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64. 家への帰り道

ジャンル 作者
探索 sio
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.1 クリア

良かった点

  • シンプルにまとまっています
  • 必要最小限の構成となっていました

気になった点

  • 家のBGMが無音でした

レビュー

おうちにかえろう

家への帰り道は、シンプルな探索アドベンチャーです。
家に帰る途中でトラブルに巻き込まれてしまいつつも、何とか帰ろうとする道筋を体験できます。

その身に降りかかったトラブルを解決するためにも、いろんなところを探索して解決の糸口を探し出していきましょう。
主なマップは一つに収まっており、ミニマムな探索を楽しむことができます。

主人公が果たして無事に家に帰れるのかは、プレイヤーの手腕にかかっています。調べるべくを調べ、お家に帰してあげましょう。

感想

シンプルな探索ADVという印象です。本当にシンプル。

とにかく必要最小限の探索要素という設計になっていて、ちゃんと探索していればおのずと正解に辿り着けるようになっています。
細かいイベントの積み重ねで小さな冒険を演出している印象です。
加えて、夕方に学校に行っても差分会話があったりと、細かい所にもちゃんと配慮されています。ミニマムながらも、ちょっとした細かい要素もケアされていました。

なお、最初の歩行速度が遅くなっていて、これで探索やると面倒そうだなあと思っていたんですが、ちゃんと狐になると移動速度が上がるので問題はありません。あの遅さはあくまで演出的なものなので、これは杞憂でした。
一応歩行速度が遅い区間は多少ありますが、演出として受け入れることができるレベルです。

個人的に気になる点を挙げるとすれば、家のBGMがないことくらいです。最初は無音のゲームかと思っていました。

ちなみに、細かい話になるんですが、このゲームはゲーム容量がかなり小さいです。恐らく、今回のウディコンの作品の中で一番Data.wolfが小さいのではないかと思っています。
実際のゲーム内容と即しているといえばそれまでかもしれませんが、これより少なくなりそうなゲームが多い中でちゃんと削減されているというのは良いなと感じました。

65. まな☆がん えくすとりーむ

ジャンル 作者
シューティング カッパ永久寺
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.00 クリア

良かった点

  • だいぶ危ない方向に振り切れた物語でした
    • その上で伏線などはきちんとしています

気になった点

  • シューティング時に、連射できる時とそうでない時があるように感じました

レビュー

色々アブないシューティング

まな☆がん えくすとりーむは、危険な香りのするシューター系のゲームです。

ちょっと危ない物語が展開される中、マナゴンと呼ばれる怪物を撃っていくゲームとなっています。
様々な動きをするマナゴンに翻弄されないように、上手く狙って撃っていきましょう。なお、赤いマナゴンは撃ってはいけないため、注意が必要です。

そうして指示通りにマナゴンを撃っていくうち、物語は思わぬ方向へ急展開を迎えていきます。
マナゴンとは一体何なのかはプレイしてみると分かるでしょう。

感想

※この感想は筆者個人の感想であり、特定の団体などを代表するものではありません。また、特定の団体に対する誹謗中傷などの意図は一切ありません。
この作品の感想をちゃんと書こうとすると危ないことを書きそうなので、先に断っておきます。

風刺作品かと思っていたら、思った以上にそのまますぎるという印象です。もはや風刺の域かも分かりません。全方位に対して直接的にディスってるんですが大丈夫なんでしょうか。
なお、最初の内はタイリク国が中〇人民共和国かと思っていましたが、よく考えなくても名前からして〇シアですね。まあ同じ共産圏だし誤差ですね。

ストーリーは勢いである程度進行していくんですが、ちゃんと赤いマナゴンとか細かい伏線めいたものは張っています。ゲーム性に対してもちゃんと意味付けがされているのが面白いです。
また、ちゃんとやり直せないというところも良くて、どれだけ昔にさかのぼっても殺さないという選択肢はありません。このゲームにエンド分岐などないので、罪は罪としてそこにあるだけです。

ちなみに、これは野暮な話になるんですが、この手の作品を見ると毎回思うこととして、警察の初動があまりにも遅すぎて気になります。そこそこ時間が経過しているのに、一向に動きが無いので。
もしかしたら、タイリク国の工作員が警察組織内部にいて妨害しているのかもしれませんが。

ゲームとしては通常のシューターという感じです。
ちょくちょくギミックは出てきますが、基本的にはちゃんと打てばクリアです。一応全KILLはしたんですが、性質上あんまり喜ばしいものでもないですね。
また、連射できる時と連射できない時があるんですが、この違いの理由が良く分かっていません。何となくウェイトの間隔がまちまちな印象です。

時事が時事で、タイミングもあって大分ラインギリギリの作品という印象はあるんですが、主義主張の類がそれほど色濃く出ているわけではないので、恐らくラインの内側だろうなとは思っています。

66. 海賊黙示録

ジャンル 作者
航海 挟まり卿
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.03 クリア

良かった点

  • 潮流を読んで航海していく楽しさがあります
  • 熱い物語であり、良いキャラクターが描かれています
    • 殊にセリフ回しが最高に粋でした
  • 道中のイベントのバランスも良好でした

気になった点

  • 特にありません
    • チュートリアルはないんですが、それすらも世界観に寄与している印象です

レビュー

アウトローの生きる様

勧善懲悪は正義という行為を下すものであり、正しいことを行うという意志でもって物語が推進されていきます。これは、その意志に基づいた正しさというものが魅力となるがゆえに、翻ってダークヒーローと呼ばれる存在であってもヒーロー性としての正義を求められることに繋がります。
しかし、もしも強い意志に基づいた強い推進力こそが魅力であるのであれば、悪役の美学であるその信念を曲げない意志もまた貴いものであるでしょう。
海賊黙示録が描くキャラクターとその物語においては、徹底して正義としては描かれない悪者であっても、その曲げられない意志が示す生き様でもって、確かに心を動かしてきます。

このゲームは、広い海にポツンと放り出されるところから始まります。右も左も分からない中で船を進め、リソースを消費しつつ移動を重ねていき、広大な海を航海するゲームとなっています。

航海するには潮流を見極めることが肝要となります。
流れにうまく乗ると少ないリソースで渡っていくこともできる一方、逆らうと目的地に着くことさえ覚束なくなります。
流れを読み切って、効率的に航海を進めていきましょう。

一方で、動くたびに消費を重ねていく航海を円滑に進めるには、リソースの補給と強化が必要となってきます。
各地の陸地にある町に寄ることで、資源を消費して補給と強化を行うことができます。ただし、資源はその町を略奪し、補給も強化もできない更地にするしか入手することはできません。
どの町を残し、どの町から資源を奪い取るか、略奪すべき町を選定しつつ、限りあるリソースで大海原を渡っていきましょう。

そうして航海を進め、目的地を渡っていくことで、この作品の圧巻となる熱い物語が展開されていきます。
ゲーム性としても略奪するような悪として描かれる海賊たちは、ひょんなことから世界を救おうとする若者を乗せることになります。
一見すれば正義と悪の矛盾したような取り合わせが、進めていくうちにあるいは同質のもののようにすら思えてくることでしょう。そうした彼らの旅路の果てで、海賊たちの生き様が描かれていきます。

海賊たちの向かう先、そして世界の趨勢を見届けるためにも、後悔せずに航海していきましょう。
熱い物語を体験したい方にお勧めです。

感想

ウディコンを良く知っているとサムネとかコメントで分かる所があるんですが、今回は実質的な匿名が三名いらっしゃったので、一目の判断は難しかったかもしれません。
ゲーム性とかコメントの性質とかで、それでも分かる人は分かるとは思いますが。

ゲームとしては全体を俯瞰するとリソース管理ゲームっぽさもありますが、基本的には航海ゲームです。潮流を読んで上手く航海して、貴重な資源をやりくりしていくことになります。
潮流を見ることが肝心というのが航海っぽくて良く、流れに乗れば高速移動できるし、そうでなくても通れるポイントの見極めなどに使えます。ルートを見定める楽しさがあります。

全体としては有限の資源のやりくりが主で、町でリソースを消費して補給が可能となっています。その一方で、一定まで行くと略奪しないと補給できなくなってしまいます。略奪するとその町からは補給できなくなるので、一方通行のリソース管理が成立していました。
とはいえ、町はそこかしこにあるので、ちゃんと水と機体を拡張し、ある程度節約して動いていればそれほど苦労しないバランスになっていると思います。大分緩いリソース管理な印象です。
念のため、補給点を略奪する時は位置関係を気にしておくと、ちょっと楽になる程度だと感じました。

このあたりの緩めのリソース管理でほどほどの緊張感を持ちつつ、流れを見て大胆に航海していくのが楽しいゲームです。全体的な難易度は、この作者さんのゲームの中では低めな気がしていました。アヴァロンが特異点的に難しいというのはありそうですが。

むしろ、中盤くらいにあるRPG的な戦闘のほうが難度が高い印象で、最後のあれは実質初見殺しだと思っています。そうでなくてもSPリソース管理ゲームなので、ちゃんと戦略的にスキルを使っていく必要があります。
最後のアイツを倒し切るには1000ダメージ必須なので、それまでにリソースを残しつつ、とはいえ相手の火力がかなり高いので被害を抑えるためのリソースは惜しみなく使わなくてはならないという良いバランスです。
このようなイベント的である局所的な戦闘バランスにおいても優れていました。

航海としては最後の目標点が最難関ではあるんですが、これはどちらかというと道筋を見つけることが主眼なのだろうと思っています。何度も沈んではルートを開拓していけば、それほどアクション性は求められずにクリアは可能です。
そういう意味でも、やはり正しくルートを見極めていくことが肝要なゲームなのだと思います。
ちなみに、筆者は左回りの航路を通ったんですが、右回り航路は突破可能なんでしょうか。あの砲台群も厳しいながら、そもそも航路全体が長い印象があるんですが。

なお、最難関たる最終目標点以外についても中ボスレベルの難易度の目標点はあるので、序盤以外は目標点を周ることが簡単すぎる、といったことはありませんでした。
常に潮流を見てルートを考えて乗り切るという面白さは担保されていた印象です。

そして、このゲームを語る上で欠かせないのは、やはりストーリーでしょう。
それぞれの会話は決して多くありませんが、その短いやり取りの中でもキャラクターを好きになれるレベルの密度を持っています。はみ出し者を描きつつ、SFっぽい風味を足すのがべらぼうに上手いです。

基本的に主人公めいた存在は若者たちではあるんですが、はみ出し者のおっさん達がサブを越えてメインとして物語の主軸を担っているからこそ出せる渋さが良いです。各々の発言が逐一良い。マグパイを好きにならない人は多分いないと思っています。
信念を持っている存在は悪役でも脇役でも主人公でも格好よく見えますからね。

物語としての構成についても完成度が高く、上手くけん引する展開も裏切るような展開も入れつつ、ゲームにおいて過不足のないボリュームに収まっています。必要十分な物語という印象です。
加えてその上に、個々の個性や生き方を存分に描くことで、物語そのものの魅力が大きく増強されています。先を読みたくなる理由の半分くらいはキャラクター性に依存していたように感じました。

そうして彼らの物語の行く末が常に気になるからこそ、それが次の町に行くモチベーションになって、どんどんと航海を進めてしまいます。
航海そのものの楽しさもさることながら、次の目的地を目指す上での明確なモチベーションがあるというのもゲーム的には大きな強みになっているように思います。
物語が持つ強い牽引力というか、導線としての力強さがいかんなく発揮された作品です。

かてて加えて、台詞回しだけで物語が高いレベルで構成されたと言って良い完成度をしているので、会話劇の応酬が好みな人には刺さると思います。少なくとも筆者には刺さりました。
あの短い応酬の中で、物語としての熱さもキャラクターとしての生き様もありありと描写できているということが素晴らしいです。

しかしまあ、何も説明せずに大海原に放り出されるの良いですよね。チュートリアルなんかもありません。
この世界観における、全てに対する放念めいた感覚をすら覚えます。

67. 父と娘のまちがいさがし

ジャンル 作者
間違い探し すたーあいす*
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.12 クリア

良かった点

  • 間違い探しにアクセントを加えた良いシステムでした
    • 特に最後のステージの形式が良いです
  • 操作性は直感的でした

気になった点

  • 部分的に常識力あるいは共感力が求められる正解がありました
    • 判定範囲もややエスパーが入ることもありました

レビュー

よく覚えて正解を見つけよう

父と娘のまちがいさがしは、間違い探しを基点とするアドベンチャーゲームです。

基本的には間違い探しをベースに、クリアすることで物語が進行していきます。
しかし、このゲームにおける間違い探しは、ただの間違い探しではありません。間違いを選択することに加え、直前の会話の情報を踏まえて、正しかった方の画像を選ぶ必要があります。

例えば、指の形がパーかピースかという違いがあった時は、直前の会話であの時はピースをしていたという情報があれば、ピースをしている画像の方を選択しなくてはいけません。
双方の画像を突き合わせて間違いを見つける能力はもちろんのこと、短期的な記憶能力も同時に求められることになるでしょう。
なお、必要であれば質問やヒントを活用していくという手も残されています。

そうして間違い探しの問題を次々と正解していくと、ストーリーは思わぬ方向へと転がっていきます。
間違い探しのゲームを乗り越えて、ストーリーを進めていきましょう。

感想

間違い探しというか正解当てに近いゲームです。短期記憶力ゲームとも言えるかもしれません。
間違い探し的な能力も求められますが、それ以外の能力も求められるといった印象です。

会話内容をどの程度覚えておけるかのゲームでもあるので、それによってより正しそうな方を選ぶことになります。
自信が無ければある程度メモっておけばいいですし、実際筆者は個数がらみは自身が無いのでメモしていました。それだけならメモにもそんなに時間はかかりません。

この短期記憶力間違い探しというのは結構面白い仕組みで、単なる間違い探しの上に正解を当てるレイヤーが被さっていて、別の思考を両方使う感じがして良いです。
一つ要素を足すことでオリジナリティを演出する設計として、良くできているように思いました。

ただし、部分的には常識力というか共感力が求められるところもあります。例えば幸せの青い鳥という存在とか、太陽は笑っていたほうが幸せだとか、そういう類が該当します。また、綺麗な結び目と言われて2つ結びを選べたのは、大分エスパーが入ってる印象です。
とはいえ、大まかには情報処理能力で何とかなるレベルなので、それほど理不尽なポイントはありません。
また、若干判定範囲にもエスパーが要求されることがありますが、これも少数でおおよその判定は納得できるレベルです。

なお、基本的に使用するUIは中心に寄っているので操作はしやすく、操作自体も直感的なのでさほど迷うことはありません。ルールの単純さに合った、シンプルな操作性をしています。
加えて操作性は良好なので、すんなりと間違い探しに取り組めます。

ストーリーについては明るめ進行の中に暗い展開をまぜこぜしていますが、おおよそ前向きな内容です。
暗い展開を入れるのが、この作者さんの一種の手癖というか作劇の手段みたいなものなのかなと感じています。実際、悲劇的な展開を入れることでメリハリはついていて、山とオチの落差がついています。

さらに加えて物語に絡む範囲で言えば、最後の形式のステージは好みでした。ストーリーそのものと密接に絡みつつも、ちゃんとゲームとしては成り立っています。
そのゲーム性でしか表現しえない演出を用いて、物語を構成する設計が好みでした。ゲームで物語を構成している以上、ゲームでしかありえない演出がなされていることに強く心が動きます。ゲームである意味を感じ取ることができるので。

68. グレイトサクセス

ジャンル 作者
ランゲーム パンツ14代目
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.10 ストーリークリア

良かった点

  • 最高のノリと勢いでした
  • ぶっ飛んだ世界観の中でまっとうに熱い物語を演出しています

気になった点

  • 回避アクション中に上下移動できないことが多いので、回避無敵終了後に当たるというのが間々ありました
    • 特に回避行動が長いキャラクターは、当たるかどうかが運の印象が強いです

レビュー

試される北の大地であなたのサクセスが求められる

グレイトサクセスは、圧倒的なノリと勢いを持つアドベンチャーとランゲームが融合した作品です。

このゲームにおいて特筆すべき点は、始終加速度的に進行していく物語の勢いと、その勢いに乗って存分に浴びせかけられるキマった世界観です。
次から次へと個性豊かなキャラクターが登場しながらも物語が展開し、どんどんその世界に引きずり込まれていくことでしょう。

しかし、そうした独創的な世界観に対して、本筋となる物語は圧倒的に正道な熱いストーリーが紡がれています。
一見すればあらゆる方向にはじけたようなそれぞれの個性も、幹となる本線が真正面を突き進むことで、ある種の指向性をもって物語の中に組み込まれていきます。
そうして構成された世界観と物語により、正道と狂気が交じり合ったような濃厚な体験ができること請け合いです。

また、その物語の合間合間ではランゲームが行われます。
それぞれのステージで異なる自機を操作し、回避行動を上手く使いつつ、障害物に当たらないように駆け抜けていきましょう。
一方で、物語の重要な場面で相対するボスとの戦闘では、敵の攻撃を適宜避けつつ、反撃していく必要もあります。

ランゲームを抜け、熱い物語と狂ったような世界観を存分に浴びながら、あなたもレッツサクセス。

感想

ゲームプレイ中、常にノリと勢いで完全に突破してくる作品です。
これ以上の勢いがある作品は中々見たことがありませんし、これほどまでに勢いの力を感じることのできる作品も中々お目にかかれるものではありません。

まず、ネジを外さないと作れないような世界観の中で、きっちりと構成された真っ当に熱い物語をやっています。正気と狂気を併せ持たないとできない所業です。
ノリは常にキマった雰囲気を保ちつつ、ストーリーラインはどこまでも綺麗に熱いので、狂ったようなノリに身を任せつつ熱い物語が体験できます。狂気的熱狂という感じ。
どれだけ走者が外れたことをしていても、正道を突っ走ってさえいれば綺麗に収まるのだということを教えてくれる作品です。

また、序盤から、あらゆる色々な設定を投げつけては来るんですが、割とふんわり理解で良いということも叩きつけられるのが良いと感じたところです。 いきなり学校教師がデストロイだったりするので、あんまり深く考えなくてもいいんだということが本能的に理解できます。
さらに、どんな設定が飛び出してきても試される大地ということで納得感をごり押ししてきます。まあ北の大地ならそういうこともあるんでしょう。しかし上幌、本当にありそうな言葉。

ストーリー展開的には、何やかんやと様々な設定やキャラをどんどん出していきつつも、それと同時に物語を進行させつつ、最後に風呂敷を畳むのが上手い設計になっています。10話くらいは紹介パートやりながら物語進めているレベルです。
加えて、これだけ勢いとノリで構成された物語でありながらも、最初のあれを伏線として綺麗に回収していきます。そういうタイプの物語とは思っていなかったので油断していて、思わず膝を打ちました。

なお、世界観設定上、シーシェパードとかSDGsとか危ないネタ使っているように見えますが、基本的にはネタとして
消化しているのでそれほど危険な印象は受けません。そもそも、それがメインではないので。
これらは一過性のネタとして使われる程度のものなので、あまり大きく思想的な印象は受けるものではありませんでした。

一方で、ゲーム性はシンプルなランゲームです。
キャラクターごとに当たり判定が違っていたり、ステージごとにギミックや長さ、収集アイテムと敵のサイズ感が微妙に違ったりはしますが、おおよそのプレイ感に大差はありません。

特に判定に癖がある印象で、当たり判定表示状態ですらよく当たり判定が分からないこともあります。敵の当たり判定が見えていないというのもありそうです。
アイテムの取得範囲と当たり判定も同じ仕組みで運用されていそうなので、ハイスコアを目指さない場合は安全運転を心がけるのが良さそうに思います。

また、回避アクション中に上下移動できないことが多いので、回避無敵終了後に当たるというのが間々あります。最初のMrウィナーのアクションくらい短ければ気を付ければ回避可能なんですが、長い連中はシンプルに運なので若干辛めです。班目君のやつとか。
回避なしでは抜けられそうもない構成もちょくちょく見かけはするので、このあたりは運と割り切って、それ以外で体力を減らさないように気を付けるのが丸そうです。

シンプルなランゲーム以外にも、ボスとしてのアクションも存在します。こちらは通常のランゲームに一味加えていて、ちょっと異なるアクションが要求されます。
ただ、どのボスもやることが共通化されているので、こちらもそこまでプレイ感に差はありません。途中から発狂めいた動きも見せますが、結局ラインが増えるだけです。
そもそもこちらの取れる行動が上下運動と限定回避だけなので、さもありなんという感じはします。
上下左右に動けていたら通常のランゲームともども幅が広がるような気もしますが、その分操作性が複雑になったり回避行動による加速が表現しにくくなったりしそうなので難しいところです。

ちなみに、公称のストーリープレイ時間は4時間から6時間になっていますが、私は1時間30分くらいで読み終わっています。何か見逃したかもしれません。もしくは、面白くてさっさと読み切ってしまったのかもしれません。

69. 畑から始める魔法薬学入門

ジャンル 作者
農業合成RPG abon
プレイ時間 プレイVer クリア状況
4時間30分 1.15 クリア

良かった点

  • 無心でずっとプレイしたくなる作品でした
  • 新しいロケーションの解放タイミングがちょうど良いです
  • それぞれのキャラクターのスキル構成の癖が強く面白かったです
  • 近づくとインタラクトできるものが光る仕組みは便利でした

気になった点

  • 畑の管理周りでいちいちメニュー画面を経由するのが煩雑でした
  • 芽吹きの間で毎回入り口に戻されるのは辛かったです
    • 以前の場所に戻れると楽そうです

レビュー

畑に学校に冒険に、好きなように過ごそう

導線が整備され、要素がうまく組み合わさり、配慮が行き届いたシステムの中では、得てしてプレイヤーはルーチンを自分で組み上げて黙々とプレイしてしまうことがあります。
畑から始める魔法薬学入門は、そんな黙々と遊んでしまう楽しさのあるゲームとなっています。

このゲームにおいてのプレイヤーの行動は、起床して畑のお世話をすることから始まります。
畑に種を植え、水をまき、実れば収穫していきましょう。雨が降っていればラッキーです。水をまかなくていいので、普段より時間をかけずに手入れが終わります。

続いて、学校に向かうのも良い選択肢です。収穫したアイテムがあれば、合成して薬が作れるかもしれません。
また、先生からレシピを学べば、新たな薬も作れます。あるいはレシピをアレンジして、より良い薬を作ることに挑戦するのも一興です。
食堂で依頼をこなしたり、図書館で調べ物をしたり、温泉に浸かったりと、様々な施設に立ち寄るのも良いかもしれません。

また、外で採集や戦闘をこなすのも良いでしょう。学校に行った後でも、時間があれば構いません。
採集すればアイテムや畑に植えられる種が手に入りますし、戦闘をこなしてレベルを上げていくのも大事です。ストーリーを進めるにも、外に行くことがカギとなっています。

そうして外で繰り広げられる戦いは、独特な個性を持ったスキルを活用していくことになります。
主人公は作った薬を活かして戦うことができ、仲間のキャラクターは被弾しなければ強化されていったり、ターンをまたいだスキルが使えたりと、それぞれ個性的なスキルを駆使することが可能です。
単独では癖が強いスキルでも、上手く噛み合わせれば何倍にも大きな力となっていきます。適切に戦略を立てて、強力なボスをも打ち倒していきましょう。

そうして採集や学習、戦闘などを終えて帰宅したら寝て、起きたらまた一日の始まりです。
時間の制約はないので、一つの行動が終わったら寝て時間を調整するというやり方でも構いません。自分のやりやすい過ごし方を模索していきましょう。

成長させて薬を作り、薬を活かして戦闘を有利に進めて物語を展開させ、そうして新たな地に足を踏み入れることで新たな薬が作れるようになる。このような、小さな流れとしての一日と、大きな流れとしての新要素の解放、双方の流れが完成された作品となっています。

自分なりの一日の過ごし方を立ててみて、黙々とプレイしてみませんか。

感想

畑で作り、学校を基点に冒険する良いゲームです。
これを先に書くと若干印象悪くなりそうなんですが、あえて書くと、細かい不満点は色々とあったかもしれないけれど最後まで楽しめる作品でした。手元のメモにはいろいろと書いてあるんですけど、それはそれとして何故だか、ずっとプレイできる作品です。

ゲームは楽しめればそれが最高なので、多少の不満点は最終的にはあんまり気になっていません。
枝葉末節はともあれ、楽しさのコアは外していないということだと思うので、主要なルーチン周りのコアがしっかりできているゲームなのだと感じています。

特に自分なりに行動のルーチンみたいなものが固まると、無心でずっとやってしまう感じがあります。
畑を使ってアイテムを取得しつつ、ダンジョンで採集がてら戦いつつ、ちょくちょく授業などもこなしていく、という導線があるおかげで、程よく新鮮味のあるものが見えつつ進行していくので、飽きずにどんどん進められます。

また、時間である程度の行動制約がつくので、これもルーチンを組む導線になっています。
時間という概念が無ければこれを繰り返しやるだけ、といった行動が強くなってきて飽きが早そうなのですが、適度に違うことが混ざってくるので常に変化のあるプレイが楽しめます。
ある程度プレイを続けていくと少しずつ全体の動きそのものは固まっていくんですけど、そこが慣れてくるころには、ロケーションの解放が楽しみになってきます。

新しい場所に行けるというのはそれだけで楽しいのですけど、このゲームはそれがさらに良いものになっています。
まず、新しいロケーションを見る楽しみというのがもちろんあります。ただそれだけではなくて、新しい敵や、新しい素材、そういったものが新しい薬へとつながっていくのが良いです。ストーリーも展開します。
こういったように、ロケーションの解放はいろいろなものへと連鎖していくので、飽きずに楽しみやすいところがあります。

枝葉末節の話をすると、細かい配慮ポイントと、細かいやりにくいポイントが混ざっている感じです。
特に、近づくとインタラクトできるものが光る仕様は地味に嬉しくて、ボタン連打する必要がないんですが、やらされている感も薄れる良い塩梅でした。

一方で、やりにくい感覚を多く受けたのは畑の管理回りです。
農具の切り替え及びシード選択がメニュー画面形式なので、手数がどうしても多くなります。畑がゲームの基点になりやすく、操作頻度も多いのでここは若干煩雑ではありました。
畑内部だけ専用操作キーを割り当てるなどが自然な気もしますが、筆者があまりこの手のゲームをやっていないので最適解は分かりません。牧場物語とかルーンファクトリーあたりが近いんでしょうか。
一方で、歩く必要が出てくる水やりなどは時間の概念があるので制約として受け入れられるレベルでした。

また、 芽吹きの間はそこそこ連続でやることになるので、逐一入り口に戻されるのも煩雑な印象を受けます。
特に後半は解放済みスキルツリーを巡ることになってしまうので、前回居た位置に戻されるなどでもいいかもしれません。スキルツリーとはいえ、基本的には以前いたところのほうが根よりは目的の場所に近そうです。

また、これはアップデートによって変化があったのではないかと思っているんですが、やたらに雨が降ります。
雨がキーとなるものがあったり、雨そのものが水やりが不要になる良い天候ではあるんですが、あんまり降り続けるのも変化がないなあという気持ちでいました。
雨乞いみたいなアイテムがあればバランスが取れるのかもしれません。一方であまりやりすぎると、天候操作する効率を極めてしまってランダム感が薄れてしまう懸念もありますが。

あと、このゲームはちゃんと薬を集めて戦闘するという面白さもあります。
RPGとしては結構まっとうなレベルデザインがなされているので、ストーリーの要所要所のボスにはそこそこの歯ごたえを感じることができます。
難易度は易しめでバランスがとれているんですが、各キャラクターの性質が尖っているのも面白いところです。戦闘も楽しいゲームでした。

ちゃんと畑や探索で手に入れたアイテムから作った薬があれば戦況を有利に運べますし、有利に運んだ上でのライダーズハイがめちゃめちゃ強いので爽快感もあります。アクセル付ければ火力が異常の域に達します。
占星術師も技の癖が強いんですが、上手く扱うと強い技が多くて楽しい。因果律で下地を整えて繰り出すライダーズハイが一番楽しいまであります。

全体を通した個人的な感想として、大きくタイムリミットで区切られていなかったのも良かったなと感じました。
設定的には学年で区切るなどのリミットを作ることもできそうなんですが、そういう区切りが存在しないおかげで、あんまり焦らずに色々と試せて良かったです。
とはいえ、筆者は制約が無くても効率化を目指したくなってくるので、結局は良い感じのムーブを模索してはいました。マージン広めのリミットがあったカミヤセツナでもそんな感じでしたので。

とにかくプレイ中はいろいろやりながら、ちょくちょく新しい場所が出てきて新鮮味を覚えつつ、全体としてはのびのびプレイできたので良い作品だったと思います。のんびりしていなかったのが雨判定のバグの検証時くらいでした。
色々やりながらRPGも楽しみたい人にはお勧めできると思います。

70. ただのRPG

ジャンル 作者
レベリングRPG HRGAME
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.0相当 クリア

良かった点

  • 戦闘ごとにBGMに変化がありました

気になった点

  • 操作性が非常に厳しいです
  • レベリングを強制する割に、敵が遅延行動メインとなっています

レビュー

レベリングせよ

ただのRPGは、レベル制限のあるRPGです。

基本的には通常のRPGとなっていますが、次のステージに進むにはレベルを上げる必要があります。
そのため、とにかくダンジョンに潜ってレベルを上げていくことになるでしょう。

レベリングを繰り返してダンジョンを進んでいき、物語の終わりを迎えてはみませんか。

感想

レベリングRPGとでも言うべき作品でした。とにかくレベルを上げることが大事ですし、それを要求されます。

このゲームに関しては副題が全てを物語っているところはあるんですが、それがどこまでを指しているのか分からないので、一応ここに感想という形では記しておきます。

とりあえず、操作性が非常に厳しいことになっています。
いきなりEキーを使うことから始まり、かなり独自性のあるキーバインドをしています。加えて、あまり意味もなくマウスもキーボードも必要な操作形態になっていて、これが細かいストレスに繋がっています。
メニューの開閉、設定の決定はキーボード必須なのに対して、メニュー操作はマウス必須です。分ける意味があるケースは、演出上の理由とか、構造上の理由とか色々とありそうですが、このゲームに関しては特に思いつきませんでした。

ゲーム設計としては、レベル上げというプレイヤーがRPGで最も作業的に思っているであろうことだけをやらせてきます。
レベル上げという行為は、RPGを初心者が遊ぶ場合でもとりあえず強化していけばいつかは勝てるようにする、いわば自己のプレイヤースキルに応じたバランス調整の一環だと思っているんですが、それが強制されるとなると本当にただの作業になってしまいます。

加えて、一回通したら終わりくらいの経験値ではないので、必然的にダンジョンにただ潜ることになります。
さらに、敵が命中率を下げたり、封印してきたりと、とにかく遅延行動メインなことも作業感に悪い影響を与えています。これで強ければ歯ごたえがあるとも言えますが、ダメージは通してこないので、単純に時間がかかるだけになってしまいます。

なお、筆者がやったバージョンでは、雪ボスを倒すと大量の経験値が手に入ってレベルアップするという不具合がありました。これが意味するところは、作者さんもデバッグ中にレベリングかったるいと感じたということなんじゃないかなと思っています。
作者が面倒に思うのであれば、当然プレイヤーも面倒に思うこと必定です。

それ以外でも、文字がちょくちょくはみ出していたり、でもという逆接の使い方に違和感があったり、拾っても何も起きないアイテムがあったり、いちいち突っ込んでいるとキリがないレベルで色々なもやっとするところはありました。

戦闘バランスの話をすると、レベリングの時はフレイムピラーがお勧めです。回避率とか関係なく殴れます。下の消費MPだけ高い魔法よりはるかにコスパが良いですし、何なら火力同じなんじゃないかと思っています。

シンボルエンカウントにして戦闘をある程度調整できるようにしている、 戦闘ごとにBGMが変わる、など細かい配慮はある気がしているんですが、それよりもコアの部分が厳しい仕上がりだという印象でした。

ちなみに、利用規約の一文である「本ゲームが第三者の知的財産権等その他一切の権利を侵害していないこと」を保証していないのは、プレイヤー云々はおいてアウトな気がしています。そもそも、それは利用規約なんでしょうか。

71. メトロノームファイト

ジャンル 作者
リズム戦闘 二六千里
プレイ時間 プレイVer クリア状況
11時間30分 1.08 クリア

良かった点

  • 忙しなく楽しいゲームデザインでした
    • クラップの存在が特にゲーム性を高めています
  • 敵のギミックや達成条件で各ステージがうまく差別化されています
  • ストーリーの会話劇が軽妙でテンポも良いです
    • ポンポン進む吹き出しUIと、コロコロ表情が変わる立ち絵が効いています
  • 暗めの物語を明るく進行できる良いキャラクター性をしていました
    • 殊にクラウゼがちゃんと主人公をしています
  • 素晴らしい数と質のBGMが収録されています

気になった点

  • 戦闘中のUIは視線が分散しがちです
    • ゲームデザインが複雑な以上、ほぼ不可避ではあります
  • 同じ行動がある場合、どの敵から放たれるものかをクールタイム以外で判別できないことがあります

レビュー

音を楽しもう

音楽は音を楽しむと書くように、リズムに合わせて何かをするということは本能的に楽しい行為です。良い曲に合わせて拍を取るだけでも、テンションは否応なしに上がっていくことでしょう。
一方で、頭を限界まで酷使して何かに取り組んで結実した瞬間は、ある種の中毒的な達成感を味わうことができます。オーバーヒートから解放されて息を大きく吐くような、究極的な緩和が快楽物質を生成しているのかもしれません。
そしてメトロノームファイトは、リズムに乗って意識を限界まで使い切る、双方の楽しさが見事に融合したゲームとなっています。

基本的に、このゲームはステージごとの戦闘をクリアして進めていくことになります。そして、その戦闘は各ステージ固有に割り当てられたBGMとその楽譜に支配されています。

戦闘中は、楽譜の小節ごとに行動が切り替わります。現在の小節が自分のターンであれば、次の小節は敵のターンです。
小節ごとに訪れる各ターンにおいては、その拍子に基づいてリズムよくアローキーを押して行動を決定することができます。拍を間違えたり、無効な入力を行うと失敗扱いになるので、上手くリズムに乗って戦っていきましょう。

行動は主に攻撃、防御、行動順操作の3つが存在します。敵を倒すには攻撃を行い、次の小節の敵の攻撃を防ぐには防御を行い、敵の行動順を制御したいのであれば行動順操作を行っていきましょう。
各行動はそれぞれ異なるアローキーに割り当てられ、小節中に入力した回数によって威力が変わります。それ以外の余剰は、下キーの入力で補うことになります。
例えば、4拍子の場合は攻撃、攻撃、下、下と入力すると威力2の攻撃となりますし、下、防御、防御、防御ならば、威力3の攻撃までを防げます。

ここまでならば威力最大を狙えばい良い所ですが、そうは問屋が卸しません。
各行動は対応する音符を消費してしまうので、闇雲に使っているとすぐに枯渇してしまいます。敵の体力や次の行動を把握し、適切な回数の入力を心がけましょう。
なお、必要であれば全ての拍で下を押すことで、一定間隔で音符の補充ができます。タイミングを見計らって、適宜リロードしていくことも重要な要素です。

これだけでも忙しいですが、加えて楽譜にはクラップという概念も存在します。
特殊なマークの時にENTERキーを押すことで、後続の小節のターンを奪うことが可能となっています。これは行動回数が増えるのみならず、後続にあった敵の攻撃を丸ごと消してしまうという利点もあります。
つまり、相手の行動順を上手く制御してクラップの後ろに持ってくれば、防御すらせずに無力化することができるという寸法です。

このように、必要最小限の攻撃で敵を倒し、必要最小限の防御で敵の攻撃を防ぎ、一部の行動はクラップの後に行動順を制御してそもそも封じと、敵の行動やこちらの音符数を勘案して常に思考を続けつつも、リズムには常に乗っていく必要があります。
かてて加えて、この戦闘は敵を倒せば終わりではなく、これらの要素をフル活用して、各ステージの達成条件を満たしていくことが目的となっています。

ある時は敵を倒した数が求められ、ある時は被弾を減らして体力を残すことが求められ、ある時はミスせずにコンボをつなぐことが求められるため、そのステージによって専用の条件を満たすための行動をしていく必要があります。
考慮すべき事項の多さの前に、頭は常にフル稼働することでしょう。

そうした頭を悩ませる戦いの清涼剤として、サビというシステムも用意されています。
特殊なクラップマークの時に入力を行うことでサビに入ることができ、一定時間音符が無制限になるほか、上手く後続のクラップを決めると四回連続行動ができるようになります。
色々なことを気にせずに、サビで一気に敵を倒す解放感を味わえるでしょう。

リズムを外さないようにしつつも、自分の状況と相手の状況を俯瞰し、それぞれのステージBGMに紐づいた楽譜の性質を活かすことがクリアのカギとなります。
条件達成を目指して果敢にチャレンジしていきましょう。

そうした楽しい戦闘システムに加えて、個性あふれるキャラクター達の軽快な会話劇で繰り広げられるストーリーもまた魅力の一つです。
世界観はややダークなものでありながら、コロコロ表情の変わるキャラクター達の掛け合いの明るさと、音楽のリズムに乗って遊ぶ楽しさで暗い気持ちは吹き飛ばされていくことでしょう。

素晴らしいBGMの数々にノリながら数多のステージを攻略し、最後まで音を楽しんで敵を捌いていきましょう。
難しければ燃える方も、音楽に乗って楽しめる方も、どういった方でも楽しめるお勧めのゲームとなっています。

感想

間違いなく楽しく、そして間違いなく難しいゲームでした。
何度も挑戦するけれど楽しいから突破できるタイプの難易度をしています。

今回のウディコンで一番良いゲームがどれかと問われると色々と迷うんですが、最も面白かったゲームはどれかと問われると間違いなくこの作品になります。プレイ時間の11時間30分ずっと楽しかったです。
というわけで多分感想は長くなるので、とっ散らからないように要素に分けて書こうかと思います。

何はともあれ、まずはゲームシステムの話になります。
リズムゲームと何らかを組み合わせるというのは Crypt of the NecroDancer やヨイヤミダンサーズのように、割と作品例がありそうです。リズムをとること自体が本能的に楽しい行為なので、リズムをとってうまく行動できるゲームが構成できると楽しくなりがちに思えます。
メトロノームファイトはコマンド戦闘をかけ合わせたパターンの作品であり、コマンド選択部分と融合しているので、忙しさとそれを捌き切った達成感があるように感じていました。

基本的にこのゲームはめちゃめちゃ思考が忙しくなります。
まず、楽譜を見て小節を確認してリズムをとりつつ、相手の行動や音符の位置なども確認する必要があります。
次に、コマンド実行後の音符残量は常に把握しておく必要があります。
加えて、ステージによっては敵の位置も確認が必要であり、かつWASDキーで照準を合わせる必要があります。
最後に、常に意識の端にはこのステージで達成すべき条件を置いておく必要があります。必要であれば、条件達成数も逐次チェックします。
小節とその上のアイコン、音符残数、敵の位置と行動、達成条件、と確認要件が非常に多いので、常に脳みそを使い切っていないとクリアがおぼつきません。その分、クリアした時の達成感は焼き切れるレベルです。

プレイ中は、これらのシステムは足し算で構成されているのかなと朧気に考えていました。
最初にBGMの拍に応じたコマンド入力による戦闘があって、それだけだと4攻撃4防御が安定するから残弾数が入り、敵が一体だと作業っぽくてバリエーションがないから複数に増えて、やはり毎回倒すだけだと味気ないので達成条件が入ったのかもしれません。
実際、ステージ数はそこそこありますがどれもバリエーション豊かで、各々の達成条件が違うところもあって、毎回遊びの方針が変わって楽しめました。

加えて、一つのゲーム中でも小節に対してリズムを交互に取るだけでは定常化してしまうところ、クラップを中心に動きの変わる箇所が仕込まれているのも良いです。
攻撃や防御だけが安定択ではなく、適切に行動順を制御してクラップで打ち消す必要も出てくるあたり、常に考えるプレイが要求されます。
さらに、そうしたクラップそれ自体の戦略性もさることながら、サビでひたすら殲滅できる爽快感があるのも好きでした。

一方で、やることが多い分難易度は恐らく高いです。慣れるまでは序盤のステージでさえ苦戦します。
ただ、最初の内は相手の数が増えただけでもあわあわしていたんですが、プレイを続けるうちに譜面と対象を見る能力がどんどんと向上してきました。プレイヤースキルの向上ってこういうことなんですね。
意識を配る場所は多いんですが、意識を配る順番や、相手の行動に対する定型的なやり方が染みついてくると、意識配分が上手く回るようになります。卓越とは技ではない。単なる慣れだ。繰り返し行うことで体得する。

また、敵のギミックが色々とあるのも外せない面白いところです。
ただ大声出して邪魔してくるやつから、音符への干渉、分離合体と色々としてきます。様々な要素が詰め込まれていることを活かして、ゲームシステムをこれでもかと使い倒していました。
個人的には、お祭り男のギミックのが好きでした。ただ邪魔なだけ。

続いて、UIというか若干UXっぽいところについても触れておきます。
マップの構成や移動周りのUIは簡素で好みでした。マリオ3みたいな形式で移動はスムーズに行われ、必要な情報は選択しなくても画面上に表示されています。一番欲しい達成状況が、ちゃんとアイコンに明示されているのも配慮がなされています。
メニュー画面がShift長押しから選択する形式なのは若干面喰らいましたが、慣れればそれほど使いにくくはありません。

ノベルパートはデザインも込みでかなり良くて、ストーリ進行の会話劇のテンポの良さを際立たせています。
マンガの台詞めいた吹き出しをしているので、どちらが話したかが視覚的に一発で分かり、くるくる変わる立ち絵もあって、その発言の状況が一目で理解できます。そのおかげで、会話送りがスムーズに進んでいきました。

戦闘パートについては、要素数が多い中ではそれなりにまとめられているUIになっています。
ただ、いかんせん目を配るべき要素は多いので、プレイ中はかなり視線が散ることになります。敵の行動確認と選択は左、小節確認は上、残数確認は右を適宜見つつ、必要であれば左上の達成条件も見る必要があります。
この中で最も確認するのは小節というか楽譜になるので、ここ基点で目を動かせるようになっているとやや楽だったかもしれません。画面の面積的に無理な気がしますが。
後は、達成条件はそれなりに重要な情報なので、自然に目に入る所に置きたいところだと思うんですが、スペースが無くて左上なのも厳しいです。3つでなければ楽譜上のスペースにねじ込めそうなんですが。

また、敵の行動自体は楽譜に載るんですが、どの敵の行動かまでは特定しにくいのがやや辛いところです。
楽譜情報と敵の確認の双方が必要なうえ、同じ敵がいる場合はどっちの行動かはクールタイムに基づいた推測が必要になります。選択している敵の攻撃アイコンが光るなどすれば緩和するのかもしれませんが、ただでさえ情報が詰まっている楽譜にこれ以上情報を載せるのも厳しいかもしれません。

全体的に、プレイヤー側が視線や意識の配分に慣れてくればそれほど気にはならないんですが、特に初見での情報選択は難しい印象でした。ただ、要素数が多いからバタバタしたのか、視線が移ろうからバタバタしたのか、あるいはその両方なのかは不明です。多分相乗効果だとは思っています。

次に、キャラクターとストーリーの話をします。
物語のベースはそこそこ悲惨で暗めなものに見えるんですが、キャラクターが明るいので中和していて、テンポの良い会話劇であることも相まって、重い気持ちで読むことにはなりません。基本的にゲーム性がBGMのリズムに乗って楽しく遊ぶものなので、物語がそれに水を差してこないというのは大きかったです。
また、登場人物全員が無駄に話し込んだりしないので、とにかくスピーディーに事が運びます。各キャラクターのノリが軽くて良いのも作用していそうです。

また、クラウゼのクラウゼらしいところは残りつつ、成長もする物語であるところも好きでした。ちゃんと主人公しています。
後は、レネがいいところでサポートキャラの立ち回りをしつつ、ずっとキャラクターを崩さないでお兄さんをやっているのも良いですね。クラウゼくらい感情豊かなキャラが相手だと良いペアをしています。

他方で博士は物語が進むにつれて、なかなか感情移入というか共感しにくくなっていき、最終的には塔の出来事から察するほかなくなります。その上でも、やっている所業がやっている所業だけに、やはり共感はしにくいです。まあ実質的なラスボスなのでそれで良いのかもしれません。

最後にグラフィックや収録された数多のBGMの話もしようかと思います。
キャラクターの個性を存分に補強する良いグラフィックをしています。先述しているように、立ち絵で感情が表現されているので場面場面の理解が非常にスムーズに進みます。
それでなくても、コロコロ表情が変わるキャラクターには愛着が湧いてきます。大げさな感情パターン差分が良いですね。

また、敵のグラフィックもバリエーション豊かです。それぞれ敵っぽい見た目ながら、ポップな印象も崩していません。
しかも、いちいちリズムに合わせた攻撃モーションまで用意されています。手が込んでいる。
その上、技や性質に対する納得感もある見た目でもあって、見ただけでも直感的に性能が理解しやすいです。このあたり、アイコンがあるとはいえ重要なところなので、殊に初見では有難いものでした。

そして、このゲームを語る上で豊富なBGMを外すのは不可能でしょう。
正直、このゲーム性で2時間程度にまとまったボリュームのほうがウディコン向きなんじゃないかとは思います。それでも、曲を詰めに詰めて作り上げられたこのボリュームが好きです。
全てのBGMに対して楽譜を用意し、それぞれの特性ごとにステージを作っていく労力は凄まじいものだと思います。それが惜しげもなく詰め込まれているというのが凄い。

しかも、これだけステージを作り込んでいて、ある程度はスキップも許される構造になっている思い切りの良さもあります。これだけ作ったら遊んでほしくなりそうなものですが、そこはユーザーフレンドリーにやりたいだけ遊べるように作られています。
実際、私は全曲やってたのでクリアまでには11時間30分かかっていますが、色々すっ飛ばせれば大分早く終われそうでした。

なお、筆者の好きな曲はオトリズムでも触れたんですが、Trick Style です。
印象に残ったのは難しさでいえば8-6のCrazyHill、拍が難しかったのはまぼろしでした。
他にもいろいろとテンション高めの曲がそろっているので、BGMのリストとして見ても良いゲームです。もちろん、いくつか落ち着いた曲調のものもあります。

個人的には、コントローラーに対応して色々整えればSteamに出して普通に売れそうに感じています。タダで遊ばせてもらっていいんですか、これ。

72. そして世界が死んだ…

ジャンル 作者
ノベル 創造神司
プレイ時間 プレイVer クリア状況
5分 1.01 クリア

良かった点

  • サクッと読めます

気になった点

  • ちょくちょく誤字があるように思います

レビュー

死んだ世界の物語

そして世界が死んだ…は、いくつかの視点で語られる物語です。

プレイヤーは選択肢を選び、それぞれの視点を通じて語られる物語を聞くことになります。
何をもって世界が死んだのかを知るためにも、物語を読み進めていきましょう。

感想

色々とあっさり目のノベルというか物語です。もはやこの感想を読むより、プレイしてもらった方が早いレベルだと思います。
印象としては、さっと終わるダイジェストという感じです。

公称はRPGですが、ゲームというか物語を羅列したものなので、どのあたりがロールプレイしているのかは判然としません。何らかの役割をプレイしたというのであれば語り手が近そうですが、最後は勇者の役割をプレイしていたので、あの場面をもってしてRPGとしているのかもしれません。

物語としては極めて短いながらも、ちょくちょく誤字があるので少し集中が紛れます。自分の父親を父親という呼称で呼んでいるのは誤字なんでしょうか。それ以外でも、父、お父様と呼称の統一感がないんですが、これが時間の流れを意図したものなのか、単に誤字なのかが判然としません。
同様に、プレイが祈りのprayなのも、誤字なのか意図的なのか分かりません。誤字がありそうだと、このあたりが意図的なものであっても、そうは読めなくなってしまうので勿体ないなと感じています。

後は、これは言うだけ野暮な話になるかもしれませんが、騎士団が犠牲になって洗脳を情報として得たのだから、ちゃんと対策して挑んでくれと言う気持ちがあります。あくまでダイジェストなので、やむにやまれぬ事情があったのかもしれないんですが。

73. 毒虫

ジャンル 作者
テキストADV なべのひと
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.04 全ENDクリア

良かった点

  • 毒虫の気分になれました
  • フレーバーが良い雰囲気を醸しています
    • 人間にちゃんと名前がついているのが良いです

気になった点

  • 特にありません

レビュー

人間を喰う、それが毒虫

毒虫は、人食らう毒虫となるシミュレーション、あるいはテキストアドベンチャーです。

プレイヤーが毒虫となってできる行動は、食うことと寝ることしかありません。食えば腹が満たされ、寝れば精神が満たされます。
空腹が続けばゲームオーバーとなってしまうので、適宜人間を食らっていく必要があります。その一方で、精神がすり減っていると食うのに失敗しやすくなるため、適宜寝ていくことも大事です。

そうして人を食らい、寝て、人を食らい、寝て、人を食らい、と続けていくうちに毒虫のカルマは高まっていき、人々から憎まれる存在になっていきます。
それはたとえ空腹で倒れたとしても変わりません。毒虫は再び毒虫へと生まれ、同じ螺旋の中に囚われ続けます。

フレーバーテキストを背景にひたすら人間を食い続けるうちに、その毒虫が辿る結末を見届けてみましょう。

感想

これはもう誰かが言ってそうなんですが、選択肢が食うと眠るしかないゲェムです。厳密には誤りなんですが、おおよそのゲーム体験としては合っている気もします。

ゲーム部分としてはリソース管理ゲームっぽいものです。食えば体力が回復し、眠れば集中力が回復するので、このバランスをうまくとっていくことになります。
とはいえ、眠って集中力を貯めて食うので、究極的にはコマンドを行き来していても何とかなります。何度も繰り返せば食いやすくなっている気もするので、最終的には何とかなります。
全体的に短いゲームなので、これくらいのゲームバランスがちょうどよいのかなと思っていました。

それなので、どちらかと言えばフレーバーを楽しむゲームという印象があります。クリックアドベンチャーではあるんですけど、それ以上に文学というか物語というか。
個人的にはなんとなく北街さんっぽいですね、という印象があります。これは受け取る側にとっての誉め言葉かは分かりませんが、少なくとも個人的には誉め言葉になります。

特に、合間合間のテキストを読みながらひたすら食っちゃ寝をしていると、だんだん毒虫の気分になれるのが良いです。
人間にちゃんと名前がついているのが良くて、食べているのが市民Aでないカルマを感じていました。また、そういう個々の違いが明確であるところのおかげで、襲撃して大して体力が増えなかったら痩せた人間だったんだなと思うようになってきます。食うということを通して思考が毒虫に染まっていきます。

あとは、エンド回収後ちゃんと生き返れないというのが、物語というかゲーム体験的に一貫性があるのが好きです。
己が毒虫であるということを最後まで貫徹してできるというのが体験として良いですね。