0%

08. チーターは無理ゲーを走る

ジャンル 作者
RPG なごみやソフト
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間 1.06 クリア

良かった点

  • パズル的な戦略が楽しめる戦闘でした
    • その上で、チートによる回答の幅も感じさせるデザインとなっています
  • 特に各々のボスの攻略法が個性的です
  • ヒントが充実しています

気になった点

  • ラスボスだけ唐突に攻略の雰囲気が変わった印象を受けました

レビュー

無理ゲー攻略の鍵は戦略性

チーターは無理ゲーを走る は、無理ゲーの戦闘をチートでクリアしていくRPGです。
ゲームの舞台となるのはAI製のVRMMORPGであり、ここに閉じ込められるところから物語は始まります。主人公はハッカー集団のメンバーと共に、AIの暴走により無理ゲーと化したゲームのクリアを目指すこととなります。

無理ゲーの名に恥じず、敵の攻撃力がカンストのため一撃で倒してきたり、防御力がカンストなので攻撃が通らなかったりと、通常ならクリア不可能なゲームを攻略する羽目になります。
そんな雑魚敵ですら規格外のステータスを持つこのゲームにおいて、戦闘に勝利して攻略を進めていくには味方のチートスキルが不可欠です。
味方となるキャラクターにはそれぞれ、1%でも確率があれば必中になる、ターンの終了時に全回復で蘇生する、といった特殊な性能が備えられています。これを最大限活用し、上手く相手の攻撃をいなしつつ、こちらの攻撃を通すパズル的な思考が攻略の糸口となります。
そうして、これらの強力なスキルと状態異常を武器に、様々な無理を押し付ける敵を撃破していくことになります。

また、各ステージの最後には、とりわけ強力なボスが待ち構えています。理不尽な性能を誇るボスに対して勝利をつかみ取るためには、より重点的に相手の行動を観察し、適切な行動を見つけ出し、きちんと対処していかなければなりません。自身のスキルをよく見て、相手の行動に刺せそうな戦略を構築していくことが肝要となるでしょう。
また、場合によっては、チートの力でごり押すことも不可能ではありません。ボスを倒すことで得られる素材から、こちらもステータスのカンストを始めとしたチートスキルを獲得することができます。
ボスに負けた際に閲覧できるようになるヒントもまた充実しているため、これらを活用しつつ何度も挑戦して突破口を見つけていきましょう。

感想

戦闘というかだいぶパズルめいているんですが、そこそこチートによるゴリ押しも効くタイプの戦略性をしています。ラスボスはほぼ完全なるパズルですが。なお、ラスボスについては想定解以外でも回復アイテムでゴリ押せそうに見えるんですが、筆者は上手くいきませんでした。なんとなくできそうな気配だけはあります。

戦闘のデザインはシステム自体を乗りこなすギミックバトルという空気感があり、手持ちの札をどこで切って対応していくかを求められるような印象を受けます。
数値やらスキルやらぶっ飛んだシステムではあって、ともすれば大味な戦闘が繰り広げられることもあるんですが、大まかには相手の攻撃を封じてこちらの行動を通す繊細さで中和されていたような感じがします。

そういった戦略性が重視される設計でありながら、チートを題材にしていることもあって、上述の通り色々とゴリ押しが通るのも面白いところです。
特に雑魚戦はそれが顕著で、チートパワーが高まるまではある程度ちゃんと処理する必要があるんですが、チートパワーが充分あればなんとでもなります。ぶっ壊れスペックは正義。
ボス戦においてもあえて別解を許容していそうな緩さがあり、こちらのチートパワーによっては難なく撃破できてしまうこともあります。考えても無理なら稼ぎましょうという向きに感じました。

また、ボスについてはおおむね初見クリアはできるようになっていない気配を感じはしますが、そこは作中でも言及のある通りに、死んで覚えるデザインを徹底した結果なんだろうなとは思っています。
実際、リトライに特別なペナルティはないので、それほど気にすることなく再戦できます。試行錯誤はかなりしやすい部類に感じました。個人的には3戦もすれば大体突破できる難易度かなと思っています。
ただ、魔導王のところだけチートパワーが高まりすぎて負けにならず、突破口も見えないから回復もされ続けるデッドロックめいた状況になってしまいました。耐久タイプのボスなのでそういうものだとは思いますが、制限ターンあたりでゲーム側から諦めさせられる方が親切な気もします。

なお、前述のように結構緩めのボス攻略設計ながら、ラスボスだけはガチガチのパズル設計になっています。ここだけ毛色がだいぶ違うなというレベルであり、ギアが一段どころではない水準で上昇します。この間くらいのボスは感触としてはいないので、完全に一人隔絶したデザインとすら感じました。
ラスボスの立ち位置を考えるとある種当然なものではあり、シナリオ上の要としては納得感はあると思うんですが、ボスを連なりで見るとやはり浮く存在であるとも思います。
個人的には緩くも厳しくもどちらも好きなので、どちらでも良いんですが、一つの作品内でのスタンスとしては若干ブレているような印象を受けていました。

シナリオ面ではちょっとしたどんでん返しを用意しつつ、作品規模相応のサイズ感に収まった良い塩梅のものとなっています。ただ、ひっくり返す過程で大体納得のいく説明がなされるんですが、それでもやや解釈できていないバックグラウンドもありました。
AIゲームを作ったのが父であり、AIプレイヤーを作ったのも父である、AIプレイヤーはAIゲームを遊ぶために作られたプレイヤーである、あたりまで来て、では今幽閉されているこのゲームの立ち位置がどこになるのかというあたりが判然としません。
作中序盤はAI製のゲームという説明がなされていますが、そうだとするとクリア可能なゲームにしておく理由があんまりない気もするので、AIプレイヤーに恨みを持ったゲーム制作者による行動あたりが落とし所な気がします。ラスボスをどう捉えるかという話も残りますが。
なんかこの辺の話をしていたような記憶もあるので、もしかしたら筆者がラスボスの攻略に頭を悩ませている間に頭から消し飛ばしてしまっただけかもしれません。その場合はごめんなさい。

なお、これはどうでも良いんですが、タイトルから主人公が一人ハブられているのには涙を禁じ得ません。シナリオ上の要請からというわけでもなさそうなので、ごく単純に花を重視したのか和服を重視したのでしょう。かわいそう。
ハッカーっぽくのオーダーでも和服を合わせることを忘れない作品なので、和服が全てに優先されるのはさもありなんというところでしょうか。

09. イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi-

ジャンル 作者
アクションRPG わたえもん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.13 クリア

良かった点

  • 手触りの良いアクションが楽しめます
  • 合成システムを始めとした、自分なりのビルドを構成する楽しみがあります

気になった点

  • エフェクトと攻撃判定間の納得感が薄めでした
  • ゲーム規模に比してシステムがかなり複雑です

レビュー

自分なりの戦い方を模索しよう

イルシェラート -Ilshet tot Nostitowi- は、二人のキャラクターを切り替えて戦う見下ろし型のアクションRPGです。
攻撃やジャンプ、スキルを駆使して上手く立ち回っていくアクションを楽しむことができます。

敵と対峙するにはそれらのアクションを上手く扱うことはもちろん大事ですが、それ以上に重要となるのは様々なビルドの構成です。
とりわけ、レベルアップで得られるポイントから習得することになるスキルをどう構成していくかは、その要となります。パッシブスキルに振って立ち回りを強化するも良し、攻撃スキルに割り振って早期決戦を挑むも良し、特殊なスキルを習得してトリッキーに戦うも良し、自分なりの戦い方を構築していくことができるでしょう。

さらに、敵を倒したり、マップに落ちているものを拾ったりすることで得られる素材を集め、それらを基に装備やアイテムを合成することもできます。
こうして得られた素材にはランダムでそれぞれエンチャント効果が定められているため、素材の組み合わせ次第では強力な装備を作り出すこともできます。エンチャントの種類はステータスの強化のみならず、詠唱速度の加速やHPの吸収などの特殊な効果の付与にまで及びます。
自分の戦い方に合わせて、最適なエンチャントを持つ装備を作ることができれば、戦いを優位に進められるでしょう。

そうして組み上げたスキルと装備を活かし、シナリオ進行の障害となる強力なボスに挑むこととなります。ボスの攻略法もまた様々であり、敵の行動を見切って的確に攻撃を当てていくプレイングで挑んでみたり、装備を固めてハメてみたりと、好きなやり方で挑むことができます。
自分なりの戦い方とビルドを基に、マップを縦横無尽に駆け巡り、ボスを打ち倒していきましょう。

感想

割とずっと言っているんですが、ジャンプで飛び回って戦うのが楽しい作品です。でも多分、一番強いのは法陣を敷いて殴り続けることなんだろうなとも思っています。事実上のゾンビアタックなので。
マップの段差がちょうど良い感じにあるのもミソで、とにかく飛び回りたくなります。そして、だいぶ奥まった所にもちゃんと素材が落ちてるので、適当に飛び回りながら深いところに入り込んでは、ここにも落ちてるんだと拾い集めている時間が長めでした。おかげですぐにアイテムがいっぱいになります。

アイテムの所有限界については結構大変で、本当に拾えなくなるまで何の警告もしてくれない上、捨てることも原則できないので、最悪ケースだとボスのドロップが拾えなくなります。筆者はこれで滋養のために二回倒す羽目になりました。無念。
多分、強制的に帰還させるための仕組みだとは思うんですが、せめて残りちょっとになったら警告が欲しいところではありました。こんなに一杯拾い集めている奴が想定外と言えば、そうなのかもしれません。

アクションについては、おおむねヒットアンドアウェイや回復からのごり押しも通じる幅のあるデザインです。
装備とかビルドによっては色々とやれることはあって、上手く作ると延々回復しながら殴ってくる永久機関みたいなキャラクターが出来上がります。でも、たまに毒にやられて戦闘不能になる。
筆者はヒットアンドアウェイが好きなのでチマチマ殴ってましたが、回復能力を相手取ると持久戦になりがちなので微妙ではありました。短期決戦には脳筋戦法が良いのかもしれません。

アクションの手触りは上記の感じで良いのですが、エフェクトと攻撃判定の関係の納得感の薄さや、マップ上にある引っかかるオブジェクトの多さや分かりにくさなどが、若干ストレスを生んでいるようには感じました。
特にエフェクトはほぼ消えていても判定が残っていることがあり、そういうエフェクトのある大技が総じて火力が高いのもあって、理不尽な戦闘不能に繋がりがちでした。片側が戦闘不能になるとぬるっと相方が出てくるのも相まって、あれいつの間にやられたんだろう、みたいな状態になることが多かったです。
引っかかりは主に雑魚戦で致命的で、マップのオブジェクトの物理衝突を理解できていないと、ジャンプの判断が遅れて袋叩きになるケースが間々あります。慣れるまでは割と初見殺しみがある。
また、扉系の場所も結構引っかかりやすいポイントで、1マス幅しかない所に急いで入ろうとするとそこそこ失敗します。1.5マス幅なら救われる命も多分ありました。

また、システム面で言うと、プレイ時間に比してかなり重厚なシステムが構築されています。
スキルの付与から始まり、装備合成、それによるエンチャントの厳選、継承、といったようにかなりカスタマイズ性の高い仕組みとなっています。これ自体の完成度は高く、色々と自分なりに作る楽しみはあるんですが、その楽しみが十全にできる頃にはほぼクリア目前になりがちでもありました。
10時間くらいあるゲームのシステムが3時間のゲームに積まれている印象で、尺があればもう少し色々工夫して楽しめたのかなと感じています。性質を理解するための時間があんまりありません。

なお、個人的に好きなビルドはHP吸収メインで、回復のハードルが若干高いところに効いてきます。上手く戦えば、少なくとも雑魚相手には敗北しにくいところもあり、好んでエンチャントするものの一つとなっていました。

個人的に気になった点としては換金アイテムがほぼないところで、本を買うためにはある程度素材を売ってやる必要があります。
ただ、素材一つ一つにエンチャントがあり、それぞれの効能がテキスト上でしか示されず、良く分からないうちから取捨選択を迫られるので、このあたりの換金作業が非常に手間でした。一発で売り切ってしまうのが思考的には楽なんですが、レアっぽいアイテムもちらほらあるのと、合成に必要なアイテムがあったりするのが難しいところです。
足切りが簡単にできればもう少し考える時間を減らせそうなんですが、かなり複雑なのですでにあるソートでも如何ともしがたいところです。いっそレアリティくらい分かりやすい概念がないとどうにもならない気もします。

シナリオ面では分岐がそこそこ中間のところにあり、見事に外したために正史ルートには入れませんでした。終わってそうな出来事がずっと残り続けていたのでそういうもんかと思っていたら、一つだけちゃんとルートにかかわることができていなかったようです。凡ミス。
シナリオ自体はアクションゲームとして考えるとかなりボリュームがあり、町で色々とイベントを起こすこともできるので楽しかったです。意味もなく、シナリオが進行していそうなタイミングで町に戻って色々と話しかけるなどしていました。

10. ±0 -Black Rain-

ジャンル 作者
アクション/探索ADV 氷瀬るん
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.09 NORMAL

良かった点

  • 美麗なグラフィックと高い演出力からなるカットシーンは圧巻でした
  • キャラクターがダイナミックに動く迫力のある戦闘シーンを楽しめます
  • 戦闘パート以外にもバリエーションがあり、飽きにくい設計になっています

気になった点

  • 戦闘パートは防御と必殺技優位なバランスとなっていて、攻める理由が余りありませんでした
  • ダッシュジャンプ地帯について、ダッシュジャンプするとむしろ突破できなくなるミスリードに感じました

レビュー

死を齎すもの

±0 -Black Rain- は、美しいグラフィックに圧倒される演出が特徴的な、アクションと探索を合わせたようなゲームです。
探索パートを適宜挟みつつ、要所では戦いに挑むことになる流れとなっています。

ただし、一口に探索と言っても、プラットフォーマーめいたものから謎解きチックなものまで色々な試練が待ち構えています。時にはアクション性を要求され、時には思考を要求されつつも、上手くそれらを処理し、物語を進めていきましょう。
また、ただの探索パートでも、場合によっては後の分岐にかかわることもあり得ます。様々な場所を見て回ることも必要かもしれません。

そうした探索を経て、シナリオの関門として設定される戦闘へと突入していくことになります。戦闘パートでは、その圧巻のグラフィックによりダイナミックに動くキャラクターに圧倒されることは疑い得ません。
ゲーム性としてはチャンバラに類するものであり、タイミングよく攻撃し、相手の行動に上手くタイミングを合わせて防御するのが基本戦略となります。
敵の動きをよく見て、適切に守りつつ相手に攻撃を加えていきましょう。

探索、戦闘を通じて、そして何よりもシナリオにおいて発揮されるグラフィックの圧倒的な美麗さが、やや暗さをはらむ物語を美しく表現した作品となっています。高い演出力に裏打ちされたカットシーンもまたシナリオを彩り、より没入できるものへと昇華させてくれること必至です。
美麗な世界に足を踏み入れましょう。

感想

画の力が凄いゲームです。そしてそれは、もちろん要所におけるスチルの上手さや、立ち絵の綺麗さもあるんですが、特に戦闘シーンにおける画面の圧を絵の圧倒的な美麗さによる迫力で表現しているところが圧巻となります。

ひとまず戦闘シーン以外の画の強さに触れておくと、細かいシーンの表現力が抜けて高い作品となっています。絵による表現力がずば抜けて高いのはもはや見ずとも分かるとして、カメラワークや細かい尺など、カットシーンにおける演出力も極めて高い水準にあります。
ここに天元突破の画の力が入ってくるので、画面に込められている力のかかり方は尋常でないものになります。圧倒的と言って遜色ないレベルです。
もちろんよく動く立ち絵もクオリティが高く、それぞれの感情や機微を細かく表現するものとなっています。

そして何といっても印象に残る戦闘パートですが、各々のグラフィックが大きく映り、ダイナミックに動きます。これだけで迫力が出ています。凄い。
プレイフィールはチャンバラに近いですが、大写しとなったキャラクターの動きと大胆なエフェクトでかなり見目映える戦闘シーンへと昇華されています。余りにエフェクトと動きが強すぎて、下手に攻撃するとガードモーションと予兆モーションが被って被弾しがちなのはご愛敬。

なお、そういう面があるので、戦闘パートはゲーム性的には全段弾いて必殺を叩き込むのが安定行動にはなりがちでした。下手に殴るとガードされ、手痛い反撃をもらうことも多いので、ガード貫通の必殺に集中する方が色々と楽です。突発的な処理落ちにも対応しやすいので。
ただこのやり方だと相手の必殺技が見られないことが多いので、とりあえずは全力で挑むのも良いと思います。せっかくなら相手の必殺技も見たいですからね。

戦闘パート以外は主に探索パートで構成されており、ややアクション性があったり、シンプルな探索要素があったりと、ちょっとバリエーションを変えることで上手く間を持たせている印象でした。
個人的にはつくね選びが難関で、クリアした時点でさえ、何体か見分けのつかないつくねが混じっていました。最奥にいるだろうというメタ読みが無ければ危なかったです。翻って支部長は余りにも解釈違い過ぎて一瞬で分かりました。

シナリオ面で言うと、最後の時計塔に見覚えがあるなあと進めていたらプルートニオンを思い出し、そこそこ暗い気持ちになりながら最終戦を迎えていました。プルートニオンそれ自体、あんまりにもあんまりな結末の多い印象がありましたが、ここに加えてなおあんまりな結果になっているあたりは残酷ですね。あの人たちは一生くだらない漫才やっていて欲しかったです。
まあまあなことをしでかしてるラスボスではありつつ、その時の記憶から肯定はできないまでも納得はできる自分がいました。彼ならやる。

なお、このゲームは今ウディコンにおける飯テロゲームの一つでもあります。絵の上手いゲームは飯を上手く描いておなかを空かせてきがちですね。

11. 水底の記憶

ジャンル 作者
ADV EHS(イースターハイスクール)
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.0.5 全END

良かった点

  • 豊かなアニメーションによる演出が強く印象に残りました
  • 短編として完成度の高いシナリオでした
  • イベントとミニゲームの塩梅が良いです

気になった点

  • 初期マップにある自販機がミスリードに感じました
    • ここで水を取得して使うと、アイテムの効果が無いものという誤解を招くかもしれません

レビュー

記憶の奥底から繋がるもの

水底の記憶は、短編のADVです。
夏祭りを謎のお面の少女と共に回っていきながら、記憶の奥底にある出来事を追憶していく物語となっています。

プレイヤーは射的や千本つりといったミニゲームを通して夏祭りを体験しつつ、そこで得られたものから過去を回想していくことになります。
こうした昔日の回顧は、幾枚ものスチルから成る叙情豊かなアニメーションの演出によって構成されており、強く印象に残る情景が描かれるものとなっています。
この在りし日の場面において交わされる短いやり取りの中で、主人公、あるいはプレイヤーは過ぎ去った日々の一幕の想いを選択していくことになるでしょう。そして、その選択次第で、二つのエンディングのうちのどちらに決着するかが決まります。
過去の選択とともにその出来事を追体験していき、やがて至るそのエンディングを見届けましょう。

一つのエンドに到達するのには10分強程度しか必要としないため、手軽にプレイすることができる作品となっています。加えて、その短い中には充実した演出とシナリオが詰め込まれており、プレイ後の満足度が非常に高い作品でもあります。
ぜひとも、ある日を追憶し、その選択を重ね、真のエンドへと辿り着いてみてください。

感想

良い短編のADVでした。要素一つ一つを拾ってどこが良いか語るのも良いんですが、とりあえずまずはその一言に尽きます。
情景が豊かに描かれるアニメーションスチルの印象強さや、そこから数少ないやり取りで想像させる物語性の妙が素晴らしく、また好みのものでもあるんですが、筆者が一番好きなのは真エンドへのヒントの出し方にありました。

それはいったん後述するとして、やはり触れなくてはならないのは細かいスチルの多さ、あるいはアニメーションとしての多様さです。
入りからして雰囲気最高の導入を演出していますが、その雰囲気を崩すことなく、抒情溢れる演出とともにゲームが進行していきます。それぞれのイベントが適切に印象に残る形で現れていき、全てがきちんとした意味をもって最後へと繋がっていきます。
なお、グラフィック面で個人的に好きなところは目の描き方と、気の抜けた表情の描写あたりです。内心気を抜いているかは分かりませんが。

探索アドベンチャーではないのでマップは一本道で、移動速度は演出の都合上なのかまあまあ遅めです。ただ、マップは狭いので、そこまで気にはなりませんでした。
分岐は入りさえすれば選択肢が出るので自明なところですが、イベントを起こすのにアイテムを使わないといけないことに気付かないと、何も見ずに終わることになります。筆者はここで一敗しています。
通常プレイなら最初に手に入るアメをとりあえず使うので分かるだろうという話なんですが、筆者は適当に歩き回った結果、自販機で水を購入して飲んでしまったため、何も起きないという学習をしてしまいました。それにしてもアメぐらい使えという気もしてきますが。
この個人的な体験をもとにすると、変なミスリードになる恐れがあるので自販機を撤去しても良い気はしています。必要なのはだいぶ先ですし。

このため、二週目でアイテムをようやっと使い分岐に気付き、最後の言葉で別の分岐に到達して全エンドクリア、という流れになっています。
このように3周やって30分、1周10分ちょっとくらいの本当に短めの短編ではあるんですが、先述の演出の力も相まって印象にはきっちり刻み込まれる作品でもありました。

前述したシナリオの話、あるいは分岐についての話にも触れます。
シナリオに触れる前に分岐に触れた方がスムーズなので、まずは分岐の話をするんですが、心理的に選びにくい選択肢をもって構成しています。
この手のゲームにおける分岐というのは、慣れてくるとおおむねグッドエンドに結びつきそうな選択肢が見えてくるものが多く、またそれがある程度は正しい様相でもあります。それっぽい選択肢がそのまま正解であるというのは、プレイヤーが持つ期待を裏切らないということであり、それが自然であるということも示すことが多いためです。これを裏切るにはシナリオ上なり構成上なりゲームシステムなりに、強いカロリーを要求することになり、一歩間違えると単なる不親切へと作品を貶める結果にさえ繋がりかねません。
前置きが長くなりましたが、この作品は心理的に選びにくいその選択肢をもって真エンドへと導くため、別の熱量を必要とする後者の方に位置すると言えます。その上で、きっちりと選択自体に意味を持たせ、そのハードルを飛び越えた作品となっていました。

まずシナリオ面で見ていくと、これはある記憶の場面における自身の感情への追憶です。
良く知られている通り、記憶というのはかなりいい加減なものなので、ちょくちょく都合よくその時々を改ざんすることがあります。あの選択肢を選ぶということは、その時の自分を都合の良いものへと改ざんする行為であり、そうして形作られた都合の良い自分では、最後の行為の際に過った感情にラベルを付けることができません。
それはある意味では自己のどこかを喪失するようなものであると解釈でき、最後のエンディングに繋がることに何の不思議もありません。シナリオ上の意味合いで取れば、振り返ってみればあの選択肢は明らかに失着であることが分かるようになっています。
不合理な選択肢の自然さはこのようにして担保されることになります。

次いで、ゲーム的な面で見ると、あの選択肢に反する理由付けが必要です。とはいえ、露骨にヒントを出すのも興が冷めます。
そういう難しい場面において、真エンドでない時に提示されるのは、ただ、難しいよねという共感とも無念とも取れる一言のみとなっています。そして、この一言が非常に良いヒントとして作用しています。
この状況下における難しかったことをイメージすれば、選択肢をどの方向に見定めるべきかが明瞭になり、また先述したような背景までがクリアに認識できます。
この一言は、ゲームの雰囲気を一片も崩すことなく、極めて示唆的であり、かつそれを解すること自体がゲームに奥行きを与える値千金の言葉だなと強く感じ入っていました。ルート示唆のヒント界隈で一番好きかもしれない。

そうして理解して初めに戻り、全てを自覚して進めていくことで、手をつなぎ、手を離れ、また改めて手をつなぐことで終わるまでの綺麗な流れを十全に堪能することができます。加えて、このあたりの機微をエモーショナルにグラフィックで表現しやすい、アドベンチャーという分野の良さが如何なく発揮されている作品でもあったと言えるかもしれません。

なお、何故か選択肢の構造とヒントの言葉にばっかり文字を割いてしまってはいるんですが、全体的な短編としてのシナリオやシステムのバランスも良くできている作品です。この短さの中で、お祭り感のあるミニゲームも差しはさんでイベントとのバランスを取りつつ、上手く気分を切り替えさせています。
シナリオの構成についても要点を絞ったイベントに集中し、その関係性を必要十分に表現した上で最後へとつなげていく短編として良くまとまったものとなっていました。

12. 魔女にお菓子を届けましょう

ジャンル 作者
魔塔 ちぃ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.02 全END

良かった点

  • 1周30分程度で気軽に遊べます
  • やや平易ながら程良いバランスの難易度でした
  • HPとSPの二重リソース管理が上手く機能しています

気になった点

  • ☆3装備の有用性が薄い、あるいはピーキーに過ぎるように感じました
    • デメリットが強すぎる、あるいはメリットがその割に実感できるほど強くない印象があります

レビュー

当意即妙にルートを決めよう

魔女にお菓子を届けましょう は、魔塔系と呼ばれるパズル的なRPGです。
ランダムで生成されたマップをパズル的な戦闘を経てクリアしていき、塔の頂上を目指すことになります。

ただし、戦闘と言ってもその戦いは触れただけで終わる簡単なものとなっています。双方の攻撃力と防御力をもとに相手のHPが削り切れるまで殴り合い、その分のダメージを受けて戦闘を終えるという流れです。このため、3回の攻撃で倒せる敵と戦う場合は、その敵の攻撃力2回分のダメージを負うことになります。
そうして敵を倒すと経験値が得られ、一定以上蓄積するとレベルアップでステータスが上昇します。また、マップ上にあるアイテムを拾うことでもステータスを上げることができます。ステータスを上げることで、より強い敵を相手にしても被弾を抑えて戦えるようになっていくことでしょう。
これをひたすら繰り返し、HPなどのリソースが枯渇する前に塔を登り切ることができればクリアとなります。

リソースを使い切ることなくクリアするためには、敵をどの順番で倒し、アイテムにどの順番でアクセスしていくのかが肝要です。
塔の一つのフロアは5x5のマスで構成されており、全てのマスは敵やアイテムなどの何らかのオブジェクトで埋まっています。これらをどう巡回するかをパズル的に考え、最適な動きを取っていきましょう。時にはあえて戦わない選択肢を取ることも必要になるかもしれません。

ただし、HPだけに気を配っているのではクリアは覚束無いでしょう。このゲームにはもう一つ、SPというリソースもあるためです。SPもまた、枯渇するとゲームオーバーです。
SPは階層ごとに消費され、主にアイテムの取得で回復していきます。また、敵に対して先んじてダメージを入れることのできる魔法を使う際や、一部の障害物を破壊する際にも消費することになります。
有利状況を作るためには、ためらわずSPを消費する方が良いこともあります。しかし、場合によってはHPを犠牲にしてでもSPを回復しに行った方が良い場面もあります。双方のパラメータを注視し、最適な行動を選択する必要があるでしょう。

25マスで構成される一つの盤面を効率良く回るためには、短期的な視点で思考を巡らせていくことになります。その一方で、頂上に到達するためには、成長戦略を含めたやや長期的な視点に基づいた思考を必要とします。
こうした、短期の戦術を積み重ねて長期の戦略へと積み上げる作品でありながらも、一つ一つの盤面が短いゆえに頂上まで気軽に遊べる作品ともなっています。軽く思考を回して、頂上まで駆け上がっていきましょう。

感想

WWAあるいは魔塔系です。説明文に沿って、ここでは魔塔系と呼ぶことにします。
いわゆるこの手のゲームはあらかじめ見えている事柄から、中長期的視点をパズル的に突き詰めていくことが主眼になります。このため、最後の状況からの逆算と局所的最適解を見つける技能の双方が求められるゲームになりがちです。
これはこれで楽しいんですが、めちゃくちゃ頭を使うのと、大体一発で上手く通すのが難しいというのがネックでした。

このゲームでは、毎回ランダム生成される階層を攻略し、66Fを駆け上がるというものなので、最終的な状況というものは見えません。
プレイヤーが分かってるのは、敵がだんだん強くなっていくであろうことと、現在のフロアの配置だけです。このため、ぼんやりとリスクを取って進める中長期的視点と、現在のフロアのルートを考える視点だけが必要になってきます。
先ほどの例で言えば、極めて狭い局所的最適解を考えることに多めのリソースを使い、中長期的視点はなんとなくでもカバーできるようになっています。
このため、かなりカジュアルに魔塔系を楽しむことができます。

その分、難易度は恐らく低く、筆者は負けイベントを抜けばどれも一発で最後の階層まで到達しています。途中HPやSPが危ない状態にはなれど、ある程度ゲーム性を理解してさえいれば、上手く回避できるレベルでした。
ただ、そもそもランダムなのもあって、あんまり難しくはできないでしょうし、カジュアルに楽しめる点を踏まえても、個人的にはこれくらいの難易度が好みです。ちょっと頭を使って気持ち良くクリアできるレベルです。

また、クリアの度にローグライト風に能力値の向上や初期装備の取得もできるため、どんなに失敗してもいつかはクリアできるようにもなっています。
この辺のサポートもあるので、余りこの手のゲームをやったことが無い方でも遊びやすいんじゃなかろうかと感じています。

なお、個人的には装備のバランスだけはそこそこ尖った印象を受けました。特に☆3の最高レアリティの装備の癖が強く、正直☆2の装備をデメリットなく使った方が優秀なんじゃないかなと思いながら使っていました。
このゲームは長期的なプランが余り正確に立てられないので、そこそこプランが固定化される制約を持つ☆3を採用するのは中々勇気がいります。そのリスクに対してのリターンも実感を得られる程に高くはないので、結局☆2の装備に落ち着きがちでした。
完全上位互換を出すのは芸がないというのは凄く良く分かるんですが、装備レアリティを上げやすくする装備がある以上、もう少しご褒美的な強さがあっても良いのかなと感じていました。

装備についてもう一つ付け加えておくと、いつでも装備を拾えば付け替えられるのも面白いところです。その時その時に強い装備を選んでいくこともできるため、フル装備状態でも宝箱を空けるかどうかの葛藤が生まれます。
序盤は魔法出力を上げて体力を温存したいとか、後半は体力を増やして逃げ切りたいとか、その時々に有効そうな装備が用意されているのも好きです。

システム面でもう一つだけ言及すると、リソース管理としてHPだけでなくSPがあるのが、このゲームをやや複雑にしつつも、奥深さを出しているところです。
階段を下りるごとに減るため、ステージ内を歩き回ってSP回復アイテムを取得するモチベーションがちゃんと出ます。このため、できるだけ敵を倒す導線が自然に生まれていました。加えて、後半に行くにつれ宝箱のSP回復量が多分上がっていくため、鍵の価値が後半に上がっていくというのも面白い点です。どこまで温存するかのチキンレースができます。

その上で、どこでHPを犠牲にしてでもSP回復アイテムを取りに行き、どこでSPを犠牲にしてでも魔法を使ってメリットを享受するか、という駆け引きが生まれるというのが良いポイントです。
この時、SPはおおむね先行投資として機能していて、特に序盤はこれで本来取りにくいアイテムにアクセスしやすくなります。また、その敵を突破すると手に入る諸々のリターンも加味して後半でも振ることはあり、残HPとの相談も含め、思考に一段階奥行きが増す要因となっています。良くできたシステムですね。

最後にシナリオについて触れるんですが、だいぶふんわりとしたものなので、かなり解釈によるところだと思います。
割とスムーズに攻略したせいなのか、目に思い入れができる前に亡くなったのはちょっと残念でしたが、それ以外はある程度キャラクターも把握できて良かったです。
記憶の断片とEND2から一人分の魂と思っていたものが二人分の魂であることくらいは分かるんですが、そこもだいぶ曖昧なので解釈に迷っています。だからこそ干渉を受けないんでしょうか。
ENDについてもう一つ追記しておくと、光のおかげで勝てたようなもんだと思っていたんですが、光単独で挑むと相打ちになるのが意外でした。主人公の果たしている役割があるということでしょうか。謎は尽きません。

難易度に物足りなければチャレンジもあるので、カジュアルに楽しみたい場合もある程度ちゃんとやりたい方も楽しめるんじゃないでしょうか。

なお、筆者のクリア状況は以下の通りです。
3回目については、休息の宝石の効果でSPがみるみる減っていった時はだいぶスリルがありました。諸刃のパワーでアイテム回収をごり押してなんとか薄氷の勝利です。
4回目はさすがに慣れたのか安定していて、装備を割と雑にとっかえひっかえしていてもなんとかなりました。HPもだいぶ余っています。

END1 END2

13. アンブレラブレイバー

ジャンル 作者
ノンフィールドADV (影)苅田町役所
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分 1.05 全END

良かった点

  • ラストに向かって良く演出されたアドベンチャーゲームでした
  • 良いBGMが演出を盛り上げてくれました

気になった点

  • ノンフィールドパートにおいて特別に意味を持たない歩みが多く感じました

レビュー

その手を取って歩もう

アンブレラブレイバーは、シナリオに重点を置いたノンフィールドアドベンチャーです。
主人公は廃墟の洋館の中で不思議なお姉さんと出会い、その廃墟からの脱出を目指すことになります。

その脱出のためには、ノンフィールドRPGのようなパートを通して、幽霊との戦闘に勝利する必要があります。
戦闘における幽霊の行動はあらかじめ明示されているため、プレイヤーはその情報を勘案して適切な行動を選択していくことになります。基本的には相手の行動を封じつつ、こちらの攻撃を通していく、特殊なじゃんけんのような戦略を立てることになるでしょう。

そうして戦闘を攻略していき、洋館の出口にまで辿り着くことができればクリアとなります。
しかし、このゲームはノンフィールドRPGではなく、アドベンチャーです。本当の意味でクリアするのであれば、戦闘以外にも目を向けましょう。ゲーム内にもヒントはあるので、その達成はそれほど難しくはないはずです。
是非とも手を取り合って、洋館の脱出を目指していきましょう。

感想

ノンフィールドRPGかと思ったけど、ノンフィールドADVでした。紹介文にもRPGって書いていないですしね。ノンホラーアドベンチャー。
ノンフィールドRPGとして見るなら割と無駄に思える部分はあるんですが、この辺は恐らくADVとしての演出の意味合いが強いんだと思います。空気感の醸成のために、この設計になっているような印象でした。

戦闘はかなりフレーバーであり、タイミングを取って殴るゲームになっています。大きくランダム要素もなく、固定行動しかないので対処も楽です。
そういう意味でも、ここもまた演出でしかなく、どちらかと言えば会話の方に重きが置かれた設計となっていました。一応何も考えないとマズい状態にはなっているので、適度に別のことを考えてリフレッシュする要素として機能しているのかもしれません。
どうでも良いですが、行動予測について、初めはUIを見てアメリが教えてくれていたのかと思っていました。しかし、終盤パートで普通にコウ一人でも敵の行動が見えているあたり、どうやら違ったようです。もしかしたらそういう能力を会得したのかもしれませんが。

また、ノンフィールドパートはそこそこ何もない歩みが多いんですが、ここも演出の都合上っぽい印象でした。会話のこともありますし、単純に二人で歩む道であることに意味があるという面もあります。
若干演出はもっさりしているんですが、そこはスキップもあるので周回時に気になるレベルにはなっていません。

反応範囲は、何もしなければ初手にビターへ行くようになっている印象で、ちゃんと全てのイベントを初見で進行するのはあんまり想定されていなさそうな気配はあります。好奇心旺盛なら触れそうですけど、それはそれでビターが見れないのがもったいない気がする。
一歩ごとに確認する手間は発生しますが、全体の歩数が短いので事なきを得ました。これが100歩とかだったらさすがにしんどかった。

シナリオについても言及しておくと、筆者はなんやかんやボーイミーツガールを好む向きにあるので、シンプルに好きでした。
シナリオ構造的には少しひねったことをしつつも、物語そのものは結構直球ストレート勝負なのも良くて、単純にラストバトルは心熱くなるところがあります。王道は外さないから王道足りうる面があるので。

なお、筆者は最初の方で見た、アレを幽霊と思いこまないと云々で若干混乱していたんですが、主人公は普通に生者と察していたということで決着しています。ビターというかあの辺の表現上、幽霊ルートもありそうに見えはしたので。
それはそれとしても、外に出れない理屈は未だ良く分かっていません。父の力なのだとしたらどういうスペックなんでしょうか。あるいは父の制約すらも自身の意志の発露でしかなく、勇気をもらうまでは外に出ることすら叶わなかったと捉えるべきなのかもしれません。

しかし幽霊食、栄養とか大丈夫なんだろうか。

14. Inifis

ジャンル 作者
マルチエンドRPG 逃げ足
プレイ時間 プレイVer クリア状況
30分+2時間 1.09e 全END

良かった点

  • マルチエンドRPGとして全てがちょうど良いサイズ感に収まっています
    • 物語の尺、マップのサイズ、戦闘のバランスなどが丁寧に作られています
  • マップ間の接続やイベントの配置を軸に、探索しがいのあるマップが構成されています
  • 周回に向けたサポートが手厚く、別エンドを見に行きたくなる設計でした
    • シナリオ面で動機付けをし、システム面で上手くサポートしています

気になった点

  • 特にありません

レビュー

思うままに行動したその先を見届けよう

Inifis は、様々な選択からマルチエンドへ分岐していくことを特徴とするRPGです。
主人公の神官を操作し、聖者の依り代に選ばれてしまった彼女を救い出すため、戦闘やイベントを通じて行動していくことになります。

彼女を救う方法、あるいはエンディングに辿り着く方法は多種多様にあります。
それらを発見するには、様々なエリアに繋がるマップを探索して、アイテムを収集したり様々な人々と会話したりすることが大事になってきます。特に誰かとの会話の中でアイデアを思い付くことができれば、それが彼女を救うヒントになるかもしれません。
マップをくまなく調べ尽くしつつ、積極的に話しかけていきましょう。

また、そうした探索の中では、敵との戦闘が避けられないこともあるかもしれません。
戦闘は標準的なターン制のシステムを採用しており、テンポ良くやや歯応えのある難易度のものとなっています。そのため、雑魚との戦いはともかくとして、一部の強敵を倒すには主人公一人で戦うには厳しい場面もあり得ます。
そうなった場合は、様々な場所を訪れて人々に話しかけていき、仲間を得ていきましょう。複数人で挑むことができるようになり、強敵と戦う時の助けとなります。

こうした探索と選択の果てに取る行動によって、物語は多くのエンディングへと分岐していきます。そして、それぞれによって判明する真実もまた多様に存在します。
少しずつ明らかになっていく真相を知るためにも、様々なエンディングを周回して見ていきましょう。強敵を実質スキップできるアイテムなど、周回をサポートする機能も充実しているので、気楽に挑戦することができるはずです。

感想

短いマルチエンドRPGかくあるべしみたいなゲームです。こういうタイプの作品としての一つの頂上というか完成系みたいなゲーム性をしています。
マップの広さ、分岐の数、分岐に至るまでのイベントの数、といったところの塩梅が本当にちょうど良く、それでいて周回をサポートする機能もあるので、自然にマルチエンドを回収しようという動機が生まれました。

個人的に一番好きなのは、探索している感を出しつつも、実際にマルチエンドのために走り回ると意外と狭いマップになります。
まず、マップそのものがいろんなところで接続していて、いくつかの隠し道まで用意されているおかげで、実際の広さ以上に探索している感覚を演出することに成功している気がします。意外なところが接続する驚きもあって良い。
加えて、慣れてくると周回時にショートカット的にルートを選択していくこともできるようになるので、周回のサポートにもなっています。エンディング回収の最後の方では勝手知ったる庭みたいに歩き回っていました。

また、マップにあるイベントの密度も探索感の増大に寄与しています。程よくイベントのある町、戦闘をメインとしつつイベントもある墓地といった具合に、メリハリを利かせつつ、各所にちょうど良い具合にイベントが配置されています。
イベントの発見それ自体が探索の目的ともなりうるので、このあたりが充実しているおかげでだいぶ探索している感覚を覚えるようになります。
さらにシステム的に、イベントを経て大事なメモが手に入ることで行動に広がりが出ることもあり、大きな目的の観点でも発見に繋がるようになっています。

そして、これらのマップのサイズ感、イベントの尺や密度感が探索している雰囲気を残しつつ、周回において手間に感じない程度に収まっているのも良いところです。このあたりのバランス感覚が優れていました。
制限時間下でギリギリ調べ切るのは難しいが、ある程度次の周回に向けての情報も入りつつ、といった状態でエンディングを迎えられるようなレベルで調整されていました。時間制限もだいぶ良い調整で、筆者はいろんなところに顔出しした結果、魔界の家に行けないまま誰も倒さずに導師を倒すエンディングを迎えています。

戦闘についても割と難しいながらも、周回に向けたサポートもある良い塩梅です。
戦闘自体は人数が揃ってないと大変ですし、人数が揃っていても回復できていないと怪しいくらいのバランスです。ラスボスはそこそこ強く、全体攻撃手段の確保と仲間の確保が重要になる程度にはちゃんと歯応えのある戦いが楽しめます。装備も大事。
その上で、周回においては個数制限のある即死アイテムをどこかで切ることができるので、一度倒した敵と再戦することは基本的にありません。この辺の割り切り方が好みです。あくまでこれは主体ではない。
ちゃんとレベルデザインされた歯応えのある戦いを演出した上で、手間の観点からそれをスキップできる選択肢を残すというユーザーフレンドリーはコンコルド効果的にも中々選択しにくそうですが、この作品はそちらに振られています。

シナリオ面については、エンディングを明かすにつれて、それに付随するイベントも含めて主人公やその周りの状態が分かっていく形式が良いです。この事実の開示そのものがマルチエンドを探し当てる原動力ともなり、世界観の掘り下げにも繋がっています。
色々なルートが見られるからこそ、作中で主人公が取った選択を振り返ることもでき、全滅はさすがにやりすぎたかなという気持ちにもなれます。しかし一度殺すって選択肢が日常に入り込むと、全員殺してしまいますからね。筆者が最後に殺したのは忘れてた金髪の元生贄でした。彼女もカウントされるんですね。

しかし、人の身でネームドの悪魔を倒せる主人公、だいぶ強い気がします。
一応、作中で倒すには精霊と悪魔の協力が取り付けられるとより楽なはずなので、それが大きいのかもしれません。とはいえ、試してはいないですが、もしかしたらソロ討伐できるかもしれず、そうなるとだいぶ強力な力を有していることになりそうです。
実質悪魔との協力関係に元からあったのだから、そういうことなのかもしれませんが。

15. 箱庭ドールメーカー

ジャンル 作者
すごろく×デッキ構築育成RPG こよる
プレイ時間 プレイVer クリア状況
10時間 1.1.0 エンドロール

良かった点

  • システム同士の親和性が高い作品でした
  • 状態スロットの押し出しを軸に、高い戦略性を持つ戦闘が楽しめます
    • それに向けたドール育成によるパーティー構築もまた戦略的に挑める課題となっています
  • 個性的なボスを攻略していく面白さがありました

気になった点

  • 過去に育成したドールがほとんど無駄になるような印象を受けました
  • 育成に時間がかかるため、新規のドールに手を出しにくいきらいがあります

レビュー

状態異常を制する者が戦いを制す

箱庭ドールメーカーは、ドールを育成し、すごろくライクなステージを攻略するRPGです。
ゲームの構成は主に、ダンジョンによるドールの育成と、そのドールを運用したフィールドの攻略に分かれます。

まず、ステージを攻略するにはドールを育成していく必要があります。
ドールの育成は、素体を決めて、ダンジョンに潜り、敵と戦いレベルを上げ、スキルを習得し、ダンジョンをクリアすることで完了となります。こうして、そのダンジョンで獲得したレベルとスキルを備えたドールを使えるようになります。
すなわち、育成のためにはダンジョンで効率良く敵と戦いレベルを上げつつ、スキルを習得していく必要があるわけです。

ダンジョンはそれぞれクリアまでの階層と、所要ターン数が決まっています。この中で、ターンを消費してダイスを回してマスに止まりイベントを起こしていく、すごろくのような構成で進んでいくことになります。
敵シンボルに接触すれば戦いになりますし、宝箱に接触すればスキルやアイテムが手に入ります。ダイス目というランダム性を上手く御しつつ、効率良くマスを巡っていきましょう。

さらに、成長をより加速させるためには、敵と戦った後にキャリーオーバーを行うという方法を取る必要があります。キャリーオーバーは3回まで行うことができ、その間に獲得経験値を徐々に引き上げる効果がある一方で、キャリーオーバー中はHPを回復する休憩コマンドが使えなくなります。
これを上手く活用し、可能な限りキャリーオーバーし続けてから最後に強敵と戦うことができれば、大きくブーストされた経験値が手に入ります。リスクはそれなりに高いですが、強いドールを育成するためにも挑戦してみましょう。

こうしてダンジョンを上手く活用し、ステータスとスキルを育成したドールによってパーティーを組んで、フィールドに挑むことになります。
フィールドもまたダンジョンと同じくすごろくのような構成となっており、基本的なルールはダンジョンと変わりません。ただし、レベルを上げることによるステータスの向上は、前述で育成したステータスに依存するものになります。そのため、きちんと育成していないと強さにキャップがかかりますし、育成していてもフィールドでレベルを上げないと十全の強さとはなりません。
フィールドにおいても、上手くマス目を巡回し、効率よく成長していくことが大事となるでしょう。

上述の通り、育成、攻略共に立ちはだかることになるのは、敵との戦闘によるレベル上げです。そして、その戦闘を有利に進めていくためには独特かつ戦略的な戦闘システムを理解する必要があります。

戦闘画面

戦闘においてまず重要となるのは、育成で習得したスキルです。スキルは10個まで習得可能であり、戦闘開始時にその中から4個のスキルがランダムに配られます。上記の例では、攻撃スキルが3つ、スラッシュが1つ選ばれた状態です。
こうして配られたスキルを使うには、素早さに依存して蓄積するAPを消費する必要があります。上記で言うと、50APを消費すれば攻撃ができますし、75AP消費すればより強力なスラッシュを発動できます。
こうしたスキルの発動タイミングは完全にプレイヤーに委ねられています。短期決戦を仕掛けるためにAPを全て消費して攻めるという手もありますし、APやスキルを温存し、次の行動に備えるという手もあります。その時々の状況を見つつ、柔軟に対応していく必要があるでしょう。

なお、覚えていくスキルのタイプは、個々のドールによって特徴があります。その傾向はドールの装備系統に依存しており、オーソドックスな攻撃スタイルの剣、バフを盛れる扇、守りを主体とする盾などから、戦略をもとに選択していくことになります。
また、同じ装備でもドールごとに異なる部分はあるため、気になるならば試してみるのも一興です。どんなドールを選んでパーティーを構成するか、といったところからすでに戦いは始まっています。

加えて、戦闘を進める上で欠かすことができないのは、状態異常とそれを管理するスロットという概念への理解です。
バフデバフにかかわらず、状態異常は全て最大5個からなるスロットで管理されており、5個を超えると古い状態異常から消えていきます。上記の画面では、敵に攻撃低減のデバフと、攻撃強化のバフが入っています。ここに状態異常を4つ積むと、一番古い攻撃低減のデバフが取り除かれるという次第です。
強力なバフを5個重ね掛けすることで絶大な火力を得ることもできますし、相手に5個のデバフを重ねることで相手のバフを全て取り除くといった芸当も可能です。攻防両面において非常に重要であるため、常に彼我のスロットを確認し、上手く活用していきましょう。

ドールを軸にした育成システムと、育成したドールを用いて攻略に挑むフィールドという二重のデッキ構築システムのようなデザインが特徴的な作品となっています。
この斬新な設計に、多様な戦略が生まれる戦闘システムが取り入れられることにより、無数のドール育成戦略が生まれ、それぞれのプレイヤーごとに異なる攻略スタイルが生まれていくことは疑い得ません。
あなたのお気に入りのドールと戦略をもとに戦闘の場を制圧し、フィールド最深部で待ち構える様々なボスを撃破していきましょう。

感想

じっくり育てるデッキ構築という感じで、割と斬新に遊べた作品でした。デッキ構築というと、とにかくカードを切り替え続けて己のやり方へにじり寄っていく感じのものをよく見ていて、それゆえにローグライトと相性が良いところがあるんですが、この作品はデッキパーツ一つ作るのにまあまあ時間がかかります。
そのために、一回でかなり方針を固めて進めていく必要があり、アドリブ性もありつつも、かなりの部分でプレイヤー自身の戦略方針を問われているような印象がありました。

戦闘システムも面白い作品ではあるんですが、ひとまずは全体のシステムについての話をします。
個人的な印象としては、二重構成になったデッキビルド系のシステムと捉えています。ダンジョンによる強化で作ったドールがそもそもデッキな上に、それをベースにステージの成長を重ねることで、もう一つ構築要素が追加されています。
成長面においても、デッキ構築ゲームをやりつつデッキ構築用のドールを作る二重構造になっているあたりが面白いです。

一方で、ドール育成は特に後半になるにつれてカロリーが高くなるきらいはあり、1時間近くかかるダンジョンでようやく1体作れる中、それを4体用意するような状況になってきます。こうなると4時間近くかかりかねません。
深層を攻略した印象では、恐らく全員を最新のレベルに追従させなくても、一人二人入れ替えれば充分に対応できそうな気配はありましたが、少なくとも突入前にそれを知るのは不可能なので、全員最新ダンジョンで鍛え直してから挑戦させていました。
もっとも、準備自体がゲーム性を持っていて、戦闘システムが結構面白く、成長システムがスリルを持ったリスクリターン形式であるおかげで、中だるみするというレベルまではいきません。システムが秀逸ゆえに成り立っているバランス感といった印象です。

成長システムについても軽く触れておくと、まあまあに運要素がありつつ、自分で選択できるリスクとリターンによりメリハリがちゃんと付いている良いシステムでした。
キャリーオーバーは必ずやった方が良いという前提の元、想定外のことが起こった時にちゃんと損切りできるか、最後の最後に強敵を倒すためにどういうプランで敵を倒すか、など即時性も先を見通す戦略もどちらも要求される良い塩梅の仕組みとなっています。
その一方で、技の取得などはかなりランダム性が強く、想定するビルドに至るにはそこそこの運も要求されます。そもそもダイス運もありますしね。このあたりのおかげで、一本道をただ辿るようなゲーム性が回避され、上手く対応してプランを適宜修正しつつ、できるだけ理想に近付けていく楽しみがありました。

なお、戦闘後に連打する癖があると、キャリーオーバーを止めてしまうことがあるので、ここは注意が必要です。筆者は何度かやらかしています。キャリーオーバー継続の方がよくやる選択肢なので、それが上に来ているとより有難かったかもしれません。

ドールの種類については割と豊富に用意されており、それぞれの性能についても特色があって面白いです。自分が得意とする戦略に沿ったドールが選べると、ぐっと戦いやすくなります。個人的には雑魚の処理性能が高い銃を気に入っていて、ライラがほぼずっと活躍してくれていました。
ただ、上記の育成に時間がかかるという話もあって、中盤以降は余り新規のドールに手を出す余裕はありませんでした。面白そうなドールはちらほらいるんですが、素養を磨き、1時間かけて育成しないとその性能が真に確認できない以上、どうしてもすでに上手く運用できている戦略に固執してしまうところがあります。
ドール入手時にテンプレのドールが手に入ってお試しできると色々試せて楽そうだなとは思っていましたが、成長要素との噛み合いはだいぶ悪そうなので難しいところです。レンタルドールのような形式の方がまだ自然かもしれません。
恐らく、ほかの人のドール育成を観測して、互いに情報交換し合っていく昔ながらの攻略スタイルがだいぶ向いているゲーム性な気がしています。攻略Wikiが作られるタイプのゲーム。
なお、時間がかかるのは悪いことばかりでなく、そうして作ったドールには結構愛着が湧きます。残りターン数オーバーでHPギリギリの中、ダイス5でゴールにたどり着いて作り上げられたドールとか、ユニークボスを3回目に激戦の末倒して急激に成長したドールとか、各々のドールにストーリーが付随されているのが良い。

なお余談ですが、古いドールの記憶が何の役にも立たないのは若干悲しかったので、せめて金策に役立つくらいはしてほしい気持ちはありました。
割とちゃんと頑張って作ったとしても、序盤から中盤、あるいは後半ですら最新ラインに乗ってないドールは使えないので、結局余らせがちです。そこそこ時間をかけていることもあり、かなり勿体ない精神が働く結果となりました。
そもそもお金がまあまあ足りなくなるデザインになっている印象もあるので、ちょっとカバーして欲しい気持ちもあります。衣装を売るだけだとかなり早く限界が来る印象があるので。

そういった過程を経て、ストーリー最終ダンジョンに挑んだパーティーは以下の構成でした。
雑魚の一掃性能が高く、ボス戦でも強力な破壊力を生みやすいライラを軸としたパーティーです。雑魚戦はライラで片づけられる場合はそうして、そうでない場合はジャンヌが被害を抑える方針でした。
パラメータの都合上、ジャンヌとライラのHP差はえらいことになっていたので、ジャンヌに上手く引き寄せられないと事故る恐れはあったものの、ジャンヌがだいぶ優秀なおかげで助かりました。さすが残りターン数ギリギリまで稼いだだけのことはある。
ボス戦ではドロワの手数の多さでデバフをばら撒きつつ、ローズマリーがバフを積んでいく方針でした。ドロワはサブアタッカー的なこともこなしてくれていて、地味に助かる場面も多かったです。回転率だけで見ると、ドロワの与えた毒ダメージの方がライラより上だったかもしれない。

パーティー構成

個人的に一番好きな戦闘システムの話もします。バフデバフ、状態異常をフルに活用できる楽しい戦闘ができます。こちらのデッキ構築次第では、バフを積みに積んで、相手にデバフを与え続けられれば、一撃でボスの体力の5分の1くらい持って行ける楽しいバランスでした。
また、全体を通して、相手の行動をいかに上手く止めて、こちらがいかに効率良く攻撃するかを考えながら進める、戦略性の高い戦いができるようになっています。
ボスが特に顕著で、一部の行動に関してはきちんと動きを掣肘できていないと、高い火力で一気にパーティーが壊滅状態に陥るヒリヒリ感があります。常に守れる状態をキープできていることがかなり重要です。
雑魚戦についても適度に難しく、強いシンボルに軽率に触りに行くと消し飛ばされることもあります。そもそもゲーム性の都合上、雑魚戦はできるだけ被弾しないのが好ましいため、瞬殺するための戦略を練りつつ、カバーとして被弾を最小に抑える退路を確保していく必要があり、また違った面白さがありました。

そして、特にこの戦略性を担保しているシステムとして、状態スロットとその押し出しシステムが挙げられます。このシステムは色々な面においてかなり秀逸なシステムとなっており、殊にこの作品のゲーム性との親和性が異常なまでに高い代物です。
まず、状態を押し出せるという仕組みは、相手のバフを消す手法としてデバフを重ねる手法が提供されていたり、重複を許すことで強力なバフを込めることができたり、連続攻撃スキルの価値を高めたりと、様々な面で戦略性を高めています。
ランダムでスキルが配られるシステム上、どうしても発生するであろうバフスキルの重複を明確なメリットにしている面が特に秀逸で、戦略の再現性のために同じようなスキルで固めることがむしろ推奨され得るデザインとなっています。

また、単純にボスの性能も面白く、それぞれ特色が合って攻略しがいがあります。
個人的に一番デザインとして好きであり、戦っていて面白く、同時に嫌いでもあるボスは木でした。こっちのバフを利用して攻め立ててくるわ、多重攻撃に相性の悪い防御性能しているわで、かなり苦戦しつつも突破した記憶が鮮明に残っています。最後にこちらの主力以外が全滅した状態でとどめの一撃が入ったのはある意味では奇跡に近い。
充分準備したせいか、ストーリー上のラスボスはそれほど苦戦しなかったものの、きちんと形態変化があるのは好きでした。前段をほぼ無傷で倒して、さすがに強くしすぎたかなと思ってからの真打登場はやはり良いですね。

なお筆者は、100階層育成ダンジョンがその1枠で出てきたあたりから10時間近くの育成が視野に入り、クリア後ダンジョンは断念しています。1時間強の育成を繰り返すのはさすがに堪えそうなので。
現パーティーで攻略するプランもありはしそうなので、気が向いた時にでもやる予定ではいます。

全体のシステムと戦闘システムが上手く回るようにできていて、長期的なパーティー構築と短期的な成長戦略のサイクルが良く動いている作品でした。割と大事なところを運に任せているような設計に見えて、その実プレイヤーはだいぶ堅実に立ち回れば運をほとんど気にすることがないあたりも秀逸です。

16. 瓶詰の誕生日

ジャンル 作者
謎解き クリムS
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 2.02 全END

良かった点

  • 緩く暗号解読を楽しめます
  • いざとなれば総当たりからヒントを探れる設計となっています

気になった点

  • 解が一意に定まらなさそう、ミスリードがありそうな問題などがありました
    • ただし、いずれも試行すれば解けるレベルです

レビュー

少し頭の体操をしよう

瓶詰の誕生日は、暗号解読を通して進めていくゲームです。
暗号を解読して必要なアイテムと次の部屋を突き止め、その先で再び同様のことを行う形式を取っています。
解くべき暗号の中には、閃きが必要なものから、ある程度調べることが必要なものまで様々なケースが存在しています。時にはゲーム内を離れてみて、色々なものを駆使して解いていきましょう。

そうして暗号を全て解読し、所定のアイテムを持って最後の部屋に辿り着くことで、開催者の弟の誕生日を祝うことができます。
全ての謎を解き、最後の部屋で盛大に祝いましょう。そこで得られる日記を読めば、あるいはこの暗号解読イベントの背景を知ることができるかもしれません。

それに思いを馳せるでも、暗号を解いて終わるでも、どうするかはプレイヤー次第です。
ひとまずは暗号解読を楽しみましょう。

感想

軽く謎解きができて良いゲームでした。頭を使うというよりは、直感を信じるか調べるかのどっちかの選択肢を取ることが多かったです。
以降は謎解きの話をするので、まだやってない方は見ないことを推奨します。

逆立ちについては、色々逆さっぽいことをして何も分からなかったので、後ろ読みと解釈した上で1-3に行きました。実はこの時点では「をもって1-3へ」までは解読していましたが、Amdzdkeが分かっていませんでした。これは後の問題を解いているうちに、この出題者が「a」の反転を「d」っぽく書いてることに気付いたことで、甘酒とようやく理解しています。後発的な気付き。
個人的にはここが一番の難問で、ヒントを読んでいてもaと解釈せずに反転時のdとpの話をしているのかなと解釈していました。あんまり悩まずに先に進めば、どう考えてもaと解釈しないといけない場面が出てきていたので、さっさと進めれば良かったですね。

また、あかさたなの問題については、右並べか左並べかが不明であり、わをんの扱いも場合によるなあと思いながら解いていました。をの6があることである程度フェアになってる気もしますが、それでもどちらになるかは分かりません。解いていれば分かる話ではあるんですが。
このあたり、探索ゲームでこの辺の謎解きがあるとあいうえお表がどこかにあったりしがちですが、このゲームはそういう知識をゲーム外に移譲する構成なので、この辺の曖昧さは避けられていませんでした。ただ、曖昧でも解けるようにはなっているので、筆者のような解の一意性にこだわる変人以外は気にしないとは思います。

また、謎解きのことは考えなくても虱潰しができるのは面白い仕組みとなっており、その気になれば3分半くらいで全部屋を周れるし、何ならゴールまで行けます。
ここについては持っていくアイテムを謎解きに含め、アイテムの種類を増やすことで総当たりを避けている仕組みになっているのも面白かったです。事実上、答えにどうしても詰まったのであれば部屋の位置だけは分かるのでヒントになります。

物語は軽くホラーというか地獄ではあるんですが、部屋の数が足りないという部分だけ少し解釈に惑っていました。
暗号は確かに5個あり、部屋もまた5個あるので足りないことはないと思うので、個人的にはそのうちの2個をどう調達したかという話なのかなと解釈しました。そして最後の話を察するに、その2つの部屋は両親のものであると結論付けていました。それならば、やっぱりクローゼットは開けるべきじゃありませんね。

17. 魔族倒しFINAL

ジャンル 作者
ノンフィールドRPG/ADV プルゲーム
プレイ時間 プレイVer クリア状況
3時間30分 1.01 TrueEnd

良かった点

  • 壊し要素もありつつ考える余地のある、プレイヤー優位なレベルデザインとなっています
  • 渾然一体となったカオスな体験ができます

気になった点

  • 相性表の記載がデッキ構築時にもあると有用そうでした

レビュー

迸る思想と安定したゲームデザイン

魔族倒しFINALは、カードを集めて敵と戦うノンフィールドのデッキ構築型RPGです。
ステージの節目ごとに長尺のイベントも挟まれていくデザインのため、アドベンチャーゲームと捉えることもできるかもしれません。

ステージを攻略するためには戦闘を効率良くこなし、敵を上手く倒していくことが求められます。
戦闘はカードゲームのような形式で行われており、自身のデッキに組み込んだカードが勝敗を左右します。カードは敵を倒すことでランダムに選ばれた3枚から1枚を取得できるため、何を選択して組み入れていくかによって戦略は変化します。
回復を主体として立ち回ることもできますし、コストを抑えめにして手数を増やすでも、重いコストの攻撃で一気に仕留めるでも、戦略はプレイヤーに委ねられています。状態異常や相性による弱点も勘案しつつ、戦略を練って上手く敵を倒していきましょう。
また、敵と戦う際は連戦における最後の敵を強力にする代わりに報酬を引き上げることもできます。現在の状況と相談し、できるだけ報酬を増やしていけると後々有利になるでしょう。

そうして敵を撃破し続け、ステージ最後のボスを倒すことによって、シナリオもまた進んでいきます。
このゲームのもう一つの本丸とでも言うべきその物語は、主に主人公の語りという形式で行われます。その語りとイベントから生み出される、余すところなく敷き詰められた思想の発露と奇妙なMVのような動画のコンボにより、未だかつてないような体験が提供されるでしょう。

優秀なカードを多く取り揃えることで、難易度をプレイヤー優位とした安定的なレベルデザインのステージと、圧倒的な混沌に叩き込まれるアドベンチャーパートの対比は鮮明であり、渾然一体とした独自の空気感を醸成しています。
カオスな世界へと足を踏み入れてみましょう。

感想

ここまで問題作というか怪作と言いたくなる作品はほかをおいて無いんじゃなかろうかという作品でした。淡々と進むゲームデザインからいきなり繰り出される迫力のある論理展開、そして唐突に流れ出す動画と、あらゆるものが凄まじいパワーを持って迫ってくるような作品です。

作品性は後に話すとして、ひとまずゲーム性について話しておくと、システムとして安定していて、ある程度デッキ構築していく楽しみもあります。
強敵を倒すと二倍の効果が得られるので、できるだけ強敵を撃破しつつ、回復も加味して引き際を見極めるのも大事になってきます。
体力と精神力が分かれているのも面白く、被弾を拒否して強いカードを使って精神力を消費しに行ったり、最後のトドメを弱いカードに任せて温存したり、細かい戦術の立ち回りが効くようになっています。

ただ、この辺の繊細なムーブが必要なのは序盤だけで、ルーナスカーレットを引けると色々考えずに済むようになります。彼女は体力と精神力の双方を回復するので、最後にこれで締めることができれば、それまでのダメージも精神力の消費も無かったことになるからです。
その他にもいくつかかなり優秀なカードがあり、これらが揃ってくると負けるイメージが湧かなくなります。報酬で体力を上げていければより万全で、妙な状態異常を通されない限りはピンチに陥ることすらありませんでした。

ただ、このルーチンが構築された後でも、そこに持っていくまでのカード回しなどの概念は残るため、戦闘はある程度面白さを保ち続けるのが良いところです。
スカーレットに被弾少なく繋ぐためにも、どこで稼ぎ、敵の攻撃のどれを防ぎ、どの状態異常を通すかの駆け引きは依然あります。
特に、状態異常をつけて敵を倒すと2体目にそれが引き継がれる仕様なのか分からない現象を上手く活用するのが楽しく、強力な最終の敵に最初から行動不能を押し付けて場を有利に展開できるようになります。

全体的にプレイヤー有利っぽいバランスに見えるので、この辺の壊れカードも意図したバランスなのかもしれません。必ずもらえるカードも割と強いですし。

なお、相性表については戦闘中表記されているので覚える必要がないと思いきや、戦闘前には見えないので弱点をつく気なら覚えておくのが無難です。デッキ構築する際にも欲しい情報な気がする。
特に序盤は相性次第ではかなり大変なので、覚えておいて損はありません。

では、ゲーム性以外の部分について話します。割と明け透けに話すので、あんまり見たくない方はここで見るのをやめて下さい。隙自語でもあります。
ゲーム内でも明け透けなのでおあいこということで。

まず全体的に整理すると、資本主義社会への怨嗟と、ジェンダー論と、排斥的な集団に対する意見、活力に対する持論、和を以て尊ぶところからベーシックインカムの話に繋がる、くらいの構成になっています。
そこに遍在するのは競争というものへの強い忌避感であり、なにゆえ最大に繁栄した霊長類ともあろうものが競争で食い潰し合わねばならんのかという協調主義的なところを感じました。

その競争の最たるものである資本主義への憎悪は、その意味では妥当なところだと感じていて、そこから出発したものが共産主義と今日呼ばれるに至ったものへと繋がっていくのかなと思います。
ただし、競争の徹底的な否定は一歩先にポルポトがいたり、別の方向にはキムさんなどの独裁への道が開かれていたり、割と茨の道ではある気がしています。
競争のない世界というのは言い換えると下克上のない世界なので、独裁に都合が良いんじゃないかなと思っています。これを避けるのは富の再分配などの格差是正策だとは思うんですが、それをやれる人材が競争のない世界でどう生まれるのか、あたりに自己矛盾を抱えそうではあります。あるいはプラトンの哲人政治に回帰するべきなのか。
その辺を鑑みると、競争原理を適用しつつ、こぼれ落ちるものをできるだけ拾い上げる現在の仕組みの妥当性をある程度は評価したいなと考えています。塩梅が難しそうですけどね。

ジェンダー論はおおむね体験ベースで語られている印象があり、根拠がよく分からないグラフも出てきます。
原則的には女性が同質性を求め、男性が異質であろうとすることを基軸とし、それぞれがそれらに邁進する競争を嫌っているという印象でした。
これらの競争はモテに繋がっていく、あたりは論理が追えていなくて、そのまま論理を適用すると同質性のある男性、異質な女性がモテそうな気がします。このあたり、自分にないものを求めている、と解釈すべきなのか、反対に女性は異質を求め、男性は同質性を求めるからそれに準拠している、と考えるべきなのかは難しいところです。
いずれにしても、魅力的であろうとする努力というものの存在は分かるところなんですが、筆者個人はここをサボってるのであんまり言えることはありません。
感覚的には競争の行き着く先はルッキズムではないか、という問題提起っぽいなとは思っていて、そこ自体は大きく外していない気はします。努力は認められるべきであっても、それを他者に要求しだすと厳しいことになるので。
競争があくまで自己研鑽にとどまるのであればそれは個々人の自由と信条であり、他者をも秤にのせて蔑むのであればルッキズムの発露に他ならないと思うので、要は程度問題かもしれません。あんまり行き過ぎると確かに怖いですね。なお、要は程度問題、便利すぎて議論じゃ使っちゃいけない言葉なんですが、まあこれは語りなので見逃してもらうとします。

排斥的な集団についての意見に関しては、そもそもの発端からしても完全に体験ベースです。
自己を高めるばかりに他者を蔑ろにしているのではないか、競争という場は余所見を許さずに、そこで楽しもうとしてるものを見落としているのではないか、あたりの怒りと解釈しています。
TCGはDMとポケカを多少嗜んだ程度で良く知らないので言及を避けますが、一応ウディコンはプレイヤーとしてちょっとだけ見てきたので、多少話します。
作中でウディタ界隈の部員、という表現が出てきたあたり、ウディコンという場自体をそういった界隈のお祭りと捉えていそうな気がしていて、そうだとすれば割と解釈違いではあります。
ウディコンという場はふらっと出現する新規の方の作品も面白く、ある程度参加回数を重ねた歴戦の方の作品も面白い、結構バランスの取れた場だと感じているので。今後過疎化が進み、ある程度内輪っぽくなる可能性は否定しませんが、現在のところはそこまでの空気は感じません。
なので、排斥するも何もそもそも集団として構成されているものなのかというレベルで疑問には思っています。横の繋がりのある作者さんも多数いらっしゃいますが、それはそれとして持ち込んでワイワイやってる感覚が一番近いです。
この作品がウディコンに出て恙なく評価を得て終わるあたりからも察せられる程度に、規約にさえ違反しなければなかなかフラットな場なんじゃないかと思っています。まあ、筆者はここにゲームを出したことがないのでこの感想はまあまあに空虚だとは思いますが。

活力が地球温暖化に繋がる、あたりは風が吹けば桶屋が儲かる的な意味合いでは間違ってないんだろうなとは思っています。人間の飽くなき経済活動こそが温室効果ガスを生んでいる面は否定できるものではありません。
ただ、これは国家単位、あるいは種全体のレベルの問題なので、個々人がどうにかできるようなものはあんまりなさそうです。
いわゆる持続可能な社会の構築を個々人が目指していき、全体の流れを少しずつ変えていくのが筋が良いんだろうなという肌感覚を持っています。そういう意味ではSDGsは思想自体はそこにいるんですけど、EUの環境ビジネスが絡んでいるせいなのか、揶揄の対象になっちゃう現状はあんまり好ましくないのかもしれません。

和を以て尊ぶ国民性については筆者はだいぶ懐疑的ではあります。聖徳太子の時代からあるそれが論拠の出発点になりそうですが、ルール化したということはルールで縛らねばならないものであったとも解釈できます。性悪説じみてますね。
そもそも平安時代を除いてほぼ戦乱の絶えなかったわが国がそれほど競争しない人種であったのか、というあたりから疑問符が点灯するかもしれません。平安時代ですら都における政治闘争は激しかったようですしね。創作になりますが、ドリフターズでアナスタシアに寝ても覚めても互いに殺し合うことしかしない連中と言われるだけの存在ではある気がします。

そして、そこから繋がるベーシックインカムの話も難しいところです。生活保護がかなりベーシックインカムに近い存在ではありそうで、ここが広がった状態をぼんやりと考えるなどはしています。
市場クロガネは稼ぎたいでも取り上げている通り、一律配ることにすれば諸々の手続きが簡素化して良くなるといったメリットもあるので、ある面においては生活保護を超える働きを示すだろうなとは思います。
これは本当にどこかで社会実験でもしない限り成否の分からないところであり、手を出すのはだいぶギャンブル性が高いんじゃないかなとは思います。人間は所与で充分であった時に、なおも求め続けるものなのか、その答え自体は見たいのでどっかでやってくれないかな。

ただ、その前提としてある団結せよ、というあたりは若干主張の中でのブレを感じました。
それを可能とするのは弛まぬコミュニケーションの結実に他ならないと思っていて、そしてそれらは集団に対する苦言と表裏一体なところがあります。
TCGの件でもそうなんですが、集団に属し、集団の中であるいは集団を通して行動するというのは声をかけるといった初手から始まる一連のコミュニケーションから始まるものだろうと思います。
これは筆者の苦手とするところなので良く分かるんですが、コミュニティの輪に入るというのは棒立ちしていれば勝手に入れてくれるものではなく、積極的な行動の向かうところにあるものと解釈しています。
そういう意味では、団結せよというその団結の輪に入るには、前段でそこはかとなく否定している集団への帰属努力が必要になる行為なのかなと感じていました。

後、これは至極個人的かつ論拠のない意見なんですが、何故ネアンデルタール人が滅亡したのかということを引き合いに出す論理は大体疑ってかかるようにしろとばっちゃが言ってました。
あの辺のことは分からないことが多いので、偽を根拠とした推論はどんな結論であっても導くことができるように、あんまり信用できる論ではないんだろうなという印象です。ちゃんとしてたらもっと論拠のはっきりしたところから引用するはずなので。
さらにもっと個人的な話をすると、人間と本能を論じるのも割と変だと思っていて、人間は社会的動物であるという言葉をだいぶ傲慢に解釈したものなんじゃないかとは感じています。
我々はいわば社会性という本能を抱えているだけというか、動物のなす行為を全て本能と片づけているだけというか、そういう傲慢さを感じます。まだ感情と論理と呼んでくれた方が飲み込みやすいです。

唐突にこのゲームの良いところの話をすると、上記で綴ったようなこの作品の主張は、けれど押し付けてくるものではありません。あくまでも作中人物を介した表明にとどまっており、いくつかの例外はあれど、原則的にはそれを否定するものに対する人格的な攻撃はそんなにありません。全体を通して、陽の存在にはだいぶ辛辣ではありますが。
なので、対するプレイヤーもまたそれらの諸問題に対して自己の認識を整理し、こうして己の中にある曖昧な部分を明文化できる良い機会が得られるという寸法になります。
他者からの忌憚ない意見の表明をもって、自分の意見を見つめ直せる良い機会になる、そういった作品です。みんなも5000字くらい感想を書こう。