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28. Ayaのホームページへようこそ!

ジャンル 作者
謎解き 苺いちえ
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 + 30分 1.03 全END + 4

良かった点

  • 当時のホームページを強く想起させる優れたデザインでした
    • 質感の再現度が異次元に高いです
  • 良質な謎解きを楽しめました
    • 導線や流れが丁寧です

気になった点

  • 特にありません

レビュー

蘇るあの頃

何はともあれ、まずはサムネイルをご覧ください。
ここに言葉では言い表せないときめきみたいなものを感じたのであれば、是非ともプレイしましょう。

Ayaのホームページへようこそ!は、とあるホームページに隠された秘密を探っていくARG風味の謎解きゲームです。
ゼロ年代の雰囲気漂うホームページを軸に様々な情報を引き出していき、推測を重ね、ある謎を解いていくことになります。

この作品における特筆すべき点は、当時のホームページの質感を高いレベルで再現していることでしょう。
単色を背景としてテーブルを多用したシンプルなサイトの質感から、フレームを使った凝ったデザインを嗜む個人サイト、あるいは学校の素朴な公式サイトの質感まで、その空気感がすぐそこにあるようにすら感じられるクオリティで描かれています。
まるであの頃にタイムスリップしたような感覚を味わえることでしょう。

そうした個人ページにある在りし日のBBSやバナーリンクを辿っていくことで、プレイヤーはAyaについての情報を少しずつ知っていくことになります。サイトに隠されたものとは何なのか、そこから導き出される物語の結末はどこに向かうのか、それを知るためにもハイパーリンクとテキストの世界を巡っていきましょう。
謎解きの難易度は決して高くはないものの、推測して考えること無しでは辿り着くことは困難なものとなっています。サイトから得られた情報を整理し、もしも詰まってしまったらヒントを使って、その真実へと到達していきましょう。

そうして謎を解くことで紡がれていくシナリオは、個人ページを能動的に巡って情報を集めていくというその過程も含めて完成されるものとなっています。謎を解くために拾い集めた情報がそのページの先にいる誰かを知る一歩となり、やがてそれがエンディングに繋がる一歩となります。
積極的に個人ページの世界に潜り、その世界を体験しつつも謎を解き明かしていき、全てが明かされるエンディングへと辿り着いていきましょう。

感想

ARGめいた謎解きが良い作品でした。メールの部分さえどうにかすれば割と現実的にARGでもできそうです。ウディコンにおいては外部プログラムの利用が禁止なので、どこまでが外部プログラム扱いになるかのチキンレースにはなりそうですが。同梱せずに適当なページに誘導したうえで、JavaScriptを実行させるのはセーフなのだろうか。
こういったゲーム性は難しくしようと思えばDs試験のように際限なく難しく出来るジャンルだと思うのですが、この作品の難易度はかなりカジュアルめなので楽しんでプレイするのにはちょうどいい作品となっているのも良いところです。コンセプトというか、誰が作った謎という設定なのかということにも整合しています。

そして特筆すべきは何と言ってもホームページの完成度です。2000年代の亡霊かのごときクオリティをしています。自作ホームページとしての質感が異常に高いです。学生の頃の課題でこんな感じのページを作った記憶が蘇りました。
個人的に最も質感の再現度が高いと感じているのは、それぞれの制作者に応じたWebサイトのデザインです。やたら凝ったページを作る人はBGMを流したりframesetを使ったり、文字の詰め方を変えたりと良く分からないこだわりを込めがちです。学校のホームページの質感も高く、簡素なつくりと青丸のような選択要素のデザインになぜか見覚えがあります。どこの学校もこんな感じだったのかな。
もちろん、メインとなるAyaのホームページもそういう雰囲気が強くあります。一昔前のWebマンガを連載しているページとかこんな感じでした。うろんなページとか侠とか、あの辺の質感があります。
また、ブラクラやらスクリーンセーバーやらの要素も当時の雰囲気を表していて良かったです。マウスカーソルが砂時計になるのには感動をすら覚えました。そう言えばいつからか見なくなった要素です。こういう記憶の端にあるけど引き出せない絶妙な要素が次々と引き出されていくことで、強く懐かしさを覚える作品となっています。

そうしたインターネット老人にはキャッチ―な見た目で引きつけた後、ゲーム性というか謎解きは非常に丁寧かつ面白いのでそのまま引き込まれてしまいます。
とりわけ導線がかなりうまく機能しており、段階を踏んでエンディングに到達できるようにきっちり整備された謎解きを楽しむことができました。特に情報の繋げ方が上手く、出席番号順などの情報の出し方や、そこからの確定要素の揃え方であったり、ソリスト、吹奏楽部、事故死のような推測のための流れまで、全体設計の完成度が高いです。前述した通り、いたずらに難しくするのではなく、情報をまとめて少し考えると分かる難易度に抑えられている点も優れていました。

そうした謎解きに付随したシナリオの塩梅も良くできています。シナリオそれ自体を語る文章はほとんどないものの、ホームページという静的なものを読み取っていく過程でそのパーソナリティを垣間見ることができます。それがそのままシナリオへと接続し、見た情報に応じたエンディングへと繋がる構成となっていて無駄がありません。謎を解くために情報を見て回り、それらを一字一句確認することで、より強く印象に刻み込まれていきます。
さらに、シナリオあるいはエンディングとしての転換も上手く行われているため、次のエンディングを見ようとするモチベーションを常に高いものにしてくれます。このホームページにある秘密とは何なのか、それが真実なのか、本当に起きていたことは何なのか、興味駆動でゲームをどんどん進められる魅力がありました。

ちなみに、筆者はゴミを4つ見つけています。後6個もあるらしいです、本当ですか。探索要素が好きならこれを集めるというのも面白いかもしれません。ヒントが無いのでこっちの方が難しい。こういうおまけ要素が十全に搭載されているという点も、このゲームの完成度の高さというか余裕、あるいは奥行きの広さを感じさせてくれます。

古式ゆかしきインターネットに見覚えがある人がホイホイと来る誘蛾灯であり、謎解きのゲーム性という蜜でホイホイ来た相手をつかんで離さない作品でした。ハートキャッチだ。
余談ですが、ホームボタンが他人のホームページに繋がっているの、冷静に考えておかしい気がしてきました。変人なのか何か意味があるのか。

29. ゴートマウンテン スラムロード

ジャンル 作者
ADV ハニーナゲット0508
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間 1.1相当? ノーマルクリア

良かった点

  • 独特なイラストが緩い雰囲気を醸していました
  • バラエティ豊かなイベントが用意されています

気になった点

  • 運の要素が極めて強いです
    • 難易度を調整しても運要素の緩和が恐らく行われないため、あまり難易度に変化を感じませんでした
  • ラストバトルについて作業の側面が強くなっています

レビュー

ヤギは進むよどこまでも

ゴートマウンテン スラムロードは、ランダムイベントをこなしながら進んでいくノンフィールドADVです。
戦闘要素が多少含まれてはいるものの、主にはバラエティ豊かなイベントの数々をこなしていくことに重きが置かれた作品となっています。

プレイヤーは基本的にヤギを眺めながら、都度発生するイベントの選択肢を選んでいくという流れに乗ってゲームをプレイしていくことになります。
選んだ行動によってはヤギのライフが削られたり、体温に変化が生じたりします。そうしてライフが無くなるか、体温が極端な値になるとゲームオーバーになってしまうため、それを避けるべく選択を重ねていくことになります。適切な選択を選び続け、リソースを温存してゴールを目指していきましょう。

とは言え、ほとんどのイベントはランダムに発生するものであるため、完全な予測や攻略は困難を極めます。時にはヤギを襲う過酷な運命の数々に翻弄され、何の手立てもなくゲームオーバーに直面してしまうこともあるかもしれません。
クリアを目指すのであれば、イベントの把握はもちろんのこと、ある程度の運を要求されます。人事を尽くして天命を待ちましょう。

また、そうしたイベントの数々を彩る緩い雰囲気のイラストや、ビビッドな色遣いの画面構成もこの作品の大きな特徴の一つとなります。シュールな展開も多い様々なイベントに対して非常にマッチした絵柄となっており、その独特な雰囲気に浸れること請け合いです。
クリアを一生懸命目指すというよりは、ヤギが色々な目に遭う様を眺めようという気持ちにさせる、不思議な印象を与えてくれる雰囲気が醸成されています。

ともすれば理不尽にすら思えるランダムイベントの数々も、その画面の緩さとヤギのリアクションを見ていると何故だか納得できてしまう、そういった独特な空気感を漂わせた作品となっています。
適度に選択肢で干渉しながら、ヤギの挑戦を眺めてみてはいかがでしょうか。

感想

半分くらい放置ゲーに近い運ゲーという印象です。リソース管理の側面と、イベントごとの最適解を覚える要素が無いわけではありませんが、それ以上にランダムイベントの引きが攻略を左右します。マンホールが連続で飛んで来れば、どんな努力も水泡に帰すので。
最後もかなり運要素が強く、狼を引かずにカラスを引けさえすればクリアはすぐそこにあります。カラスはかなり優秀であり、HPがたとえ1であってもHPを20にしてくれます。そういうものなのだろうか。反対に、畳みかけるようにダメージが入るようであれば、その周回のクリアは割と絶望的になります。

なお、難易度選択の要素があるため、イージーにすれば緩和するのかと思っていましたが、プレイしてみた印象としてはさほど変化はありませんでした。恐らく難易度選択による変化が、このゲームにおける最大の障壁であるイベントに対して効いていなさそうなことが主要因ではないかと感じています。結局、イベントが全てなので。もしかしたらちょっと確率が改善しているなどはあるのかもしれない。

ただ、そういった要素はこのゲームのある意味オマケ部分でしかなく、本質的にはヤギがひたすら路を突き進み、様々な艱難辛苦にさらされていくイベントを眺めていく部分なのだろうと思っています。そしてその側面においては、このゲームは強く雰囲気を醸成することに成功していました。
緩くシュールなイラストと、独特かつ予想外のイベント、それぞれが強く個性を演出しています。ゲームとしての唯一無二性はかなり強めでした。そういう意味でも、イラストが未完成なものが散見されるのはやや気になる所ではありますが。
ともあれ、それを踏まえて改めて見ると運ゲーであることにも不思議と納得感があります。ヤギが不幸になる様を眺めるゲームなのかもしれない。キュートアグレッション。

話をシステム面に戻すと、プレイヤーのリソース管理のシステムとして体温管理が導入されていますが、これもまた運要素が強く出ています。
概ね体温を上げたほうが安定する印象はありますが、一度雨が一切降らずに上がり切って終わったこともあるので、結局のところは飛んでくるイベント次第のケースバイケースとなっています。なので、プレイヤーの目線で見ると、上げるべきか下げるべきかは判然としません。

また、クリアの最後の障壁であるラストバトルについては、絶対に倒れないスラムドラゴンと共にHP1200の狼を殴り続けることになります。ここに関してはイベントもイラストも特にないため、割と純然たる作業となってしまっている印象でした。
道中で起きていたイベントが起きるなど、そういったハプニングも無いので、キーを押しっ放しにするくらいしかやることがありません。

ゲーム性を楽しむというよりは、運に身を任せてゲームの雰囲気を楽しむのが良い作品です。クリアを目指すよりも、ヤギが色々な目に遭っているのを眺めるくらいの心持ちで緩くプレイするのが良いように感じています。
その上で、ちゃんとイベントを把握して良いイベントを上手く引ければいつかは最後まで行けるはずです。筆者は7回目で到達できました。その時が来るまで楽しむのが乙な作品です。

30_スーパーウーパールーパー

ジャンル 作者
アクション 朝倉くもり&亜蟹
プレイ時間 プレイVer クリア状況
45分 1.02 クリア

良かった点

  • やや難しくも、見た目ほどは難しくないちょうど良い制御能力を持った水中アクションでした
  • ステージデザインがバラエティ豊かなものとなっています
    • 各ステージの特徴となるギミックが上手く作用していました
  • 強めにデザインされたボスの難易度が良い関門として機能していました

気になった点

  • たまに処理落ちしかけることがありました

レビュー

水中アクション百般

スーパーウーパールーパーは、ウーパールーパーを操作して水中を進むアクションゲームです。
基本的にステージは水中のため、ワンボタンで浮遊と沈降をコントロールしてステージをクリアしていくことになります。

各ステージには、そのステージを特徴づけるギミックや敵が配置されており、攻略にあたってはこれらを上手く捌いていく必要があります。トゲを初めとしたユニークなギミックは水中のZキーの上昇と自然下降で上手くかわし、相対する敵はXキーの泡攻撃で倒していきましょう。
もちろん、ステージが進むにつれてギミックや敵の難易度は上がっていきます。操作に習熟し、水中の挙動に慣れ親しむことがステージクリアの近道です。水中挙動をマスターし、数々のギミックを攻略していきましょう。

さらに、各ステージの最後には強力なボスが待ち構えています。ボスもまたそれぞれバラエティ豊かな挙動と攻撃手段を持っており、同じ攻略法で倒すことができる相手ではありません。
ボスの攻撃パターンを見極め、敵の攻撃を避けるべくは避けて、こちらの攻撃を当てるべくは当てる、そういったオーダーメイドな攻略法の確立が重要となってくるでしょう。敵の行動をよく観察し、会得した水中挙動を武器に打倒していきましょう。

このように、バリエーション豊かなステージと、めいめいが異なるボスといった、各ステージの特色が存分に演出されたアクションゲームとなっています。
常に新鮮な気持ちでステージと向き合いながらも、独特な水中挙動に習熟を重ねていき、難敵や難所を打破していきましょう。

感想

上下移動がワンボタンという、水中アクションの難しさを詰めたようなアクションゲームです。Flappy Bird とかもこの系譜なのかもしれない。オリジナルと呼ぶべきなのはスーパーマリオなのでしょうか。この作品のタイトル的にも、そちらに対する本歌取りかもしれません。
ただ、このゲームでは中間浮力というか位置を固定しているフレームが割と長めに取られている印象があるので、見た目よりは難しくない仕上がりになっています。コツさえつかめばまっすぐ進むこと自体はそれほど難しくありません。個人的には動かしやすくて嬉しい調整です。

ステージデザインについては道中がバラエティ豊かとなっていて、遊んでいて飽きない構成となっています。
この手のゲームでよく使われるとげとげコースという手札を早めに切った上で、それ以外のバリエーションもきっちり用意されているというのが巧いところです。個人的には地上面を織り交ぜているのが面白く感じています。地上ではウーパールーパーは攻撃すらできない木偶なので、また異なったプレイ感で遊べます。
それぞれのステージの特徴を出している各種ギミックについても良く出来ていて、基本的に初見で何をすべきかがある程度明瞭に分かるデザインとなっています。筆者は爆弾だけ初見で食らいましたが、あれだけ音が鳴っていて、変色した岩まであるのに避けられなかったので自分が悪いと思っています。あんなに危なそうならさっさと逃げよう。

加えてボスの設計も秀逸で、それぞれの性能にきちんと変化を付けています。攻略しがいがある。個人的に強いと思ったのは2面ボスとラスボスでした。筆者がゲームオーバーになったのはこの二体の時だけで、特にラスボスが強く感じました。ちゃんとラスボスが強いゲームは良いゲームです。

まず2面ボスですが、追従性能がかなり高いため、振り切って戦うのがかなり難しいところに難易度の肝があります。個人的には、電気の状態でいかに被弾せず殴れるかが勝敗を分けるポイントであるように感じていました。電気の火力はかなり高いので、序盤にこれを限界まで叩き込んで体力差の勝負に持ち込めれば勝機はあります。
ただ、後続ボスを初見で倒せた割にこのボスに何度か苦戦したので、単に筆者が何かに気付いていない可能性もあります。

続いてラスボスですが、こちらはむしろきちんと避けることが大事です。パターン化して被弾を最小限に抑えないと勝ち切ることは難しくなっています。
こちらも電気の最大火力を可能な限り当て続け、その後は被弾を避けた立ち回りで少しずつ削っていくのが良いように思います。とはいえ、1ループ目にある細かい弾は避けられたらラッキーくらいの難易度に感じているので、ジリ貧だと負けがちです。殴れるポイントでは確実に殴っていくための慣れが必要そうに思いました。

なお、バージョンを見てわかる通り、筆者は難易度のナーフや初期技の強化があった状態でプレイしているため、そのあたりの調整があったからクリアできている側面は否めません。最終的には残機が2桁残っていたとはいえ、ナーフ前で2面ボスやラスボスに勝ち切れていたかについては、はなはだ怪しいと思っています。
個人的には現在くらいの「ふつう」難易度がある程度達成感がありつつ、クリア不可を感じる焦燥感を覚えない程度で好みではあります。「むずかしい」というか、かつてのデフォルト難度の方はレトロゲームでお馴染みの緊張感のある難易度だったのかもしれません。それはそれで好きではありますが、クリアできるかはまた別の話。

ちなみに、シナリオはフレーバーという感じで、世界観というか雰囲気を構成する以上の役割は持っていません。この辺りもレトロなアクションゲームという印象が強いですね。なんでウーパールーパーが主人公になったのかとか、そういうことには一切の理由付けはありません。そこにウーパールーパーがいたからに他ならないので。

ともかく全体を通して、水中アクションという幅が決して広がらないであろう骨子に上手くギミックを乗せて短編のアクションとして仕上げている作品でした。アクションにバリエーションを出すことが強く意識されているような設計のため、最後まで新鮮に楽しんでプレイできるゲームです。

31. End Of The Lost World

ジャンル 作者
RPG 霞流 薺
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 + 20分 1.10 True End

良かった点

  • 世界観の表現が良かったです
    • システムも併せて上手く表現されています
  • シナリオに強いフックがあり、最後まで読ませるものとなっていました

気になった点

  • 行く場所に対する説明が薄いことがあります
    • 例えば神殿と言われても、最初はどこを指すか分かりませんでした
  • 最終戦について、ライトニングを連続で撃たれるかどうかで難易度が大きく変化しています

レビュー

4つの地、1つの世界

End Of The Lost Worldは、ある4つの地を世界を救うために巡る短編のRPGです。
ただし、敵の出現数が固定化されていることもあり、ほとんどアドベンチャーのようなプレイ感となっています。

プレイヤーが巡ることになる世界には、色、音、時、光がそれぞれ欠けた地があり、それぞれに神殿が存在しています。
それぞれの地では、その欠けたものに適応した住人達が住んでおり、その中には神殿に対応する聖女がいます。彼女らと交流し、その力を借りつつ、主人公は各地の神殿を巡っていくことになります。
そうやって展開されていくシナリオはいくつもの転換点を経て進行していき、やがて全ての神殿を巡り終えた後にいくつかの結末へと収斂していきます。

その独特な世界観に浸りつつ、いくつかの戦闘を重ねて、その終わりへと突き進んでいきましょう。

感想

世界観が良く、とりわけ世界の性格付けが良かった作品でした。何かがおかしい世界を構築する際は、異物にフォーカスを当てて思考実験的に組むと面白いというのは古くは寄生獣やDEATH NOTE、最近ではハイパーインフレーションなどの作品から明らかなのですが、この作品の世界の構築もそういったものに根差してあります。
色の無い世界、あるいは彩度のない世界では明度の違いで判別する能力が養われるとか、手話ベースの世界の言葉に柔軟性が無いこととか、時の無い世界では滝が通行できないものとなっているとか、そういう世界として上手く描かれている印象がありました。時が止まってるなら空気も止まってるから動けないというのは野暮。

加えて、システムとしてもその世界を表現してあり、ゲーム画面や音声を通してプレイヤーにも体験させているのも良いです。ゲームであることが最大限に活かされています。システムとそれぞれの住人の会話や表現をもって、世界観が上手く形作られていました。
そういう意味でも、個人的には心音が聞こえる演出は音の無い世界ではカットして欲しかった気もしますが、演出上意味が強いので残ったのでしょうか。

なお、個人的には一番生存が厳しそうなのは光の無い世界ではないかと考えています。時はその性質上、そもそも生死やら何やらが埒外にあるので除外するとして、他の世界に比べて段違いに厳しい世界になっています。というか、ほぼ色の無い世界をより悪くしたものとすら言えます。
最後の重要人物がそこに居たというのは、単にその性質上都合が良いからという以上に、そういう意味があったのかもしれません。

閑話休題。システム面で言うと、たまに説明が分かりにくくて迷うことはあるものの、概ねまっとうにRPGをしています。戦闘面ではヒールと深呼吸で全回復できるので、戦闘後全回復でも良い気はしますが、戦闘自体がそれほど多くならない設計なので気になるレベルにはなりません。
個人的に一番苦労したのはラストバトルで、ライトニングを撃たれるかどうかのゲームに始終していた印象がありました。意志が使えるとはいえ、ライトニングを3連打してくると自動回復とヒールを合わせても間に合いません。本当に戦闘難易度は低めなんですか。
その直前に長めのイベントがあるのも大変で、運ゲーを迫られた後にスキップできないイベントを見ることになるので時間がかかってしまいました。
ちなみに、悪い乱数を引くと3連打を必ず打ってくるので、そういう時はメニューでヒールをして乱数調整するのがお勧めです。

そういったシステム面はさておき、シナリオと世界観、その表現は素晴らしい作品でした。最初の聖者も含めて良い人である側面を強調した上で、主人公の所業をまざまざと見せつけるというシナリオ進行も良いです。ちゃんと主人公が悪魔的所業をしている。何故こんなことをしているのかというフックとしても良いですね。

32_白雛芥子の夢の果てに

ジャンル 作者
探索ADV flote
プレイ時間 プレイVer クリア状況
1時間30分 1.03 クリア

良かった点

  • 相異なる独特な夢の世界のいずれもが魅力的でした
    • ギミックから演出まで多様なものとなっています
  • スリルと緊張感が適度に感じられるホラーでした
    • 音の使い方が良かったです
  • 不穏な良いシナリオでした

気になった点

  • 謎解きの作中ヒントがやや薄めに感じました
    • その分、外付けでヒントが同梱されているので困ることは少ないとは思います

レビュー

目を奪われるは悪夢の世界

白雛芥子の夢の果てに は、様々な悪夢の世界を巡って記憶のかけらを集めていく探索アドベンチャーです。
脅かしや追いかけっこといったホラー要素もやや含まれた構成は王道に忠実なものに仕上がっており、完成度の高い作品となっています。

全体がオーソドックスな設計の中でとりわけ特徴的な点として挙げられるのは、巡ることになる悪夢の世界の多様さです。6つの異なるモチーフからなる世界は、それぞれに存在するギミックはもちろんのこと、演出から雰囲気まで全く異なるものとして表現されています。非日常的な赤い空の下にある世界もあれば、パイプひしめく人工的な世界もあり、道路がつぎはぎされて作られたようなカオスな世界もあれば、調和の取れた和の世界もあります。
こうした全く相異なる独特な世界でありながら、いずれの世界も構成や演出の力によって、魅力的でありながらどこか不穏な雰囲気を漂わせるものであることは共通しています。その不穏な空気に心を強張らせつつも、悪夢の世界に没入できること疑いありません。

その様々な世界を巡り、記憶のかけらを集めていくことで、徐々に主人公の身に起こったことが分かっていきます。この悪夢はどういった意味があるのか、それらは何を伝えるものなのか、全ての記憶のかけらを集めた時、全ての真相が明らかになります。
是非とも、恐ろしく、不可思議ながらも魅力的な悪夢の世界を巡っていき、その真相に近づいていきましょう。

感想

探索ホラーとしてクオリティの高い作品でした。筆者の偏見として、探索ホラーは廃病院やら館などの何らかの舞台を決めて、その上で展開するケースが多いように思っています。しかしこの作品は悪夢をベースに全く異なる世界をいくつも構築し、最後にそれらがつぎはぎのように渾然一体となって現れます。
それぞれの世界のいずれもが全く異なるものであり、かついずれも印象に残る品質の高い世界であったからこそ、最後の演出が光っていました。

ひとまずシステムについて触れておくと、謎解きや追いかけっこ要素を含むオーソドックスな設計になっています。個人的に一番難しかったのは神隠しで、それなりに意図をエスパーしないと解けない気配を感じています。ほぼノーヒントで連続文字数分だけ移動する鳥居については攻略したというよりも、色々と試していたら解けたという感じになってしまいました。
これに限らず、全体的に謎解きはフィーリング気味なところはありますが、ある程度探索アドベンチャーに慣れていると解きやすくはあります。そうでなくても、攻略の手引きが同梱されているので迷うことは恐らくありません。親切。

なお、追いかけっこも含めてそこそこトラップがあるのですが、難易度自体はそこまで高くありません。初見でもほぼ食らうことなく最後まで行けました。たとえ少し食らってしまってもある程度はアイテムでカバーできるのも良く、何度もリトライするようなことにはなりませんでした。
とは言え、追いかけっこ周りのパートはシンプルで味気ないものでは無く、きっちりスリルと緊張感のある範囲には収めています。多分に世界や演出による雰囲気の効果が強く出ている印象がありました。
なお、セーブとしてベッドが用意されているのですが、個人的にはややテンポが悪いのが気がかりでした。何度も使うようなものでは無いので、恐らく演出的な方向に振っているものと思われますが。

シナリオについては、中盤あたりから薄々察せられる面があるとはいえ、どういう結末を辿ることになるかまでは読み切れないので最後まで注視できるものとなっています。
個人的にはそれぞれの世界が暗示しているものを紐解きたくなる雰囲気の良さが好みで、演出も含めて良く作り込まれた世界だからこそ、その描写一つ一つの意味を色々と考えたくなるものがありました。シナリオ自体は受動的にも楽しめるものなんですが、能動的にいろいろと見たい気持ちにさせる雰囲気があります。

また、その上で全体に遍在するホラーの雰囲気も良いものです。定期的にホームや日常風景という明るめの世界を経由することもあって、より一層その異質さが際立っていました。とりわけ近寄ると音が鳴る演出がかなり効いていて、恐怖の演出に強く作用しているように感じました。やっぱり音って怖い。
さらに、各ステージごとにギミックが異なるのみならず、恐怖の性質もまた変化しているのも面白いところです。端から見れば恐怖するものが見受けられないステージすらありますが、それがむしろ緩急として効いているような印象がありました。

個人的には世界が荒廃したのちにラームがぐったりしているなどの細やかな演出の良さも好みです。こういう演出をきっちりしてくれるからこそ、最後にエンドロールが流れて終わる演出に納得できるものがあります。ゲーム性のすべてを使って表現を完成させるであろう信頼が積み重なっていました。
通常タイトルが上から下、エンドロールは下から上であることにもきっと意味があるのでしょう。黄泉平坂の上り下りは諸説あるようですが、下りが現世の解釈の方を取るならそうやって見ても良いかもしれません。

エンディングやその周りの解釈も色々とすることができ、各々の記憶の意味まで広げるとプレイヤーによって変わりそうな印象すらあります。最後の行為が夢であるというか、あくまでも意識を手放す儀式であろうことは相違なさそうですが。病院の屋上にそんなに都合よく穴は無いし、そもそも死因ではないですし。今際の国のアリスみたいなものなのか。
その上で、各々の記憶については以下のように解釈しています。なお、水辺、雷鳴、死神、黒煙、帰路と神隠し、赤い空は順不同と捉えています。

雷鳴、黒煙あたりは事故そのもののメタファーのようにとらえています。天候が悪化して事故が発生したのか、滑落後にバスが炎上でもしたのでしょうか。雷鳴の迫る危機、どうか何も変わらないでというあたりにその空気を感じます。また、黒煙の孤独を見る限り、そして一人だけこの夢に囚われていることを見る限り、たまたまバスの外に投げ出されるなどしたのかもしれません。
そうであれば、赤い空におけるサイレンが聞こえていたのではないかという推測も成り立ちます。夕方だったのか、あまりの凄惨さを赤い空として見ていたのかは定かではありませんが。個人的には、シノが最後に見せた赤い顔を本当に見たそれであると解釈しているので、後者っぽい印象があります。

その上で、水辺、死神あたりは死のメタファーとして捉えています。後者は直截的なのでともかく、前者も日本的には死のイメージが付きまとうものなので。夢を見るという行為を続けているような状態である事、そのことに疲れていることから、葛藤は死の受容に対するものなのかと考えています。未知なるものへの恐れもそれに近そう。
一方で水辺はあんまり解釈できている状態ではありません。ただ、川ではなく水辺であることから、死の間際なのかなと解釈しています。六文銭は支払っていない。皆は向こうにいるのに、自分一人だけまだ水辺にあることの罪悪感なのでしょうか。

最後に帰路と神隠しがあるんですが、これが一番良く分かっていません。帰路は帰り道を指しているとして、いずれに帰るものなのでしょうか。水辺を彼岸と捉えてよいのであれば、帰路は此岸へのもののようには思います。頼るもののない状況というのもまた、これに合致するかもしれません。此岸には誰も居ないので。
その上で、神隠しが良く分かっていません。本来は全員が一斉に彼岸に行くところ、一人だけこちらに取り残されたことを指しているのでしょうか。

といったように、諸々解釈して楽しむのも良い作品です。

その上で、上記のように描写をこねてどこにでもくっつく膏薬を付けていくようなことをしなくても、それぞれの夢の世界を探索するだけで楽しいというのも個人的にはお勧めしたいところになります。先述のように、多様な解釈を引き出してくれるのは、見目に優れた様々な顔を見せてくれる世界の在り方によるものが大きいので。不穏さの表現はいくつもあるのだなと感心させられました。どういう楽しみ方をしても良い作品は良い作品ですね。
なお余談ですが、筆者はreadmeをちゃんと読むタイプなので微妙にネタバレを食らいました。とはいえ、こういったジャンルは配信向けなこともあり、その配慮は概ね正しい気もします。

33. 1969年のゼロデイ

ジャンル 作者
アクションRPG 雪見大介
プレイ時間 プレイVer クリア状況
2時間 1.30 コンプリート

良かった点

  • アクションを楽しむために特化したゲーム構成となっていました
  • 終盤のボスは歯応えのある強敵となっていました
  • 主人公のキャラクター性が良いです

気になった点

  • 葡萄館、2F奥に何もない謎の空間がありました

レビュー

ごく普通の女の子による剣と銃のアクション

1969年のゼロデイは、剣による近距離攻撃と銃による遠距離攻撃を使い分けて戦うアクションRPGです。
東京に来たところで事件に巻き込まれたごく普通の女の子が、持ち前の知識を使って剣と銃で怪物を倒していくことになります。

怪物は町のいたる所を徘徊しており、これらを排除しつつ探索していき目標地点を目指すというのが主な流れとなっています。武器に対して残弾数や耐久値のような概念はないため、相対する敵と思う存分戦うことができます。どんどん怪物を排除していきましょう。
また、そうして怪物を倒すとお金が手に入り、これを用いて装備を充実させていくこともできます。それぞれの武器は範囲や特徴、威力などが異なっています。状況に応じてより強い武器に取り換えていきましょう。

こうして怪物を倒し、武器を整え、探索を進めていくと、最後にボスと戦うことになります。シナリオが進むごとに強力になっていくボスに勝利することは、アクション的な立ち回りの上手さだけでは徐々に厳しいものとなっていきます。敵の行動を観察して把握し、適切に弱点を突く装備を用意するといった準備を怠らないことが肝心です。
持てる力を全て動員し、足りないものは探索で補強して、難敵に挑んでいきましょう。

このように堅実なアクションとして完成されているシステムに合わせるように、シナリオもまた硬派なものとなっています。
普通の定義を見失うほどに落ち着き払った主人公を軸として、怪物に襲われた町の救助活動を進めていく中で大きな陰謀と相対していくという展開が、非常にテンポ良く進行していきます。
その結末を見届けるためにも、近距離と遠距離を使い分けるメリハリのあるアクションで怪物どもをなぎ倒していきましょう。

感想

堅実なガンアクションでした。近距離攻撃もありはするんですが、近づくと被弾することが多い上に残弾数が無限なので基本的に遠距離のガンを使うことになります。何なら、必殺技すら振らずにガンで処理する方が良い時すらあります。一方で、強敵やボスには近距離攻撃や必殺技を使うべき機会が多く、その辺のバランスは上手く取られている印象がありました。
また、アクションとしての操作性も良く、概ね直感的に操作可能なものとなっています。

RPG的な要素としてはシナリオに伴う目的地の更新と、敵を倒したお金で装備を更新していく部分があるかと思います。
後者については、適当に湧いてくる雑魚を倒していれば自然とお金は溜まっていくので、稼ぎはほとんど必要ありません。ゲームボリュームに対してちょうど良い程度の要求値となっています。加えて、きちんと装備を更新していれば雑魚に負けない程度の強さは得られるので、総じて雑魚戦の難易度は低いように感じました。ボス戦についても、2面ボスくらいまではざっくりとした意識でガンアクションしていれば勝てるレベルに収まっています。

その一方で、3面ボスからは明らかに弱点を突いて、上手く立ち回って倒す必要のあるレベルに引き上げられていました。基本的に高速かつ、そこそこ広範囲の攻撃を行うため、全てを避けきって対応するのは難しくなっています。このため、弱点をちゃんと突こうという意識が無いと突破は骨が折れる難易度になっています。
この難易度の上がり幅はやや急に感じつつも、シナリオの関門としての緊張感というか達成感としては良いボスでした。ここが弱いと、さすがに拍子抜けするところではありそうです。
また、ラスボスも同様に強く、攻撃対象を増やすことで被弾を誘発させるデザインになっています。こちらはラストなので、薬草をがぶ飲みして戦いに挑みました。ダメージ覚悟で突っ込んだ方が成果が上げられる。そういった戦法を取れることもあり、このレベルで強いくらいがちょうどいい難易度に感じています。

シナリオについてはまず主人公に触れないわけにはいきません。主人公が超然というか泰然自若というか女学生らしからぬ振る舞いを見せます。片腕を痛めた後にすぐに片手で装填するの、そういう訓練を受けていないと無理じゃないでしょうか。戦場帰りなのかもしれない。前作も含めて、世界観がかなり物騒なので、そういう素養を身につけやすい世界なんでしょうか。
その上で、シナリオ自体は硬派なものになっています。主人公が上記のように淡々としていることもあって、テンポ良く進んでいく小気味良さがありました。一方で、要所に入る演出の完成度は高く、盛り上げるポイントは抑えた展開となっています。

とにかく、ゲーム全体が堅実な設計で作られている印象のある作品でした。アクションだけを楽しむために特化しているので、そういう気分の時はちょうど良いゲームだと思います。比較的短く終わるのも良い。

34. 雨を乞う弔鐘

ジャンル 作者
探索ADV もっともやし
プレイ時間 プレイVer クリア状況
40分 + 3時間 1.03 ED13+1+2

良かった点

  • 全体を通して丁寧に作り込まれた作品でした
    • 細かいレベルで分岐、スチル、イベントが豊富です
  • いずれのキャラクターも魅力的でした
  • グラフィックやUIにより統一された雰囲気が良いです

気になった点

  • 特にありません

レビュー

バケモノたちとの四日間

神は細部に宿るものです。しかし、細部に宿らせた神に目を向けさせるためには、まず何よりも全体の完成度が高い必要があるでしょう。ノイズの無い高品質な幹があってこそ、作り込まれた枝葉にまで意識が向くことになります。
雨を乞う弔鐘は、その条件を十全に満たした作品となっています。ハイレベルなグラフィックと魅力的なキャラクターから成る高い完成度を誇るゲーム性を味わった上で、様々な選択肢と数多くの分岐という神を認めることができるでしょう。

そのベースとなるゲームシステムは、会話のやり取りをメインとした探索アドベンチャーとなっています。
六匹の相異なるバケモノが住まう館に召喚された人間である主人公を操作して進めていく、四日間の交流を描いた作品となっています。

ゲームを進めていくためには、館の中で活動しているそれぞれのキャラクターに話しかけていくことが必要になります。そうすることで時間が経過していき、一定時間が過ぎると夜になり、寝れば朝になります。基本的にはこの繰り返しで四日間を過ごすことになるでしょう。
そうして交流するキャラクターは個性豊かなバケモノばかりです。気弱そうな異形のオニヤンマ、フレンドリーな吸血鬼ミミズとその兄であり粗野な雰囲気を持つムカデ、オドオドしたメイドアロエ、明るい鬼アキアカネ、つかみどころのない悪魔サソリ、そういった様々なバケモノと交流をしていくことで、それぞれのパーソナリティが分かってくることでしょう。のみならず、探索や交流を適切に進めていくことができれば、この館に秘められた謎も明らかになるかもしれません。
色々なキャラと積極的に話してそのバケモノとなりを知るも良し、色々と嗅ぎまわって秘密に迫るも良し、様々な行動を取ってみることをお勧めします。そうして過ごした日々によって、13種と追加でいくつかあるエンディングに分岐していくことになるためです。一周となる四日間は短いので、周回はさほど苦にはならないでしょう。

ただし、この作品はエンディング以外にも多数の分岐が存在します。選択肢によるものから時間に伴う細かいものまで多数の分岐が存在し、それぞれにはイベントがいくつも用意されています。それらもまた、各キャラの個性を知る上では見逃せないものとなるでしょう。
何度周回しても周回しすぎるということはありません。エンディングの分岐に限らず色々な行動を試していくことで、各々のキャラクターの魅力の一端に触れることができるでしょう。

また、そうした密度の濃いシナリオを彩るのは高レベルなグラフィックとなります。それぞれのクオリティもさることながら、細かいイベントであっても、あるいはシリアスでもコメディでも差し挟まれる数多くのスチルは物語の雰囲気に強く影響を与えています。その数の多さたるや、あるタイミングで任意に獲得できるメガネの差分すら用意されている徹底振りです。
丁寧かつバリエーション豊かに用意されたイベントとスチルの数々により、その物語はよりプレイヤーを惹き付けるであろうこと疑いありません。加えて、常時見ることになるUIまでもが洗練されているため、常に作品の空気感に没頭できることでしょう。

全てにおいて丁寧に作り込まれ、微に入り細を穿つ高品質な作品となっています。探索アドベンチャーを好んでいれば、プレイして間違いはない作品と言えるでしょう。
是非とも探索と交流を進め、バケモノたちの辿る結末を見届けていきましょう。

感想

丁寧に細部まで作られた探索アドベンチャーでした。とりわけ分岐が非常に多く、エンディングの分岐にかかわらないところにまで細かく手が回されています。書斎への入り方によっては聞き耳を立てることになる、レベルでの分岐がそこかしこに散りばめられていました。作りが細かい。
筆者は選択肢分岐については概ねさらったと思いますが、細々とした分岐条件をすべて拾えた自信はありません。作り込みというかイベントの密度が凄まじい作品でした。

個人的には回数制限や時間制限により物語を複数回遊ばせる仕組みをそれほど好いているわけではないのですが、このゲームに関してはこれ以上なくマッチしたシステムに感じています。というのも、一回のプレイで遊び尽くせないがしっかりと一つの終わりには到達するという感覚を得られるシナリオの上で、些細な違いに対してレスポンスが返ってくることから能動的に色々試したくなる設計を構築しているためです。
双方を担保しているのは、先立って触れた分岐やイベントの多さです。筆者は探索好きなので、とりあえず端から端まで調べようと思って始めましたが、そうなると上の階だけで3日目に行けてしまいます。調べられる事柄が多い。このため、アキアカネに会うことなくアキアカネに食べられるエンディングに到達してしまいました。

このように、単純にクリアするだけではキャラクターのことを十全に知ることがほぼ不可能なため、自動的に周回を重ねてキャラクターのことを知っていこうというモチベーションが湧く構造となっています。
もちろん、これが成立しているのは各キャラクターが魅力的であるという点に依拠しています。それは第一印象を含めたキャラ立ちの良さもさることながら、やはり綺麗なイラストの効果も無視できないものとなっているでしょう。それぞれのバケモノのビジュアルが非常に良いです。オニヤンマの見目が特に強烈。

そうして各キャラクターを追いかけていくうちに、様々な分岐に辿り着き、その時々におけるめいめいの状況や考えていたことを知っていくという流れは、能動的にシナリオを体験できる設計として秀逸でした。この手のゲームは一本道で読むゲームであるパターンが多い印象があるんですが、この作品は分岐を自らの手で辿っていき物語を埋めていくような楽しさがあるものとなっています。こういうのも好き。
加えて、要所でスチルが入ったりイベントが入ったりと、エンディング分岐そのものに関係ないものですら分岐の先が用意されている点も素晴らしく、始まりから終わりまでが常に異なる線で結ばれているような体験を得られます。
例えば、筆者は初めメガネを借りパクしたまま脱出ルートに入ったのですが、あまりにも自然にスチルにメガネがあるので一切違和感を感じずにクリアしてしまいました。こういう細かいところにすら、少しでも印象が異なるように手が入っています。神は細部に宿るの言葉通り、こうした微に入り細を穿つような作り込みが物語の雰囲気を強く醸成しているように思います。

また、各キャラクターが魅力的なことに加え、主人公が良い性格をしているのも面白い所です。会話主体のゲーム性をしている以上、基本的には主人公と各キャラクターのやり取りが主体になってくるので、常にいる片方もまた面白いキャラクター性をしているということは割と重要なんだなと感じました。
この主人公、選択肢と状況によってはサソリが真横に居ようがお構いなしにピッキングをかまします。豪胆に過ぎる。メガネ借りパクするくらいですからね。

ちなみに、筆者が一番好きだったキャラクターはオニヤンマでした。先述の通り一番ビジュアルが鮮烈であるという第一印象の強さもあるんですが、会話を重ねて色々なエンディングを見ていく上で感じるそのアンバランスさも良い味がありました。アキアカネが全容を知らないというのもミソで、ああいう雰囲気でどこまでもエゴイストであることが良く分かります。個人的にはほぼ裏主人公格のように感じていました。童話のモチーフについても主人公っぽくなるようにミスリードした上で、実際はただただオニヤンマの話をしているようですし、そもそも後記が明確にそういうものなので。
次点でアロエも好きでした。六匹のバケモノと表現されていることに対し、アロエは特に化け物っぽくないので最初は違和感があったのですが、特定のエンディングを見たことで腹落ちしました。化け物とは見た目云々ではなく、その性質なのかもしれません。あるいはもはや化け物でなくてはここに居られないのかもしれませんが。

また、各エンディング分岐についても触れておくと、どのエンドにおいても救いなんてものはないのが良いです。絶望に絶望を塗り重ね続けている現在に対し、生半な救いを用意したところで意味はありません。あるいは、ちゃんと何らかの形でピリオドが打たれること自体が救いなのかもしれませんが。
初めのうちは作中で少し触れられる神父あたりが何らかの救いとされるのかもなと考えていましたが、そんなことは無く怪物が怪物に殺されていく終わりは象徴的ですらあります。ヒーローなんていない。
なお、個人的には雨を乞う弔鐘という贄の鐘の音とともにエンディングに突入していく演出も好みでした。単純に区切りとして分かりやすく、かつ象徴的で、世界観との調和も取れています。

個人的にはエンディングの中では、2-2が一番好みです。先述したアロエのエンディングであり、人間と化け物の間に引かれる一つの線引きを示しています。起きている事象としては2-3と変わらないんですが、手を下すという行為そのものが入り口として描かれているというのが良いです。直接手を下すことを好まない悪魔との対比もあるのかもしれません。あるいは直接手を下すことで現在に至るオニヤンマとの相似を意味しているのかもしれません。
ともあれ、この作品は作中で言及されたようにトロッコ問題であり、このエンディングはその分かりやすい一つの事例ではあります。どちらにとっても、線路に転がされているのは自分ということになりそうですが。

話題を変えてシステム面の話について。下を埋め尽くすようにあるUIが良いです。最初の内は見た目の圧迫感を感じていましたが、慣れてくるとゲームの雰囲気を高めつつ、必要十分な情報を常に見せてくれるUIとして優秀であるということが分かりました。このゲームにおいて必要な情報はほぼここに書かれています。
その分サイズが大きく、画面を占めて邪魔になりそうという問題についても、マップ構造で下方の余白を上手く取ることで解決しています。狭いマップなので、その全てをケアすればこれくらい大胆なUIにしても問題ないというのは面白いです。思い切りが良い。

また、先立っても軽く言及しましたが、グラフィックが高品質なこともまた本作における魅力になります。それは物語への没入感を高めるとともに、それぞれのエンディングやイベントに対する興味関心を引き立てる役割も担っています。
祈りの所作について触れているオニヤンマの祈りのポーズといったような宗教画的美しさのあるものから、普通に殺害してくるムカデに対してコミカルに怒っている人外ズというコメディタッチでシュールに感じるイラストまで、幅広く取り揃えられているというのも良いところです。色遣いとか構図も良い。

とにかく全体的に一貫して高品質かつ丁寧な作品となっていて、何度も遊んで様々な分岐を試してみたくなる作品でした。
なお、筆者はすべての選択肢分岐をセーブロードも駆使しながら拾い集めていたので、上記にあるプレイ時間はやや長めに取られているものです。恐らく全エンディングだけでよいなら、もう少し短く達成できると思います。

35. アイドルライバー

ジャンル 作者
シミュレーション シブサワ・コウの名を継ぐ者
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 x 2 8/2更新 クリア

良かった点

  • 緩く分岐を楽しめるゲーム性でした
  • AIを使って短いシナリオを楽しむ導線が上手く整備されていました
    • ロールプレイが捗ります

気になった点

  • 特にありません

レビュー

ぼくのかんがえたさいきょうのライバー

アイドルライバーは、ライバーをプロデュースしていく選択形式のアドベンチャーです。
プレイヤーはレッスンや配信を通してライバーを育成していき、ランキングの1位を目指していくことになります。

ゲームの流れはシンプルなもので、レッスンでパラメータを上昇させた後、配信を経て資金や知名度を獲得していくというものになります。
まず、レッスンでは練習内容により各パラメータが上昇し、一方でモチベが低下していきます。モチベが少ないと配信に悪影響を与えるため、適宜休ませてあげましょう。
次の配信では内容を決めた後に会話が進行していき、いくつかの選択肢によってその内容が分岐していきます。無難に人気になりそうな選択肢を選ぶも、炎上しそうな危険な選択肢を選ぶも、全てはプレイヤーに委ねられています。自由に選択していき、自分の目指す配信者に育てていきましょう。

しかし、アイドルライバーは単なるアドベンチャーゲームではありません。
Gemini APIを活用することで、配信の概要をAIに伝えてその内容を生成するという仕組みが組み込まれています。この機能を使うことで、プレイヤー一人一人が固有の体験を得られることでしょう。
設定を考えるのが苦手という方でも、配信内容のテンプレートもいくつか用意されているので安心です。まずはそれをカスタムして楽しんでみるのをお勧めします。

ライバーを育成していくシンプルなアドベンチャーでありながら、AIの力で無限に広がる世界も体験できる作品となっています。
ゲームの中で自分なりのライバー像を作り上げていきましょう。

感想

とりあえずまずはAI抜きのゲームパートについてですが、短めのシミュレータ風のアドベンチャーゲームになっています。これだけでもちゃんとコンセプトのアイドル育成は成立していて、軽めの育成要素とそれなりの分岐が用意されていました。
筆者は適当にプレイしていたら人の恋路を邪魔しておいて結婚を申し込むクソ野郎に成れ果ててしまいましたが、そういう緩い分岐もあるあたりが楽しめます。どこで道を誤ったんだこのプロデューサーは。ともかく、極限まで単純化してローグライト要素とミステリ要素を削ったアイネットマーダーマジックみたいな感じです。
ゲームの達成条件も恐らく緩めであり、半分近くの配信が不評に終わっても目標は達成できました。何が正解かがかなり不透明なところが多いので、このレベルで緩くクリアできるのは良いように感じました。というか、失敗のパターンはあるのだろうか。

話を変えて、おまけモードについて。このスピード感でAIを上手く組み込んできたのは凄いです。その上で、きちんとAIでなくてはできないことを、それなりに導線を付けて組み入れている上手さもあります。Geminiがちょうど良い時期にあったのも良かったですね。ウディコン開催中に規約が変更される恐れもあったはずなので、あくまでおまけモードであるという立ち位置に留めてあるのも良いです。リスクがケアされている。

まず、AIでないとできない、プレイヤーが自由入力した設定に対するプロットの自動生成という仕組みをライバーの配信という建付けの中に入れているのが上手いです。配信という枠組みの中でシナリオを構成するので、あまり突飛なことになりにくく、たとえ破綻が起きてもそういうものとして受け取りやすい下地ができています。
唐突に配信テーマに関係するか分からないものが出てこようが、いきなりすべてを壊すデウスエクスマキナが出てこようが、そういう配信になってしまったから、という謎の説得力が生まれていました。配信というもののアドリブ性の高さによるものかもしれない。
その上で、プロット自体はこちらの入力にかなり柔軟に対応してくれるので、オリジナリティを感じながら読み進めることができます。これはAIが賢い。

そして、個人的にこの作品で最も優れていると感じているのが、AIによるプロット生成という遊びを楽しむために、そういったことに経験のないプレイヤーでも簡単に生成できるように下地を整えてあるという点になります。
プレイヤーが干渉すべき点は決して多くなく、全容をきちんと書く必要はありません。あくまで配信の概要を書くだけで済むので、こういうことがあったら面白そう、くらいの温度感で記載が可能になっています。加えて、テンプレートとしてのランダム生成も用意されているので、ここから派生して組み立てるといったことも可能です。
その上で、各ライバーの性格やそれまでの選択肢をコンテキストに組み込むことで、ただのプロット生成だけでなく、このゲームならではの性格も出している、という点も良く出来ています。きちんと、このゲームでしかできない体験が得られました。

この作品の楽しさの半分くらいはAIに任せてロールプレイしている楽しさであることは否定できず、その点に関してはこの作品の功績あるいは評価に値する点であるとは言いにくいところはあります。
しかし、この辺りのAIロールプレイを楽しく、平易にやらせる仕組み作りの巧みさは間違いなくこのゲームの評価点であろうと思います。お膳立てが優れている。

ちなみに、これの執筆時点ではGeminiの無料枠のレートが押し下げられていたので、もうAIモードは満足に遊べないかもしれません。その点はご了承ください。

36_SIMPLE ROOM ~部屋からの脱出~

ジャンル 作者
脱出 バル
プレイ時間 プレイVer クリア状況
20分 1.05 クリア

良かった点

  • かつての脱出ゲームの質感が再現されていました
  • 謎解きの難易度やボリュームがちょうど良いです

気になった点

  • 一部謎解きの解の一意性がやや気になりました

レビュー

2000年代Flashの亡霊

SIMPLE ROOM ~部屋からの脱出~は、見知らぬ部屋から出ることを目指す脱出ゲームです。
ポイントクリック形式で怪しい所を探索し、脱出に向けて様々な謎を解いていくことになります。

前述のゲーム性からも察せられる通り、この作品の設計は往年の脱出ゲームを強く意識させるものとなっています。特定のアイテムの取得に必要なものであったり、それが隠されている場所であったりと、かつての記憶を手繰り寄せるとスムーズに解いていくことができるでしょう。
さらに、シンプルかつ最低限の要素が揃っているようでいて、絵画や妙な箱など普通の部屋には似つかわしくないものが散りばめられている部屋の雰囲気もまた往時を彷彿とさせます。Flashゲームを遊んでいた当時を思い起こせば、どこで何をすべきかは自ずと明らかになるでしょう。

用意された謎解きの難易度や全体のボリュームはちょうど良く、適度に頭を動かしつつサクッと終えられる規模に収まっています。このため、拍子抜けするほど短くも簡単でもなく、悩みすぎるほどには長くも難しくもない、適度な謎解きを楽しむことができるでしょう。
なお、謎解きに不慣れであってもヒントが同梱されているので安心です。詰まってしまった場合は見てしまっても良いでしょう。

ゲーム全体の雰囲気はまさに昔の脱出ゲームのそれではありますが、そのクラシックな設計は単純明快に楽しみやすいからこそ流行ったと言えます。従って、かつての脱出ゲームを知らない方でも楽しく遊べるであろうことは疑いありません。
脱出ゲームを遊んでいた方も、そうでない方も、脱出に挑戦してみてはいかがでしょうか。

感想

タイトル通りのシンプルイズベストな脱出ゲームです。往年のFlashゲームのような質感があって、懐かしさを感じながらプレイしていました。
Flashゲームであればもう二段階くらいありそうなあたりで終わる程度の規模感ではありますが、シンプルなゲームとしてはちょうど良いボリュームだなと感じています。

建付けはかなりクラシックであり、届かないところにあるアイテムを取得するために長い棒を探す、何でそうなってるか分からない謎解き設計の鍵やら何やらを開けていく、といったFlashゲームのあるあるを知っていれば、自然な思考でスムーズに解くことができます。かつて遊んだ時の経験が蘇ってくる。
また、全体の設計自体がかなり古典的であり、古典的であるということは面白さの保証された設計ではあるので、当時を知らなくても恐らく楽しめると思います。そもそも、リアル脱出ゲームを初めとして、脱出ゲーム自体が割と人口に膾炙しつつある概念っぽい気もする。

以下は謎解きの内容にも少し触れるので、気になる方は先にやってください。

おおよその謎解きは素直な思考で解けるんですが、画数の謎だけ若干注意が必要になります。紫の画数は11画とするケースもあり、これが黄色と競合するためです。ここは学習指導要領に従って12画と解釈する必要があります。一意に定めるなら、さもありなんではありますが。
ともあれ、漢字の画数は辞書によっても結構ぶれるので、謎解きに採用される場合はその辺のブレを吸収できる設計になっていることが多い印象があります。

とにかく、懐古的に脱出ゲームを楽しめる作品でした。
斬新が低くなってしまっているのは、むしろこのゲームの完成度の高さを示しているようにすら思います。

なお、このゲームにはAXEがあります。もしかしたらウディコンは斧に侵略されているのかもしれない。ゴリラの次はAXEなんでしょうか。

37. 名もなき記録

ジャンル 作者
ノベル 今門 楽々
プレイ時間 プレイVer クリア状況
10分 1.0 全END

良かった点

  • 短編としてまとまりが良く、完成度が高いです
  • 演出やグラフィックが物語を上手く引き立てています

気になった点

  • やや誘導が弱い印象を受けました
    • 短編のため、実質的には誘導無しでも問題が無いので些細な話ではあります

レビュー

完璧な小品

名もなき記録は、選択肢によって物語が変化していくノベルゲームです。
終末世界で戦う二人の少しばかりのやり取りから始まり、やがて転回していく物語が描かれています。

物語のエンディング分岐は5つありますが、すべて見たとしても10分程に収まる程度のボリュームとなっています。しかし、その短い中で、魅力的なキャラクターのやり取りや、世界観の描写、物語の急展開、印象に残る演出といった要素が過不足なく詰め込まれている作品となっています。
その短いプレイ時間の中で、高い満足感を得られることは間違いありません。

これ以上多くを語るとネタバレとなってしまうため、ここで筆を止めておこうと思います。
短く完成度の高いノベルを遊びたい方は是非プレイしてみてください。

感想

過不足なく表現された小品のようなゲームです。短い中に要素がきちんと入れられた上で、転回まで用意されています。短く綺麗にまとまっている。
以下はネタバレします。ごく短い作品なので、やってない方はやりましょう。

シナリオの完成度というか、まとまりに関してはかなり秀逸で、短いやり取りと少しの情報しか出していないにもかかわらず、きちんと終わりまで丁寧に導かれています。フックとしての違和感の配置、世界観に対する言及の度合い、最後に至るまでの道筋、全てが必要十分にコントロールされて整備されているような印象を受けました。
この短いやり取りの中でキャラクターを魅力的に見せている手腕も素晴らしいです。
さらに、シナリオに対するメタ的な演出についても良く出来ていて、Continueが使えなくなったタイミングの表現ですらオシャレに仕上がっています。その状態に意味を持たせている。

必要な範囲で用意されているキャラクターのスチルなど、リソースもまた適切な範囲で用意されています。個人的には管理人の絵も欲しい気がしましたが、あれはあれでそういう演出なのかもしれません。
ごく短く、特徴づけるものがテキストとそこから発生する違和感であるという手に取りにくい作品の形式であるところを、グラフィックで上手くキャッチ―に仕上げて手に取りやすくしている印象があります。◆-晩餐-◆といい、メタノベルはそういうやり方をしがちなのかもしれない。

ゲームとしては、あんまりにも短いのでヒントなどの誘導は弱めではあるものの、特定BADでそれなりに誘導はされています。そもそも短いので、誘導が無くてもいつかは到達できるかもしれません。そもそも上の選択肢だけ選べばいいのはADVあるあるではあります。
また、当然のように用意されているバックログ、2周目から解放されるスキップ要素といったように、システム面でも痒い所に手が届く設計となっています。隙が無い。

短く綺麗な物語体験が得られる、質の良い短編といった感じの作品です。
なお、筆者は割とすぐに突破したため、セーブデータを差し戻すことで全てのエンディング、もといBADを見るようにしていました。やや手間。もっとも、BADを回収したい人はそういうことをやるタイプの人なので、手間だとは思いつつも設計上はそういうものだろうなと納得しています。そうあるべき物語ですしね。