそれを操るマスターに挑んでいきましょう。
それぞれのロケーションにいるマスターとの戦いに勝利することを目指すでも良く、レアなモンスターを見つけるために各地を探索するでも良く、全てのモンスターを集めるためにあちこちを巡るでも良く、どんな遊び方をしても良い作品となっています。
色々なモンスターを集めつつ、自由に世界を旅して回りましょう。
感想
良いポケモンライクでした。モンスターの種類数の多さに余りにも手抜かりがない。
こういうゲーム性だと、新たなレプモンに出会うためにどんどん進んでいくことになるので、目新しいレプモンがいなくなってくると探索意欲が低減しがちなんですが、あらゆるロケーションにあらゆるレプモンが配置されていることにより、余すことなく探索したくなる作品です。
ロケーションが幅広く用意されているのも良く、草原から遺跡、森林、雪原、高山、火山、とにかく様々なロケーションが上手く接続されて世界を形作っています。
加えて、その世界に相応しいレプモンが綺麗に配置されていることもあって、その双方を存分に楽しみながら探索を進められるようになっています。二重で楽しみが配置されています。
この辺の配置感覚がかなり良くできており、新規のレプモンの散らし方は絶妙でした。広いエリアを広すぎると感じない程度には、きちんとした種類にレプモンが上手く配されています。
また、各ロケーションをレプモンを探して彷徨っていると、洞窟などのダンジョンが見つかっていく構成も良いです。ここにも発見があります。
こういったダンジョンには伝説のレプモンがいるなどの特典もあるので、積極的に探索していく一つのモチベーションへと繋がっていきます。いろんなレプモンを探したい、新たなロケーションに進みたい、まだ見ぬ伝説のレプモンを見つけたい、色々な欲求のもとに歩き回ることができるようになっていました。余談ですが、作中では多分伝説のレプモンという呼ばれ方はしていなかった気もしますね。準伝っぽい三鳥みたいな立ち位置のレプモンもいます。
図鑑番号からある程度推察できるのも良く、昼夜のエンカウントパターンや、位置に応じたエリアのような区域で大体3パターンに出現種別が分かれていそうなことを掴めば、割と推測しながら図鑑を埋めていくことも可能です。
領域の分割点は勘で見ていくしかありませんが、そんなに偏ったレプモンもいないので、フィーリングで割となんとかなります。ただし、下水道というか地下水道だけはだいぶ特殊な領域をしている気がしていて、かつ狭い領域にしかいないレプモンも生息していそうでした。ヒンバスみたいだ。
一方で、これだけ用意している中で戦闘バランスも上手く整えられており、インフレーションを抑えつつ適度にメンバーを入れ替えられそうなバランスに落ち着いていました。頻繁に入れ替えるとなると大変ですが、一レプモン二レプモン入れ替えるくらいなら、結構何とでもなります。
敵についても、いくつかの例外を除けば4vs4が限度で、ステータスが平等な上で、こちらが思考できる分だけかなりプレイヤー有利です。Lv10が大量にいる、となると中盤くらいまではきついかもしれませんが、そういうパターンはかなり稀です。というか、ほぼ終盤にしか出てきません。
その分、大ボス戦で5体を相手にする特別感が演出されているのも良いところです。絶妙に難しい難易度となっています。
とはいえ、取り巻きのレベルをそれほど上げないことでバランスを取っており、上手く立ち回りさえすれば序盤のパーティーでも世界花を撃破するくらいのことは充分に可能になっています。こちらはいくらでもシナジーを整えられるので、戦略さえちゃんとしていればどうとでもなります。
加えて、エンドコンテンツ的な闘技場では伝説のレプモンを据えて戦わせてくるのも良く、難易度の段階調節がかなり絶妙な調整となっています。ここまでにちゃんとレプモンを育ててくれば、それほど苦戦はしないけれど、ある程度は戦略を整える必要のある良い塩梅です。
ただ、難易度が抑えめな分と、多対多が基本になる点、それほど頻繁に入れ替えができない点などが作用し、属性による弱点は使う場面は少なめでした。
多対多の常として、一人落とすのが何よりも重要なので、弱点を気にして攻撃を分散させるより、多少不利でも一点集中で崩す方がトータルのリターンが大きめになります。
一応、相性から狙うべき相手を定めるという向きもありますが、それよりは耐久型なのか、サポート型なのかといった立ち位置を考えて狙った方がアドが高いというのもあります。サポートを先に潰さないと後々に響いてくる可能性が高いので、できるだけそういうことをしてきそうなレプモンを見た目から選ぶパターンが多めでした。
相性自体は、本家よりだいぶシンプルなので覚えやすくはあります。
また、筆者はレプモンを全て見つけた上で捕まえるというか生成しようと思っていたんですが、これを確認するのがかなり難しかったです。
ソートが無いので突き合わせがかなり困難であり、がしゃどくろがないことに気付くまでにかなりの時間を要しました。そして、何故がしゃどくろが無いのかを理解するのにもかなりかかっています。パーティー編成にソートがあるか、取得込みの分かりやすい図鑑システムがあるとコンプリート欲のある筆者みたいなタイプには助かります。
また、パーティー編成をする際はステータス以上にスキルを重視したい気持ちもあったので、簡単にスキルが見られるとより様々なレプモンが使えそうだなという気持ちもありました。もっとも、後述するように筆者は完全にパーティーを見た目で決めたので、これを主張する資格はありませんが。
最後に、筆者のパーティー構成を踏まえた感想でも書こうと思います。テーマはゴリラでした。金の単位がゴリですからね。
世界花撃破時くらいのパーティーは、ゴリラ、ゴリラガラス、ケミカルゴリラ、怪物、といった火力全つっぱのパーティーであり、Lv8平均でもその余りあるパワーで世界花を粉砕していました。ドラミングして殴るのが最強。
その後、世界を探索することで雪ゴリラを獲得して、怪物と入れ替えることでゴリラのフルパを構成し、伝説のゴリラであるシルバーバックを見つけ出してからはゴリラガラスを抜いて完全に成りました。オールゴリラ。
このメンバーは相性の偏りがひどいのと、搦め手に余りにも弱いというのがネックではありますが、それを補ってなお凌駕する圧倒的な攻撃性能を誇っており、初ターンで必ず相手を一つ落とせるスペックが有利を取る手段でした。
負け筋は知らないレプモンが出てきて、サポートと間違えて耐久型を殴った結果、サポートからの搦め手を受けるパターンくらいなので、ちゃんと全国のレプモンを制覇した後の闘技場では無双することが可能でした。危なかったのは初見の火山ボスくらい。
最終パーティー |
---|
なお、レプモン制覇にあたっては金策も結構大事なんですが、その辺はイベントなどでカバーされている印象はありました。
どうしても序盤にやりたいなら淫獣が良さそうで、諸々イベントをこなしてある程度計画的に使っているなら、深淵教団が狙い目です。ただ、深淵教団は諸事情によりそもそも大金を用意しないと倒せない状況にはあるので、安定しそうなのは淫獣かもしれません。
余談ですが、淫獣の奥に何かあるかなと思ったら何もなかったので、超高頻度エンカウント地獄だけ味わって帰りました。後半、一歩でエンカウントするので凄い。
66. マルクと4つの封印石
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | チルチャー |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間 | 1.0相当 | 未クリア |
良かった点
- 魔物の名付けが良いです
- リトライが容易でした
気になった点
- 誘導が弱めでした
- 余り遭遇機会のないNPCの名前で案内されます
- 進行不能があります
レビュー
シンプルなRPG
※この作品は、ウディコンのバージョンでは進行不能の不具合を含みます
マルクと4つの封印石は、シンプルなRPGです。
普通の街で巻き起こる事件から、やがて大きな事態へと発展していく物語を描いています。
四つの封印石にまつわる事件を解決するために、プレイヤーは様々な場所を訪れることになります。
マップを彷徨い歩き、シンプルな戦闘をこなし、どんどん先へと進んでいきましょう。
物語中盤で進行できなくなる点だけ注意が必要です。
感想
とりあえず前提として、筆者のプレイしたバージョンは進行不能でした。いくつか試しましたが、多分必要なイベントがスキップされていそうなので進めるのは無理っぽいです。一応ウディコン終了間際まで確認はしていましたが、特に動きはなかったようなので、そこまでの感想を書きます。
RPGの主題としての戦闘面では、全体的に回避率が高く、回避率が割と大事なゲームでした。序盤を抜けたあたりから出てくるライトニングがものすごく強いので、敵のライトニングが飛んできた時に当たらないように祈ることになりがちです。
ただ、こちらもエネルギーボルトが充分に強いほか、リトライがかなり容易なのでそれほど大きなストレッサーにはなっていません。全滅してもゲームオーバーにならないので、多少の理不尽は試行回数で覆せます。雑魚のしにがみさんですら運ゲーを仕掛けてくるのでさもありなん。
個人的には魔物の名づけのセンスは結構好きで、色々と良い名前がついています。後は、最初の仲間をコウモリにするのも好き。何を食べたら、最初の仲間をコウモリにしようと考えつくんでしょうか。
物語の方は、ある程度王道的運びっぽくはあるんですが、あんまり紹介なく固有名を持ったNPCが出てきた上で、その名前を使って進行の指示や会話が行われるので、序盤はついていくのがやっとです。
中盤、正直ニルスが誰か分からず、しばらくやっていて思い出しました。魔物出てきても大丈夫なのは彼がいるからとか言ってた彼の方ですね。話しかけに行かなきゃ、そもそも関わりすらない気がします。
後は進行不能っぽいイベントですが、多分接触なので実は無限ループではなく、移動することで抜けられます。けれど部屋の中に特に移動できる対象はなく、外に出てうろついても動きは無いので、恐らく対象イベントを見切らないとフラグが立たないものと理解しました。抜け方があったら教えて下さい。
67. かわいいヒヨコの大冒険
ジャンル | 作者 |
---|---|
回避 | C |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
15分 | 1.03 | クリア+Ex |
良かった点
- 敵ごとの特色に納得感がありました
- いつでもセーブできるため、比較的緩く挑めます
気になった点
- 特にありません
レビュー
かわいいヒヨコの行く末
かわいいヒヨコの大冒険は、様々な障害を回避してゴールまで到達するゲームです。
プレイヤーはヒヨコを操って、ネコやヘビといった様々な障害をかいくぐっていくことになります。
ネコは固定ルートを歩き回り、ヘビは一定間隔で往復しているなど、それぞれの特徴を上手く捉まえて攻略していくことになるでしょう。
どこでもセーブをすることができるため、落ち着いたタイミングではきっちりセーブを取りつつ、相手の行動ルートを見極めて適切なルートを選択していきましょう。
また、ヒヨコは歩ているだけでおなかが空いていくため、適度に落ちているミミズを食べていく必要があります。
余り無駄に動くとそれだけ捕食を優先する必要が出てくるため、ルート選定はこれらを加味してバランス良く行うことが重要となります。
満腹度を気にしながらも、セーブを駆使して上手くルートを選定し、ヒヨコをゴールまで導いていきましょう。
感想
端的に言うと避けるゲームです。多分難易度はそんなに高くないです。常時セーブもできますし。
プレイヤーキャラクターがヒヨコなのが分かりやすくて、明らかに触れたらマズそうなのが直感的に理解できます。
ちゃんと敵ごとに行動が微妙に異なっている上、それぞれステージごとに微妙にアレンジを加えたテーマで構成されているので、飽きずに最後までやれるのも良いところです。敵ごとの特色についても納得感があります。
個人的にはほぼ一方向の行動しか取らない蛇や鳥は大した脅威ではないんですが、ルート行動と大量配置の暴力で攻めてくる犬が難敵でした。何カ所かはパッションと勢いで突破している気がします。頭を使わずに感覚で潜り抜けていました。
そして、こうなってくるとセーブがどこでもできるのがありがたくて、自分でいつでもチェックポイントを作れます。
そこそこの難所も用意されているので、これで開始地点リスタート強制だったら割と難しいゲームになっていたかもしれません。多分、よりイライラ棒っぽさが増していたと思います。
しかし、みんなといられるのが幸せなんだという心温まるエンディングのエンドロールがああなっているのは好きでした。良いオチがついてるように思います。別の意味で温まってしまったようです。
運命とは残酷なものですね。
68. ネクロマンサーの迷宮
ジャンル | 作者 |
---|---|
アクションRPG | もののふげーむず |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間30分 | 1.12 | クリア |
良かった点
- 気軽にネクロマンシーできるアクションでした
- 蘇らせるために近付くかどうかで駆け引きが生まれています
気になった点
- 戦闘範囲が不明瞭でした
- 超遠方が臨戦態勢に入ることもあり、高速の弾丸が画面外から飛んできます
- ポーションの誤発動の原因ともなっていました
レビュー
ネクロマンシー特攻隊
ネクロマンサーの迷宮は、シンプルなアクションRPGです。
ランダム生成されるフロアから構成されるダンジョンをひたすら潜り、最奥部を目指していくことになります。
ダンジョンには敵がはびこっており、一対多で戦うと苦戦しかねません。
そこで、プレイヤーはネクロマンサーの力を使って、ダンジョンの墓標からその仲間の力を借りることができます。仲間を上手く敵に突っ込ませることで、時には敵を引きつけさせたり、時には敵にとどめを刺させたりといった様々な運用ができます。
仲間はやられても、その場に残った残滓に触れることで再度召喚することができます。気軽に使い潰していきましょう。
そうしてフロアを進むと、10Fごとにボスが待ち構えています。
ボスはそれぞれ特殊な攻撃スタイルと高い攻撃力を兼ね備えているため、闇雲に戦うだけでは勝利は難しくなっています。仲間の召喚を含め、敵との距離を上手く計りながら攻撃を加えていきましょう。
また、道中で敵を倒しておき、レベルを上げてステータスを向上させておくのも有効な手立てになり得ます。
ネクロマンサーの力を駆使し、敵を殲滅しつつフロアを進行していき、クリアを目指していきましょう。
感想
割とシンプル目なアクションでした。シューターっぽくもある。
ネクロマンシーするアクションRPGだとSword of Necromancerが似た系統として存在するんですが、それよりもネクロマンシーする意味合いが強くて個人的には良かったです。
仲間を何度でも蘇らせることができるというのが特に良いところで、肉壁としても特攻隊としても運用しやすい仕組みになっています。カジュアルに突っ込ませて、それなりの戦果を挙げさせることができますし、大したことができずにやられても蘇らせれば良いのでネガティブな感情になりにくい設計でした。
その上で、リスクを承知で拾いに行って再度運用するか、とりあえず周りを片付けるかを選択させる駆け引きも生まれており、アクションにおける動きの幅を広げています。
攻撃面でのアクションが割とシンプルなので、その分ネクロマンシーを上手く活用するスタイルが機能しやすいのもあり、この辺のヒットアンドアウェイっぽい戦い方は楽しかったです。
また、ボス戦においてもネクロマンシーは割と重要になってくるのも良いところです。
基本的に敵の火力が高すぎるので、近付くことに対するリスクがかなり高く、それ故に避けて殴るのが最適解気味になってきます。その中でも、仲間の死体を上手く回収してネクロマンシーできると戦いやすくなり、大きくアドを取ることができます。
これがネクロマンシー無しで戦うとなると、ごく単調なヒットアンドアウェイになりそうな雰囲気があり、差しの機能として良くできているなあという印象でした。
一方で、難易度についてはボスよりも閉所の雑魚の方が強く、避けるのが困難な攻撃が飛んできて苦戦しがちです。
おおよその敵を2タッチで倒せることもあり、基本的には見敵必殺で抜けていくのが良いのかなと思っていました。そういう意味ではスキルの使い所が薄く、全方位発射で若干メリットが取れそうな程度に収まっています。ボス戦で使うのも大量雑魚ボスを相手取る時くらいでしょうか。
ただし、それ以上にこのゲームを難しくたらしめているのは、戦闘範囲の不明瞭さにあるのかなとは感じています。
一度臨戦態勢に入った敵がいると、そこから離れて別の敵と臨戦態勢に入った瞬間に起動しているような挙動を示すため、画面外から弾丸が飛んでくることが間々あります。加えて、このゲームにおける追尾弾は、その距離が離れるほど高速で飛んでくる仕様になっているので、ほぼ見てから避けられない弾が飛んでくることになります。ダースドラゴンかな。
また、ネクロマンシーしたNPCが動き始めた時にだけ引っかかることがあり、これに引っかかって被弾する、メニューとポーションのボタンが同じで、上記の戦闘範囲の不明瞭さも合わさって意図せずポーションを使用する、など細かいところにも若干やりにくい面があります。
全画面に竜のイラストが出てそのままになった時はさすがに終わったかと思いましたが、こちらはメニューを開いたら消えたので事なきを得ました。危ない所だった。
とはいえ、この辺の細かい点を除けば、おおむねアクションを気軽に楽しみやすい設計の良いゲームです。ローグライクっぽく見えますが、永久ロストも無いのでかなり親切な部類に入っています。
なお、どうやらプレイ後に大型アップデートが入ったらしく、上記の諸々も改善されているかもしれません。
69. 食料品店
ジャンル | 作者 |
---|---|
経営シミュレーション | 鋼缶 |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
1時間 | 1.03 | クリア |
良かった点
- 売り買いを繰り返しつつ客からぼったくるチキンレースが楽しめます
- それぞれの商品や性質と購買層の関連が直感的でした
気になった点
- 30日という期間が長く感じます
- 商品の売値を変えられることに対する説明が薄いです
レビュー
みんな期間限定が大好き
食料品店は、食料品を仕入れて売り捌くシミュレーションゲームです。
プレイヤーは様々な商品を買い入れ、値段を自由に決めて店頭に並べ、訪れる客に売って利益を得ていくことになります。
値段を自由に決められるとはいえ、当然余りに高いと購入はされません。商品の購買層、商品についた接頭辞による人気の加減、そもそもの商品の人気度合いなどを鑑みながら、適切な値付けをしていきましょう。
ただし、老若男女どの客層が訪れるかは完全にランダムです。このため、利益を最大化するためには、様々な客層に対応できるように並べる商品を吟味するのが重要になります。最大11種類まで購入して並べることができるため、この組み合わせをどうレイアウトするかが腕の見せ所となるでしょう。
売れ行きの良いものは見かけたら買い足しつつ値上げをし、売れ行きの悪いものは値下げをしてでもすぐにはけて新商品の枠を空かせるなど、利益を上げていくには値付けと仕入れを駆使していくことになります。
日ごとに発生する家賃を払えるように、効率良く稼いでいきましょう。ただし、在庫を抱えすぎてキャッシュが不足しないように注意してください。
そうして家賃を払いながら利益を上げていき、30日間経営を続けられればクリアとなります。
客層の好みをつかみ、ぼったくりにさえ思えるレベルで値段を付けていきながら、最大の利益を上げていきましょう。
感想
ひたすら売り買いするゲームでした。どこまで高くすれば買ってもらえるかのチキンレースともいう。
性質的にはだいぶスーパーマーケットシミュレーターではあるんですが、ランダムで並ぶ商品とリロールである程度ゲーム性を担保していた印象です。
めちゃくちゃ値上げしても評価がなかなか落ちない当たりの商品もあれば、薄利多売すらできない商品もあります。この辺は買わないと分からないのでギャンブル。
そうして売っていくと、商品ごとの購買層の違いとか、接頭辞による効果範囲の差とか、プレイしていると色々気づきがあって面白いです。それらの感覚も非常にそれっぽく、その商品は確かに若者に人気だよねとか、それは確かにすべからく人気がありそうだねとか、かなり納得できる形になっていました。みんなお寿司好きだし、みんな期間限定が好き。
なお、優秀な期間限定商品を入荷できると、一品当たり900円くらいまで最大でぼったくることができたので、ちゃんとリサーチしていればクリアはそこまで難しくはありません。
一応、棚を老若男女に対応した構成にしておくと取りこぼしが少ないので優秀なんですが、これが割と難しいので、上手く構成して商品を補充していく面白さはあります。最終結果は600人に売れたので、3分の2ということでまずまずの結果といったところでした。
設計上、どこまでぼったくれるかは一回購入してみないと分からないのは不便なんですが、これで棚が埋まって駆け引きというかゲーム性が生まれている面もあるので、取り除かない方が良さそうな不便さには感じました。ぼったくれないものは安値を付けてさっさと売り飛ばして、棚を空けていくのが恐らく想定されています。
個人的には30日は結構長く、15日あたりでやることをやって後は消化期間という感じでした。最終的な所持金額も60000に近く、中盤くらいからは家賃も気にせず安定して回せていたので、割とやるだけになっていました。
なにがしかイベントなり、顧客層の変化なり、商品の増加なり、何らかの変化がないとさすがに30日同じようなものを売り買いしていくのは中だるみするなあという印象があります。
後は単純に、売り買いで値段を操作できることに初日は気づけませんでした。そんなわけないなと感じて色々いじった結果発見したくらいの状況なので、何かしら操作説明なりチュートリアルがあると親切かもしれません。まあ初日で在庫を右から左に流して、何かおかしいことに気付けばどうにかなりはするんですが。
感想の最後に結果を張っておきます。ちょっと売れ残ったのは心残り。
最終結果 |
---|
70. 今世
ジャンル | 作者 |
---|---|
ADV | 亅于ぬこ |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
5分/15分 | 1.0相当 - 1.05 | ENDING |
良かった点
- 短くすっぱりしつつ印象に残る演出でした
気になった点
- テキストがやや冗長でした
- それが味になっている側面もあります
レビュー
今生
今世は、暗い要素を含むアドベンチャーゲームです。
死後の世界に来た主人公が、そのやり直しのために人生の追体験を行っていくものとなっています。
最も古い記憶から、死の直後まで、いくつかのイベントを経由して人生は進みます。その内容はどこに光があるかも分からないほどに暗いものとなっており、淡々としかし印象的に演出される記憶によって構成されていきます。
それら全てを経験してなお、やり直しを選択するべきかはプレイヤーの選択次第です。
全体をプレイしても15分程度の短編でありつつ、その表現と展開が印象に残る作品となっています。
主人公と共に追想し、その選択を示していきましょう。
感想
個人的な感想だけ最初に述べておくんですが、危なく評価をミスるところだった作品でした。と言うのも、この作品は出展してしばらくは別の作品が間違えて展開されていたらしく、その修正前に遊んでいたので、本当に全く違う作品を遊んだ上で点を付けていたためです。
最後の方に余裕があって、どうも異なる作品に差し変わったらしいという情報を見かけたので遊んでいなければ、ミスるところでした。危ない。
なのでもし、大音量の天国と地獄の中で掃除をしていた記憶でこのゲームを終えていたのであれば、もう一度ダウンロードし直すことをお勧めしておきます。
なお、前述の作品と大筋がそこそこ似通った部分があるにはあるんですが、そちらがだいぶ淡泊な仕上がりになっていたのに対し、こちらはかなり重く仕上がっています。見た目は割と近いんですが、プロットがだいぶ違うので注意が必要です。
閑話休題。全体を通し、短編として良いアドベンチャーでした。演出としてくどいところがなく、人生の最悪を綺麗にフラッシュバックしてくれます。
最初に幸せっぽい記憶から開始して、徐々に最悪に転がり落ちていく様であるというのが非常に良くできており、最悪とは落差によってより強く生じるものであるということが良く分かりました。そこまで撃ち落とさなくても。
短い期間でプレイヤーの行動を差し挟みつつ、畳み込むように仕掛けてくる悪意の演出は中々心にくるものがあります。
一方で、テキストは反対に良い意味でくどい印象を持っており、端的に言えばものすごく良く喋ります。ただ、イベントごとにめちゃめちゃ喋るというわけではなく、要所要所で非常に強く、何度でも、噛み締めるように良く話すといった印象の作品でした。
特に初めと終わりが顕著なので、言葉の圧により物語るフェーズと、演出の力により物語るフェーズを完全に隔てている作品であるとも言えるかもしれません。初めにまあまあ喋るのだけは若干没入感を削ぐきらいはありますが、長文とはいえ短編なのでそれほど気にするレベルではありません。
しかし、すごく親切な彼なりの人生論を持ったおじさんは何者だったんでしょうか。どういうわけか仕組みを知っているようですし、何故か生き返る術まで知っています。知っている上で生き返っていないのも良く分からない。
臨死体験なのかと言えば、そういう性質の物語でもないので、彼の存在は本当に謎でした。本当に単に親切な、たまたま誰かの話を小耳に挟んだ、通りすがりのおじさんである可能性もあるかもしれない。
後は、死亡直前のシーンは受け取り方にだいぶ悪意があるんですが、あれが試練としてそうだったのか、主人公目線でそう感じたものだったのかは、どちらに解釈しようか迷っています。個人的には後者というか、今際の彼女の記憶を基に再現するのであれば、そうなるのが自然であった、くらいの解釈ではいます。そういう目で見られているという自覚のもとに、事故とはいえど突き飛ばされたのであれば、彼女の目線ではそう解釈せざるを得ない部分はあるのかなと思っています。
しかしまあ、うっかりとはいえやってしまった未来における椿さんは辛かろうという気持ちはあるので、そういう意味でも主人公の選択は二人ぶん救えるものだったのかもしれませんね。
71. 夢幻ノ迷宮
ジャンル | 作者 |
---|---|
RPG | koh |
プレイ時間 | プレイVer | クリア状況 |
---|---|---|
2時間 | 1.30 | クリア |
良かった点
- 装備の効果を見て付け替えていく楽しさがありました
気になった点
- 戦闘バランスが単調気味でした
- 加えて、特殊攻撃が撃たれるかどうかによる差が大きいです
- 達成したくならない実績が散見されました
- お金の使い道がほとんどありませんでした
レビュー
強力な武器を携えて進め
夢幻ノ迷宮は、ランダム効果の付いた装備をどんどん入れ替えて戦闘を進めていくRPGです。
プレイヤーはダンジョンの特定階層まで進み、ボスを打ち倒していくことになります。
ダンジョンで戦闘を重ねつつ階層を下っていくには、連戦に耐えられるスペックが求められます。
そのスペックの大部分は、キャラクターごとの個性と、ダンジョンで拾える装備によって左右されるものです。キャラクターの個性は事前に決めておくことができ、その成長の方向性を決めてくれます。一方で、装備は枝葉のように細かいステータスに効くような設計です。
個性で大まかなパーティー方針を決めつつ、装備を次々とリニューアルしていくことでより強くなり、連戦に耐えられるようになっていくでしょう。
そうしてボスを倒すごとに新たなるダンジョンが解放されていき、より強力な武器を必要とするようになります。
ランダムで付与された効果を吟味し、より強い武器に乗り換えていきながら、ダンジョンに潜り続けていきましょう。
感想
こちら優位のバランスで殲滅しつつ、装備をぐるぐる回すハクスラです。拾った装備から適当にビルドを組みつつ、上手く強い効果を組み合わせていくのは楽しいです。
装備さえ集まれば圧倒的パワーで蹂躙できるんですが、噛み合いが悪いと相手のパワーで一気にピンチに陥ることもあります。
筆者は速攻で敵を始末することを優先したパーティーを組んでおり、雑魚戦なら原則ワンターンキルを狙っていました。主人公、ユーシ、レクスが一撃で全滅を狙って動き、場合によってはシフェルが魔法全体攻撃を加えるムーブです。
敵の通常攻撃と特殊攻撃のスペックに雲泥の差があり、特殊攻撃を重ねられると一気に壊滅状態に持っていかれることがあるため、いかにリスク少なく敵を減らせるかを重視していった結果となります。即死は当たり前で、全体攻撃も当然してきます。運ゲーになる前に仕留められるだけ仕留めておくのが丸い。
ちゃんと敵を殲滅できるようになると安定してきて、ボスも苦戦することなく倒せるようになってきます。というか、雑魚が全員特殊攻撃を打つパターンを考えると、恐らくボスの方が弱いような気もしています。
最後のボスについても全体魔法を振ってくるだけではあるので、ひたすら殴り続けるのがベターになってきます。
このあたりのバランスの都合上、弱体やバフはあんまり活きるバランスとは言えないので、攻撃主体に振るのが最適解っぽいような印象を受けます。バフデバフは相手の行動に付き合い、対処する戦略性なので噛み合いが悪いです。
個人的には実績要素は好きではあるんですが、Steamでもたまに見かける達成したくならない実績が散見されるのは気になりました。
逃げる回数、敗北回数あたりは、自然にそうなる高難易度アクションならともかく、普通にやっていれば避けられるRPGで採用する回数になっていません。
特に、シンボルエンカウントと逃げる回数の相性はまあまあ悪いものだと思っています。シンボルエンカウントは、逃げるという行為をエンカウント前に行うための仕組みとして機能するので。
また、そもそもエンチャント100取得実績が、地金120くらいとってる時点でも達成できていないあたり、微妙に信用が置けないところもあります。
また、実績に裏ダンジョンの記載があるものの未実装なのも後味が悪く、まだあるのかなと思っていたら終わりを迎えることになります。未実装なら埋めておいてほしい気持ちがあります。
後は、お金の使い道がほとんど無いというのも気になるところです。
一応、武器を購入することはできるんですが、エンチャントなしの武器を買う必要性が微塵もないので、使い所が全くない状態になっています。せめて回復アイテムが買えれば良いかもしれませんが、それ以外にも何らかの要素を入れるか、いっそお金を消し飛ばしても良いかもしれません。
回避を90まで引き上げるといったぶっ壊れたバランスを効果で仕組めるのは結構楽しく、パラメータを眺めて強化が楽しめる作品でした。
一方で、戦闘面はそこそこ大味なので、その辺のステータスが有効活用できるかというとやや微妙なところがあります。特殊攻撃が飛んでこないお祈りが一番大事かもしれない。
個人的得点表
No | タイトル | 熱中度 | 斬新さ | 物語性 | 画像/音声 | 遊びやすさ | 加点 | 総合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
01 | 勇者不適伝 | 9 | 8 | 9 | 7 | 9 | 3 | 45 |
02 | LIGHT OF MANA | 9 | 10 | 6 | 10 | 7 | 1 | 43 |
03 | Revive | 2 | 5 | 5 | 4 | 2 | 18 | |
04 | るぐれて | 6 | 4 | 6 | 6 | 6 | 28 | |
05 | ラピッドスティール3 | 8 | 6 | 6 | 9 | 7 | 2 | 38 |
06 | デスペレートホープ | 7 | 7 | 6 | 6 | 7 | 33 | |
07 | イマジナリーディストピア | 6 | 6 | 7 | 8 | 5 | 32 | |
08 | チーターは無理ゲーを走る | 7 | 7 | 6 | 7 | 7 | 34 | |
09 | イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi- | 6 | 7 | 6 | 7 | 5 | 31 | |
10 | ±0 -Black Rain- | 6 | 6 | 7 | 10 | 5 | 34 | |
11 | 水底の記憶 | 7 | 6 | 7 | 9 | 6 | 2 | 37 |
12 | 魔女にお菓子を届けましょう | 7 | 7 | 6 | 6 | 6 | 32 | |
13 | アンブレラブレイバー | 5 | 6 | 6 | 7 | 6 | 30 | |
14 | Inifis | 7 | 6 | 8 | 6 | 8 | 1 | 36 |
15 | 箱庭ドールメーカー | 6 | 9 | 6 | 7 | 8 | 36 | |
16 | 瓶詰の誕生日 | 6 | 6 | 5 | 6 | 6 | 29 | |
17 | 魔族倒しFINAL | 6 | 6 | 6 | 5 | 5 | 28 | |
18 | 赤の騎士と青の魔法使い | 6 | 6 | 7 | 5 | 5 | 29 | |
19 | 鶏空を舞う | 4 | 7 | 5 | 8 | 4 | 28 | |
20 | 装甲断姫_肆_デュアルタスク | 6 | 7 | 4 | 6 | 7 | 30 | |
21 | ジャンクエデン2 | 9 | 8 | 6 | 7 | 6 | 1 | 37 |
22 | 雪山道 (途中点数参考値) | 10 | 6 | 10 | 9 | 7 | 42 | |
23 | 魔王復活物語 | 8 | 10 | 7 | 6 | 7 | 6 | 44 |
24 | なかよ4こよ4 4人の中に×人鬼がいる? | 6 | 5 | 7 | 6 | 6 | 30 | |
25 | At End of the World | 10 | 7 | 7 | 6 | 7 | 4 | 41 |
26 | カニハザード~カニ滅外伝~ | 5 | 4 | 4 | 6 | 4 | 23 | |
27 | 不思議な世界の観光日記Ⅱ | 8 | 5 | 6 | 8 | 6 | 33 | |
28 | 神殺しの聖戦 | 6 | 4 | 5 | 7 | 5 | 27 | |
29 | ダーゴラス | 7 | 5 | 6 | 7 | 8 | 33 | |
30 | 早咲飛立Presents ウルファールの短編集 | 6 | 7 | 4 | 5 | 6 | 28 | |
31 | アルバトロス新聞社 | 4 | 6 | 3 | 4 | 5 | 22 | |
32 | チリガミの塔 | 7 | 10 | 6 | 8 | 5 | 2 | 38 |
33 | 怨御霊 -URAMITAMA- | 5 | 4 | 5 | 6 | 6 | 26 | |
34 | 霧の街の迷宮譚 | 7 | 6 | 6 | 6 | 5 | 30 | |
35 | グッドバイ | 6 | 6 | 6 | 7 | 6 | 31 | |
36 | 翠玉郷のオリヴィエ | 7 | 8 | 6 | 7 | 7 | 35 | |
37 | エリスと悪魔の書 | 6 | 6 | 5 | 6 | 6 | 29 | |
38 | ぐぅたら少年の七転八起 | 5 | 7 | 6 | 6 | 6 | 30 | |
39 | 鬼童-oniwarawa- | 7 | 5 | 6 | 6 | 6 | 30 | |
40 | 作者が1日で作ったRPG | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 | 7 | |
41 | デモクラシア演義 | 4 | 7 | 5 | 4 | 3 | 23 | |
42 | パーソナル戦記 Memories | 4 | 4 | 4 | 3 | 4 | 19 | |
43 | 少女大猩猩 -ゴリラvsデカヘドロン- | 6 | 6 | 6 | 6 | 6 | 30 | |
44 | 優しいごはん | 7 | 7 | 7 | 6 | 5 | 32 | |
45 | イマジナリーフレンド作ったら発狂しました ~作者の統合失調症体験記~ | 6 | 7 | 6 | 6 | 6 | 31 | |
46 | 日替わりフルーツ | 5 | 6 | 3 | 4 | 5 | 23 | |
47 | 「■」の多いダンジョン | 6 | 7 | 5 | 6 | 6 | 30 | |
48 | 屍の仔と死返しの竜 | 3 | 4 | 5 | 7 | 2 | 21 | |
49 | 暴れんぼアリスちゃん | 5 | 4 | 5 | 6 | 5 | 25 | |
50 | POV | 8 | 6 | 10 | 9 | 2 | 1 | 36 |
51 | 迷宮郷まよろば | 8 | 6 | 6 | 10 | 7 | 4 | 41 |
52 | 記憶のあらいかた | 7 | 7 | 6 | 9 | 7 | 1 | 37 |
53 | 通り雨 | 3 | 2 | 5 | 2 | 2 | 14 | |
54 | 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~ | 6 | 6 | 6 | 7 | 8 | 33 | |
55 | デス ウエスト トレイル | 6 | 6 | 5 | 6 | 6 | 29 | |
56 | リーフの1人花屋営業 | 5 | 6 | 5 | 7 | 5 | 28 | |
57 | 真の自由はわが手にあり | 6 | 4 | 5 | 5 | 6 | 26 | |
58 | 綺羅星の射手 | 7 | 7 | 7 | 8 | 6 | 1 | 36 |
59 | 勇者の苦難 | 7 | 4 | 5 | 6 | 7 | 29 | |
60 | モダレスクエスト | 6 | 7 | 5 | 5 | 5 | 28 | |
61 | やけくそ料理人と不良債権 | 10 | 9 | 6 | 9 | 10 | 7 | 51 |
62 | Welcome to タムタムわかめ | 6 | 6 | 7 | 6 | 5 | 30 | |
63 | 異世界転生(即死) | 6 | 6 | 5 | 5 | 5 | 27 | |
64 | QUEST RPG | 3 | 4 | 4 | 4 | 2 | 17 | |
65 | モンスター・レプリカ | 7 | 6 | 5 | 8 | 6 | 32 | |
66 | マルクと4つの封印石 | 5 | 3 | 5 | 4 | 1 | 18 | |
67 | かわいいヒヨコの大冒険 | 6 | 3 | 4 | 5 | 6 | 24 | |
68 | ネクロマンサーの迷宮 | 5 | 6 | 5 | 6 | 4 | 26 | |
69 | 食料品店 | 5 | 5 | 3 | 4 | 5 | 22 | |
70 | 今世 | 6 | 5 | 7 | 6 | 6 | 30 | |
71 | 夢幻ノ迷宮 | 6 | 5 | 5 | 5 | 5 | 26 |
結果発表を受けて
1位 箱庭ドールメーカー
かなり特殊なシステムをすんなりと飲み込ませる高い完成度であり、1位もさもありなんといった作品でした。
また、クリア時間10時間程度、あるいはそれ以上にやり込ませる作品である長編が優勝を飾ったのは個人的に嬉しくもあります。個人的にアクアリウムスとか悠遠物語みたいな長編が好きなので。
普通に合計点もそこそこ高いあたり、長時間遊ぶタイプの作品にもかかわらず、プレイ率、あるいは投票に向かわせるまでのプレイ継続率が高い作品であったことも伺えます。正しく10時間以上遊ばせるゲームだったと言えます。
個人的には戦闘システムが発明的に感じていて、ゲーム全体のシステムとの親和性も含めてここ数年のうちでも出色のものであったように思いました。
2位 やけくそ料理人と不良債権
どうして毎年面白いデッキ構築ローグライトを作れるのか分かりませんが、今作も面白いです。面白すぎて、クリアしたら次のゲームやろうかなと考えていたのに、終わったらおもむろにハードを始めていました。これ去年もやったな。
ギリギリを突くことで辛うじてクリアできるような気にさせるレベルデザインはずっと秀逸の一言に尽きるもので、その上でやり込んでいくと次の難易度もまたギリギリクリアできるラインに乗ってくるカーブの良さもまた秀逸なものとなっています。とにかく難易度設計が絶妙。
個人的には優勝レベルに感じていましたが、様々な分野で競った中での2位ということで、殿堂入りは先送りになりました。惜しい。いっそ殿堂入りにならずに、ずっと参加してくれませんかね。
3位 迷宮郷まよろば
表現の怪物というか、表現と演出で全部殴ってくる作品でした。そりゃあ画像音声が強い。
探索アドベンチャーあるあるの何もない袋小路であっても、そこに表現と演出を込めさえすれば探索の一部となりますよね、というのを地で行っています。表現力が高く意匠が優れているのであれば、何もないこともまた美しいということが脳髄に分からされます。
筆者は総合的に6番目くらいにつけてますが、画像音声を上限突破して良いならまだまだ上に行く作品でした。10じゃ足りない。
4位 放浪者セレナ~少女を救うため、闘技場で戦う女~
ウディコンは完成度高く、短い時間で満足感を与える作品もまた同様に高く評価する場であり、この作品はそれに相応しい完成度の高さを誇るものとなっています。
ある程度自由に上げられつつ、絶妙な難易度の中繰り広げる戦いのバランスは極めて良く、ピーキーな振り方をしても意外となんとかなるようになっています。プレイヤーのやりたいように極めて戦えるのは良い作品です。
5位 LIGHT OF MANA
圧倒的グラフィックと斬新さでもって、新たなプレイ体験を運んでくれる作品でした。
ある程度凝った仕組みを設計したとしても、商業レベルの洗練されたグラフィックとUIがあれば、かなり自然に飲み込むことができるということの証左でもあります。目で見て理解できるとはこのことですね。
個人的にも4番目くらいに置いているので、この高順位も納得の作品です。
6位 勇者不適伝
割と個人的には好きで2番目あたりに置いていたため、もう少し上かなと思っていましたが、ストーリーメインのRPGの宿命っぽい点の伸び方もあってか、この位置となっています。
とにかく、ストーリーとの親和性が高いシステムであったり、諸々用意されている差分であったり、聖人を聖人のままにしないシナリオだったり、色々と好むところが多い作品でした。
中でも特筆すべきが半裸差分がいたるところに用意されているところであり、何でそこにそれほどの熱量があるのか分からないところも含めて良い作品だなと思っていました。
7位 魔王復活物語
ゲーム構造の活かし方が抜群に上手い作品でした。
ただ斬新であるのではなく、そこに思考を与え、常に発見と驚きを提供してくれるあたりの設計はただひたすらに脱帽です。斬新であるという強い驚きと、けれどそこにある確かな納得感の両立という面において、並ぶもののないものとなっていました。斬新1位は当為と言えるでしょう。すみません、斬新2位でした。余りに良くて幻視していました。
個人的にも推している作品であり、もう少し上位にあってほしい気持ちはありましたが、ものすごく偏る部門点数比によってこの位置にある次第となっています。いやしかし、真っ当に遊びやすくありませんでしたか。
8位 「■」の多いダンジョン
個人的な意外度が最も高い作品です。しかし振り返って考えてみれば、上記にも触れた高い完成度で遊びを提供する短編枠として、かなり完成された出来となっているのでむべなるかなといった気持ちになりました。
それを裏付けるように、全体的な得点は満遍なく高く、全てにおいて高いクオリティで作られたがゆえになせる業となっています。
また、システム面でも短編故に割り切った斬新さを提供できる戦闘システムとなっており、ゲーム全体の規模感との親和性も高く、30分を遊ぶという観点で見ると最後まで遊びたっぷりの作品となっていたのだなと感じていました。
9位 ラピッドスティール3
個人的には7番目くらいに置いてるのでもう少し上だろうという気持ちもありつつ、シューティングがこの順位にあるのもあんまり見ないので凄いなという気持ちもあります。TRIくらいまで遡ることになりそう。
ストーリーをこなしつつ適度に楽しめるモードは初心者でも無限リトライで楽しむことができ、物足りない上級者はハイスコアを取るなり、強化ボスに挑むなりで楽しめる、どちらにとってもお得な作品でした。
個人的にはボスのパーツから背景の演出、カーソルのちょっとした挙動まで、細部にわたる様々なこだわりが好きな作品でもあります。
10位 水底の記憶
個人的短編枠トップの作品です。結局良くできたシナリオの短編の探索アドベンチャーに弱いのかもしれない。
情景を描きあげるスチル群もさることながら、個人的には分岐そのものがめちゃめちゃ好きな作品なんですが、それについて語るにはこの余白が足りないので感想に放流することにします。
ウディコンに夏祭りの作品があるというのも、ウディコンという祭りにちょうど良く、そういう気分のバフも乗っていたかもしれません。夏にやると良いのかも。
11位 ジャンクエデン2
ゲームサイクルが人をはまらせる形をしている作品です。取り込んでその輪の中に入ってしまったら、もう抜けられなくなります。
とりあえず一拠点探したらやめようかなと思っていたら、あれよあれよという間に奥地にまで侵入してしまう中毒性の高さを持っています。気づいたらジャンクをいっぱい抱えている。
また、この広大さをもって、負荷を抑えて実装しているシステム面に思いを馳せることもありました。どうやってカリングしてるんだろう。
12位 Inifis
マルチエンド短編としての余りの完成度の高さに、何も考えずにプレイして気付いたら全END制覇していました。
別のエンディングを見たいと思わせるシナリオと世界観の強さ、別の行為をしてみたいと思わせる様々な選択肢の提示、それらを簡単にできそうだなと思わせるサポートの充実、全てがプレイヤーをマルチエンドに誘ってきます。逃れられるプレイヤーはいません。
ここからは個人的に気になった作品を取り上げます。
15位 ダーゴラス
レトロRPGという形式を取りながら、ここまで遊びやすく作ることができるんだという感動がある作品です。
所々の現代化の手腕は見事というほかになく、それによって感じられる現代的な空気の面を、上手くセンテンスの強さでレトロ側に押し戻すテキストの妙もまた見逃せないものとなっています。
この形式で遊びやすさ5位を取っているあたり、その設計の秀逸さが分かるというものです。
16位 記憶のあらいかた
個人的に今ウディコンで最も鮮烈に印象に残った作品です。20分という短い時間に込められる最大の情報量が頭に叩き込まれるような感覚でした。
ゲーム性そのものも充分高い強度を誇っているにもかかわらず、ボイスと作者をヒロインとする圧倒的なまでの天下無双さがそれらを忘れ去るほどに作品を遥か高みへとぶち上げています。
紹介とか感想を書いたり読んだりするよりも、プレイしてもらった方が直感できると思うので、何も考えずにやってください。
19位 チリガミの塔
今ウディコンにおいて、個人的な斬新さにおいてトップの作品です。ウディタというツールにおける、フリーで可能な分のオンライン要素を最も上手く活用したゲームであると強く思っています。
このアイディアをゲーム性にまで昇華させた段階で勝ちと言って良いレベルのデザインであるにもかかわらず、そこに加えて戦闘面でも斬新なシステムを組み込み、斬新さに斬新さをかけ合わせて凄いことになっています。10点じゃ足りない。
21位 綺羅星の射手
これをメトロイドヴァニアと呼んで良いかは分かりませんが、メトロイドヴァニアに脳を焼かれた人間として楽しむことのできる良い作品でした。
アイテムを探して津々浦々を探索する体験は楽しく、そうして強くなって挑む個性豊かなボスの攻略もまた楽しめる作品です。探索系統のアクションゲームの良いところが全部詰まっています。
初期に不具合が割とあり、その辺が遊びやすさに響いた気がしないでもないので、そこが改善された現在はもはや欠点なく遊べるんじゃないでしょうか。
At End of the World
個人的に最も乖離を感じている作品です。筆者はこれを5番目に置いているので、よもや圏外とは思いもしませんでした。ハクスラの醍醐味ともいえる厳選をひたすら繰り返し、自分の理想の戦略へと漸近していく楽しさは随一です。
序盤のバージョンだと、アイコンで説明されているものが文字情報だったようなので、その辺のとっつきにくさによる脱落が響いたんでしょうか。現在はアイコン化されており、かなり分かりやすくなっているので、やるなら今です。やりましょう。
翠玉郷のオリヴィエ
乖離を感じている作品その2です。ここまで完成度の高いアクションを作っても圏外になるの、魔境が過ぎやしませんか。
Bomb Chickenしかり、ワンアクションに複数の意味を持たせることで完成されたデザインとしての美しさは素晴らしいものであり、この作品もその例に漏れずステージデザインも込みで非常に高いクオリティを提供してくれます。
難易度についてもヴァーミリオンよりはだいぶ軟化したと思うんですが、もしかして高難度の方が場合によっては有利だったりするんですかね。
優しいごはん
こういった長編がウディコンにおいては難しいなというのはカヤミセツナの頃から思ってはいたんですが、それにしても圏外なのは悲しみがあります。
様々な食材を効率よく狩って料理を作り上げていく一連の流れは作業の流れとして良くできていて、準備のために無心で肉を狩るのも乙な感じの作品でした。
プレイすると色々なものを美味しく食べようという気持ちになってきます。タイトル通りだ。
POV
これが圏外なのは理性では納得できて、感性が納得せず、総体としてあんまり納得していない自分が中央に居座っています。
このゲームをどう評価すべきかは本当に難しく、筆者が総合的に14番目に置いているのが妥当なのかそうでないのかの判断は自分自身の中ではできませんでした。理性と感性が一番相談して点を乱高下させたゲームであり、遊びやすさ以外においては喧々諤々の議論を脳内で交わした末にこの状況に落ち着いています。感性はお前は夜更かししてまでクリアを模索したんだから熱中度10点だろうと叫び、理性はゲームやらずに不具合を調査した時間が4割近くに上る作品の熱中度を10にするのは健全なのかと諭してきます。全てがこの調子でした。
万人にお勧めするつもりは毛頭ないんですが、そのゲームを良いと感じたのであれば、数多の不具合とAバグを潜り抜け、進行不能を全て回避してクリアルートを見つけ出す巻戻士みたいなメンタリティでゲームができるような人にはとりあえずやってみてほしいです。良いと感じたのであれば、きっと後悔はしません。
モンスター・レプリカ
モンスター200種以上を、色違いっぽいのがいるとはいえど、ここまで揃え切って各地に上手く散らばせているというだけで素晴らしい作品なんですが、なんで圏外なんですか。これが分かりません。
自分なりのレプモンを駆使して色々と戦略が立てられるのも面白く、お気に入りのレプモンを軸に戦うのでもよく、何かテーマを決めて揃えて行くのでもよく、プレイヤーの好きなように遊ばせてくれる度量のある作品でした。
後記
以上で、長文にわたるレビューと感想について終わろうと思います。
今年は興味深い設計のゲームが色とりどりに存在し、驚きと楽しさが詰まった年だったのではないかと考えています。
至高のゲームデザイン「やけくそ料理人と不良債権」、異色のRPG「勇者不適伝」、瞠目すべき構成「魔王復活物語」、斬新とユーザビリティの融和「LIGHT OF MANA」、ハクスラの魅力「At End of the World」、芸術の神髄「迷宮郷まよろば」、楽しめるシューティング「ラピッドスティール3」、緩い連帯の力「チリガミの塔」、短編のエッセンス「水底の記憶」、自由を乗りこなすシステム「ジャンクエデン2」、天下無双のインパクト「記憶のあらいかた」。
今年のウディコンは、多種多様なジャンルから生み出される様々な観点の面白さに触れ、蒙が啓かれる思いを感じる場となっていました。
コンシューマもインディーも隆盛を極め、赤々とした海にさえ感じるゲームというステージの中でも、未だ開かれていない新天地も、まだ見ぬ世界の広がりも、まだまだたくさんあるのだなという感覚を与えてくれます。
こうしてゲームを享受し、楽しくプレイできたのはひとえにゲームを製作された方々のおかげです。改めて、ここに感謝の意を記しておきたいと思います。
次のウディコンを楽しみにしつつ、この文章を終えます。
感想
以下はもはや文章になっていないかもしれない感想です。ご笑覧ください。
今回は海外旅行と帰省にもろに被ったので、適当にスケジュールを立てて40から50作品程度にとどめる予定でした。しかし、帰省がキャンセルになったので、それならと詰め込んだ結果、ほぼ全作品クリアと相成った次第です。
ほぼ、と言うのは全作品をプレイしている方なら分かると思うんですが、2作品ほど回避できない進行不能があるので、クリア不能と判断したためです。ちなみに、進行不能がありはしますが、POVはクリアできるのでクリアしています。というかクリアさせる力がありました。
今回のウディコンで一番好きな作品を挙げろと言われると、雪山道と答えたくなるところではあるんですが、エントリー停止作品を挙げて良いのか微妙なところではあります。ただ、雪山道は良かったというこの気持ち自体は間違いなく、気付いたら滅ぼし姫をウィッシュリストに突っ込んでました。風が吹いた。
そのせいで、今ウディコンの最大の心残りとしてAnotherに行けていない、というのが残り続けているわけなんですが、プレイスキルが無さ過ぎて行ける見通しがあんまり立っていません。もっと貪欲な戦略の見直しが必要そう。
今ウディコン、ゲームの面白さという面ではやけくそ、印象に刻み込まれたという面では記憶のあらいかた、なんか良く分からないところにぶっ刺さったという面ではPOVが強く心に残っています。
やけくそは何も考えずにやると軽率にベリーハードを起動し始めるので、全作品をクリアするには強い自制心が必要になります。こんな面白い作品を出されると困る。
記憶のあらいかたはフリーゲームというものが持つフリーさをぶっちぎっていった作品であり、もう忘れることあたわずといったものになっています。完全にこげとなってしまった。
POVは定期的に来る何故か己に刺さってくるタイプの作品で、過去ウディコンだと死後の世界に触れた彼女はとか、僕らのスイソウとか、緋色の研究所とか、hereとか、このあたりの作品に該当します。そして、これらの中でも一番自分の中で処理に困っている作品でもあり、心のどこに置くか決めあぐねている状況にあります。どうやってラベリングすべきなんだろう。
年々感想を書く時間が取りにくくなり、それに応じてウディコンから時期が離れるごとに感想をしたためるのが難しくなっていき、よりモチベーションが低下していく負のスパイラルがある気がします。社会人でゲーム作ってる人凄いなと改めて感じる今日この頃です。感想書くだけで、ここまで時間かかるわけですからね。ゲーム製作は言わずもがな。
前半書き終わるまでにここまでの時間がかかっていて、もう旬も過ぎている感じもあるんですが、感想は半分くらい自分の備忘録として書いてるので良しとします。ここまでで大体11万字くらい書いて校正してきたので、残りのレビューとか校正とかやっていこうと思います。目指せ11月上旬。
一部感想で表現とか言葉の選択に触れてることが多いんですが、かく言う筆者もそこまで厳密にやれているわけではありません。一応、全文校正時に表記揺れなどは確認していますが、ちょくちょくミスっているだろうなとは思います。
なお、その辺をきちんとやりたい方は、以下の文化庁のPDFが指針を決める上では割と便利なのでお勧めです。全部やってるわけじゃありませんが、やろうかなと思ったことはこれを基準にできます。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo_kadai/iinkai_26/pdf/r1414166_02.pdf
また、これは意味的には正しくないけど伝わるなあと思った場合も、とりあえずその言葉を使う場合もあります。その言葉が頭に出てきたんだから、その表現が示す比喩的な感覚を大事にしたいという思いです。ご了承ください。
魔王復活物語に感動しすぎていて、目が節穴になっていたのでお詫びして訂正いたします。
言い訳がましいんですが、一応本文は三度ぐらい校正していて、表現とか事実確認のチェックはしてるんです。それでもミスはあると思うので、指摘いただけるのは助かります。なにぶん長いので。
今回のレビューについては、とりわけPOVの感想をまだプレイした感覚が残っているうちにしたためられたのは良かったです。こういうのはライブ感が無いと、振り返ってみた時に思い起こすことができなくなってしまうので。
過去のやつの中には社会性フィルタを通したレビュー本文しかないのもあって、個人的には当時の感覚を上手く再現できていないあたりがもどかしいですね。
今回は、最終校正前ではありますが、総文字数201387字になんなんとする怪文書に仕上がりました。20万字書いてる。原稿用紙にして500枚以上ですね。次回は文字数少なくして勢いで書き上げるとは何だったのか。次回があれば、(ry
なお、一番文字数が多いのはやけくそ料理人と不良債権で9800字、次がPOVの9400字、迷宮郷まよろばの7300字、雪山道の6300字と続きます。やけくそはシンプルにレビューが長いのもあって、感想ではPOVの8700字がトップです。どんだけ書いてるんだ。
なお、平均は2700字くらいで前年よりちょっと増えた程度なので、作品数が増えて盛り上がったおかげで文量が増えたという面もあります。いっぱい書けて楽しかったですね。